一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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115★

神の身元で生まれた存在に終わりは無い。

世界の一部であるギラティナに寿命は無い。

終わりがあるのなら、それは悪意ある者からの強制的なものか、世界が完全に消え去った時だろう。

 

ギラティナに寿命は無い。

 

変わらずにシンヤの傍に在り続ける。

アルセウス、ディアルガ、パルキアと共にシンヤを守り続ける。世界の為に。

どれだけの時が経とうとも、どれだけの人がシンヤを忘れても、

反転世界でゆっくりと時を過ごすシンヤの傍に在り続ける。

 

 

ポケモンレンジャーの彼の人は不慮の事故でいってしまった。

そんな彼を愛したあの子は片割れを置いて、愛する人と共に先にいった。

 

「…」

 

そして、主を愛し、愛されて生きたあの子は誰よりも先に老いて、眠るようにいった。

先にいった二人と向こうでまた主を待っているのだろう。

 

「…」

 

聡明で努力家なあの子は主に代わり注目を引き受け、世に名を残し、世間に惜しまれながら眠った。

仕事をやりきったあの子にはやっとの休息だったに違いない。

 

「…」

 

妻と共にコーディネーターとして表舞台に立ち活躍したあの子は先に妻を看取り、そして我が子達と主に看取られて眠った。

片割れに今までの自慢話をしなければと、幸せそうに笑って。

 

「…」

 

そして、妻と共に自身の娘を立派なジョーイに育てたあの子は先にいってしまった妻の後を追った。

まだまだ若く美しかったが自分は美しいまま妻と眠りたいのだと主に頼み込み、妻に似て逞しい娘に看取られて美しいまま眠った。

 

「…」

 

主の為に店を残したあの子は長年、共に働いた綺麗好きなあの子が眠る時に深々と主に頭を下げて、世界から消えた。

向こうにいくタイミングは聡明なあの子と約束していたらしい。

共にいった綺麗好きなあの子の最後の言葉は「ちゃんと一日三食召し上がって下さいね」だった。

 

「…」

 

主の手元で生まれた優しいあの子は沢山の命の誕生に携わり、沢山の命を看取って、大好きな主の傍で眠った。

親しいポケモン、親しい人間、多くの者の最後に付き添ったあの子は主の手を握り目をつむって笑った。

 

「…」

 

長く生きられるポケモン、長く生きられないポケモン、特殊な存在で寿命が無いポケモンだって居る。

幻と呼ばれ長きを生きるポケモンは気まぐれに世界の様子を見に来た。呪縛でこの世に縛り付けられたポケモンは世界の為に美味しいコーヒーを淹れ続ける生き方を選んだ。

 

そして、人間の手で創られたあの子は。

特殊な存在だから、と安心していたギラティナをどんどんと不安にさせた。

ミュウのコピーとして生まれたとしても、別個体の命。誰よりも特殊な環境で生まれたとしても一つの命。

 

「……ツー、」

「…」

 

誰よりも幼かった彼は一番最後に年老いた。

ミュウの遺伝子の為か、見た目に変化は無かったが命は確実に老いていた。

 

「お前も、いくのかよ…」

「…そうらしい、」

「そっか…、シンヤの事は任せとけ…」

「……」

 

ぎゅ、とギラティナは彼の手を握った。

弱くその手を握り返した彼は口元に笑みを浮かべる。

 

「私は…、何の為に生まれたのか、分かった…」

「…?」

「楽しかった…。ありがとう、…私の、」

「……、」

「はじめての、ともだち…」

「……っ!!!」

 

ギラティナは眠った彼の手を握り締めて、頷いた。

 

「…オレの方こそっ、ありがとな…っ」

 

友達が出来たのは、生まれて初めてだったよ。

 

 

 

誰よりも幼かったあの子は一番最後に年老いた。

初めて出来た友達に看取られて眠ったあの子は先に向こうで待っていた仲間のもとにいく。

 

どんな形であれ、あの世界に生まれて良かった。本当に楽しかった。と笑った彼を微笑ましく見守る仲間のもとに。

 

 

 

*

 

 

 

「シンヤー!こっちこっちー!」

「足場が悪すぎてツライ!」

「最近よく言うよなソレ。年か?」

「足腰に来てるのか…、ってそんなわけあるか!」

 

シンヤのノリツッコミに笑ったギラティナは荷物を肩にかけ直して、よたよたと歩くシンヤの手を掴む。

 

「あ。あれじゃね?」

「おー…居た居た。」

 

よいしょ、とそれを抱き上げたシンヤにギラティナはジジイかよと笑う。

 

「うるさい!お前の方がジジイだろうが!」

「そーだよ、オレ、ジジイだもーん」

「あ、くそ、開き直った…!」

 

なんか悔しいと不貞腐れるシンヤを見て笑いながらギラティナは空を見上げる。

お。ちょうど良い塩梅。

 

「おーい、起きろー。健康診断するぞー」

 

夜空に輝く大きな流れ星にギラティナは目を細めた。

 

<ふわぁ~>

「おはよう」

<あ!おはよう!シンヤさん!>

 

美しい千年彗星。

七日間、遊ぶぞ!と笑うシンヤにジラーチが笑顔で頷き返した。

 

*

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