一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

191 / 221
110★

「お母さん!」

 

そう呼ぶ我が子を抱きしめて笑う。

自分が愛した人と同じ顔をした愛する我が子。

 

ジョーイ家系は何故か皆、似た容姿で生まれる。

サーナイトというポケモンの血が流れても例外ではなく、産まれて来たのはジョーイによく似た女の子であった。

彼女もジョーイ。

ズイのジョーイとしていずれポケモンセンターで働くのだ。彼女の未来は決して変わる事は無いだろう。

 

幼い頃からジョーイとしての知識を身に付けさせる。

ジョーイになるべく生まれて来た子。

自分の大切な主人を師匠と慕う我が子に伝える。

 

あの人は特別な人、とってもとっても大事な人。

貴女が守り続けなければいけない人、と…。

 

我が子はそれに忠実であった、流れるサーナイトの血がそうさせるのか。

真っ直ぐで気が強く、知性に溢れ、優しい心を持った我が子。

 

そんな我が子をサーナイトはとても愛していた。

とても大事にしていた。

 

けれど、

我が子よりも妻を愛していた。

 

我が子が一人前のジョーイになった頃、

妻が若くして病に臥せったのである。

懸命な治療をするも、妻はまだ十代である我が子と自分を残して、いってしまった。

 

我が子はまだ十代、一人前として認められたとしても、まだ十代。

これから、たくさんのポケモンの治療をしていく身、一人では苦労も多いであろう若さ…。

 

理解している、理解していた、

それでも、耐えられなかった。

 

妻の前で泣く我が子を抱きしめて、

何度も何度も謝った。

そして、立ち会った大切な主人に頭を下げる。

 

「ワタクシに、後を追わせて下さいまし…っ」

「本気で、言ってるのか…?」

「親として、最低な事を言っているのは分かっています…!

でも、ワタクシは美しい姿のまま眠った妻と一緒に、美しいまま、眠りたい…っ」

 

*

 

その場に泣き崩れたサーナイトを見下ろすシンヤ。

固まるシンヤの手をそっと握ったのは、二人の娘であるジョーイだった。

 

「シンヤさん、お願いします」

「!」

「お母さん達にはずっと一緒に居て欲しいから」

 

綺麗で自慢のお母さんだもの、とサーナイトを抱きしめた娘。

 

「綺麗な二人のまま、見守ってて。私、立派なジョーイになるから」

 

微笑んだ娘を抱きしめ返したサーナイト。

謝罪とお礼を言って、

主人であるシンヤの手で投薬を受けて、妻の隣で眠った。

 

美しい姿のまま、綺麗な顔で眠る二人。

 

震えるシンヤの手を握った、二人の娘であるジョーイは笑った。

 

「ありがとう、シンヤさん」

「お前は本当に、母親似だな」

「ふふふっ、どっちのかしら」

 

 

*

 

 

なあ、おい、知ってるか?

 

ポケモンセンターを利用するトレーナーの間で有名な話があるんだ。

 

一つ目はズイタウンにはとても良い育て屋がある事、

二つ目はズイタウンのポケモンセンターのジョーイさんは他の所のジョーイさんと少し違うという事。

 

なんでも、

ズイタウンのジョーイさんだけ、

緑色の髪に赤色の目をしているらしい。

 

そして、

そのジョーイさん、ポケモンと会話が出来ちゃうんだってさ。

 

本当かって?

さあ?自分で確かめに行ってみな。

 

 

*

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告