一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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ミミロルが勉強熱心だとジョーイに褒められていた。

シンヤさんとは大違いね、と嫌味も言われたがそこはあえて無視しておく。

そういえばミミロルは私が読み終わった医学書を開いて眺めているのをよく見掛けたが、あれはちゃんと読んで理解していたという事か……。

それならポケモンがポケモンの医者になる方が良いんじゃないのか……?言葉も通じるし、警戒もされないし……。ああ、でも、薬も医療器具も無いのか、ポケモンが皆、人の姿になれるわけじゃないしな、それなら仕方がないな……。

小さく溜息を吐けばミミロルが首を傾げた。

何でもないと首を横に振ればミミロルは再び本へと視線を落とす。

チラリと時計を見ればお昼過ぎ、そろそろ出掛ける時間だ。カバンを肩に掛ければミミロルが本を抱えて私を見上げた。

 

「ミィ?」

「ああ、ロストタワーに行ってくる」

 

ズイのジョーイが定期的に見回りがてら様子を見に行っているらしいが、今月はどうにも行く暇が無いらしく代わりに私が行く事になった。

頻繁に墓参りに来る人が居れば墓は綺麗だが、なかなか来れない人の代わりに墓を簡単に掃除してやるのも仕事らしい。

バケツに雑巾、柄杓……。ジョーイに押し付けられた掃除セットを片手に持って家を出る。

 

「ミミー」

「一緒に行くのか?別に楽しくないぞ」

「ミミ」

 

ついて来るらしいミミロルと歩いてロストタワーに向かう。

なるべく早く終わらせて帰らなければ何も言ってこなかったのでまたミロカロスがうるさい。アイツが育て屋から帰って来る前に家には帰っておきたいところだ。

 

ロストタワーに入ればゴーストポケモンが辺りを飛び回っていた。

ノーマルタイプのミミロルはゴーストタイプの技が効かないので大きな怪我をする事はまずないだろう。

 

「よし、後は任せた」

「ミミィ!!」

 

ミミロルがズバットに10万ボルトを食らわせているのを確認してから私は墓の掃除を始めた。

……アイツ、10万ボルトとか使えたのか。ヤマトめ、ころころ技を変えさせるのは良いがバトルなんて普段しないから覚えている技を把握しきれないじゃないか。勝手にバトルしてくれる分には問題ないが……。

墓の掃除を終わらせてミミロルに声を掛ける。そのまま最上階まで墓を掃除しつつ昇って巡回してからまた下へと降りる。途中、霧が立ち込めるがそこは近くに居た人に掃除しに来た事を伝えて代わりにきりばらいをしてもらった。

掃除を終わらせて帰ろうと時間を確認すれば、結局、3時間くらいロストタワーに居た……、げんなりした。

遊べ遊べと寄ってくるゴースを払い除けて日の光りの差し込む出入り口へと向かう。

ずっと暗い所に居たせいで日の光りが眩しい。

ミミロルがゴースにシャドーボールを食らわせたのを見てから、帰るぞと声を掛けようとすればミミロルの体が光り出す。

 

「は?」

 

大きな耳がふわりと揺れた。

 

「ミーミロォップ!!」

 

本当にコイツらは予告もなく進化するよな……。今から進化します、って言ってくれれば良いのに。

耳を揺らしながら、しなやかな足で駆け寄って来たミミロップが隣に並んだ。

 

「ミミロップのオスは何だか残念な気持ちになる」

「……」

 

メスだったらなぁと思いつつ外に出れば眩い日の光りに目を瞑った。

眩しい……。腕で影をつくりミミロップの方を振り返ればそこには初めて見る男の姿があった……。小柄で、ミミロップの面影か、長い耳の形をしたハチマキの様なものを頭に巻いている。

 

「……、たら……」

「ん?」

「ワタシがメスだったら、残念な気持ちにならなかったのか?なら、ワタシがメスだったらどんな気持ちになった……?」

 

ミミロップが人の姿になっている……。

いや、それよりも、私は今、何を問いかけられているのか。ミミロップがメスだったら?……別にどうも思わないと思うが……。

確かに残念な気持ちになるとは言ったが、見た目の印象的なイメージからの残念であって、メスっぽい見た目なのにオスなのか、なんかイメージと違うな残念だな、という特に深い意味もない言葉だったのだが……。

ミミロップには気に入らない言葉だったのだろうか……。

 

「……いや、別にオスでも良いんだぞ?」

 

オスを否定したのが悪かったのかもしれないので肯定しておく。

 

「でも、残念って言っただろ……」

「……」

 

言ったなぁ……。

そんなに残念って言われたのが嫌だったのか、まあ、確かに進化したミミロップへの私の第一声が残念だったからな。うん、それは私が悪かった……。

 

「見た目が女性的というか色気があるというか……、そんな雰囲気があるのにオスなのか、残念だな。という意味で……、別にお前自身を否定したわけではないんだぞ?」

「女性的?色気?」

「そういうポケモンだからそう見えるだけで、人の姿のお前が女に見えるわけではない」

 

もう自分で何を言っているのか分からない。

ミミロップが項垂れた様に俯いて顔をあげないから背中に嫌な汗が流れているんだが……。何だ、私はどうすれば良いんだ!何が正解の答えなんだ!

 

「人の姿でも女性的な色気、ある?」

「……あー、無くもない」

「……」

 

ミミロップが黙りこむ。

ここは正直に言わず、男らしいと言ってやるべきだったのか!?

