一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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オーキド博士にも連絡したら喜んでたぞ~!と言いながら上機嫌にやって来たイツキさん。

誰だ、オーキド博士って。という言葉は飲み込んでおいた。聞くのめんどくさい。

 

「シンヤ!手持ちのポケモンは居るのか?居ないなら、うちの研究所から一匹でも二匹でも連れて行って良いぞ!」

「え…結構です…」

「虹色の羽のお礼なんだ!遠慮するな!あ、初心者用ポケモンもタイミング良く居るぞ!どうだ?」

「いえ…」

 

横で聞いていたヤマトが、はいはーい!と手を挙げた。

 

「僕のオススメはピンプク~、どう?」

「いや…」

 

そのピンプクってやつ、お前に抱えられて嫌がってるぞ…。

足元で「おい、コダック様を忘れるな」と言わんばかりにコダックが私を見上げて睨みを利かせて来るんだが…。

 

「ブイブーイ!」

「痛っ!」

 

私の足にタックルをかましてきた茶色のウサギっぽいやつ。大きな目を輝かせて私を見ている。どうやら連れて行って欲しいらしい。

だが、断る。

 

「ポケモンとか要りません…」

「え~…野生ポケモンに攻撃された時とか危ないぞ~?」

「コダックが勝手について来てるので」

「ああ、野生って言ってたがゲットするんだな!」

「いえ、攻撃されたらコイツを盾なりおとりなりにして逃げます」

「コパー!!!」

 

テメェ!この野郎!とコダックが私の足を叩く。痛い。文句があるなら帰れば良いのに。

 

「ブイー!」

「イーブイが一緒に行きたがってるね!この子、双子っぽくてもう一匹いつも一緒のイーブイが居るんだよ」

「連れて行きません。どうでもいい」

「冷たいね~、残念だけど諦めようね、イーブイ」

「ブイ~…」

 

本当に良いのか?珍しいの揃ってるぞ?とイツキさんがしつこいが、丁重にお断りした。

電話を終えたらしいユウキが戻って来て、何事ですか?と首を傾げた。

 

「シンヤにポケモンをやろうと思ったんだが要らないって言うんだ!」

「はあ…?自分の身元も分からないんじゃ無理も無いんじゃないですかね?」

「うーん…そうか、そうだよなぁ。自分の事で手一杯の状況だしなぁ…。でも野生ポケモンに遭遇したら危ないんじゃないかと思ったんだが…」

「身元がしっかりするまではボクが責任を持って一緒に行動しますよ。拾ったのボクなので」

「私は拾われていたらしい」

「あはは、嫌な例えだねぇ~…」

 

ユウキくんが一緒なら大丈夫だな!とイツキさんが頷いた。

そうそう、大丈夫。私にはコダックという生贄もあるし。

 

「それで、今後はどうするんだ?なんなら、うちに来てくれても良いぞ!子供が増えるのは楽しいしな!」

「子供って…シンヤさん、25歳らしいですから…」

 

わあ、僕と一緒だ。とヤマトが笑った。お前、童顔だな。

 

「俺は気にしない!」

「ボクが気になります。今後についてはナナカマド博士の所へ行くことにしました」

「おお」

「困った時は年長者に聞くのが一番だと、父が丸投げ発言をしたので」

「ははは!まあ、ナナカマド博士の所なら確かに安心でもあるしな!」

「というわけで、シンヤさん。行くよ」

 

何が、というわけで?

