一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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ロケット団と一緒に反対側の塔へと移動し、階段を上って行く。

階段を上がると室内だと言うのに空が広がった、まるで外みたいだなと思いつつ視線を動かせば女とタケシがポケモンバトルをしていた、その女の後ろにはエンテイが居る。

 

「あ!」

「うわ、急に止まるなよ!!」

「シーッ!静かにしなさいよ!!」

「抜き足差し足忍び足ニャ!」

 

コジロウに背を押されて階段を駆け上がる。

 

「っていうかさー、こんな所にお宝あんのかなー?」

「何言ってんのよ!今更手ぶらで帰れるわけないでしょ!!」

 

無いと思うけど、とは言ってやらなかった。

タケシとポケモンバトルをする女、エンテイと一緒に居る所を見るとミーという少女なんだろう…。

成長した自分まで作れるなんてアンノーンって結構凄い奴なんだな…、と思った所でこの世界がすでに私を中心としてディアルガとパルキアが創った世界だと言う事を思い出した…。

ポケモンって凄いな…。いつか人間がポケモンにゲットされる日も来るかもしれない…。

長い階段を上りきったらまた別の階の室内、と思いきや部屋へと入った途端に水の中だった。

 

「「「ごぼぉおお!!」」」

「息、出来るぞ」

「「「!?」」」

 

走らずとも泳げるのは便利だと地面を蹴って階段を走らず泳いで上る。

 

「こんなのありかよ~」

「つまんない理屈は考えない!!行動あるのみ!!」

「我ら宇宙を乱すロケット団、ひたすら高みを目指すのみ…ニャーんてニャ!!」

 

ここではどうやらミーは10歳くらいだろうか、カスミとポケモンバトルをしている。

と、いう事はサトシだけが階段を上って行ったわけか…、ハナコさんも連れて行かれたもんな…。

 

「って、ちょっとシンヤ!!アンタ速いわよ!!」

「お前達が遅いんだ」

「いーや、シンヤが速い!」

「なら、ニャースだけ掴まって良いぞ」

「ニャー!!ありがとニャー!!」

「「ずっりぃのー!!」」

 

水の中を抜けて階段を駆け上がっているとくっ付いてたアンノーンが鳴き声をあげる。

 

「ノォーン」

「何かあったのか!?」

 

体を震えさせるアンノーンを見て私は更にスピードを上げた。

 

「先に行く!!」

「え!?」

「ちょ、速ッ!!!」

「足の長さの差ニャ…」

 

*

 

階段を上がり終えると尖った結晶が室内を埋め尽くしている。

ブルドーザーを追いだした時のような、拒絶の意味があるんじゃないかと思う。

 

「これでも私が幻だと言うのか」

「お前はその子の心が作り出した幻のエンテイなんだ!!」

 

サトシの声が聞こえた方へと走ればエンテイと対峙するサトシを見つけた。

サトシの言葉をミーが激しく否定する声が聞こえると吹雪が吹き始めた、寒いっ…!!

 

「私が、幻だと!?」

 

エンテイが咆哮する。

自分が幻である事を知らなかったのか、そのエンテイの声はやっぱり私の知っているエンテイの声とは違った。

というか、ポケモンの姿のままで流暢に喋ってる時点で違うか。

 

「私は…私は…、この子の父親だ!!」

 

サトシへと向かって来るエンテイにピカチュウが電撃を食らわせる。

だが電撃などものともせずにサトシへと向かうエンテイを見て、後ろからサトシの腕を引いた。

 

「うわ!!あ、シンヤさん!!」

「大丈夫か!?」

「はい!でもピカチュウが!!」

 

エンテイの攻撃を避けて逃げ回るピカチュウを視線で追う。

ミロカロスとハナコさんは何処だ?ミーの姿も見えない。

 

「ミーちゃん、思い出して!」

 

ハナコさんの声に視線を動かす。

 

「ミーちゃんの本当のパパとママの事を!!ミーちゃん!!」

 