いや、でもミミロップの時の雰囲気も面影も残ってるし、女には見えなくともミミロップの要素が無くなってるわけじゃないんだから、あるかと聞かれれば、それは勿論あるんだが……。

失敗したか……。

というか、私に上手いフォローが出来るわけがない。生まれてこの方、上手い世辞を言えた事がないんだ……。

 

「ミミロップ……?」

「何?」

「悪い、嫌な気分にさせて……」

「別に嫌な気分になんてなってない。ただ、シンヤがワタシに対して変な気分になれば良いなぁと思ってるだけ」

 

ニヤリと笑ったミミロップが私の肩に手を置いた。

 

「変な気分?」

「ふふん!たぎれワタシの特性!!」

「は?」

 

ぎゅっと抱きついて来たミミロップ。

どうにも分からないが、とりあえず機嫌を損ねてはいなかったらしい。何だ私の考えすぎか。そういえばミミロップの特性はなんだったか……、逃げ足?

 

「ミミロップ、そろそろ帰るか」

「……、チッ!」

 

何か舌打ちされたぞ。

反抗期か。そういえばミロカロスもヒンバスの時に反抗したな……。人から貰ったポケモンは懐きにくいとか言ってたし仕方ない事なのか……。

いや、でも、ミミロルは懐き進化……。

 

「……」

「シンヤ?帰らないのか?」

「帰る」

 

特性使えねぇ!そう思って舌打ちしたミミロップの心情などシンヤは知らない。

ミミロップの特性……、メロメロボディ。

 

*

 

ズイへの帰り道。

ミミロップが不意に立ち止まった。私が振り返ればミミロップはキョロキョロと辺りを見渡している。

 

「どうした?」

「今、泣き声が聞こえた気が……」

 

耳を澄ませてみたが特に何も聞こえない。

だが私に反してミミロップはピクリと体を揺らして茂みへと一直線に進んでいく。

人の姿になっていても耳は良いらしい。

ミミロップが汚いボロ雑巾の様な小さなものを抱えて戻って来た。私がそれを覗き込めば震えながらミミロップの服を小さな手で握り締めるラルトスが……。

 

「捕獲しようとしたトレーナーにやられたか……」

「ポケモンセンターに連れて帰る?」

「いや」

 

ミミロップからラルトスを受け取ってタオルで体を拭いてやる。

ポケモンセンターに行かずとも治療が行えるのがポケモンドクターの特権だ。いちいち連れ帰っていたらキリがない。

 

「汚れていただけで傷はそんなに酷くないみたいだな」

「オッケー、キズ薬とオレンの実で良いよな?」

「ああ」

 

ミミロップからキズ薬を受け取ってラルトスに吹き掛ける。オレンの実も渡しておけば大丈夫だろう。

ぽん、とラルトスの背を押してやるとラルトスはチラリとこちらを見てから茂みに戻って行った。

 

「さて、帰るか」

 

頷いたミミロップと歩きだした時にミミロップが後方を振り返った。

何だ、と聞けばミミロップは首を傾げてから何でもないと言って笑った。

ポケモンセンターが見えて来た所でミミロップが私の腕を掴んだ。

視線をやればミミロップが俯きながら小さな声で言う。

 

「シンヤ、ワタシな……」

「うん?」

「ワタシ、シンヤに頼りにされるポケモンになりたいんだ……」

「ほぉ」

「人の姿になれたし、シンヤの片腕にだってなれる。だから、シンヤ……、ワタシを頼ってくれよな?ポケモンドクターの助手になれるようにワタシは勉強したんだから」

「ミミロップ……」

「人の姿になれてもウロチョロして遊べ遊べってうるさい馬鹿なんかより何百倍も役に立つぞ」

「それは頼もしい」

「だろ?」

 

えへん、と胸を張ったミミロップ。人手が増えるのは助かる。

でも、ミミロップ、お前何か……。ミロカロス以上にスキンシップが過剰じゃないか……?

いや、ミミロルの時から膝の上に乗ってきたり背に乗ってきたりしてたか……。

 

「……」

 

知識があって役に立ってくれる分には嬉しいんだが……。とりあえず、男と腕組んで歩くのは何かイヤだ。

離れろ、離れない、とミミロップと言い合いをしていると、育て屋から丁度帰る所だったらしいミロカロスとトゲキッスと会った。

お疲れ、と声を掛けようと思ったがミロカロスの叫び声にかき消される。

 

「誰だソイツゥウウウ!!」

「ミミロルがミミロップに進化したんだ。人型仲間が出来て良かったな」

「よよよ、良く、良く良くねぇ!!」

 

今、もの凄いどもったぞ。

 

「離れろクソウサギ!!シンヤにベタベタすんじゃねぇ!!」

「うるせぇよバーカ、低脳細胞腐れ死ね」

「はぁああああ!?!?おま、後から来た貰われ雑魚ポケの癖してっ…」

「貰われならお前もだろ。親一緒のツバキだろーが」

「俺様は最初にシンヤに唾付けて貰ってたんですー!!!」

「あれぇ?要らないから捨てられたんじゃねぇの?ツバキの同情で拾われた癖に調子乗ってんじゃねぇぞ低能」

「っぁぁああああ!!んのクソがぁあああ!!!」

「やんのかゴラァア!!10万ボルト食らわせんぞ!!!」

「雑魚がほざいてんじゃねぇ!!!テメェの技なんて聞くかボケェエ!!!」

 

…………。

 

 

「……よし、トゲキッス。二人で帰ろうか」

 

「!?」

 

*

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