横で「ナナカマド博士の所に行けるなんて羨ましいなぁ」とヤマトが笑っているが…、もしかして…。

ちゃっかり、紅白カラーのボールを手にしているユウキを見て思わず目を逸らした。

ああ、ナナカマド博士とやらの居る場所、遠い予感がする…。

 

「途中で落として行ってくれ…もう腹は括ってる…」

「あ。イツキさん、ここのロープ貰って行きまーす」

「おー、良いけど。何に使うんだ…?」

「あの人、空を飛ぶが苦手らしくて」

「「ああ…」」

 

察しました。とイツキさんとヤマトの視線が痛い。

 

「コダックー!私の身代わりになってくれー!」

「コダ」

 

ふざけんな。とかあの間抜け面に言われた。腹立つ。

 

*

 

行きますよ。とオオスバメの体と私の体がロープで繋がれた。落ちれない対策だそうだ。

さあ、乗れ。と背を押されてオオスバメの背中に座る。当然のように私の前にコダックが座った。

 

「あ!ユウキくん!」

「なんですか?」

「ポケモンのタマゴ、持って行かないか?うちの女房が貴方にタマゴの面倒なんて無理よ!って怒るんだよ~。うちの子達もまだ幼いし、適任だと思えるトレーナーも居ないなぁと思ってた所だったんだ。ユウキくんなら大丈夫だろ?」

「うーん…、嬉しいですけど、すでにポケモンのタマゴ複数、預けてる状態なんですぐに孵化させてご報告出来ないかも…」

「じゃあ、せっかくだからナナカマド博士の所に持って行って適任だと思うトレーナーに任せてくれるよう頼んでくれ!」

「そういう事なら了解です、お渡ししておきますね」

 

ポケモンって全般的に哺乳類じゃないんだ…。タマゴから孵るんだ…。と思っていたら私の後ろにユウキが座った。また、飛ぶのか…。

 

「じゃあね~!記憶が戻って本当の名前を思い出したらまた教えてね!」

「もう二度と会う事は無いと思うから、忘れてくれ」

「暗い!」

 

手を振るヤマトに手を振り返して、オオスバメは空高く飛び上がった。

さすがに二回目はちょっと慣れてた。

 

*

 

「着いたよ」

「ナナカマド博士の所か…」

「そう、マサゴタウンだよ!」

「そんな風に言われても知らん…」

「そうだったね…、まあ、事情はすでに説明済みだから挨拶しに行こう!」

 

こっちこっち、と手を引かれナナカマド博士のポケモン研究所に勝手にずかずかと入って行くユウキ。出入り自由過ぎか。

 

「あ、ユウキじゃーん!おっすー!」

「うわー、ツバキ…。おっす…」

「テンション下げんな!」

 

威厳ある感がもの凄い白衣を来た男性、ナナカマド博士なんだろうな…。

よく来たな。と頷く様も威厳あり過ぎだ。

そして、そのナナカマド博士の隣に居たツバキと呼ばれた少女がユウキの肩を叩く。元気な子だ。

 

「バトルしよーよー!」

「後でね、今忙しいから」

「なんだよ!そのイケメン誰だよ!めっちゃ男前じゃん!ビビる!」

「うるさい。ナナカマド博士、この人が記憶喪失の、一応、シンヤ、と仮の名前を付けて呼んでいる方です」

「シンヤだな。うむ、よく来た。ナナカマドだ。よろしくな。色々と不安があるだろうが、記憶を取り戻す事に協力は惜しまん。安心しなさい」

 

顔こわいのに優しいおじさんだった。

 

「あ、ナナカマド博士。イツキさんからポケモンのタマゴを預かって来ました。適任だと思われるトレーナーに託して欲しいとの事です」

「うむ」

「博士!適任者がここに!ここにツバキちゃんが居ますよ!」

「そうだな、ではツバキに任せよう」

「よっしゃぁああ!!」

 

大事にしまぁす!とハシャぐツバキ。

ポケモンのタマゴってでかいな、ダチョウのタマゴサイズだな。

 

「シンヤさんはどうすれば良いですかね?」

「隣のポケモンセンターに暫く滞在すると良い。もうすぐ学会もあるから顔写真を持って行って情報を求めてみよう」

 

指名手配犯みたいだな。

ありがとうございます。と一応、お礼を言っておく。

 

「じゃあ、ジョーイさんに事情を説明してこようか」

「ジョーイさんなら、あのズイタウンだったかで会って説明しただろ…」

「マサゴタウンのジョーイさんにも説明しないとだから」

 

ポケモンセンターとやらに勤務する看護師的な人を総じてジョーイと呼ぶのだろうな。と思った。

そして、ユウキとツバキとコダックと共にマサゴタウンのポケモンセンターに入ったらジョーイさんがジョーイさんだった…!

