一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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通話画面の向こうで少し目を腫らした片割れの姿を見た時にエーフィは、同じような胸の痛みを感じていた。

 

「フィー、オレも一歩進もうと思う」

<「……はぁ、とうとう決めてしまったんですね…」>

「ごめんな、変わるの期待してくれてたけど。やっぱり…」

<「良いですよ、言わなくても分かります。そうなることも分かってましたよ、双子なんですから私達は」>

 

ただ、少しだけ寂しいだけ、それだけの事です。とツーンとそっぽを向いたエーフィにブラッキーが苦笑いを浮かべる。

少ししょんぼりした様子のブラッキーを見て、エーフィが小さく溜息を吐いた。

 

<「良いんですよ。ツキが幸せなら、私も幸せですから」>

「フィー…」

<「寂しいですけど、望んでましたよ。本当に心から…」>

 

涙目で笑ったエーフィを見て、

ブラッキーの目から涙が零れ落ちる。

 

<「素直になれない所がそっくりなのも、私達が双子な証拠です…」>

「オレ達、結局、シンヤの傍から離れちゃうな…」

<「そうですね……。でも、シンヤさんも言ってくれると思いますよ?」>

「ははっ、分かるよ」

 

お互いに涙を目に浮かべて笑ったエーフィとブラッキー。

大好きで大好きでたまらない主人の言葉はきっと、そう…。

 

 

<「「お前達が幸せなら、私も幸せだ」」>

 

 

揃った言葉に二人で笑った。

そう、誰よりも知っている。愛すべき主人の気持ちなんて、自分達が知らないはずがないのだ。

 

「オレは、ヤマトの所に行くよ」

<「私は、ノリコの所へ行きます」>

 

通話画面にお互いの手の平を合わせて笑った。

次、直接会えたら、どっちの方が幸せ体験したか自慢な。と笑ったブラッキーに上等ですとエーフィが笑った。

 

「じゃあ、またな」

<「ええ、また」>

 

*

 

反転世界を眺めるシンヤの隣にミロカロスが座った。

こてん、とシンヤの肩に頭を置いたミロカロスがくすんと鼻を啜る。

 

「俺様、寂しい…」

「んー…そうだな」

「ツキもフィーも帰って来てくれないなんて」

「昔は、お前、自分だけで良いだろ!って喚いてた癖に…」

「それは、そうだけど…」

「ああ、そこは今でも思ってる、と…」

「うん」

 

お前は変わらないな、とシンヤが笑うとミロカロスもくすりと笑った。

エーフィはノリコと再びコンテストの舞台に立つ道を選んだ、ブラッキーはユキメノコに変わりヤマトのパートナーとして生きる事を選んだ。

元々、シンヤが望んでいた事だ。

手持ち達が各々に幸せを掴み、自分から離れて行く事を…。

 

「嬉しい事だけど、やっぱり少し寂しいもんだな」

「寂しいね…」

「……」

「……」

 

ぼんやりと反転世界を眺める二人をギラティナとミュウツーが覗き込む。

 

「何やってんだ?」

「お前達なぁ…、夫婦が感傷に浸ってる所に割って入るなんて…」

「そんな事より、シンヤ!説得してくれ!」

「何を」

 

ぷんぷんと怒るミュウツー。勿論、大して表情は変わっていないが。

 

「私はシロガネ山の最強のポケモントレーナーに会いたいんだ!」

「会いに行けば良いじゃないか…」

「ギラティナが繋げてくれないんだ…!」

「繋げてやれよ」

「シンヤの頼みでも嫌だよ!あそこは猛吹雪で寒いし暗いし崖も脆くて崩れやすい危険な場所なんだよ」

「そうなのか。じゃあ、ツーが諦めなさい」

「嫌だっ!!」

 

会えるまで行く、と怒るミュウツー。

行っても会えねぇよ!と怒るギラティナ。

そんな二人にミロカロスが一言。

 

「じゃんけんで決めれば?」

「「……」」

 

名案だな。

そう思ったものの、まさか会えるまでじゃんけんで行くか行かないかを続けるとはさすがのシンヤでも予想出来なかった。

二人の戦いは続く。

 

*

 

そして、子供が生まれるまで十月十日というがそれよりも早くモモの陣痛が始まった。

定期的にチェックしていただけあって、シンヤの予想していた予定日内であり、ミミロップもサーナイトもミュウツーも準備は万端。

リンとポチちゃんとタモツがハラハラソワソワと待つが、陣痛が始まってすぐに産まれて来るわけじゃない。

 

「ま、まだモモは産む体勢にならなくて良いんですか?」

「ああ、陣痛の間隔が短くなってきてから、子宮口が開くのを待つ。初産だから時間が掛かるかもな」

「えぇ~…、モモ、長くなるって…大丈夫?」

「ええ、平気。今は痛くないもの」

 

