「アブソル!!俺はお前をゲットしに来た!!」
モンスターボールを掲げればアブソルは興味あり気に俺の方へと近寄って来た。
そう、俺はアブソルをゲットしにわざわざ遠路遥々やって来たのである。
理由は簡単。
アブソルが現れる場所では良くない事が起きるらしくアブソルは災いポケモン、と呼ばれている。
だがそれは違うのだ。アブソルは災いを予知出来る為それをみんなに知らせようと災いの起こるであろう場所に現れる……。
そう、アブソルは幸運ポケモンなんだよ!!
災いを予知出来るなら俺に襲い掛かる災難の全てをアブソルが予知してくれるはず。
是非とも傍に置きたい、そして俺を超ハッピーにしてくれ!!
「俺にとってお前ほどの幸運ポケモンは居ないんだぁああ!!!」
俺、ヒサノブは昔からツイてない、むしろ憑いてるんじゃね?な勢いの不運っ子だ。俺を助けてくれアブソル!!!
俺の必死の頼みが通じたのかアブソルは俺の前にちょこんと座った。小首を傾げて俺を見たアブソルに抱きつく。
「ありがとう、アブソルー!!!!」
「アブー!!」
こうしてアブソルは俺の手持ちとなった。
アブソルをゲットした俺は災難という災難から回避し、超ハッピー!!不運?なにそれ美味しいの?なーんて言えちゃう感じに、なる、はずでした。
家に帰宅後、人の姿になったアブソル。
何でどうして、何が何でこうなった!!!と慌てる俺を余所にアブソルは知らぬ顔でソファに座る。
「ヒサノブ、飲み物。喉渇いた」
「あ、はい……」
ポケモンって人の姿になれたのか、知らなかった……と思いつつアブソルの前にお茶を置く……。
なんでお茶淹れてんの俺?
いやいや、ゲットしたてで懐いてないのは仕方がない。ちょっと性格疑うけどこれも個性だ。
俺の災難さえ予知してくれればアブソルほど傍に居て頼もしいポケモンは居ない!頼むぜ幸運ポケモン!!
そして、俺はアブソルの力で災難を回避して、るはずなんだけど……。
「ただいま……」
「おかえり、ヒサノブ」
「帰り道で自転車のタイヤがパンクしてさ、自転車押して歩いてたら階段あるの気付かなくて階段から自転車と一緒に転げ落ちて自転車壊れたし体は痣だらけなんだけど……、どういうことコレ?」
「災難だったね」
あれ、可笑しいな、目から汗が溢れて来たぞ?
「お前……、俺の災難予知してくれるんじゃなかったのかよ!!」
「予知してたよ」
「そうなの?何で言わないの?」
「だって、言わない方が面白いでしょ」
「……」
「面白いよね」
こんの、ドエスゥウウウウ!!!
近くにあった置時計を引っ掴んでアブソルに向かって投げようと振りかざす。
「ヒサノブ、それを投げると痛いよ」
「痛い目にあえば良いッ!!」
ブオンと置時計を投げれば俺の投球はノーコン。アブソルの横を通り過ぎてテレビの画面にストライク!!!
何か凄い音を立ててテレビの画面がクモの巣を張ったみたいになった……。
「あぁああああああッ!!!!」
「……」
「買い換えたばかりのテレビが!!そんな、嘘だ……、買い換えたばかりのテレビが……」
「痛い痛い」
「ホント痛いぃいい!!!超痛手だコレぇえ!!!金をドブに捨てたようなもんじゃねぇかよぉお!!こんなデカイテレビ捨てるのにも金すっげぇかかるじゃんかぁああ!!」
ハハハ、と笑ったアブソルが俺の頭を撫でる。
予知はもっと具体的に言ってよ!!そしてもっと切羽詰まった感じに止めてよ!!
「お前、災いポケモンだな……」
「最初からそうだったろ?」
「……、」
幸運サディスティック!!
「俺、いつか死ぬな……」
「死なない程度には予知してあげる」
「……幸せなくらい予知して頂ければ嬉しいのですが」
「え?それだと僕が面白くないよね?」
「誰かコイツを不幸にしてぇええ!!」
*