ハナコさんの姿を見つけた時、サトシが声を上げて走り出した。

エンテイの攻撃が辺りを飲み込もうとする。

ミーに駆け寄るハナコさんの姿と、ミーの傍で立ち尽くすミロカロスの姿を見つけて走った。

そのままミロカロスと、ミーを抱きしめたハナコさんごと抱き込めば爆風が辺りを覆った。

 

「きゃぁ!!」

「ッ!?」

 

硝煙に目を細めて顔を上げればサトシの悲鳴。

慌てて振り返れば壁には大きな穴が開いていた、もしかして落ちたのか!?

最悪だ、と立ち上がればリザードンがサトシを抱きかかえて戻って来た。

 

「サトシ…!!」

 

ハナコさんが嬉しそうに声をあげる。

大きく息を吐けば、激しい動悸が少しだけ納まった。絶対に今ので寿命が二年ほど縮まった気がする…。

 

「大丈夫だった…?」

 

ハナコさんがミーにそう声をかければミーは頷きながらハナコさんから距離を取った。

そしてゆっくりと起き上がったミロカロスの手を握る。随分と静かだと思っていたらミロカロスの目は虚ろで生気が無い。

…お前は、黙ってると本当に美人だよな。

リザードンが鳴き声を上げる。

その声に私はサトシ達の方へと視線をやった。

 

「なんだソイツは」

「オレの仲間だ!」

「仲間…?」

 

ピカチュウがそうだと声をあげた。

リザードンが賛同し威嚇するように火炎放射を吐いて見せる。

 

「オレのポケモンはみんな、オレが旅をして出会った仲間なんだ!」

「ッ…仲間…」

 

ミーがサトシの言葉に小さく声を漏らした。

ぎゅっ、とミロカロスの腕にしがみ付いたミーは悲しげに表情を歪ませている。

 

「何匹集まろうと同じだ!!」

 

リザードンがエンテイに向かって頭突きを食らわせるが、エンテイに押し負けて弾き飛ばされた。

ミーの心の世界、ミーの思うままになる世界、いくら強くても普通のポケモンでは太刀打ち出来ないのだろう。

弾き飛ばされたリザードンの後ろに居たサトシが穴の壁から落ちそうになる、ボールからカイリューを出そうとしたが走って来たタケシ達がサトシの腕を掴んだ。

 

「オレ達も!!」

「仲間でしょ!!」

「タケシ!!カスミ!!」

「なんだかんだと言われる前に言っとくけど、ムサシ!」

「コジロウ!」

「ニャースでニャース!」

「「「ロケット団の仲間です」」」

 

カスミが驚いたように声をあげた。

サトシも助けられた事に驚いているようだった。

 

「どうして?」

「つい…」

「ニャんだか」

「手が出てた」

「敵とはいえ、長い付き合いだからニャ」

 

アイツら本当に悪になりきれない連中だな。

ほっ、と息を吐けばリザードンが起き上がり咆哮する。

サトシがミーへと視線をやる。

 

「さあ、ミーちゃん…。オレ達と一緒に行こう」

 

サトシがそう言えばミーはミロカロスの手を引いてサトシから距離を取る為に後ろへと下がった。

ミーの目の前にモココ、ヒメグマ、ゴマゾウの姿をした結晶のポケモンが現れた。

 

「私の友達はここに居る…」

 

ぎゅ、とミロカロスの腕を掴んだミーを見て私は眉を寄せる。

 

「オイ……、そいつは返してもらうぞ!」

「ッ!?…駄目、ミロちゃんは私の友達だもん!!ミーの世界を綺麗って言ってくれたミロちゃんはずっとミーの友達だもん!!そうだよね!?ミロちゃん!!」

「うん…」

 

コクンと頷いたミロカロスを見てミーがほっと安堵したように息を吐いた。

不安げに私を見たハナコさんに苦笑いを返してからミロカロスへと視線を戻す。

 

