一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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前方からサンダーが飛んで来た。

サトシ達に当たりそうな攻撃をギャロップの攻撃で相殺させる。

船に乗ったサトシ達を確認して私はギャロップにサンダーへ向かって大文字の指示を出す。大文字を避けたサンダーの意識はサトシ達の船から私の方へと変わったようだ。

 

「シンヤさん!!」

「私は大丈夫だ!!」

 

というか、その船で行けるのか!?という私の言葉が出る前にサトシ達の乗った船は後ろ向きのまま流されていく。

大丈夫なのか……、と呆然と見ているとムサシ達の悲鳴と共に船が落下した。滝になっていたらしい、慌ててカイリューに飛び乗って追いかけると氷の張った海から突如渦を巻く海流が出て来て船をそのまま運んで行く。

氷を砕き進む海流の凄さに呆気に取られながらその海流を追った。すると不意に聞き慣れない音色が聞こえた……。

 

「うわああああ!!」

 

岸が近付くと海流は船を乱暴に岸へと放り投げる。なにか別の物が遠くに飛ばされたのを見た気がしたんだが……、今のはなんだ……。

船が崖の下へと転落する、何か祭壇のような場所なのだろうか。雪に覆われたその場は岩の形状などからして人工的な作りが見られた。

 

「お宝、あそこへ」

「お宝?」

 

地面に倒れるサトシ達を見下ろしたヤドキング。元々この場に居たのだろうか……。

しかし…、ヤドキングが喋っている……。

いや、エスパータイプなのは分かっているがやっぱりあればテレパシーじゃなくて喋ってる、よな……?

ポケットから大きなビー玉のようなものを取り出したサトシがピカチュウを追いかけて祭壇の中央へと走って行った。

そういえば、と辺りを見渡すとやっぱりムサシ達の姿がない。さっき飛んで行った何かはあの連中だったのだろうか……。

死んではないだろうが様子を見に行ってやるか、と何かが飛ばされた方角へとカイリューと共に向かう。

ぐるぐると遠くの方まで見に行ったが見つからない。辺りを見渡せばいつの間にかポケモン達が集まって来ていた。世界の破滅の危機を察してやって来たのだろうか……。

飛び交うファイヤー、サンダー、フリーザー、そして見慣れないポケモンが一体増えている。あれが海の神ルギア……。

そうなると世界が破滅するまでのカウントダウンがもう始まっている。上空からリザードン達に引っ張られながらサトシがソリのようなもので走って行くのが見えた。

あんな激戦の真っただ中に行くなんて無謀だ……。ミュウツーの時も同じような事を考えた気がする……。

 

「あーあ、カッコイイのは」

「いっつもアイツら…」

「今日もニャー達の見せ場は無しニャ」

 

丁度、真下から声がした。意外と近くに落ちていたらしい……。

私だったら腕の一本でも折れている自信があるがムサシ達はピンピンしていた。ポケモン並みにタフな連中だと思う。

 

「雪の上に落ちたとはいえ怪我ひとつ無いなんてどういう訓練を受けているんだ?」

「「あ、シンヤ」」

 

ムサシ達の傍へとカイリューと共に降りるとヘリコプターの音がして空を見上げた。

強い風に揉まれてヘリが不時着してきた。爆音を立てたヘリの後方の機器は吹っ飛んでしまっている。

ヘリからオーキド博士とウチキド博士が降りて来たのが見えて思わず駆け寄る。

 

「オーキド博士!」

「ん?おおっ、シンヤ!!お前さんも来ておったのか!」

「大丈夫ですか?怪我は?」

「大丈夫じゃ」

 

乗員はみんな無事らしい。

ほっと安堵の息を吐いた時にコジロウがヘリの破損した機器を雪から引っこ抜いているのが見えて私は眉を寄せる。

 

「ん?後ろに何か…」

「いや何も!!それよりもそちらの女性は誰ですか!!」

 

とっさにコジロウの姿が見られないように庇ってしまった私は見知らぬ女性へと視線をやる。

私?と自分を指差して首を傾げた女性。コクンと頷けば女性はニコリと笑った。

 

