一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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ムウマ


愛情、異常に過剰

よお、と片手をあげてニヒルな笑みを浮かべた男。俺と同期のトレーナーのエイゴ、トレーナーではあるがポケモンを育てるというよりポケモンで遊ぶといった表現がぴったりな男だ。

はっきり言って嫌な奴だと思う。でも、整った顔立ちだとかモデル並みのスタイルだとか……、同じ人間だとは思えぬ美麗さを持ち合わせた人間……。

エイゴと知り合いの俺は羨ましがられたりするが、知り合い側の俺としては何も良い事はない。会う度にその綺麗な顔に嘲笑うような笑みを向けられては俺も無意識に顔が歪む。

 

「良い顔で迎えてもらえて、嬉しいったらねぇぜ」

「……何か用?」

 

喉の奥でクククと笑ったエイゴは「見せて」と語尾にハートマークでも付きそうな甘ったるい声を出した。

俺が首を傾げればニッとエイゴは笑みを浮かべる。

 

「クロバット、連れてるって聞いたけど?」

 

ああ、と俺はエイゴの好みを思い出す。

悪やゴーストに毒といった怪しげなポケモンが好きな奴なのだ……、この男は……。

クロバットをボールから出せばエイゴはおおと声を漏らした。

 

「良いな、クロバット」

「やらねーぞ、欲しけりゃ自分で育てろ」

「……」

 

口を尖らせて眉を下げたエイゴ、綺麗な顔した奴は何をやっても絵になるな……。

 

「ゴルバットは好みじゃねぇんだよなぁ……、それにポケモンが私に懐いたことってねぇし」

 

トレーナーとしてどうなんだそれは……。

クロバットの頭を撫でながらエイゴが笑う。クロバットが目をパチパチと瞬かせ照れたように羽を動かした。

あんにゃろう、クロバットめ……。優しく笑いかけられるのにホント弱いな……。

 

「私のゲットした新顔も見る?お前にちょっと似てるんだけど」

「はあ?」

 

エイゴがニヤニヤと笑いながらボールの開閉ボタンを押した。

出て来たのはムウマだ……、何処が俺と似てると言うのか……。

 

「ムゥー……」

「……」

 

あ、このムウマ目つき悪い!!

ムウマと言えば吸い込まれそうな大きなキラキラとした目というイメージがある、ところがエイゴのムウマは完全に瞳孔が開き、目で人を呪い殺すのかと言わんばかりに目つきが悪い。

俺、こんなんか……。いや、クロバットにも目が冷たいって言われたけど……。

 

「対面した時に腹抱えて笑ったの初めてだった」

「お前、ホントに嫌な奴……」

 

クロバットがムウマを見てビクビクと怯えている。同じポケモンから見てもムウマの目つきは悪いらしい……。

 

「目つき最悪だろ?特性が威嚇じゃねぇのに自然に威嚇してんの!」

「……」

「連れてる私も目が合うとイラっとすんだよなぁ、何睨んでんだコイツ……って」

「ゲットしといて何言ってんだお前!」

 

アハハと笑うエイゴの傍にムウマが近寄っていく。それに気付いたエイゴがムウマの頭に手を置いて。

そのまま地面に叩きつけやがった。

 

「ム゛ッ!!」

「オイィイイイッ!!」

「いや、近づいて来たから」

 

近づいて来たからって叩きつける事ねぇだろーが!!

俺が慌ててムウマに近寄ればエイゴは「放って置いて良い」と言って笑う。この男は本当にポケモンをなんだと思ってるのか!昔から理解出来ない!

 

「ムゥウ……」

 

目に涙をいっぱいに溜めたムウマが口をぎゅっと閉ざして泣かないように耐えているようだった……。

 

「ムウマ、泣いたらお仕置きだからな」

「……っ」

 

ぐぐ、とムウマが必死に泣くのを耐える。

それを見てる俺が泣きそう!!可哀想過ぎるだろ、目つきは悪くてもなぁ!心は純粋なんだぞゴラァア!!俺も目つき悪いけど、自分で言うとあれだけど良い奴なんだぞッ!!

 

「お前、絶対にポケモンに懐かれない!」

「知ってる」

「言う事聞いて貰えなくなるぞ!?」

「反抗する奴を従わせるのもまた楽しいけど?」

 

コイツ歪んでる!!

いや、昔から知ってたけど!!

クロバットもエイゴの言葉にドン引きだった、エイゴにゲットされてしまったポケモンは不憫すぎる……。

ムウマの頭を掴んでエイゴが笑った

そのエイゴをムウマは睨みつける……、とは言っても目つきが悪いので睨んでいるように見えるだけなのか……。

 

「お前は言う事ちゃんと聞けるもんなぁ~?」

「ムゥ……」

「……その反抗的な目、たまんねぇな」

 

そう言ったエイゴの口元は楽しげに歪んでいた。

 

 

、異に過

 

 

その後、エイゴの提案でバトルをすることに。

クロバットとムウマをバトルさせたもののクロバットの圧勝。

ズタボロで気を失っているムウマを見下ろしてからエイゴが俺を見て笑った。

 

「やっぱ、クロバットいらねぇや」

「最初からやんねぇよ」

「私にはムウマがいるし」

「あんま虐めるなよ……、もっと優しくしてやった方が良いと思うぜ?」

 

エイゴが笑顔で首を傾げる。

 

「めちゃくちゃ可愛がってるだろ?」

「は?」

「このムウマは私の一番のお気に入り」

 

目つき悪くて可愛いし、反抗する癖にビビらせたら素直になるし、ムウマってポケモン自体も私の好みど真ん中。こいつ以上に可愛いポケモンなんていないって!

そう言ってムウマを抱きかかえたエイゴ……。

長い付き合いだが初めて知った、この男の愛情表現は異常なのだと……。今思えば自分の興味の無い事には完全無視だもんな……。

 

「好きな子、虐めるタイプだ……」

 

ちなみに目いっぱいに涙を溜めて睨みつけられるのがたまらなくツボだそうです……。

 

 

(あれ?ってことは、昔から嫌がらせされてる俺は?っていうか、ムウマって俺にちょっと似て……)(ぼーっとしてねぇで、ポケセン行くぞ)

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