「お母さん!」
そう呼ぶ我が子を抱きしめて笑う。
自分が愛した人と同じ顔をした愛する我が子。
ジョーイ家系は何故か皆、似た容姿で生まれる。
サーナイトというポケモンの血が流れても例外ではなく、産まれて来たのはジョーイによく似た女の子であった。
彼女もジョーイ。
ズイのジョーイとしていずれポケモンセンターで働くのだ。彼女の未来は決して変わる事は無いだろう。
幼い頃からジョーイとしての知識を身に付けさせる。
ジョーイになるべく生まれて来た子。
自分の大切な主人を師匠と慕う我が子に伝える。
あの人は特別な人、とってもとっても大事な人。
貴女が守り続けなければいけない人、と…。
我が子はそれに忠実であった、流れるサーナイトの血がそうさせるのか。
真っ直ぐで気が強く、知性に溢れ、優しい心を持った我が子。
そんな我が子をサーナイトはとても愛していた。
とても大事にしていた。
けれど、
我が子よりも妻を愛していた。
我が子が一人前のジョーイになった頃、
妻が若くして病に臥せったのである。
懸命な治療をするも、妻はまだ十代である我が子と自分を残して、いってしまった。
我が子はまだ十代、一人前として認められたとしても、まだ十代。
これから、たくさんのポケモンの治療をしていく身、一人では苦労も多いであろう若さ…。
理解している、理解していた、
それでも、耐えられなかった。
妻の前で泣く我が子を抱きしめて、
何度も何度も謝った。
そして、立ち会った大切な主人に頭を下げる。
「ワタクシに、後を追わせて下さいまし…っ」
「本気で、言ってるのか…?」
「親として、最低な事を言っているのは分かっています…!
でも、ワタクシは美しい姿のまま眠った妻と一緒に、美しいまま、眠りたい…っ」
*
その場に泣き崩れたサーナイトを見下ろすシンヤ。
固まるシンヤの手をそっと握ったのは、二人の娘であるジョーイだった。
「シンヤさん、お願いします」
「!」
「お母さん達にはずっと一緒に居て欲しいから」
綺麗で自慢のお母さんだもの、とサーナイトを抱きしめた娘。
「綺麗な二人のまま、見守ってて。私、立派なジョーイになるから」
微笑んだ娘を抱きしめ返したサーナイト。
謝罪とお礼を言って、
主人であるシンヤの手で投薬を受けて、妻の隣で眠った。
美しい姿のまま、綺麗な顔で眠る二人。
震えるシンヤの手を握った、二人の娘であるジョーイは笑った。
「ありがとう、シンヤさん」
「お前は本当に、母親似だな」
「ふふふっ、どっちのかしら」
*
なあ、おい、知ってるか?
ポケモンセンターを利用するトレーナーの間で有名な話があるんだ。
一つ目はズイタウンにはとても良い育て屋がある事、
二つ目はズイタウンのポケモンセンターのジョーイさんは他の所のジョーイさんと少し違うという事。
なんでも、
ズイタウンのジョーイさんだけ、
緑色の髪に赤色の目をしているらしい。
そして、
そのジョーイさん、ポケモンと会話が出来ちゃうんだってさ。
本当かって?
さあ?自分で確かめに行ってみな。
*