「私はハナコ、サトシの母親よ」

「サトシの…」

「知り合いかしら?」

「ええ、まあ」

「そういえばサトシは!?サトシは大丈夫なの!?」

 

サトシは無謀にも激戦地へと行きました。とは言えずもごもごと口籠る。

しかしすぐに自分の息子を見つけたらしいハナコさんが声を荒げながらサトシの名前を呼んだ。きっと後でこっぴどく怒られるな……。

母親という存在には勝てそうにもない、と溜息を吐いた時に誰かの顔が頭を過った……。でも、その顔が思い出せない。

ニッコリと笑う、誰か……。

 

「ねえ、貴方!シンヤくんって言ったわね!」

「はい?」

「ちょっとサトシを連れ戻して来てくれない!?あんな所に居たら危ないわ!!」

「……」

 

ハナコさんに背を押され再びカイリューの背に乗る。

連れ戻すのは難しいが援護くらいなら、と思いカイリューと共に空へと飛ぶ。

 

「カイリュー、りゅうのはどうでサトシを援護するぞ」

「バォ!」

「フリーザーの攻撃に注意しろ」

「バォオオオ!!」

 

大きく声を上げてファイヤーへと攻撃したカイリュー。下を見るとムサシ達がゴムボートで氷の道を走っている。

あの口上をゴムボートの上で言い切ったムサシ達がサトシを乗せ走り出した。どうやら前方に見える島に向かっているらしい。そういえばお宝どうの言っていたな……。

 

「どうして?」

「世界の危機はみんなの危機」

「世界が潰れる瀬戸際に」

「悪も正義もありゃしない!」

「目指すはひとつ!」

「世界の平和、楽しく盗める泥棒世界~」

「ニャーんて言ってニャいで、目指すは氷の島ニャ!!」

「「おう!!」」

 

ろくな理由じゃないな……。

そうは思いつつも口元が緩む、なんとも悪人になりきれない連中だとつい笑ってしまった。

上空から眺めているとファイヤーがゴムボートへ向かって飛んでいく。ファイヤーの火炎放射をゴムボートを揺らし上手く避けたムサシ達を見てからファイヤーにりゅうのはどうを食らわせる。

同じくゴムボートに目掛けてかみなりを落としたサンダーはルギアが体当たりで跳ね飛ばし、冷凍ビームを放ったフリーザーの攻撃を防いだ。

 

「カイリュー、アクアテールでファイヤーを弾き飛ばせ!!」

「バォオ!!」

「ルギア!!後ろからサンダーが来てるぞ!!」

 

ファイヤーを弾き飛ばしたカイリューがぐるぐると旋回する。落ちないようにしがみ付きながらルギアに声を掛ければ私の声に反応したルギアがサンダーの攻撃を防ぎ弾き飛ばした。

あのバリアーみたいなの便利だな……。

 

「ん?フリーザーが……」

 

姿の無いフリーザーを探せば島の上空の方に居る。あそこには今サトシ達が居るんじゃないのか……、さっき登って行ったよな……。

しまった、と思った時にはすでに遅く冷凍ビームを放つフリーザー。サンダーがフリーザー目掛けてかみなりを落とすとファイヤーもサンダーを追いかけて行った。

 

「カイリュー!」

「バオオオ!!」

 

フリーザーが倒れたのを目で確認した。

かみなりを食らったうえに火炎放射だ無理もない。だがカイリューに乗っている私としては少し有利になったわけだ。

ルギアに乗ったサトシを見つけ、ルギアへと攻撃しようとするサンダーへりゅうのはどうを食らわせる。

 

「ん!?」

 

攻撃を避けるルギアの足に掴まっていたムサシ達がルギアの足から手を離した。

 

「「「あんたが主役~!!」」」

「……」

 

馬鹿だな。

ファイヤーにアクアテールを食らわせた後、カイリューを急降下させる。

ドシンとカイリューの背に落ちたムサシ達、下は攻撃を受けて氷がまばらに溶けてはいるが冷水。

 

