育て屋で沢山のポケモンの面倒を見て来たトゲキッス。
沢山の命の誕生、そして、沢山の別れ。
自分もまたタマゴから生まれ、
シンヤに育てられた、
育ててくれたシンヤを乗せて飛び回った。
一緒に歩んで、
一緒にシンヤを慕ったみんなは先にいってしまった。
そして、とうとう、
とうとう……、自分の番。
沢山あった楽しい事を思い出す、
沢山あった悲しい事も思い出す、
色々と思い出して、
涙を流して、最後は幸せだったなぁと思った。
でも……、
シンヤのボールが全て空っぽになってしまうんだな、と思うと涙が出た。
シンヤの部屋に並べられたモンスターボールを思い出して、トゲキッスはシンヤの手を握った。
反転世界の一角にある墓標を思い出して涙が出た。
自分もあそこに眠るのだ……、
幸せだった…、幸せだったけれど…、
シンヤを置いていくのはやっぱり悲しい……。
だって…、自分の知り合った人達はみんな、いってしまった……。
どれだけ悲しかったか、どれだけ苦しかったか、必ずいかなければいけないのだけれど、
置いていかれるのは胸が張り裂けそうな程にツライ。
そして…、
とうとう自分が置いていく側になってしまった…。
もっともっと長生きしたかった。
もっともっとシンヤを乗せて空を飛びたかった。
………嫌だ、
………いきたくない…。
もう俺しか居ないのに…!シンヤのボールを埋めるのはもう俺だけだったのに…!
空っぽのボールを眺めるシンヤを思い出すと涙が止まらない。
嫌だ、嫌だ、
「……シンヤ…っ」
「なんだ?」
「俺、……」
……いきたくない。
その言葉を飲み込んだ。
言った所でシンヤを困らせるだけ、余計にツラくさせるだけ。
言っちゃ駄目だ。絶対に。
俺は、笑っていないと…。
「俺、シンヤの、幸せを祈ります…」
「…ありがとう」
ツキンツキン、と胸に痛みが走る。
シンヤの心の痛みを感じる。その痛みに胸が張り裂けそうだった。
涙が溢れそうになった……。
でも、俺は、
俺は、笑っていきますから。
大丈夫…、大丈夫……、
ちゃんと最後まで…、シンヤが好きだって言ってくれた笑顔で…。
「お前は本当に笑った顔が可愛いな…」
「……」
良かった、
俺、ちゃんと笑えてた…。
*
最初のポケモン、最初に手にした自分以外の命。
自分の為に最後まで笑顔で居てくれた、優しいトゲキッス。
見下ろして、ふわふわの髪の毛を撫でた。
ありがとう、空を飛んで私を運んでくれて。
ありがとう、ずっと傍にいてくれて。
ありがとう…、最後まで笑顔で居ようとしてくれて、
涙をいっぱい零しながら眠った優しい子。
「ありがとうな…」
*
「ごめんなさい、みなさん…。俺はここまで、でした……」
*