一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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シンヤの行方が分からなくなったのをどう説明しよう…。

頭を抱えたミミロップは深く溜息を吐いた。

 

「今のって珍しいポケモンかなぁ?」

「どうだろうね」

 

シンヤの心配を特にしてないツバキが目を輝かせて笑った。シンヤのお土産話に期待しているようだ。

 

「ミミローくん、元気だして。大丈夫よ、ツーくんも居るんだから」

「いや、不安要素そこなんだけど…」

「あ、そうそう!シンヤさんなんかの事よりも!ミミローくんに相談があったの!」

「なんかって…!」

 

良いのよ、どうでも。とジョーイが笑顔で話を終わらせる。

動揺するミミロップ、なんの話?とツバキとエンペラーがジョーイへと視線を向ける。

 

「この前、ミミローくん、医者志望の人を弟子にしようかって、言ってたじゃない?」

「ああ、うん…」

「ポケモンドクターを目指してる人が丁度居たのよ~!ジムリーダー、ブリーダー経験もあって知識豊富な優秀な人材よ!」

「え!?凄いじゃん!?何ソイツ!」

「ジョウト地方の養成学校に通うらしいんだけど、せっかくならと思って、どう?弟子にしてみない?」

「するする!絶対にする!むしろ、こっちからお願いする!」

「そんな優秀な人材が居たなんて!?何処ジムだよ!!ツバキちゃん初耳なんですけどー!」

「…なんか、ウチキド博士のところに元ジムリーダーでブリーダーの男が居たことなかったっけ?」

「…え?知らない…」

「僕の記憶違いかな…」

 

なんか、連絡した時に良いように使われてる奴居た気がするんだけど…と考えるエンペラーを無視してツバキがジョーイに食い付く。

 

「ねぇねぇ!何処ジム?」

「さあ?」

「ちゃんと聞いといてよー!」

「ポケモンドクター志望だって事しか聞かなかったから」

 

えへ!と笑ったジョーイにツバキが頬を膨らます。

 

「優秀な人材、めっちゃ嬉しい…!って、喜んでる場合じゃねぇええ!!!」

「良いのよ、シンヤさんなんて放って置いて、とりあえず連絡してみましょ?」

「いや!シンヤ!まずシンヤ!」

「もう、シンヤシンヤって…、死んだら死んだでみんな死ぬんだから良いじゃない」

「ひでぇ!!」

 

さ、連絡しましょ!とミミローの腕を引っ張って行ってしまったジョーイを見送ったエンペラーは目を細める。

 

「みんな死ぬんだって…、早めに子供作っておかないと何が起きるか分かんないね」

「え゙!?その話、まだ引っ張るの!?」

「………」

「…え゙!?」

 

*

 

「ふー…、のん達はやれる!絶対に成功させる!」

「ムー!」

 

控室で顔を向き合わせ頷きあったノリコとムウマージ。

今まで何度も敗北してきた、ポケモンコンテスト、ヨスガ大会にノリコは挑戦しようとしていた。

一方、観客席ではエーフィは自分がコンテストに出る以上に緊張していた。

もういい加減、さすがに、リボンをゲットしてほしい…。

祈るように両手を握りしめるエーフィの肩をユキメノコのユキコが撫でた。

 

「フィーさん、大丈夫ですよ!今度こそ!です!」

「はぁぁ…本当に今度こそお願いしたいです…、もう本当に心臓に悪いですよ~…!」

「ノリコ負けたらオレはすぐ帰るからな…」

「そんなっ!?カズキさん!そんな事言っちゃダメです!!」

「私も負けたら一緒に帰ります」

「フィーさんまで!?」

 

ノリコさん、頑張って下さい~!とユキコが祈る中、ヨスガ大会の一次審査が始まった。

一次審査、魅せる演技。

トップコーディネーターを目指す者達の演技を見ながら、ノリコの順番を待つエーフィの表情は不安げに歪む。

 

*

 

「さあ、続いてはノリコさんとムウマージの登場です!」

 

モモアンの声にユキコが両手を握りしめた。

エーフィが選んだドレスを来たノリコがモンスターボールを高く放り投げる。

 

「ムウマージ!マジカルリーフ!!」

 