「潔さだけは認めてやる」

「シンヤ…!!」

「助かったニャー!!」

「いやーん、カイリューに乗った王子様みたいじゃない!!」

 

カイリューに乗った王子様は他を探してもらいたい。カイリューを使う男なんてそこらに居るだろうからな……、ドラゴン使いとか特に。

さすがに大人三人は重たいらしい、カイリューが重いと呻き声をあげた。

 

「ニャニャ!?重量オーバーニャ!!」

「コジロウ、あんた落ちなさいよ!!」

「オレぇ!?」

「暴れるな!!下に降ろしてやるから自分達で歩け!!」

「「「歩くっ!!」」」

 

ムサシ達を氷の上に降ろすとカイリューが声をあげて指を差した。

視線をやればルギアの周りに見たことのある物体が飛び交っている。

 

「あの男は……!!」

 

この状況下にあってもコレクションか!!

目当てのルギアを見つけたから捕獲するつもりなんだろうが、今はサトシがルギアの背に乗っているというのに!!

あの男だけは一発、いや一発と言わずにぶん殴ってやる……!!

捕獲されたルギアが海面へと落ち、捕獲された状態のまま浮上してきた。

ルギアが飛行宮目掛けて攻撃を放つが何という技なのか私には分からない、ルギア特有の技なのかもしれない。その攻撃の威力は凄まじいものだった……。

ジラルダンの捕獲用の器具を絡ませたルギアが更にもう一度、苦しみながら攻撃を放ち海面へと落下した。

 

「サトシー!!!」

 

ルギアが海に沈んだと同時にファイヤーとサンダーが攻撃を仕掛けて来る。

さすがにファイヤーとサンダーも弱っているらしく両者ともボロボロだった……。

 

「カイリュー!逆鱗!!」

「バォオオ!!」

 

上空からサトシの姿を探すとサトシを抱えるカスミの姿を見つけた。

岸からケンジがロープで引っ張っていたのが見えたので私もカイリューの上から手を伸ばしロープを掴んで岸の方へと移動する。

岸へとサトシを引っ張りあげて脈を測る。脈は正常、体は冷えているが必要な体温はあるらしく顔色も悪くない、どうやら気を失っているだけらしい。

 

「サトシ!!しっかりして!!」

 

気が付いたサトシが体を起してポケットに手を突っ込んだ。

 

「お宝!!」

 

大きなビー玉のようなものを取り出したサトシはよろけながら立ち上がる。

 

「サトシ…!!」

「行かなくちゃ、オレが行かなくちゃ…!!」

 

フラフラになりながらも歩きだしたサトシの後を追う。

躓き膝を付くサトシにカスミとケンジが駆け寄った。それでもサトシは自分の足で階段を上って祭壇へと向かう。

そういえば、ハナコさんが来てるって教えてないな……。まあ良いか、教えても何が変わるわけじゃない、どうせ怒られるんだろうし……。

息を切らせて階段を上りきったサトシがヤドキングの傍へと駆け寄った。ヤドキングの上にトゲピーが乗っている。

そしてヤドキングの隣に居た少女は誰だろうか……。

 

「優れたる操り人」

「これで良いんだよな!」

 

宝をヤドキングに見せたサトシ。

ヤドキングは頷いた後、祭壇の中央を指差した。そこへサトシが駆けて行く。

優れたる操り人、石碑に書かれていたものの事だろう。この場合は、人間のトレーナーと考えて良いのだろうか……。

世界の危機とはいえ、子供にやらせて良い事ではないと思うが…。私もハナコさんに怒られるのだろうか……、嫌だな……。

小さく溜息を吐くと地面から雪が吹き飛んだ。

視線をあげると祭壇からは光る水が溢れている、どういう仕組みなのだろうか…。

周りの雪が吹き飛んでハイビスカスの花が咲きほこっている。祭壇を囲むように立つ岩が水の光を受けてクリスタルのような輝きを帯びた。

 

「フルーラ」

 

