一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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「ただいまー」

「おかえりなさぁぁああい!!!」

 

コーヒーあるよぉおお!と飛び掛かって来たミロカロスの持っていたコーヒーを頭からかぶったシンヤは全身でコーヒーを味わった。

 

「あ゙あ゙あ゙……っ」

「…うん、淹れるの上手くなってきたな…」

「ごめんなさいぃいいい!!!」

 

帰って来てから飲む、と約束していたコーヒーは冷蔵庫保管だった為にアイスコーヒー。

淹れたてじゃなくて良かった、とポジティブにとらえながらよしよしとミロカロスの頭を撫でる。

 

「お兄ちゃんおかえりー!見て見てリボンー!」

「……うん」

「ほあ!?黒い雨でも降ったの!?」

 

シンヤを出迎えに出て来た連中が一人ずつ悲鳴をあげるのを聞いてからシンヤはようやく風呂場に行けた。

シャワーを浴びてリビングに行けばソファに横になるギラティナに無理やりコーヒーを勧めるミロカロス。約束は守るオスである。

 

「いーらーなーいー…まーずーいーかーらー」

「美味しい!美味しくなった!俺様、飲んでないけど!」

 

ミロカロスはコーヒーが苦手。

シンヤが出て来るのを待っていたブラッキーとサーナイトが立ち上がる。

 

「シンヤ!紋付き袴をバッチリ来てもらうぜ!」

「何の話だ」

「ワタクシ、このドレスにして、ジョーイさんにはこっちで、ユキコちゃんにはこれが良いと思うんですけど!」

「何の話だ」

「のんの初リボンゲットのお祝いも兼ねて、結婚式もするんだってー」

「リボン一つでお祝いとかめんどくさかったけど、結婚式も兼ねるならまあ良いな」

「めんどくさかったの!?」

 

妹の!初!リボン!見て!ちゃんと!とガクガクと揺さぶられるシンヤ。

 

「リボンもトロフィーも見飽きてるんだが…」

「……」

「わー、とっても綺麗なリボンだなー…」

「もっと感情込めて…っ」

「これ以上、無理だ。もう疲れてるから、帰ってきてすぐコーヒーだったから、もうしんどい」

 

むむむ、と怒るノリコをトゲキッスが宥める。

カタログを睨みつけるエーフィにサーナイトがご機嫌に話掛ける。

 

「これも良いですわよね♪」

「ぇ?ええ、そうですね、でも、このフリルが多いのが気になって…」

「フィーさん、そんなフリフリなの好きでしたっけ?」

「ぁ、いえ、私は嫌いですけど」

「のんは結構好きー!」

「ああ!ステージ衣装の参考にもなりますものね!」

 

フリフリ可愛いよねー、わかりますわーと盛り上がるノリコとサーナイト。

 

「場所はミチーナのカフェを貸し切れるらしいぜ、カズキが言ってた」

「なんだもう手配済みなのか」

「カズキは仕事の出来る男だからな」

「え、ちょっ、カズくんまで褒められると、のんの立場が無くなるのであんまり褒めないで!褒めるのはお兄ちゃんだけにして!!!」

「必死か」

 

とりあえず、シンヤの紋付き袴はオレのチョイスでこれだぜ☆とブラッキーにカタログを見せられた。

大体、全部同じようなものだろ…。

 

「俺様、しろむくって何か知らないけど着せられるって」

「白無垢?これだ、この白い奴」

「……ユキコが普段着てるのと何が違う?」

「まあ、似てるけど…。借りるなら着ておけば良いんじゃないか?記念だろ」

「シンヤが見たいって言うなら着ても良いよ?」

「うわっ!?何処でそういうの覚えてくるんだお前!」

 

どうする~?みたいな表情で微笑みかけられたシンヤは顔を歪める。

まあ、きっとテレビか雑誌なんだろうな。と思いつつシンヤは眉間に皺を寄せる。

 

「別に見たくない」

「がーんっ!?」

 

ショックを受けるミロカロスの耳元でシンヤがボソリと呟く。

 

「どうせ脱がせるし…」

「バカーっ!!」

「痛い!」

 