モンスターボールから出た瞬間に、ムウマージが天井全体にマジカルリーフを放つ。

キラキラと緑色に輝くマジカルリーフに客席が天井を見上げ、おおと小さく声を漏らす。

 

「サイコキネシスで全部捕まえて!」

「ムウ~!!」

 

上空に広がるマジカルリーフをサイコキネシスで自在に操り、竜巻の様にぐるぐると回転させるムウマージ。

ムウマージの真上に集まったマジカルリーフを確認してからノリコは大きく手を上げた。

 

「どくどく!」

「ムー!!!!」

「おおーっとこれは凄い!美しいマジカルリーフが一瞬で不気味な色に染められましたー!」

 

キラキラとムウマージの上空に舞っていたマジカルリーフがどくどくを受けて、不気味に紫色の光を放つ。

鮮やかな色からゴーストらしい不気味な姿へと変わったマジカルリーフ。

 

「そのまま、ぶわーっとおにび!!」

「ムゥウ~!!!」

 

紫色に不気味に光るマジカルリーフに火が付く。

思わず身震いするような怪しげな色で燃えるマジカルリーフをムウマージがサイコキネシスで自身にドレスのように身に纏わせたかと思うと、一瞬で弾けて会場全体へと光が放たれた。

不気味で幻想的、そして、楽しげに笑うムウマージの姿に客席が大きな拍手を送る。

 

「怪しく燃えるマジカルリーフが会場全体に舞い散ります!まさにマジカル~!!!」

「ムウ~♪」

「ありがとうございましたー!!」

 

客席に手を振るノリコにエーフィが思わず涙ぐみ、ユキコが隣に座るカズキの体をぐわんぐわんと揺らす。

 

「やりました!カズキさん!やりましたよ!!」

「見て、た!見てたって…!見てた、から、揺らすなっ!!」

 

大会ジム局長のコンテスタがうんうんと頷いた。

 

「まさにマジカル&ゴースト!!ムウマージらしい素晴らしい演技でした!」

「好きですね~」

「ムウマージの表情もとてもチャーミングで最後までとても楽しかったです」

 

パチパチと拍手をするヨスガシティのジョーイさんにノリコが照れたようにお辞儀をした。

大会ジム局長のコンテスタ、ポケモン大好きクラブの会長スキゾー、そしてヨスガシティのジョーイも、何度もコンテストに挑戦して失敗するノリコを見て来た為、うっすらと目に涙を浮かべていた。

シンヤくん(さん)の妹が、とうとう成功した…!!

そんな風に思われている事など知るよしもないノリコは客席に手を振りながら舞台の裏へと戻って行く。

客席で、両手で顔を覆い涙するエーフィの背をユキコがさすった。

 

「やっと…、やっと、成功、した…っ!!」

「良かったです!!本当に良かったですー!!」

 

その隣ではカズキが次の演技が始まったのを眺めながらひっそりと思った。

一次審査の演技が成功しただけで号泣って…、リボン取ってねぇのに…。

オレの妹、よっぽどだな…。

 

*

 

「ミアレシティは広いなぁ!」

「え?結局、観光すんの?」

「観光なんてしてる場合ではない、探せ…!」

「あの馬鹿、何処に行きやがったー!!!」

「……」

 

『おでまし』させられたシンヤ達は現在、ミアレシティに来ていた。

飛んで逃げるアルセウスを追いかけた結果、どうやらここミアレの人混みに逃げ込んだらしくディアルガとパルキアがかなり焦っている。

ツバキに絶対に行きたくないと言っていた場所に強制的に来る事になったシンヤは大きく溜息を吐いて空を見上げた。

ミアレシティ…広すぎ…。

マップを手にシンヤは呆然としていた。

 

「シンヤ…、ほ、ほら、ここ見ろよ!ガイドブックに漢方薬局って書いてる!」

「……漢方薬はいっぱい家にあるだろ…」

「いやでも、シンオウには無い珍しいのあるかもしれないじゃん!」

「ジョウトから、珍しいの色々貰ったからもう良い…」

「……、あ!しるや、だってさ!色んなきのみジュースあるって!!」

「家でお前ら散々、飲んでるだろ……」

 

