一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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すべてここに

「…はあ」

 

寒い、と体を震わせながら布団から出たシンヤはもそもそと服を着替えた。寒い寒い、これだから寒いのは嫌いだ。

そのまま洗面所へ向かい身支度を整えたシンヤがリビングの扉を開ける。

熱いコーヒーが飲みたい。そんな事を考えながら扉を開けたシンヤには予想外の光景が目の前にあってシンヤは眉間に皺を寄せた。

 

「……」

「……」

 

とりあえず、コーヒーを飲もう。

 

「チル。コーヒーをホットで」

「は、はい…」

 

ソファに座ったシンヤは向かいのソファに座る予想外の相手に視線を向けた。

随分と懐かしい服を着ている。そしてこの状況に何も思わないのかチルが出したらしいコーヒーを飲むその男を見てシンヤは頭を抱えた。

確実に言える事はディアルガとパルキアの仕業だろうな、くらいだった。

 

「お前の名前は…シンヤで間違いないな?」

「ああ、そう名付けると言われたからな。多分、そうだ」

「……」

「……」

 

私だー!!

もう一人の私が今ここに居る!それも随分と昔の私だ!

向かいのソファに座るシンヤはコーヒーカップをテーブルに置いて小さく息を吐いた。そしてこちらを見るその顔に読み取れる表情は無い。

私ってこんなに表情無かったのか…と少しへこんだ。

 

「ご主人様…、コーヒーです」

「ありがとうチル。そして私に説明をくれ」

 

とりあえずコーヒーを啜る。熱い。

チラリと向かいのソファに座る昔の私と今の私を交互に見たチルタリスが言った。

 

「早朝にギラティナ様に新聞を貰いに家の外に出ました。でも、ギラティナ様はいらっしゃらなくて…、そこにいらっしゃったのはご主人様だったんです。新聞を読んでいたご主人様に声を掛けたのですが…誰だ?と首を傾げられてしまってチルはどうしたら良いのか分からなくて…。

とりあえず外は寒いので家に来て頂いて、コーヒーをお出ししました…」

 

チルもよく分かりません。と目を泳がせながらしどろもどろに説明してくれたチルタリス。混乱しつつも私を叩き起こさなかった辺りに優しさを感じる。

まあ、十中八九。ディアルガとパルキアが原因でギラティナも関わってるんだろう。反転世界に居るんだからギラティナが気付かないわけがない。

 

「シンヤ…、大体察しはついてると思うが…私は未来のお前自身だ」

「……」

「だが、私には未来の自分と会ったなんて過去の記憶が無い。シンヤ、お前がここに来るまでの事を教えてくれないか」

「…ここに来る前は…」

 

何をしてたかな、と腕を組んで考え出した昔の私。過去のシンヤとでも呼んでおこうか。

過去のシンヤは暫くの沈黙の後「家に居たな」と簡潔な言葉。

 

「寝てたのか」

「いや、起きてた。特に朝だった記憶は無い、昼過ぎでジョーイに押し付けられた仕事をしていたと思うが…」

「思うが?」

「曖昧だ。気が付いたら家の外に居て新聞が置いてあったから読んだ。日付も違うし内容がよく分からなかった…」

 

ここが私の未来だと言うなら随分と変な未来だな、と過去のシンヤは眉を寄せた言った。

ああ、これからごちゃごちゃに混ぜて繋ぎ合わされて最終的に死ねなくなるぞ。と言ってやりたい。でも、多分、昔の私ならそれを聞いた時点でもう一度死ぬな。

 

「未来の私、ソイツは誰だ?」

「ソイツ…?」

 

過去のシンヤの視線の先には私の傍に立っていたチルタリス。過去の私はチルタリスを知らない…?いや、確かに昔はチルットだったがチルットが身近に居れば誰かなんてピンと来そうなもの…。

 

「まだ、チルットをゲットしてないのか…?」

「チルット…?手持ちに居ないぞ」

「「おお」」

「最近、手持ち連中が全員人の姿になれるようになったな」

 

集まるとうるさいが全員出掛けると家が静かになって良い。と過去のシンヤが頷いて言った。

それは覚えてる。わらわらと人の姿になって帰って来た日があった。でも、それ以降に未来の自分と出会う機会なんてあったか…?