「ミロ、お前はミーと一緒に居たいんだな?」

「一緒に居てくれるよね、ね、ミロちゃん!!」

「…うん、ミーと一緒に居る…」

「ほらね!!言ったでしょ?」

 

コクンと私が頷けばミーはその顔に笑みを浮かべる。

 

「そうか、そこまで言うなら置いて行ってやる」

 

私がそう言い放てばサトシ達が驚いたように私を見ていたがミーは嬉しそうに笑ってミロカロスの手を握った。

 

「…ゃ」

「じゃあな」

「…、ッ、嫌ぁああああああああ!!!」

 

耳が痛くなるほどの悲鳴染みた声を上げたミロカロスが虚ろだった目からボロボロと涙を流しながら首を横に振った。

 

「ミロちゃん!!」

「やだやだやだやだぁ!!置いてかないでッ!!!」

「駄目ッ!!!」

「置いてかないでーッ!!」

「駄目!!みんな邪魔しないで!!みんな、出てって!!」

 

泣くミロカロスの腕を掴んだミーが言葉を発する。その言葉に反応したエンテイがサトシ達に向かって攻撃を放った。

リザードンの背に乗ったサトシがリザードンへと指示を出す。エンテイは放たれたリザードンの火炎放射を避けてミーの傍へと移動した。

 

「パパ…!!」

「貴方は本当にミーちゃんのお父さんになれると思ってるの!?」

 

ハナコさんが前に出てエンテイにそう言い放った。

この状況を理解出来ていないのかミーに腕を掴まれたままミロカロスがポカンとエンテイを見つめている。

 

「ミーが望む限り、私はミーの父親だ!!」

 

ハナコさんへ言葉を返したエンテイがサトシの乗るリザードンへと向かい攻撃する。

激しい攻撃のせいで崩れた壁や爆風がミーにも襲いかかる、悲鳴を上げたミーがミロカロスに抱き付いた。

 

「ハナコさん、こっちに!」

「ぁ、ありがとう!!」

 

ハナコさんの腕を引けばミロカロスが大きく口と目を開けて私を凝視していた。

 

「うあぁぁああ!!シンヤー!!ヤダー!!」

「お前はミーちゃんを守れ!!」

「誰!?誰、ミーちゃん!?この子供!?」

 

エンテイが壁に穴を開けて外へと飛び出した。

この場に居てはミーにも危険が及ぶと思った、父親なりの配慮なんだろう。

足場の少ない場所に移ってはリザードンの方が有利だ、と思っていたがここはミーの思うままになる場所。

飛び降りたエンテイを助けるヨウに結晶の足場が現れる、次々と移動するエンテイに合わせて足場は増えていった。

なんとも都合の良い場所だ……。

 

「エンテイ、お願いだ!!聞いてくれ!!お前が本当にミーちゃんの事を思うなら、オレの話を聞いてくれ!!」

 

サトシの言葉には聞く耳持たず、容赦なくエンテイは攻撃を続けた。

 

「お前があの子とここに居るのは間違ってる!!間違ってるよ!!」

 

エンテイに声をかけ続けるサトシに向かってエンテイは攻撃を放つ。

 

「たとえ間違いでも…私はミーの願いを叶えてあげたい!!」

 

一際、強力な攻撃が放たれた。

サトシはリザードンの攻撃で相殺しようとしたがエンテイの攻撃が強過ぎて大きな爆煙が辺りを覆った。

 

「このままじゃずっと、ミーはひとりぼっちなんだ!!!」

 

サトシの言葉に顔を上げたミーをハナコさんが抱きしめた。

状況を把握しきれていないミロカロスが涙目で私の服の袖を引っ張った。

 

「…ここ何処…」

「後で説明してやるから大人しくしてろ」

 

咆哮をあげたエンテイ。

現れた結晶を伝いエンテイがリザードンへと体当たりしてリザードンを突き飛ばす、その突き飛ばした先に結晶が現れてリザードンは硬い結晶の上に叩きつけられる。

完全に地の利はエンテイにあるらしい、リザードンの背に乗ってるサトシが落ちやしないかハラハラする…!!

