一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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113★

育て屋で沢山のポケモンの面倒を見て来たトゲキッス。

沢山の命の誕生、そして、沢山の別れ。

 

自分もまたタマゴから生まれ、

シンヤに育てられた、

育ててくれたシンヤを乗せて飛び回った。

一緒に歩んで、

一緒にシンヤを慕ったみんなは先にいってしまった。

 

そして、とうとう、

とうとう……、自分の番。

 

沢山あった楽しい事を思い出す、

沢山あった悲しい事も思い出す、

色々と思い出して、

涙を流して、最後は幸せだったなぁと思った。

 

でも……、

 

シンヤのボールが全て空っぽになってしまうんだな、と思うと涙が出た。

シンヤの部屋に並べられたモンスターボールを思い出して、トゲキッスはシンヤの手を握った。

 

反転世界の一角にある墓標を思い出して涙が出た。

自分もあそこに眠るのだ……、

幸せだった…、幸せだったけれど…、

シンヤを置いていくのはやっぱり悲しい……。

 

だって…、自分の知り合った人達はみんな、いってしまった……。

どれだけ悲しかったか、どれだけ苦しかったか、必ずいかなければいけないのだけれど、

置いていかれるのは胸が張り裂けそうな程にツライ。

 

そして…、

とうとう自分が置いていく側になってしまった…。

もっともっと長生きしたかった。

もっともっとシンヤを乗せて空を飛びたかった。

 

 

 

 

………嫌だ、

 

………いきたくない…。

 

もう俺しか居ないのに…!シンヤのボールを埋めるのはもう俺だけだったのに…!

空っぽのボールを眺めるシンヤを思い出すと涙が止まらない。

 

嫌だ、嫌だ、

 

「……シンヤ…っ」

「なんだ?」

「俺、……」

 

……いきたくない。

その言葉を飲み込んだ。

言った所でシンヤを困らせるだけ、余計にツラくさせるだけ。

 

言っちゃ駄目だ。絶対に。

 

俺は、笑っていないと…。

 

 

「俺、シンヤの、幸せを祈ります…」

「…ありがとう」

 

ツキンツキン、と胸に痛みが走る。

シンヤの心の痛みを感じる。その痛みに胸が張り裂けそうだった。

涙が溢れそうになった……。

でも、俺は、

俺は、笑っていきますから。

大丈夫…、大丈夫……、

ちゃんと最後まで…、シンヤが好きだって言ってくれた笑顔で…。

 

「お前は本当に笑った顔が可愛いな…」

「……」

 

良かった、

俺、ちゃんと笑えてた…。

 

 

*

 

最初のポケモン、最初に手にした自分以外の命。

自分の為に最後まで笑顔で居てくれた、優しいトゲキッス。

見下ろして、ふわふわの髪の毛を撫でた。

 

ありがとう、空を飛んで私を運んでくれて。

ありがとう、ずっと傍にいてくれて。

ありがとう…、最後まで笑顔で居ようとしてくれて、

涙をいっぱい零しながら眠った優しい子。

 

「ありがとうな…」

 

*

 

 

「ごめんなさい、みなさん…。俺はここまで、でした……」

 

*

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