顔を真っ赤にしたミロカロスの手の平がシンヤの顔面、真正面にペチーン!と大きな音を立てて当たる。

鼻が折れる…。と蹲るシンヤを見て、周りが何やってんの!?とミロカロスに非難が殺到する。

 

「シンヤが悪い!今のはシンヤが悪いの!」

「私、鼻曲がってないか…?」

「大丈夫ですわ!鼻筋真っ直ぐ高々の男前ですわ!」

 

ごめんして!ちゃんとごめんなさいして!と怒るミロカロスにシンヤはだらだらと「ごめんなさ~い」と謝った。

 

「ちゃんとして!」

「ごめんなさい~」

 

ちゃんと!と怒るミロカロス。

そのやり取りと見てたノリコが首を傾げる。

 

「お兄ちゃん何言ったの?」

「白無垢姿を私が見たいって言うなら着てやっても良いって言うから、別に着なくても良いって言った。だって、どうせ」

 

ペチーン!とまたシンヤの顔面に手の平が飛んでくる。

お兄ちゃぁああん!!とノリコの悲痛な叫びが響いた。

 

*

 

「マジか」

「マジっす。入って入って」

 

いや、お前の家じゃねぇじゃん。と思いつつもカズキの後ろに付いて行くエイゴ。

紹介の電話したら、すぐ連れて来てくれって言われたから行きましょう。って電話貰った瞬間、流石のエイゴもびっくりし過ぎて固まった。

 

「(コイツ、仕事早過ぎかよ…)」

「ツバキー、連れて来たぜー。観察眼有りのイケメーン」

「イケメンきたぁああ!わっしょぉおおい!!!」

 

持ってたファイルを投げ捨てて走って来たツバキ。

床で散らばる書類を見てエンペラーがツバキの後ろ姿を睨む。

 

「あ、どーも。博士とか聞いてたけど、可愛い女の子なのね」

「可愛いとか言われた!可愛いとか言われたんだけど!エンペラー聞いた!?」

「とりあえず、書類を這いつくばって拾えよ…」

「想像以上のイケメンでツバキちゃん感激!最高!採用!ようこそ!ツバキ研究所へ!」

 

エンペラーを無視してエイゴの手を握り上下に振るツバキ。

これ、マジで博士?と思いつつ、ツバキの後ろの方に立つエンペラーが静かにツバキを睨んでいるのが凄く気になってて、こわい。流石の私でもあれこわい。

 

「うちは研究員として居るのはエンペラーだけで、お手伝いさんはポケモン達ー。原型で手伝ってくれてるのはシンヤさんとこの子達だよ。あのライチュウとかね」

 

ラーイ、と片手を上げたライチュウが本を片手に持って部屋を出て行く。

シンヤさんとこのポケモン、マジハイスペック…と思いつつエイゴはツバキの言葉に頷いた。

 

「は、はじめまして…っ、イロと申します」

「え?ああ、どーも、エイゴです」

 

頬を染めて手を差し出して来たイロと名乗る女に自己紹介を返しつつ、握手を交わす。

あれ、なんかこの雰囲気知ってるかも、とエイゴが眉を寄せた。

 

「……」

「…ぁ、あのっ…」

 

じーっと、イロを見つめて黙るエイゴ。

見られて照れるイロが頬を更に赤くした。

 

「あ。シンヤさんとこで見た、ミロちゃんに雰囲気似てるんだ」

「「おお!」」

「すごいです!私、イロはミロカロスです!」

「おー、マジか。へー、メスのミロカロスって事だよなァ?」

「エイゴさん、やっぱすげぇ!」

「なんという逸材…!」

「シンヤさんとこのミロちゃん、オスって言ってたけど、オスの方が可愛いってウケる」

「…………」

 

ずーん、と一気に落ち込んだイロをツバキが慰める。

 