上空へと飛んでしまったリザードン達の姿が見えなくなったと思ったら大きな爆音と共に天井からリザードンが降って来る。

そのまま床に叩きつけられたリザードンの首をエンテイが踏み付けた。

リザードンの背から弾き飛ばされたサトシが声をあげる。

 

「リザードン!!」

「これで終わりだっ!!」

 

「やめて!!」

 

至近距離からリザードンに攻撃を放とうとしたエンテイを止めたのはミーだった。

攻撃を抑えたエンテイの傍へとミーが駆け寄った。

 

「パパ、やめて…!!もういい、もういいよ!!」

 

ミーの言葉を聞いてエンテイはゆっくりと踏み押さえていたリザードンの首から足を退ける。

そしてタケシとカスミが前に出た。

 

「ミーちゃん、キミには負けたよ」

「ぇ…?」

「ゴマゾウの転がる、強烈だった」

「マンタインの渦潮もね、貴女だったらきっとジムリーダーにだってなれるわ」

 

驚いたようにタケシとカスミを見つめているミーにリザードンの傍に居たサトシが声をかける。

 

「バトルが終われば同じポケモンを愛する者同士、オレ達は仲間だ」

 

リザードンとピカチュウが頷き鳴き声をあげる。

その言葉にキョトンとした表情のままミーは私の方へと視線をやった。勿論、視線の先には私の服の袖を掴んだまま状況を把握しきれていないミロカロス。

 

「私達も参加したんだから、仲間だよな。ミロ」

「へ!?え、あ、うん」

 

わけも分からないまま、ミロカロスが頷く。

 

「出ようぜ、外に!!」

 

サトシの言葉に反応したミーがサトシの方へと視線をやった

 

「外に出れば喧嘩もするし」

「仲間も出来る」

 

カスミとタケシが顔を見合わせてから笑みを浮かべた。

 

「いっぱいね」

 

不安げな表情を浮かべたミーがハナコさんの方へと視線をやった。

ミーと目が合ったハナコさんは大きく頷いて手を差し伸べる。

 

「行きましょう、ミーちゃん」

 

ハナコさんの言葉にミーはエンテイの傍からハナコさんの方へと歩き出す。

そして小さく俯いた後、ゆっくりとハナコさんの手をミーは握った。

ハナコさんの手を取ったミーは涙を流しながら笑っていた…・

 

「あったかい…」

 

モココ、ヒメグマ、ゴマゾウ…結晶のポケモン三体が消えて、エンテイがミーに背を向けて歩きだした。

 

「パパ…?」

「私は…お前を幸せにする父親として生まれた。お前の幸せが…外にあると言うのなら…私は…」

 

エンテイの言葉を途中で遮るように床から結晶が突然現れた。

激しい音を立てながら辺りを結晶が埋め尽くしていく、胸元に居たアンノーンがガタガタと震えていた。

 

「なんだ!?」

「ノォォン…」

 

助けて、そう言ったアンノーンを片手で押さえながら走る。

エンテイが攻撃を放ち道を開けた、震えるアンノーンを押さえながらミロカロスに手を伸ばす。

 

「行くぞ!!」

「う、うん!!」

 

地響きの鳴り止まないまま、階段を駆け下りながらサトシがポケギアを取り出した。

 

「博士!!どうなってんだよ!!」

<「アンノーンじゃ!!一度解き放たれた力を自分で止められなくなったのじゃ!!サトシ!!アンノーンの暴走を止めてくれ!!」>

「分かった!!」

 

そんなあっさり返事をするのもどうかと思うけどな…。階段を駆け下りながら心の中でそう思った。

一度上って来た階段を駆け下りて、アンノーンを見つけた広間へと行くと先ほど見た時よりも激しくまるで混乱したようにアンノーンが飛び交っていた。

 

