痛いくらいに激しく愛して
ほんの少し、他のポケモンに視線を向ければ顎を掴まれ強引に視線を己に向けようとする……。
「何を見ている……」低い声でそう言われれば「別に何も」と返すしかない。
そんな彼にとってポケモンセンターや他のトレーナーやポケモンの集まる場所はいつもピリピリしている場所だった。
「ボールに戻ってる」と言っても彼は聞かない。ずっと傍に、己の視界に入っていないと気に入らないのだと言うのだ。
彼以外を視界に入れてはいけない。
彼以外と話をしてはいけない、彼以外と接する事なんて許されない。
夜は優しく髪を撫でてくれる彼の胸に顔を埋めて眠る。
でも少し窮屈で、そっとベッドから抜け出して窓の外を眺めた。月をぼんやりと見上げていれば肩に手を置かれる。
視線をやれば眉間に皺を寄せて不機嫌そうな彼……。
「ベッドに戻れ」
「眠れないからさ……」
「良いから戻れ!」
痛いくらいに腕を引かれまた彼の腕の中に戻る。窮屈だ、とても温かいけれど苦しくて眠れやしない……。
朝起きれば彼が優しく頭を撫でてくれた。
そのまま唇を寄せられるが今日はそんな気分じゃなかったので少し抵抗……。彼の眉間に皺が寄る。
「……」
「……ごめ、」
髪の毛を鷲掴みにされて首にガブリと噛みつかれる。
肉を食い千切るかのような行為に悲鳴をあげた。
「ぅあああぁぁああッ!!!」
口に付いた血を舐めてから彼は唇を寄せる。
拒む事なんて許されないのだと彼は行為で示す、自分の所有物なんだと彼は笑う。
痛みで涙を流せば彼は満足気に笑って優しく髪を撫でた。
「泣き顔も綺麗だな」
「……」
頬に優しくキスをした彼の胸に顔を埋める。
彼が好き、凄く好き、世界で一番、どんな酷い事をされても……、彼が愛してくれるならそれで構わないんだ……。
「大好き……」
* * *
はぅん、と満足気に小さく息を吐いたミロカロスを見てシンヤは眉間に皺を寄せる。
「急に語り出したかと思えば何だ、嫌がらせか」
「違ぇの、俺様はこんな風に愛されたいわけで一日くらい俺様のワガママを聞いてくれても良いんじゃないかなぁ?って思うわけ」
「一日くらい、だと?お前のワガママにはわりと付き合ってやってるだろうが」
「ヤダヤダヤダ!!!やって!本気で!マジで!!獣のように!俺様を愛して!!」
「もうこれ言うの何度目か分からないが……。お前、本当にめんどくさい」
深い溜息を吐いたシンヤはミロカロスの事を無視して読みかけの本に視線を戻した。
頬を膨らませたミロカロスが言う。
「俺様以外見るなぁあああ!!!」
本を奪ったミロカロスがシンヤの視界に入ろうと顔を覗き込む。
「……私にやって欲しいはずの行為を何故お前がやる」
「……じゃあ、俺様がやめるからシンヤがやって」
「やらないけどな」
「何でー!!!!」
「めんどくさいっ」
ベシンと本を床に叩きつけたミロカロスが叫ぶ。
「束縛されたぁああああい!!!!」
「私はされたくないし、したくない……」
! 痛いくらいに激しく愛して !
「一日とは言わない、一回だけで良いからぁ……」
「……」
「ならもう一言だけでも良いっ」
「……」
「シンヤー……」
*
「私以外の事を考えるのは許さない」
「考えてませぇええん!!」
「……うるさい」