 

「ジョーイさんが…!ジョーイさんだ…!」

「おいおいシンヤさん、何を言ってるんだい?」

「シンヤさん、記憶喪失者だからね」

「そうなの!?」

 

こんにちは、と言って微笑むジョーイさん。

え?全く同じ顔で同じ声でジョーイさん?

 

「双子…?」

「いや、ジョーイさんはみんな同じ顔なんだよ」

「何を言ってるのか理解出来ない」

「ジュンサーさんも同じ顔だよね~」

 

ジュンサーさんって誰だ。と思った所でピンと来た。

女医のジョーイ、巡査のジュンサーに違いないと!何この世界、単純過ぎてこわい!

 

「コダックもよく考えたら、子供のDuckなのか!?」

「コダ?」

 

オオスバメも、大きいツバメだしな…。

誰だよ、こんな名前考えたやつ…。

お前、子供だったのか。とコダックと喋っているとジョーイさんに説明を終えたらしいユウキに背を叩かれた。

 

「ボクと同室だから、暫くよろしく」

「なんでだ!」

「アンタが勝手に死のうとするからだよ!」

 

怒られた。

 

「シンヤさんの生活品を買って来ないとな~…。でも連れ歩くの危ないし…、空を飛ぶを嫌がるし…」

「あ、じゃあ、あたしが見てようか?」

「マジ助かる。でも、この人、本当に危ないから、すぐ死にたいとか言い出して何処かに消える可能性あるから気を付けてね」

「病気かよ…」

「病気なんだよ…」

 

コダックも見張り、よろしくね。と言ってユウキはポケモンセンターを出て行った。

私の扱い、酷いな。でも、否定出来ない気持ちもあって何とも言えない。

 

「シンヤさん、せっかくだからポケモン勝負しようよ!」

「ポケモン勝負ってなんだ…?」

「自分のゲットしたポケモン同士の技を使って相手のポケモンを瀕死にさせるまで戦うの!」

「物騒!」

「戦って勝てばポケモンは経験値が増えてレベルが上がってどんどん強くなるのよ!大体のポケモンはレベルが上がると進化して更に強くなるし」

「レベルってそういうやつか…」

「ポケモンバトルを専門としたポケモントレーナーっていうのも職業みたいなもんだし、各地でポケモンジムっていう施設があって、そこにはジムリーダーが居るの。

ジムリーダーに勝てばそこのジムバッジを貰えるのね。そのバッジを8個集めればポケモントレーナーはポケモンリーグに挑戦出来る権利を貰えるから各地を旅してるわけ、ポケモンリーグには四天王が居て勝ち進めばポケモンリーグチャンピオンと戦う権利が貰えて、チャンピオンに勝利すればポケモンマスターとして認められるってわけ!」

「待ってくれ…知らない単語が多すぎて理解が追い付かない…」

「うーん、一般常識だから聞いたら記憶戻るかなぁと思ったんだけどな~」

 

ダメか~、とツバキが腕を組んで眉を寄せた。

でも、なんとなく理解はした。勝負しよう、とか言ってたのはポケモン同士を戦わせようという事なのだろう。

ポケモンが可哀想なんじゃないのか…?何故、争いを強いられるのか…。ゲットするとか言っていたから、捕獲されたばっかりに強くなれと戦わさせられるとは…。

知らない世界でも、争いばかりだな…。嫌になる。

 

「まあ、とりあえず、バトルしようよ!」

「私はポケモンなんて連れてない」

「居るじゃん。そこに」

 

そこ、とツバキが私の足元を指差した。

間抜け面のコダックが私を見上げていた。

え。コイツ、その辺から勝手について来てる奴だけど?

 

*

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