草花を愛するといっては気持ち悪がられるが今は亡き母の趣味を引き継いで花屋を経営している俺、トミオ。
勿論、草タイプのポケモンが一番大好きだ。
しかし自分でポケモンをゲットした事がなかったので草タイプのポケモンを手に入れられるわけもなく。野生ポケモンを眺める日々を送っていた。
そんなある日、街によったトレーナーが一匹のポケモンを俺にくれた。ポケモン側からしたら少し可哀想な話だが……、ハクタイの森でレベルアップしたらしいイーブイがリーフィアに進化してしまったと……。
トレーナーも知識不足だったと肩を落としていた。何でもブースターが欲しかったらしい。
そんな事があってリーフィアを受け取った。俺的にはとうとう草タイプのポケモンが手に入ったと大喜び。
でも、リーフィアはツーンと俺に対してそっぽを向いた。まあ、理由が理由なだけにリーフィアも納得出来ないのかもしれない、しかも貰い手がバトルもしない普通の花屋だ……。
まあ、過ごし難い環境ではないだろう。そう思って俺はリーフィアを基本的に野放しにして気長に待つ事にした。
積極的に近づいて噛みつかれてもヤだし。ポケモンはなめてかかると危険だ……。
リーフィアを野放しにして数日。リーフィアは庭や店前で寝ている事が多かった。
懐いてくれていないので触るのはやめたが、一応挨拶だけはちゃんとしたりして。向こうが俺に興味を持ってくれるのを待つ。かなりの長期戦だけど。
もの凄く晴れた日、日差しが熱いくらいで花が萎れないように店の前に水を撒く。
庭に来ていたらしい野生のスボミーの上にも雨のように水を撒けばスボミーは嬉しそうに体を揺すった。
「可愛い……」
いつ見ても可愛い、草タイプのポケモンはやっぱり見てて癒される。
まあ、それを言うとリーフィアも寝ているだけで凄く可愛くて癒される……と、リーフィアに視線をやったつもりが後ろに立っていたのは見知らぬ男。
お客さんかと思って笑顔を向ければギロリと睨まれた。
男はそのまま俺の手からホースを引っ手繰って。スボミー目掛けて水を勢いよく浴びせる。スボミーは驚いて逃げていってしまった。。
なんてことを!!
「ちょ、何を……」
「うるせぇ!」
勢いよく水を浴びせられた。
ぐっしょりと濡れた服、この時ばかりはさすがに客かもしれないけど相手を睨みつける。
「……何の真似ですか、嫌がらせですか?冷やかしですか?」
「……ッ」
たじろいだ相手の腕を掴んで店の外へと放り投げる。
「うわ!」と声をあげた相手は一瞬で見慣れたポケモンの姿になった。
「リーフィア?」
「……」
むすっとした顔をしたリーフィアが俺を睨みつける。……さっきの男はリーフィア?
「は?え、ちょ、どういう事なのか分からない……」
「自分の手持ちが人型になってんのも分かんねぇのかよ、バーカ!!」
再び男の姿になったリーフィアが俺に怒鳴る。
そんな事を言われてもポケモンが人の姿になるなんて聞いたことがない。
リーフィアの姿をまじまじと見てみる。やっぱり人間にしか見えない……。
「……んだよ、そんなに追い出したかったのかよ」
「え、何?」
「別にっ!!」
フン、とそっぽを向いた姿はポケモンの姿の時と同じだった。
リーフィアが人の姿になると分かってから、リーフィアは人の姿で庭に居る事が多くなった。特に話しかけてくる感じではないが、ポケモンの姿より人の姿の方が楽なのかもしれない。
昼休憩の時間。
雑誌を読んでいると、あるページで草タイプ特集をやっていて、思わず顔に笑みが浮かぶ。
「やっぱり可愛いなぁ、キレイハナ……」
「どの辺が」
「へ?」
後ろから雑誌を覗き込むリーフィア。珍しく話しかけて来た。いつも俺が話しかけても無視するのに……。
「ど・の・へ・ん・がッ!!」
「ぜ、全体的に……」
「……」
むすっと顔をしたリーフィアが雑誌に載ったキレイハナの写真を睨みつける。
なんなんだろう……、えーっと……。
「リーフィアの方が可愛いけど、ね?」
「…ッ、べ、別にそんな事聞いてねぇよ!!バカボケカス!!」
顔を真っ赤にしてリーフィアが怒鳴った。
そっかー、可愛いって言われたかったんだー、気付いてあげなくてごめんなー。
「可愛いなぁ」
「うるせぇッ!!バーカ!!」
更に顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。
なんだ、別に俺ってめちゃくちゃ嫌われるわけじゃないのかも……。
そーっと手を伸ばして頭を撫でてやるとリーフィアは不機嫌そうな顔を赤くして俯いた。
やっぱり可愛い
俺の見える所で寝転がってるのも、
声を掛けても無視をするのも、
構って欲しいからなんだと俺は後に気付く。
「リーフィア、こっちおいで」
「……」
返事をしなくても傍に来てくれる事も分かったしね。
(トミオのバーカ!!)(リーフィアが居るとやっぱり癒される……)