落ち込むシンヤを何とか慰めようと頑張るギラティナ。

ギラティナを押し退けてミュウツーがシンヤの腕を掴む。

 

「ミアレガレットが丁度焼き上がる時間だ!早く行こう!焼き立て!!」

「ぅおおおい!!!」

 

シンヤを引っ張って走って行くミュウツーにギラティナがブチ切れる。

 

「遊んでる場合じゃないんだがな…」

「まあ、焼き立てならしょうがない」

「そうだな、しょうがないな」

「「食べながら探そう」」

「このクソジジィ共がぁあああ!!!」

 

*

 

ミュウツーに引っ張られ、エテアベニューまで移動してきたシンヤはもう疲れていた。結構、歩く。歩いてこの街回るのしんどすぎる、と思ったらタクシーやら移動設備が結構整っていた。

 

「シンヤ…、アルセウスが焼き上がり待ってるぞ…?」

「は?」

「「「ああああ!!!」」」

「はっ!?見つかってしまった…!!」

 

フード付きマントを被ったアルセウスがあわあわとその場でうろたえているが逃げようとはしなかった。ガレット待ちである。

 

「このジジイ、いい加減にしろよ?シンヤの顔でもさすがに殴るぞ?」

「本当か?」

「……ごめん、嘘吐いた。殴るのは無理だわ……」

 

いや、殴れよ。とシンヤは心の中で思った。

 

「つーか、金持ってんのかよ」

「持っていないが、この顔だと大体貰えるんだ。タダで」

「人の顔で乞食みたいな真似するんじゃない……!」

「アルセウス、本当にそれは恥ずかしいからやめろ」

「一応、オレらの親的存在なんだから、勘弁してよ…」

 

ディアルガとパルキアに諭されて、アルセウスは渋々と頷いた。

そして、顔を上げてシンヤを見つめる。

 

「じゃあ、買ってくれ」

「シンヤ、私も欲しい」

「俺も」

「オレもオレも~」

 

コイツら…とギラティナが顔を歪める。

その横でシンヤは両手を広げて見せた。

 

「私のこの格好を見て分からないのか?」

「「「?」」」

「手術着だ」

「そうだ、手術着だ。ポケットも付いてない手術着だな。この着の身着のままで連れて来られた私が金を持っているとでも?」

「「「……」」」

 

ほんとだ、ボールの一つも持ってねぇや。とギラティナが心の中で思ったのと同時にミュウツーが頷いて言った。

 

「シンヤの顔なら、ツケぐらいいけるだろ」

「よし、では私が参ろう」

「や、やめろ…!」

「ツケぐらいでケチケチすんなよ!」

「無駄に広い顔を使わねばな」

「お前らどんだけガレット食いてぇんだよ…っ!!!」

 

なんとか食べたい!どうしても食べたい!と駄々を捏ねる神共にシンヤは頭を抱えた。

 

「……お前達が見世物になる覚悟があるなら、金は用意出来る」

「神である私を見世物にするとは…、我が分身ながら浅はかな…」

「いや、お前すでにシンヤを見世物にしてんだろうがよ、オイコラ、ジジイ」

「世間的に見世物にするんじゃなくて…、ここには研究所があるから、博士に言えば、ガレットの一つや二つお前達に買ってくれると思うんだが…」

 

ふーむ、と悩む神連中。

ミュウツーもふむと考える仕草をしたかと思うと、あ、と声を漏らした。

 

「私がポケモンの姿に戻って、シンヤの手持ちをすれば良いんじゃないのか?」

「は?」

「ここはトレーナーも多いし、荒稼ぎ出来そうだ」

 

ニヤリと笑ったミュウツー。名案だ!とアルセウスが喜びの声をあげる。

シンヤは眉間に皺を寄せた。

 

「……シンヤ…」

「…プラターヌに私が土下座してくる……」

「お前らァ!!!シンヤを苦しめやがって!!マジ許さねぇええ!!!!」

 

見世物にくらいなれやぁああ!!とパルキアの胸ぐらを掴むギラティナ。良いぞ、もっとやれ!とアルセウスがご機嫌にハシャいでいた。

 

*

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