ポケモンセンターにソイツが派遣された時、ミミロップに衝撃が走った。
「おはざーっす」
おはざーっす、だとぉ?
人間の癖にまともに言葉も喋れねぇのかコイツはと最初は口など聞く気は毛頭なかった。
だが、ソイツ。ナチオにミミロップは見つかってしまったのだ。
「ミミロー先生!ソレ!アレっすか!?アレっすよね!?」
「あ゙ぁ!?」
「名前が似てる的な子供ウケすか!」
「はぁ!?」
「おれも超好きっす!おれの手持ちっす!」
「……」
「ミミロルのミミたん!手持ちっす!超イイっすよね!!」
コイツ、ぶっ殺してやりたい。ミミロップは心から思った。
ソレ、イイっすね!と自分の頭を指差しながらメッチャイイっす!とハシャぐナチオ。
ソレと言われているのはミミロップの頭に巻いているマフラーのことだろう、別名ストールとも言う。ミミロル、ミミロップの耳に似たソレは人の姿になっても身に着けていたミミロップにとっては体の一部も同然だった。
「何処で買ったんすか!おれも超欲しいんすけど!」
「教えねぇ!絶対に教えねぇ!」
「えぇ!?めっちゃイジワルしてくるぅ!同じミミロル好き仲間なのにぃ!」
「勝手に仲間にしてんじぇねぇ!ボケ!」
「あ!ミミロルじゃなくて、ミミロップ推しっすか!?」
「仕事しろ!!」
モップ片手にハシャいでいたナチオを一喝してミミロップも自身の仕事に戻った。
鬱陶しいやり取りは顔を合わせる度にあるわけじゃなかった。
ナチオは言葉遣いのわりには真面目に清掃の仕事を行う男だったらしく、暇があればミミロップに声を掛ける、くらいの頻度だった。
しかし、ミミロップがポケモンセンターの清掃員の派遣先変更になれば良いのに、と思うくらいにはウザかった。
そんなある日、ナチオが朝一番にミミロップの下へ駆け寄って来た。
「ミミロー先生!まじパネェんす!」
「あ゙?」
「おれのミミたんがミミロップに進化したんす!」
パネェっす!とハシャぐナチオ。
お前に懐くなんて心の広い同族も居たもんだとミミロップは思った。
「ミミロー先生、ロップ推しって言ってたでしょ!今度、連れて来るっす!」
「推しじゃねぇ!」
「またまたぁ!そんな名前してるくせにぃ!」
「名前はしょうがねぇだろうが…!」
「頭のソレ!ソレソレぇ!」
「殺すぞ」
コエー!なんて言いながら笑って走り去るナチオ。
アイツ、絶対にいつか一番太い針で注射してやる。とミミロップは思った。
次の日、ナチオは出勤して来たミミロップを待っていた。
コイツ…!!と思いつつも無視してミミロップはテーブルに荷物を叩き付けた。
「ミミロー先生!今日はミミたん連れて来たっす!」
「手持ちってのは元々連れ歩くもんなんだよ!」
「そんなに見たかったんすね!」
「どう捉えた!?ワタシの今の言葉を!?」
「おれのミミたん、普段はジムに預けてるんすよ」
「はぁ?ジム?ポケモンジム?」
「いや、人間のトレーニングジムっす!」
「…はぁ?」
「おれ、筋トレ趣味なんすよ!そんで通ってるジムにミミたん連れてったらミミたんも筋トレ激ハマりになっちゃって」
「…へぇー」
「ムッキムキのバッキバキっす!」
「……お前が、だよな?」
「いや、ミミたんっす!」
「……」
え、ちょっと待って、ミミロップなのにムッキムキのバッキバキなの?え、待って、それワタシちょっと見たいやつ来たんだけど?え?嘘でしょ?
ちょっと真剣に話を聞こうか、とミミロップはナチオへと向き直る。
「ミミたん、超でかいんすよ!」
「待てそれ、どういうことだよ!」
「ロップに進化したら、180センチぐらいあって超パネェっす」
「嘘吐けよ!!!ミミロップの小ささなめんなよ!!」
「いや、まじでかいんすよ!」
「とりあえず、早く見せろよ!!!」
「ミミロー先生、やっぱ好きなんじゃないっすか~!」
「見・せ・ろぉおお!!」
うぇいうぇーい、なんて言いながらハシャぐナチオに怒鳴るミミロップ。
ナチオがボールを取り出した所でジョーイに止められてしまった。
「何してるんですか!もうお仕事の時間ですよ!」
「サーセン!すぐ行くっす!サーセン!」
「ナチオ!お前、仕事終わったら顔出せよ!絶対だぞ!!」
「おけまるっす!」
勤務終了後。
医務室でナチオを待っているミミロップは考えていた。
やっぱり、180センチぐらいあるとか嘘だろ。アイツ頭悪いからそれぐらいだと思ってるだけだろ。
ミミロルから進化したら当然、一気にでかくなるし。それでだろ。と真剣に考えていた。
「ミミロー先生、お待たせっすー!!」
「……早く見せろ」
「もう超好きじゃないっすかー!最初から照れないでそう言ってくれれば良かったのにぃ!」
「早く!」
「おけっす、ミミたんっす!」
ポンと投げられたボールから出て来たナチオのミミロップ。
ナチオより高い身長で同族とは思えない肩幅、胸板、腹筋……。
「……お前、マジでミミロップなのか…!?」
「ミミたんっす」
「ミミー!」
いつもナチオがお世話になってまっす!という言葉と共にマッスルポーズをするミミたん。
「え…筋トレしたら、ソレ、なれんの?」
「え?バッキバキっすか?」
「そう、バッキバキ…」
「でも、ミミたん、元がでかいっすよ?ミミロル時代で120センチはあったっす」
「でっけぇ!!!」
「おれより小さかったっす!今はでかいけど」
「お前、突然変異種か!?うっわ、ずっる!マジ良いな!そんなでかいとか超良いじゃん!」
「ミミたん、超イイっすよね!パネェっすよね!」
「……パネェわ…」
ほぼ、ゴーリキーじゃん。
超羨ましい。とミミロップは下唇を噛み締めるのだった。
【 清掃のお兄さん 】
「おれ、金稼いでカロス行くんす」
「何しに行くんだよ」
「もち、ミミたんをメガ進化させるためっす!」
「お前、超良い奴だな!!」
「頑張って働くっす!」
「ボーナス付けとくから頑張れぇ!!」
その後、
大嫌いな人前に立つ仕事に就いて、カロス地方に行った時に再会して素で笑いあえるくらいには仲良くなれた。
「ミミロー先生、まじパネェっすー!」
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