おもちゃ屋で働くダチが居るのでおもちゃ屋へと足を運んだ。
俺を見つけたダチが「よお!」と声を掛けてくれたがその顔にあった笑顔は一瞬でキョトンと驚いたような顔になる。
「お前が女連れてないって珍しいな……」
「ハハハ」
いつかお前は女に刺されて死ぬ!と言われた俺が今連れてるのは男だ。それもただ連れてるだけじゃない、その男は俺の腕に己の腕を絡み付けてべったりとくっついている。
趣味が変わったんだな、近寄らないで。とダチに言われレジカウンターに金を叩きつける。
「電気タイプ用のゴム製素材のおもちゃをくれますかねぇ~……」
「ああ、ピカチュウの?」
「最近ライチュウに進化させた…」
「へー!!今度連れて来てくれよ!」
あはは、と笑いながらおもちゃを持ってきたダチに笑みを返す。
連れて来てるよ、今俺の腕にくっついてるコイツ用のおもちゃ買いに来てんだよ……。
前は研究者になるとか言ってたダチはポケモン大好き人間だ、こんな奴にライチュウが人の姿になったなんて言ったら大発見だー!!なんて言って研究したがるに決まってる。
コイツはなれなかったとはいえ、心は研究心で埋め尽くされてるんだ。信用してないわけじゃないがダチの事をよく知っているだけにライチュウの事は言えない。
さすがに俺もピチューの頃から一緒のライチュウが可愛いもんで……、いや、今のライチュウは鬱陶しいけど……。
「どれが良い?」
「んー、これ」
腕にくっ付いたままおもちゃを選ぶライチュウ。そっちが選ぶの?なんてダチに突っ込まれたが適当に返事をする。
「こ~んにちは~」
「ああ、いらっしゃい」
店に入って来た薄ピンクの髪の色の男がこっちを見てヘラリと笑った。俺の隣に居たライチュウがヘラリと笑みを返す。
おもちゃをぎゅっと握ったライチュウを確認した俺はダチに手を出した。
「……何?」
「おつりは?」
「釣りはいらねぇ、お前の懐にでも入れときな?……ジュント、カッコイイ!」
「言ってねぇだろーが、くそっ」
また来いよー、と手を振ったダチに向かって中指を立ててやる。結局、釣りも全部取られた。今度、飯でもせびってやろうと思う。
未だにべったりとくっ付くライチュウに視線をやれば買ってやったゴム製のおもちゃのピカチュウの人形を口に入れてモゴモゴしている。
「げっ!!」
慌ててライチュウの口から人形を取って周りを確認する。どうやら誰も居ないようだ…。良かった…、傍から見れば俺は頭の悪い男連れた変態野郎じゃねぇか……。
「良いか!おもちゃは口に入れるな!」
「なんで?」
「今お前は俺と同じ人間の姿だろうが!人間はおもちゃを口に入れちゃいけねーの!!覚えとけ!」
「いつもの姿だったら良いのか?」
「良いよ」
分かったー、と言ってまたべったりと俺にくっ付いて俺の肩に頭を擦りつけてくるライチュウ。
取り上げたおもちゃを返してやれば自分のポケットに涎でべとべとのそれを突っ込んだ、なんてこったい!!!
「ジュント!抱っこ!」
「ダメ!」
「じゃー、おんぶ!」
「ダメ!」
「ぎゅーってして?」
「ダーメ!!」
何で男を抱っこしておんぶして抱きしめなきゃなんねぇんだよ!!コイツには常識ってもんがねぇのか、と内心愚痴っていると隣でパチッと不吉な音がした。
チラリと視線をやれば今にも零れんばかりの涙を目に溜めたライチュウが唇を噛み締めて俺を見ている……。
ライチュウからパチッパチッと嫌な音が聞こえる……。うっそん、人の姿の時も電撃出るの?嘘だよね?嘘って言ってくれなきゃ俺もう、やっていけない……。
「ジュント……、何でオレのお願い聞いてくれないの……?オレの事嫌いになったの?ピカチュウの時は抱っこしてくれたし、肩にも乗せてくれたし、ぎゅーってしてくれたのに……」
「いや、ライチュウさん?キミ今凄く大きいからね、俺と同じ体してるからね」
「でもオレはオレなのに……、ジュントがオレの事嫌いになったぁぁぁぁ!!」
バチバチバチッ、目に見える電撃が音を立てて俺は心の中で悲鳴をあげながらライチュウの手を握った。
「ごめんごめん!!何でも聞いてやるから!!」
10万ボルトは勘弁して、マジで!!!!