 

「チルット…私がゲットするのか?」

「凄く綺麗好きなポケモンでな。賢くて掃除好き、家事全般を任せられる良い子だ」

「良いな…」

 

最近、散らかってるしな…。と呟きながら過去のシンヤがチルタリスを見つめる。見つめられたチルタリスは少し照れながらにこにこと笑っていた。

そこで、そういえば…と思い出す。

私は昔、チルットをゲットしようと思い立ってヤマトに相談した事があった。部屋の片付けも捗らないし面倒だ、そう常々思っていたのは確かだが…。

そういえば、私はチルットがもの凄く綺麗好きなポケモンだと何処で知ったんだった…?どうしてもゲットしたいと思い、根気強く探したチルット…。

 

あれ…?

 

「シンヤさん、おはようございま…す…」

「ああ、おはようエーフィ」

「……」

「え!?シンヤさんが二人…!?」

 

どうなってるんです!?とうろたえるエーフィ。

過去のシンヤはそんなエーフィを見てポツリと呟いた。

 

「エーフィ?」

「な、なんでしょう?」

「お前、太ったな」

「…っ、」

 

ああ、私ってデリカシーの無い男なんだな。と何故か悲しくなった。

まあ、過去のシンヤからしたらさっきまで見ていた奴だもんな。比較すればな…。

 

「昔のシンヤさんですね…!!なんだか懐かしいです…ええ、少し腹立たしいですが…」

「すまん、エーフィ…」

「良いんです。シンヤさんはこういう人ですから」

 

えー…。なんか嫌だな。

良い感じの下半身だな、と過去のシンヤはそう言ってうんうん頷いた。まあ、そこは私もそう思う。

 

「でも、どうして昔のシンヤさんが?またあのバカ共ですか」

「多分な」

「バカ共?」

 

なんだ?と首を傾げた過去のシンヤに私たちは苦笑いを返す。

過去のシンヤがいつ戻るのか分からないが、未来の私が居るんだからその内戻れるだろう。

軽く朝食を食べて、過去の自分と仕事を片付ける。自分がもう一人居ればと思った事はあったが実際に居てもあんまりだな。昔の私より今のミミロップの方が手際が良いし。

 

「未来の自分の仕事ぶりに感心する」

「経験の差だな」

「そうか…そこまでやらないといけないくらい私は仕事をするのか…。嫌だな」

「ああ…、私も昔には戻りたくない」

「………やめたい」

「頑張れ、私の未来はそう悪くないぞ」

「…未来の自分が凄く前向きで気持ち悪い」

「……」

 

もの凄く嫌な顔で見られた。なんだその顔、ムカつくな。自分の顔だが。未来の自分に向かって気持ち悪いなんて言うな。

過去の自分に教えながら仕事をしているとねぼすけ連中が起きて来た。椅子の足でも蹴ったのかガタンと大きな音が鳴る。

 

「シンヤが、分裂してる…!」

 

ひぃいいい、とブラッキーが寝惚けたまま叫び声をあげていた。

頭ボサボサだぞ。

 

「シンヤがぁああああああ!!」

「ミロカロス、うるさい。おはよう」

「おはようシンヤ!!なんで二人居るの!!なんで!?」

 

シンヤ?シンヤなの?と過去のシンヤの腕を掴んだミロカロス。腕を掴まれた過去のシンヤは驚いて固まっていた。

 

「ミ、ミロカロス…お前、かなり違うな…」

「何がぁ?」

「それに痩せたな…」

 

ミロカロスの腕を触った過去のシンヤが目を細める。そうなんだ、ソイツ、ストレスで痩せるんだ。

 

「もうちょっと太った方が良い」

「私もそう思う」

「え?え?何?」

 

なあ、と過去のシンヤと顔を見合わせて頷いた。

その過去のシンヤの横ではミロカロスが「なんで二人居るの!?」としつこく聞いて来る。そんなの私も知らん。

 

*

 

「昔のシンヤかー」

「お前は未来のミロカロスだな」

「えへへー、俺様元気だよー」

「お前、頭打ったのか?随分と幼児化してるような気がするが…」

「俺様ずっとこんなだよ?」

「いや、私の知ってるミロカロスはそんな感じじゃない」

 

ミロカロスはばば様の調教で幼さに磨きがかかるんだ。育て屋に居たらその内そんな感じになる…。

 