カスミにフルーラと呼ばれた少女が祭壇へと上がりサトシの傍に立った。

そして不思議な楽器で音色を奏でる。

渦を巻いた海流が現れた時に聞いた音色だった。

怪しげにかかる雲から光が差し込む。強い突風も姿を消したと思った時に足元に祭壇から溢れる水が流れ込む。

そのまま水は崖を流れ落ちて氷に覆われた海面に広がって行く……。

元気を取り戻したらしいファイヤー、サンダー、フリーザーが鳴き声をあげながら空を旋回している。

神々の怒りを鎮めるというのはこういう事だったのか、と天を仰いだ時……、渦を巻く海流からルギアが現れた。

ぐるりと空を旋回したルギアはサトシ達の前に降り立つ。

そういえば、ジラルダンの奴をぶん殴ってないな……と思い出した時にサトシがルギアの背に乗るのが見えた。

ルギアと視線が合う、私の隣に居たカイリューが私を無理やり背に乗せた。

 

「うぉ!?」

 

驚いてカイリューの背にしがみつくとカイリューは飛び立ったルギアの背を追って同じく空へと飛び立つ。

ルギアの隣を気持ち良さそうに飛ぶカイリュー、飛びたかったなら自分だけ行けば良かったのにと思いつつ景色を眺める。

すると間近で大きな海のアーチがかけられた。目の前のその光景にポカンと口を開けてただただ呆然と見つめた。

集まっていたポケモン達が帰って行く……。

海のアーチが重力によって海面へと落ちる。大きな音を立てて落ちた海のアーチは海面と溶け込んで消えた。

ファイヤー、サンダー、フリーザー達が自分の島へと戻って行くのを見送ってカスミ達の所へとカイリューと共に降りる。

サトシとルギアが戻って来る頃、辺りは夕焼け色に染められていた。

大きく鳴いて翼を広げたルギアが言う。

 

< 私が幻である事を願う、それがこの星にとって幸せな事なら… >

 

空高く飛びあがったルギアは上空から急降下して海面に飛び込んだ。

静かになった景色を眺めているとカイリューがちょんちょんと私の背を突く。振り返ると崖を降りて来るオーキド博士達が見えて私はカイリューに飛び乗った。

 

「行くぞ!!」

「バォ!!」

 

シンヤさん!?と驚いたように声を掛けられたが私は振り返らなかった。

オーキド博士達から逃げるようにその場を離れた私はサンダーの住まう島へと降り立った。

無残にもルギアの攻撃で破壊された飛行宮……、辺りが暗くなっているので月明かりを頼りに目当ての人物を探す。

まさか死んでないよな…と考えを巡らせた時、目当ての人影を見つけた。その後ろ姿を見るだけで自分の顔が引き攣るのが分かる。

 

「Mr.ジラルダン」

「…シンヤ」

 

私を見てニコリと笑った男に対して、ヒクリと口元が引き攣った。

 

「自分の過ちを深く反省するんだな」

「そうだな、痛手は大きい……」

 

手に持っていたらしいカードに視線を落としたジラルダン。

今まで集めた自分のコレクションが無残に散ったのが痛手という事なのだろう、危うく世界が無くなる危機だったというのに……。

 

「とりあえず殴らせろ」

「冗談だろう?私は暴力は好きじゃないんだ」

「人を檻に閉じ込めた報いを受けろ、私の苛立ちは納まらん!!」

 

私が拳を握りしめてジラルダンへ近寄れば、ジラルダンは一歩一歩と後退する。

 

「殴ってスッキリしたら私も鬼じゃないんだ……。この無人島からポケモンセンターに送ってやる……」

「それは嬉しいね、でもここは穏便に済まさないかシンヤ…」

「殴らせろ」

「シンヤ…」

「否、殴る!!!」

「!?」

 

*

 

医者が人間を殴るなんて……と言われてもな。

私はポケモンドクターなんだろ、ポケモン専門なんだから別に人間を殴るくらい良いじゃないか。

 

「人を殴るという行為自体、人としてどうなんですか!!」

「その馬鹿が悪いんだ!!」

「馬鹿とはなんです!馬鹿とは!!」

 

ごめんなさいね、ジラルダン様。とニッコリとジラルダンへと笑顔を向けるジョーイ。

顔を腫らせたジラルダンを連れて帰って来たら私がめちゃくちゃ怒られた…・なんだ、私が悪いのか、そいつは目的は違えども結果的に世界を破滅させようとした男だぞ!!