「ホントに?」
「おう!!」
当たり前だ!!俺の可愛い可愛いライチュウじゃねぇか!!と付け足して言えばライチュウは頬をピンクに染めて嬉しそうに笑った。
「じゃあな、じゃあな、オレあれして欲しい!!」
「あれ?」
「ちゅう」
あれれ~?人の姿なのにコイツ鳴き声あげやがるぞ~?
ん、と唇を俺の方に向けたライチュウに対して俺は苦笑いしか浮かばん。何この汗、凄い何かだらだら流れてくるんだけど何これ。
「ちゅ、ちゅう……?」
「口と口くっ付ける奴」
「何処で覚えたのかな?そんなこと……」
「ジュントがいつも人間のメスとやってただろ?オレもしてほしいなーって思ってたんだ!」
昔の自分が憎い。
過去に戻れたら意地になってでもピカチュウをボールに戻したのに……。
俺のバカ!!何でボールに戻さなかったんだ!!はい!ポケモンが人の姿になるなんて思いもしてなかったからです!!そうか、それじゃ仕方ない!!!
……え、脳内会議、勝手に纏めるな。
「オレ、ジュントといっぱいしたい事あったんだ!!ジュントが人間のメスとしてた事、オレもジュントとやりたいな」
人間のメスとやる事なんてもうアレだよな?アレですね。ボールに戻してなかったですか俺?戻してませんでしたねー、俺。
という事はどういう事だと思いますか俺。どういう事もそういう事だと思いますよ俺。
ライチュウの手を握る俺の手が震える。脳内で話は簡潔に纏まった。もうどうにもならん、過去に戻れるならポケモンに悪影響を与えるような環境には置かない方が良いと昔の自分に言い聞かせたい。
3時間ぐらい正座させて説教したい。お前は世界一のダメ男だと罵ってやりたい。そんな事だから自分の墓穴を自分で掘る事になるのだと教えてやりたい!!
この状況は何ですか、俺は新たな未知の世界へと踏み出す事になるんですか?そうですねー、それも人種を超えた世界ですねー。
女遊びにハメを外した報いのような気がします。でも男なら一度は通る道でしょう。もうこれじゃ世のレディ達とはお別れでは?そんな!俺が女断ちなんて下の方から腐ります!!
え、その代わりにライチュウでしょう?そうは言ってもライチュウはオスですが?だから未知の世界なんじゃないですかー。うーん、逆にハマるかもしれませんよ。
それはどうでしょうねー。とりあえず今の状況を打破すべきでは?今の状況をどう打破しましょう?そんなの一つしかないでしょう。
そうですねー、とりあえず選択肢は……。
"ちゅう"でしょうねー
「んッ……」
意外にも柔らかいその唇に噛みついた。
ドサッと物音が聞こえて我に帰る、しまったここは外だった……!!
慌てて物音の方を振り返ればダチが持っていたらしい袋を地面に落し、俺を見て固まっていた、言い訳出来ない状況キター!!!
「オレに構わず続けて下さって結構です、はい、あのこれ電気タイプ用の試供品のおもちゃがあったの思い出して渡そうと思って追いかけまして……。ゴ、ゴム製だけど……、あの大人のおもちゃはないです、ごめんなさいっ!!!」
袋を地面に置いたまま走り去ったダチに今度ちゃんと飯を奢ります。なのでお願いします、俺の言い訳を聞いて下さい、いや本当に筋なんて全く通ってないダメダメな言い訳だけど聞いてくれぇええええ!!!
「ジュント?」
「うぅ、もう俺にはお前だけだわ…」
「おおっ!!」
嬉しそうに笑って抱きついて来たライチュウを不覚にも「可愛いな、さすが俺の育てたライチュウだ」とか思った俺は死ねば良いと思います。
(オレにもジュントだけだぞ!!だから秘密をジュントにだけ教えてやるよ!!)(うん、何……)(おもちゃ屋にミュウが居た)(……は?誰が居たって?)(ミュウ)(……は?)