「俺様、どんなの?」

「どんなの、って言われるとなぁ…」

 

もっと荒い?と過去のシンヤに言われてミロカロスは眉を寄せた。「洗い…?」なんて呟いたのは聞かなかった事にしてやろう。

もっと洗濯してたかな、とか考えてるに違いない。

特に現状に慌てる様子も無く書類に視線を落とす過去の自分。こんなヤツだったのか、としんみり考えているとユクシーを頭に乗せたギラティナが部屋へと駆け込んで来た。

やっと来たー、と部屋で寝転がっていた連中からヤジが飛ぶ。

 

「何したんだよ、過去のシンヤ引っ張って来てよー」

「うるせぇ!オレだってびっくりしたんだよ!」

 

つーか、オレのせいじゃねぇし!と怒るギラティナ。

まあ、どうせ、ディアルガ達なんだろうな。と思うので特に責めるのはやめておこう。

 

「過去からシンヤがなんでか、引っ張られたんだよ」

「なんでか、って…」

「いや、ディアルガとパルキアに確認しに行ったんだけど、アイツらも知らないらしくてさ…。とりあえず、未来に影響出るから記憶消して元の場所に戻しとけって言われたから…」

 

これ、とユクシーを差し出したギラティナ。

ユクシーを受け取った過去のシンヤ。

 

「何かよく分からないが、早く元の場所に帰してくれ」

< では、シンヤさんの未来の記憶は消させて頂きますね >

「ああ」

 

過去のシンヤがユクシーと目を合わせる。

未来の記憶が消されたら、私のチルット情報は何処で手に入るのだろうか…。

あれ?と首を傾げたシンヤ。

記憶を消されて倒れた過去のシンヤを横抱きにしたギラティナがユクシーをまた頭に乗せた状態で部屋を出て行った。

私が運ばれて行く不思議な光景だ。

 

「なんでだろうな」

「過去のシンヤって全然表情無かったな~」

「シンヤも人としてレベルアップするって事ですわね!」

「レベルアップという言い方はどうかと思うが…」

「だって、ワタクシの存在にツッコミがゼロでしたもの!」

「そういえば…!」

 

過去のシンヤは冷たいですわ…!と嘆くサーナイトにとりあえず謝っておいた。

なんかすまん、とサーナイトに謝った所でガチャリとリビングの扉が開く。扉を開けたのはついさっき出て行ったギラティナだった。

 

「あれ?」

 

驚いた表情のギラティナ、驚いたかと思うと慌てて後ろを振り返って「ストップストップ!」と誰かに声を掛けている。

何をやってるんだアイツは。

 

「どうした?」

「これ、場所違うわ!」

「場所?」

「多分あれ、ディアルガとパルキアが酒飲んでたじゃん?」

「ああ…」

「酔っぱらってんだ!」

 

酔っぱらってる?

リビングに居た連中と顔を見合わせて眉を寄せる。

リビングの扉の前で誰かと会話をするギラティナにチルタリスが声を掛けに行った。

 

「ギラティナ様、どうしたんですか?」

「ぉ、おう、チル。気にすんな!」

「そちらの方は…、あれ?ご主人様!?」

 

え?またシンヤ?とミミロップが呟き眉を寄せた。

なんか色んな時間の私が家に集まってるらしい。酔っぱらったディアルガとパルキアのせいで?

チルタリスにどうぞ、と扉を開けられてギラティナが顔を歪めながら部屋へと入って来た。

その後ろからフードマントを着た"シンヤ"が部屋に入って来る。

 

「おお…」

 

驚きながらフードを外したシンヤの左目が赤い。

え!?私の片目が赤くなってる!!

 

「私に何があったら片目が赤くなるんだ!?」

「あー…過去の自分か…」

「今度はこっちが過去なのか…」

 

未来から来たらしいシンヤ。

片目が赤い状態にざわつく面々。そんな連中を見て未来から来たシンヤは苦笑いを浮かべた。

 

「そういや、昔、急に過去からシンヤが来てユクシーに記憶消させてディアルガと戻しに行った記憶あるわ…」

「私にそんな記憶は無いが…」

「あー…マジで?」

「という事は、今ここの時代に居る私達の記憶も消される、と?」

「そうかも~」

 

私の質問に、あはは、と笑って頷いたギラティナ。

あはは、じゃないだろ。

 

