ポケモンセンターでナース服を着て働く彼女を見て、絶対に同種族だと思った。
緑色の髪に赤い目、間違いだったら素直に謝ろう。そう決心しておれは彼女に声を掛けた。
「あの、すみません」
「はい、なんでしょう?」
「あなたはポケモンですか?」
キョトンとした彼女を見て、やっぱり違ったのだろうかと思った。
「ワタクシはポケモンですわ。相談ごとですの?」
「っ!?はい!!そうなんです!」
やっと、おれのキルリアと同じ。人の姿になれるポケモンと出会えた!
*
ポケモンセンターの隅の席に座った、サーナイトとニケと名乗った男。
飲み物は?と聞いたサーナイトにニケは首を横に振った。
「では、お伺いしますわ」
「ありがとうございます!実は、おれのポケモンのキルリアの事なんですけど…」
「ええ」
「オスのポケモンなんですが、可愛すぎて可愛すぎて、もう好き過ぎてどうにかなりそうなんです!!人の姿になってからなんてもう感情を抑えられなくて!!」
「……え?ワタクシは何を相談されてるんですの?」
「おれが言っても聞かないので、同じポケモンからキルリアに言って欲しいんです。もうそれ以上可愛くならないで欲しいって…」
「は?」
「オスなのに可愛すぎてもうめちゃくちゃ好きなんですよ!おれのこの気持ち分かりませんよね!?オスなんですよ!メスならまだしもオス!いや、メスでもポケモンなんでアウトなのは重々承知ですが!!」
「はぁ…」
「お願いしますぅ…もう、おれには頼れるのはサナさんしか居ないんです。サーナイトなんですよね?」
「ええ、サーナイトなのはサーナイトなんですが…ワタクシもオスですのよ?」
「…………、サーナイトのオスでこんなに美人ならもう進化したらおれは爆発しますが!?!?」
「勝手に爆発すれば良いんじゃないですの?」
「オスのポケモンを好きになんてなってはいけないこと!そうでしょう!?」
「………そう言われても、ワタクシは別に良いと思ってますけれど…」
身近に性別も種族も越えたカップルが居るサーナイトにとっては特に気にするような事でもなかったが、助けてくれと懇願されては見捨てるわけにもいかない。
「ワタクシのトレーナーをご紹介しますわ」
「え…、人間ですよね?おれ、ボロクソに罵倒されるだけなんじゃ…」
「絶対にありえないので大丈夫ですわ」
半泣きになっているニケに笑みを返し、サーナイトはすぐにシンヤへと連絡を取った。
家に居たらしい、シンヤはすぐにポケモンセンターへとやってきて、サーナイトに肩をおされニケの前の席に座らされた。
「シンヤさん…!?ほ、本物!?」
「理由も知らされず、何故か知らない人間と対面して座らされるとは…。私、まだ仕事が残ってるんだが…」
「簡潔にワタクシが説明しますわね。こちらニケさん、手持ちのオスのキルリアが可愛すぎて欲情するのでどうにかしてほしいそうですわ」
「欲情するとはまでは言ってませんが!?」
「でも、そういうことでしょう?」
「いや、まあ、はい……」
そうですね、と口籠るニケを見てシンヤは首を傾げた。
「どうしろと?」
「いや、おれはですね!同じポケモンであるサナさんにうちのキルリアにそれ以上可愛くなるな!と忠告して欲しいんです!おれが襲っちゃうかもしれないので!」
「キルリアはもともと可愛いから言ったところで無理だろ」
「見た目はそうなんですけど!性格とか、まあ、もっと素っ気なくしてくれればおれの熱も冷めるだろうし。仕草とかいちいち可愛くて…その辺を注意してもらえれば、な…って…」
「素っ気なくされても結局可愛いのでは?」
「そうなんですけどぉおお!!」
本当にそれなんですけどぉ!とテーブルに突っ伏したニケ。
小さく溜息を吐いたシンヤは眉を顰めた。
「まあ、つまり可愛くなければ良いと?」
「…はい」
「可愛くなければ別に欲情することもないから、どうにかしてほしいと」
「はいっ!」
「じゃあ、めざめいしをやるから、エルレイドにしてしまえ」
「………その手があったか…っ!!!」
今、手元に無いから後日郵送する。とシンヤに言われてニケは何度もお辞儀をして住所を残して帰って行った。
ニケが帰った後にサーナイトが溜息を吐いた。
「全く、人騒がせな人でしたわね」
「そうだな」
「まあ、でもあっさり解決してくれて良かったですわ。仕事に戻れますもの」
さーて仕事仕事と戻って行くサーナイトを見送ってから、シンヤも席を立つ。
ギラティナが繋げてくれている鏡の前に立ってから、うーんと首を傾げた。
「…やっぱり、可愛くなくなったところで、な気がするが…。まあ良いか」
そして、数週間後。
ポケモンセンターにイケメンを連れたニケがやってきた。
サーナイトはそれを見て、解決したお礼でも言いに来てくれたものだと笑みを浮かべた。
…が、
「シンヤさん、呼んでくれます…?」
「ど、どうしたんですの!?」
「可愛かったキルリアをエルレイドにしたら、可愛さの欠片も無いイケメンになったんですが…。イケメン過ぎて好きになっちゃってぇ…」
「……」
「イケメン過ぎて、ときめきが止まらないんです……。助けて下さい…。」
「爆発してろ、ですわ」
【 恋に理由など不要 】
ポケモンセンターにやって来たシンヤの足元で土下座をしているニケ。
それを見下ろしてシンヤは溜息を吐いた。
「じゃあ、もう野生に戻せば良いんじゃないか?」
「それは嫌ですぅううう!!」
「なら、もう諦めろ。重症だ」
「でも!でも!オスだし!イケメンだしぃ!!」
「嫌いなのか?」
「めちゃくちゃ好きです!」
「末永くお幸せに」
「待ってぇぇ!どうにかしてぇ!!」
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