「イロちゃん可愛いよ!?色違いのミロカロスなんて珍しいもん!超可愛いよ!!」

「まあ、シンヤさんの所のミロカロスは磨かれ方がハンパないからね。プロの育成の凄さでしょ」

「そうだよね!よく言ったエンペラー!そう!シンヤさんとこと比べちゃ駄目!」

「ツバキ…とりあえず早く這いつくばってあれ拾って来ないと蹴り倒して無理やり床に顔面擦り付けさせる事になるけど、良いよね?」

「良いわけないでしょ…」

「じゃあ、早く拾えよ」

「いや、エンペラー、あたしの助s…」

「拾え」

「はい…」

 

すごすごと引き下がったツバキが床に散らばった書類を掻き集めるのを確認して、エンペラーが頷いた。

 

「じゃあ、とりあえず僕は助手のエンペラーだよ。簡単に研究所案内するからついて来て。

あ、あとうちはポケモンも預かっててね、シンヤさんの所から預かってる子達が賢いから面倒をみるのを手伝って貰ってるんだ、あとでライチュウ以外も紹介するよ」

「は、はい…」

 

この人、博士より立場が上なんじゃねぇの?と思いつつエイゴは頷いた。

這いつくばって書類を掻き集めてるツバキにカズキが声を掛ける。

 

「じゃあ、オレ、育て屋に戻るからエイゴさんのことよろしく」

「え、もう行くの?お店閉まってる時間でしょ?」

「いや、ユキコだけに閉め作業させられねぇし。実は今日、兄ちゃん帰って来るらしくってさ。キッスさんには早めに上がってもらったんだよ」

「あ、そうなんだ。シンヤさん帰って来るんだ。ギラティナ早めに頑張ったね。プラターヌのとこからフーパの資料貰って来てくれたかな~…」

 

じゃあ、エイゴさんお先っす。と挨拶したカズキにエイゴが「おう」と言葉を返す。

研究所を出ながら、カズキがそういえばと考える。

ヤマトさん、そろそろミッションから帰って来るかな~。

ジャッキーと遠出するちょっと大変なミッションだよ!とか言ってたけど…。ジャッキーさんと一緒なら早めに帰って来るだろうし…。

とりあえず、店、閉め終わったら電話して確認してみよ…。ドレスとかもうほぼ決まったとか言ってたし。

ポーン、とボールを投げたカズキがエアームドの背に乗った。

 

*

 

「はぁぁ~…夜景、綺麗だなぁ~」

「なんで野郎と二人で観覧車になんて乗ってるのかと現実に引き戻されるから口を開かないでくれないか?」

「いや、ライモンに来たら乗りたいでしょ!?でも一人で乗るの嫌じゃん!?」

「はぁぁぁ~…夜景が綺麗だ…」

「いや、全く…」

 

ミッションでイッシュ地方まで来た二人は早々にミッションを切り上げてライモンシティに立ち寄っていた。

せっかく来たなら観覧車乗ろうぜ!というヤマトの提案である。

 

「全く…わざわざ来たのに、キュレム居ないとか…っ!」

「なんかカロス地方に『おでまし』させられてたらしいねぇ…。僕、テレビニュースで見てさ~、びっくりしたよ…」

「いや、オレも見たよニュースくらい」

「ううん、ニュースの内容じゃなくて、なんかチラッと映ったラティオスの上に幼馴染が乗ってた」

「ははは!冗談だろ?カロス地方だぜ?」

「いや、マジで。手術着だった」

「オイ、何があったんだよ」

「知らない」

「……」

「……」

「夜景が、綺麗だな…」

「うん…、帰ったら聞いとくね…」

「ああ、また教えてくれ…」

 

*

 

「重大、はっぴょーう!」

「なーんでーすかー?」

 

おー!と両手をあげたミカにマスターがうむうむと頷いた。良いノリであったらしい。

クスクスと笑うチルタリスが口元を押さえて、すみませんと小さく会釈をした。

 

「まあ、知らないのミカだけなんだけども」

「なんですと!?」

 

マジすか!とピジョットを見て頷かれ、サマヨールを見て頷かれ、チルタリスを見ても頷かれ。

マスターに視線を戻しても頷かれた。

 