「じゃあ、未来から来た自分に私は後を託せば良いのか?」

「何をだ?」

「チルットが綺麗好きなポケモンでとても素晴らしい働きをしてくれる事を、チルットに出会う前のさっきまでここに居た昔の私に伝えてくれ」

「…真顔で何言ってるんだ私」

「死活問題だぞ!?私が必死にチルットを捕まえに行かなかったら誰が掃除してくれるんだ…!」

「それは確かに…」

 

そういえば、チルットが綺麗好きなポケモンだって何処で知ったんだったか…と首を傾げた未来のシンヤ。

頼むぞ、未来のシンヤ。お前が伝えてくれなかったら、地獄の日々だぞ。

 

「そんな事より!なんで未来のシンヤの目が赤いの!?そこ一番大事!」

「いや、チルも大事だろうがボケ!」

「チルよりシンヤ!」

「チルも…、チルよりご主人様の方が気になります…!」

 

何故ですか!と問われた未来のシンヤがヘラリと笑った。

 

「そういう日もあるんだ」

「そうだったんですか…!?」

「いや、無いだろ!?」

「絶対に無ぇよ!!」

「シンヤ、真面目なお話して!?なんで!?」

「ちょっと寝不足で」

「真面目に話して下さい、未来のシンヤさん…!!」

「主…どうせ、自分達の記憶は消えてしまうのですから…ハッキリと仰って下さい…」

 

サマヨールの言葉に未来のシンヤは目を細めて嬉しそうに笑った。

自分であるはずなのに、驚くくらい嬉しそうに、無邪気に笑うものだから、こっちがびっくりしてしまう。

 

「内緒だ」

「えぇぇぇ…」

「シンヤ、もう絶対に言わないつもりみたいですね…」

 

ガクリと肩を落としたトゲキッスの頭を未来のシンヤが撫でる。

 

「なんだか、未来のシンヤさんは表情が豊かです…」

「まあ、昔を見た後だから余計にそう感じるよなぁ」

「シンヤは今から更にレベルアップしていくという事ですわね!」

 

良い事だ。と頷く連中に未来のシンヤは微笑み返す。にこにこしてる自分の姿が自分じゃない別人のようだ…。不気味。

リビングの扉を開けてユクシーが顔を覗かせた。

 

< あ、見つけましたよ >

「お!来た来た!酔っぱらいジジイ共め…、帰ったらぶん殴ってやる…」

< シンヤさん…。戻りますが、宜しいですか? >

「…ああ、戻ろうか」

< ……はい >

 

では、過去の皆さんの記憶は消しますね。とユクシーが私達の前にふわりと浮いてみせる。

ユクシーの背後に立つ未来の自分と目が合った。

 

「未来の自分がこんなに楽しそうなら、悪い未来じゃないって事だろう?」

「…そうだな、幸せな未来だ」

「……」

 

幸せだと言って笑った未来の自分が少し悲しげだったのは気のせいだろうか。

手を振るミロカロス達に未来のシンヤは手を振り返した。

 

「シンヤー、未来の俺様によろしくねー!」

「……」

 

笑った未来の自分の左目、よく見るとあの赤色はミロカロスと同じ……―――

 

*

 

「……」

 

目の前にコーヒーカップが置かれている。中身は入っているが冷めきっていた。

さっきまでコーヒーを飲んでいた記憶が無いのだが…、いや、飲んでいた気がする。新聞も手元にあるし、少し、寝惚けていたのかもしれない。

 

「チル、悪いがコーヒーのおかわりを淹れてくれないか?」

「あ、はーい!」

「シンヤ、朝ご飯どうしますか?パン?ご飯?」

 

トゲキッスの声にソファに居たブラッキーが両手をあげた。

 

「パーン!」

「じゃあ、私もパンで」

「分かりました!」

 

椅子に座ってぼーっとしていたミミロップが私の前で首を傾げた。

 

「ワタシ、さっきまで何やってたっけ…?」

「自分も…曖昧だ…、朝が早いから寝惚けているのかもしれない……」

「ワタクシ、昨日、新商品のヨーグルトを買って来たんでしたわ!フィーさん、食べますわよね?」

「何味ですか?」

「ごろごろフルーツですわ!」

「食べます」

 