15分間隔の陣痛が、10分になり、5分になり、とだんだんと陣痛が起こる間隔が短くなって来る。

モモの子宮口はまだ開ききってるとは言えない状態。

苦しむモモの手をリンが握り締める。

間隔が短くなればなるほど苦しむモモ。

子宮口が開ききってもまだまだここから…、

 

「モモ、力を抜け、リラックスだ。ちゃんと呼吸して、意識をしっかりな!」

「モモさん、頑張って下さいまし!」

「よし、子宮口全開、はいっ!モモ!いきんでー!」

「んあああああっー!!!」

「よし、深呼吸!」

「ひっひっふー、ですわよ!」

「モモ、ひっひっふー!頑張れ頑張れモモ!」

格闘すること10時間弱、平均的な体重より小さい女の子が無事、元気に産まれた。

 

「うわぁぁぁああん!!!モモー!!!良く頑張ったよぉおお!!!ありがとうー!!!」

「はぁ、イチゴちゃんも頑張ったの…」

「イチゴもありがとうっ!」

 

え、結局、名前、イチゴにしたのか。

 

*

 

「ヤマトー!モモちゃんとリンの所の子、産まれたってー!」

 

ポケモンセンターの前で待っていたヤマトに駆け寄って来るブラッキーにヤマトは「おお!」と目を見開く。

女の子だって言ってたよ、と笑ったブラッキーにヤマトも微笑み返す。

 

「それはもう絶対に可愛いね!」

「イチゴちゃんだってさ~」

 

名前まで可愛いなぁと自分の事のように嬉しそうなヤマト。

そんなヤマトを見てブラッキーはニコリと笑った。

 

「そんで、話があるから待っててもらったわけだけどさ」

「あ、うん、何かな?」

 

内心、ドキドキ。

僕はまた何かしてしまったのか、と笑顔を保ちつつもヤマトはブラッキーの言葉を待った。

 

「オレをヤマトの手持ちにして欲しいんだ」

「………はぃ?」

「え?聞こえなかった?だから、オーレーをーヤーマートーのー」

「いやいや!聞こえてたよ!聞こえてたからびっくりしてるんだよ!だ、だって、シンヤは?」

「シンヤは良いって」

 

ええ?と混乱した様子のヤマトを見てブラッキーはニマニマと笑う。

 

「ほら、ユキコが結婚してもう手持ち居ないじゃん?」

「う、うん」

「キャプチャー下手なヤマトが心配だからさー」

「ええ~…」

「なんだよ!オレじゃ不満かよ!」

「と、とんでもない!凄く嬉しいよ!!」

 

ぶんぶんと首を横に振るヤマトに、じゃあ良いよな?とブラッキーはニヤリと笑った。

はい、ボール。と手渡されたブラッキーのボール。

まさかポケモン本人からボールを手渡されるなんて…と思いつつ、ヤマトはボールをまじまじと見つめてからブラッキーに視線を戻した。

 

「本当に、良いの…?」

「うん」

「僕とずっと一緒に居るって事、だよ?」

「うん」

「シンヤのポケモンじゃなくなるのに、本当に良いの?」

「だから、良いって言ってんじゃん!」

 

怒るブラッキーに、ごめん、と謝るヤマト。

ぽりぽりと頬を掻いたブラッキーがヤマトをチラリと見つめる。

 

「これからはオレもポケモンレンジャーだな」

「そうだね」

「ヤマトのポケモンなんだし、何処に行くのにもちゃんと連れて行けよな!」

「う、うん」

「迷子探しもろくに出来ねぇんだから、オレが協力してやらないとだからな」

「わぁ…返す言葉も無いです…」

 

うん、と頷いたブラッキーに申し訳なさそうに眉を下げるヤマト。

もごもご、と口籠るブラッキー、本当に心から申し訳ないなぁと思っているヤマトが気付くはずもない。

 

「ま、まあ、オレ、ヤマトのこと好きだから!協力は惜しまねぇよ!」

「ありがとう!頼もしいよ!」

 

精一杯、伝えているブラッキーの気持ちなど…。

 

「ツキくんと一緒にミッションに行くと楽しいから、好きなんだよね~」

「…ッ!?」

「ポケモン達といっぱい触れ合えるしね!」

「……」

 

そして、

有能なパートナーに恵まれたヤマトのミッション達成率は大幅にアップ。

優秀なポケモンレンジャーとして各地を飛び回り、大きな仕事も任せれるようになる事となる。

勿論、大体はブラッキーの手柄であることは言うまでもない。

 

*

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