 

「色々な場所でジョーイとは出会って来ましたが、貴女はどのジョーイよりも優しく天使のような方ですね」

「まあ!ジラルダン様ったらお上手なんですから、も~!」

「ふふふ」

「うふふ」

「……」

 

もう二、三発ほど殴っても私は許されると思う。

神だって私の行いを許してくれるに決まっている、そうだ、この男は殴られるべきだ!!

 

「……」

 

……神?

その言葉に何かが引っ掛かって首を傾げる。

 

「シンヤ、どうかしたのか?」

「いや、神と言うと何が思い浮かぶ?」

「神?そうだな…、神と呼ばれるポケモンがやはり思い浮かぶが…」

 

火の神、雷の神、氷の神、海の神…と指を折りながら答えるジラルダン。

そうだな、そういえばルギアも神だったな。

なんだか記憶に不思議と引っ掛かる言葉だったが、今日は嫌というほど四体の神を見たんだったな……。

 

「感情の神、意思の神、知識の神、森の守り神も居るらしいし、時を司る神に空間を司る神、創造の神なんて色々思い浮かぶよ」

「さすがジラルダン様、物知りですね」

「知識だけだよ」

 

笑い合う二人を視界から逸らして記憶の中を漁ってみる。

神、神、神……。

何か思い出しそうな気がする。誰かの顔が思い浮かびそうな気がする…。誰かの声が、聞こえるのに……。

 

< シンヤさん >

「…、ッ!?」

「シンヤ!?大丈夫か!?」

 

頭が痛い、割れそうに痛い……!!

知ってる、知ってる声だ、知ってる、絶対に知っているのに。

 

< さよなら、シンヤさん >

「ぅあ…ッ」

「シンヤ!!!」

< 貴方が全てを思い出し…… >

「…ッ、…、」

「ジョーイさん、シンヤを部屋に!!」

「は、はい!!」

 

痛い、頭が割れる、やめてくれッ!!

頭の中で声が反響する度に頭痛がする、眩暈がする、吐きそうになる、胸が締め付けられる…ッ!

 

「シンヤ、しっかりしろ!!シンヤ!!私の声が聞こえてるか!?」

< 再び >

「ぅぅ…、ッ!!!!」

「シンヤ!!!」

「ぅ、ぐッ、ぁあッ!!!!」

「シンヤ!!シンヤ!!!」

< こうして会える日を楽しみにしています >

「ッ、あぁぁあッ、あアぁあアァあッ…!!!」

シンヤー!!

シンヤ、大丈夫ですか?シンヤさん、貴方らしくないですよ?シンヤ、頭痛いの?平気?ワタシが診てやろうか?あまり無理をするな主……。

「シンヤ!!しっかりするんだ!!」

ご主人様、本日のご予定は?あ、オレが買い物に行ってきますよ!お母様になんとか言って下さい!なあなあ、お菓子食べて良いー?自分は仕事に行って来る…。オレがずっと見ててやるから安心しろ!!だぁああー!!やかましい、泣くなこの低能馬鹿!!ラルー!!

うわぁああああん!!シンヤー!!

「…ッ!!!」

「シンヤ!!」

「シンヤさん!!大丈夫ですか!?」

 

痛い、頭が割れそうだ……。

頭が痛い、痛くて痛くて仕方がない……。

だから、

涙が、止まらないんだ……。

 

俺様はシンヤに必要ないかな……。

「…ッ」

シンヤの事を一番スキなのは俺様だから!!!

「…、!!!」

……シンヤのバカーッ!!

「、…ロカ…、ス…」

「シンヤ!!!」

「ラッキー!!すぐに担架を!!」

 

*


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