キッチンからパタパタと走って来たミロカロスが私の前にコーヒーカップを置いた。

 

「はい!どうぞ!」

「……ゆっくり置いてくれ…」

 

にこにこ笑ったミロカロスが隣に座って首を傾げた。

 

「今日、何処にお出かけする?」

「さて、どうしようかな…」

 

*

 

「時間も少し戻しておいたぞ…」

「頭いてぇ…」

「このクソ酔っぱらいジジイ共め…」

 

少し盛り上がってパルキアの空間で酒盛りをしていたら過去の時間軸に間違えて戻されてしまったらしい。

懐かしい面々を見たが、まだそこにミュウツーが居なかったのが少し寂しいな…。

 

< どうやら、酔っぱらっていたせいで更に過去のシンヤさんも誤って同じ時間に呼び寄せてしまっていたようです >

「チルットをゲットする前の私、だったな」

「かなり昔過ぎて忘れてたけど、過去にシンヤを戻しに行ったよな~…あー、懐かしいわ~」

「私、そんなに記憶消されてて大丈夫なのか…?」

< 現状、問題無いので大丈夫でしょう… >

 

不安だ…。

私の脳がスカスカになったらどうしてくれるのか…。

 

「とりあえず、シンヤにチルットをゲットさせないといけないんだよな?」

「そうだな…、私の記憶ではいつの間にかチルットというポケモンの情報を知っていた気がするから…」

「どうすんの?」

「シンヤに聞こえるように、話でもしに行くか…?」

「え…?」

 

*

 

まだ酒の抜けきらないディアルガを急かして、過去へと飛ぶ。

ポケモンセンターを覗けばテーブルに書類を広げる自分の姿…、ああ、あんなに眉間に皺を寄せて…。顔色も悪いなぁ…。

 

「うわっ、ひでぇ顔…」

「寝てないな、あれは…」

「今のシンヤの健康マニアっぷりを見せてやりたいぜ。日課が自分の健康診断だもんな!」

「うるさい」

「で?どうすんの?」

「さりげなく近くの席に座るぞ」

 

バレたらどうすんだよ、と文句を言うギラティナの腕を引いてポケモンセンターの中へと入る。

ペンを走らせるシンヤの近くに座って、ギラティナに話し掛ける。

 

「知ってるか?」

「え?なに?」

「210番道路に生息している、チルットというポケモンの事なんだけどな」

「え…ああ、うんうん」

「ポケモンの中でも、もの凄く綺麗好きなポケモンなんだそうだ」

「へ~」

「賢い奴はきっと部屋の掃除も得意に違いないぞ」

「それは手持ちに居れば、めちゃくちゃ便利だな!」

「ああ、部屋の掃除を自分で毎日するのはなかなか骨が折れるからな」

「そうだよな~、忙しいもんな~」

「チルットをゲットする事も検討するべきだと私は思うぞ」

「オレもそう思う。あ、何処に生息してるんだっけ?」

「210番道路だ」

「もの凄く綺麗好きでお掃除上手なチルットは210番道路に居るんだな!覚えておくぜ!」

 

席を立ってポケモンセンターを出る。

隣のギラティナが眉を寄せた。

 

「これでマジで大丈夫なわけ…?」

「聞こえてるだろ」

「めっちゃ黙々と仕事してるけどなぁ…」

「私だから分かる。大丈夫だ。ちゃんと記憶の片隅にチルットの情報が入ったと、思う。多分」

「多分…」

 

不安げなギラティナを連れて私は未来の自分の場所へと戻った。

その未来に何も変化が無ければ、無事にチルットをゲットしたということ。

そして、無事、未来が変わる事なく時間は進んだらしい。

私の部屋にはちゃんと他のボールと並んで、チルットの入っていたヒールボールがそこにあったのだから。

 

 

 

【 All Here 】

 

 

 

「さて、無事に解決したわけだから…」

「飲み直すぞー!!!」

「…あのジジイ共マジで殴りてぇ…」

< では、エムリット達も呼んできます >

「良いぞ、呼んで来い!」

「いっぱい酒を開けちゃうぜー!」

< あ、アルセウスも呼ばないと怒るのでは? >

「「それはちょっと……」」

「呼べ呼べ!もう逆に呼んじまえ!」

「…全く、どの時間でも賑やかだな…」

 

 

*

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