「おれだけ仲間ハズレかー!!でも、知ってた…おれってそういう存在だし…元々そうだし…そう、おれはみんなの嫌われモノだもの…」

「ちょちょちょ!?テンション落ち過ぎなんだけど!?ごめんね!?たまたま相談された時にジョットくんと二人でミカが居なかったの!ホントなの!たまたまなの!」

「自分達は家で聞いてたからな」

「はい、ミカさんだけ除け者にされたとかじゃないですよっ」

「ホ、ホント…?おれのこと、お好き…?」

「大好きだよー!!」

「マスター!!!」

 

ぎゅっと抱きしめあったマスターとミカルゲ。

茶番は良いので話を進めましょう、とピジョットが冷めた声色で言った。

 

「冷たい…」

「氷タイプかよー…」

「さっさと帰りたいのでお願いします」

「はい、では、発表します」

「はーい!」

「実は、日程はまだ決まっていませんが、このカフェで結婚式をしまーす!!」

「マジかよぉおおお!!!結婚おめでとうマスタァアアア!!!」

「僕じゃなぁああああい!!!!悲しいけども!悲しいけども僕じゃないんだあああああ!!!」

「じゃあ、誰よ?」

「シンヤさんの弟さんとユキメノコのユキコさん、あとシンヤさんの所のサーナイトとズイタウンのジョーイさんだね」

「ふーん、知らん!」

「うん。知ってる。あ、それとシンヤさんも和装式するみたいだから、シンヤさんのカッコイイ姿も見れるよ!」

「シンヤ様のカッコイイ姿!?やったぁあああ!!!」

 

ひゃっほーい!と喜ぶミカルゲ。

コイツ、だんだんマスターに感化されてきたな。とピジョットは心の中でひっそりと思った。

 

「シンヤ様、大好き!超好き!凄く嬉しい!」

「僕も僕も!!」

 

嬉しいねーと笑う二人を見て、ヨルが目を細めて笑った。

 

「まあ、そういう事で日程はまだ未定と聞いてはいるけど、近々である事は確実だし。僕らも色々と準備をしていかないといけないわけなんだよ」

「おれも手伝うー!」

「うん、それ当り前のやつ」

「おお…」

 

当たり前だったか、と驚くミカルゲを無視してマスターは話を続ける。

 

「簡単なお披露目だって言っても、こっちもプロだし。質素なお料理とか出したくないわけ。お代もしっかりすでに貸し切り代金込みに頂いていますので、早々に準備に取り掛かりたいと思います」

「貸し切り代金まで貰ったんですか…?シンヤさん、常客でかなりの金額払ってくれてるのに…」

「………ゔ…」

「いや…、そこはまた別の話ではないでしょうか…」

「そ、そうですよ!貸し切ってる間、他のお客様が来店出来ないのですから!」

「でも来店してくれるのって、様子を見に来てくれるミミローさんだったりキッスさんだったり、シンヤさんの所からじゃないですか…」

 

こんな店に。と付け足したピジョットの言葉に肩を落としたマスター。

いや、でも!とピジョットをびしりと指差す。

 

「ジョットくんのご主人のヒナリくん常連だし!」

「ヒナリさんの分は私の給金から払ってますが?」

「……イケメンくんが来るじゃないか!」

「ああ…、まあ、あの方は確かに…」

「エイゴですね……」

「エイゴさん、反転世界を通れるようになって通いやすくなったって喜んでらっしゃいましたよね!」

「シンヤさん関連になってた、だと!?」

 

え?頻繁に来るようになったのそういう事!?やっぱりここって来るのめんどくさい立地!?と動揺するマスターに、まあまあ、とサマヨールが落ち着かせる。

 

「あのイケメンくん、エイゴくんって言うの?」

「はい…、色々と事情があって暫く反転世界で一緒に住んでいました…」

「羨ましい以外の言葉が無いよソレは!」

 

なんてことだ!とテーブルを叩いたマスター。

 

「こうなったら仕方ない。最高のおもてなしをしてお礼をするしかない…っ!!!」

「でも、シンヤさんの所のヨルくんとチルくんに手伝わせるんですよね?」

「ごめぇぇぇん!!!」

「「と、とんでもないです…」」

 

*

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