一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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レジギガス


オレは純真のダメージを受けている!!

最近、発見しました。

伝説ポケモンの保護を行っている団体の一人であるオレはとある場所にてレジロック、レジアイス、レジスチルを発見した。

最初の頃は攻撃され、警戒されていたけど、奴らもオレが敵ではないと判断したのかもう攻撃はしてこなくなった。

まあ、他に人が寄りつかないか見回りに行ったり他の野生ポケモンの様子を見たり、レジロック、レジアイス、レジスチルも大人しくしているし特にこれといって問題は無かった。

 

でも、ある日。

三体のポケモンが忙しなく動いてるなぁと思っていると三体よりも大きいポケモンがオレの前に姿を現したのだ。

レジギガス……、ポカンと口を開けてレジギガスを見上げているとレジギガスはオレに近づいて来た。いや、勿論、保護目的のオレが伝説系の連中と親しくなるわけにはいかないので距離をとらせてもらった。うん、人間と関わるもんじゃないと思ったんだよ。

そうしたら……、発見したんだ……。

レジロック、レジアイス、レジスチルに囲まれて中央に座る男。えらく体格の良いお兄さんだ。

トレーナーなのかと思ったがどうにも違う。こちらをチラチラと見てくるお兄さん。とは言ってもオレと見た目的に年齢は変わらなさそうだが。

 

「……レジギガス?」

「!!」

 

オレがそう言えばレジギガスと思わしき、お兄さんが顔を上げてコクコクと頷いた。何故か頬を赤くして嬉しそうだ……。

ポケモンが人と同じ姿になれるなんて大発見なんじゃないだろうか……。会話が出来るんなら人間の知らないようなポケモンの事を聞けるし……。いや、でも、深く関わらない方が良いのか……。

興味はあるし知りたくないわけじゃない、ポケモンが好きで団体に所属しているんだから、そりゃ気持ちはあるけど……。やはりポケモンを守りたい一心で活動しているわけだし、ここはあえて無視しよう。

オレはこちらに興味津々と言った様子のレジギガスから視線を逸らしていつも通り見回りに行く事にした。

後ろで「え!?」と動揺染みた声が聞こえたが聞こえないフリ……。レジロック、レジアイス、レジスチルも最近は友好的だけどオレは必要以上に近寄らないようにしてるんだよ……。

人間に興味を持って深く関わればオレは大丈夫とはいえ、他に近づいてくる人間が友好的に接してきたとしてもソイツが良い人間とは限らない。人間とは関わらない、人間には警戒するべきだと思っていてもらわないとなぁ……。

保護の意味ねぇし。

 

レジギガスと思われる男。何で人の姿になれるのかとかはオレは知らないけど……。

とりあえず、オレが来る度にレジギガスは人の姿だった。まあ、レジギガスは山のように大きいポケモンだからその辺をウロウロされると目立つから人の姿の方が目立ち難くて保護的には助かる。

ただ、会話こそしないようにはしているが……、視線が痛い……。

やけに熱のこもった視線を向けられている。オレがレジギガスを見ればレジギガスは頬を赤らめて顔を俯けるが……、これは明らかに好意を持たれているような気がしてならない……。

え、ちょ、え、オレは確かに各地を転々としてて線の細いようなひょろっちぃ男ではない。自分で言うのは何だが逞しい方ではある、が……。絶対にオレより体格の良い男にそんな好意を寄せられても……。

直接言われたわけじゃないけど、明らかにっ……。しかも、ポケモンだし、ポケモンだし、ポケモンだしぃいい……。

溜息を吐いて、近づいて来た野生のコリンクの頭を撫でる。保護区の担当場所、誰かと変えてもらった方が良いのかもなぁ……。つか、もうずっとシンオウに居るし、別の地方に行っても良いよな……。

 

「あ、のさっ……」

「……」

「あの、」

 

うーそーだー……。

声掛けて来た。ポケモンの方から近寄って来るとか無しだろぉぉ……。

チラリと視線をやればレジギガスは眉間に皺を寄せながら口を一の字にした。邪険に扱いたいわけじゃねぇのよ、オレも。でもあんまり仲良くなると上にね、偉いさんがいるからオレがめちゃくちゃ怒られるんだけども……。

 

「あ、の……」

「……何?」

 

声色を低くして不機嫌を装ってみる。傍に居たコリンクが逃げて行った。

レジギガスが目を潤ませて、更に口を一の字からへの字にする。

ええぇぇええ……、何コイツぅぅ……、デカイ図体してる癖に気弱ぇええ……!!

完全にビビってるレジギガスには可哀想だが追っ払う事にしたオレは言葉を続ける。

 

「用が無いなら自分の住処に帰れ」

「……ぅ」

 

そのままレジギガスに背を向ければ後ろで嗚咽を漏らしながら啜り泣いているであろう声が聞こえて来る。

可哀想だぁああ……!!オレ、酷い奴ぅう!!お前の見た目でそんな行動されるとギャップがあり過ぎて逆になんか心が痛い!!ホントにごめん、でも、これも仕事なんだ、お前達を守る為だから!!

心の中で謝りつつ、拳を握り締めた。もうここまで言えばオレには近づいて来ないだろうと思ってた。

 

「あの、さ……」

 

しつけぇええ……。

気弱い癖にやたらしつこいんだけどコイツぅうう……、オレがお前を追い払うのにどれだけ心を痛めてるか知らんのか!!いや、知らないんだろうけど……、涙出そう。

無視を決め込んだオレの周りをウロウロしてからレジギガスは少し離れた場所に座った。デカイ図体して体育座りとかしやがるから、もう……、すぐにでも謝って頭を撫でくりまわしてやりたいさ!!

駄目なんだってぇええ、オレ、ポケモン好きの心優しい男なんだってマジでぇええ……、可哀想過ぎて本当に泣きそう……。

少し離れた所に座ったレジギガスが何か言いたげにこっちを見ている。耐えろ、耐えろオレ……。いや、もうむしろこの場から逃げ出そう!!よし、そうしよう!!

と、オレが荷物を持って立ち上がった時にレジギガスが言った。

 

「な、名前教えてくれよ!!」

 

めちゃくちゃ勇気振り絞りましたと言わんばかり、目に涙を溜めてこっちを見るレジギガスがふるふると体を震えさせている……。

 

「……テメェが知る必要なんてねぇ!」

「!?」

 

ショックを受けたらしいレジギガスの目からボロボロっと涙が零れ落ちた。

オレはそれを確認してから走り逃げる。

もう、本当に、

ごめんさなぁあああああい!!!

 

*

 

その日からレジギガスは離れた所から影に隠れつつオレの様子を伺っていた。

アイツ、臆病な癖にしつこいな……。

チラチラとこちらの様子を伺うレジギガス、決して可愛いポケモンでもないし、オレより体格の良い男なのだが……。不意に可愛い奴め、と思ってしまったオレはもう駄目なのだと思いました。

 

 

”オレは純真のダメージを受けている!!”

 

 

「……あの、さ」

「……あぁん?」

 

攻防戦真っ只中です。

 

 

(怒ってる…、でも、名前知りたいし…)(頼むからもう話しかけてくんな!オレの良心が痛む!)


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