「これがアンノーン…」

「どうやって止めるのよ…!」

 

カスミがそう言葉を発した時、サトシが雄叫びを上げてアンノーンの群れに突っ込んで行ったが案の定、弾き飛ばされて床に倒れ込んだ。

…サトシはすぐに体当たりする子だな、早死にするぞ。

 

「バリアーに守られている…!?」

「リザードン、行ってくれ!!」

 

起き上がったサトシがリザードンにそう言うと咆哮したリザードンがサトシと同じようにバリアーへと体当たりをする。一瞬開いたバリアーの隙間に火炎放射を放った。

バラバラに飛び散ったアンノーンを見てサトシ達が「やったぁ!!」と声を上げたがアンノーン達は力でリザードンを弾き飛ばし、再び一ヶ所に留まり元通りになった。

あからさまに肩を落としたサトシ達、ピカチュウがサトシに声をかけるとサトシは頷いた。

 

「ピカチュウ、頼む。十万ボルトだ!!」

 

ピカチュウが十万ボルトを放つ、それに加勢するようにリザードンが火炎放射を放ったがアンノーンの力によって再び弾き飛ばされた。

攻撃を食らって慌てたのか私達を引き離すように結晶が襲いかかって来る。

 

「ヤバイんでないのこれって…!」

「お宝も無さそうだし、さっさと帰るニャ!」

「そうしましょ~」

「失礼しまぁす…」

 

部屋から出ようとしたロケット団の前に結晶が行く手を阻む。

 

「通せんぼニャ!!」

「誰か何とかしてぇええ~!」

 

ますます激しくなるアンノーンの暴走、このままではいつ結晶の串刺しになるか分からない状況だ。

一番の攻撃力の要が人の姿のままミーに手を握られているのではポケモンの姿にこっそり戻すなんて事も出来ない。

ミロカロス抜きだとカイリューの攻撃力で、と行きたい所だがカイリューも疲れきっている為、結晶の串刺しになってしまう可能性も捨てきれない。

このアンノーンの大群に残りのメンバーだけでは攻撃力が心許ない気もするが、相性で何とか押せるだろうか……。

ボールを四つ取り出した所でエンテイの雄叫びが聞こえた。

声の聞こえた方を見やれば壁を破壊してエンテイが現れた。攻撃を放ち結晶を吹き飛ばしたエンテイがアンノーンの前に降り立つ。

 

「ミー…、私は嬉しかった…お前の父親になれて…。最後に私に出来るのはお前をここから外に出してやること」

「パパ…」

「私はお前の夢から生まれた。お前が信じてくれれば、私はどんな事でも出来る!!」

 

アンノーンに向かって体当たりをしたエンテイがバリアーに弾き飛ばされる。

私は四つのボールを放り投げた。

 

「援護する!!」

「シンヤさん!!」

 

エンテイが居れば攻撃力に申し分は無い。

後はバリアーとアンノーンを弱らせるだけで良い!!

 

「ライチュウ、かわらわりでバリアーを破壊しろ!!ゴースト、ナイトヘッド!エーフィ、シャドーボール!ブラッキーは悪の波動!!」

 

エンテイの背を飛び越えてライチュウがバリアーにかわらわりを食らわせた。

盛大な音を立ててバリアーが割れるとゴーストのナイトヘッド、エーフィのシャドーボール、ブラッキーの悪の波動がアンノーン達に一気に当たった。

 

「頑張って!!パパ!!」

 

エンテイの攻撃がアンノーン達の中心に当たる。

眩い光を放ったその攻撃に思わず目を瞑った。

 

 

「ミー、ミー…」

 

エンテイの声に目を開ければ眩い光を背にエンテイが空中に浮かんでいる。

 

「パパ…」

「ありがとう…パパと呼んでくれて…、私はお前の夢に帰る…」

 

結晶の姿へと戻ったエンテイが消えた。

眩しい光に目を細めながら、今度エンテイに会ったらお前パパだったぞと笑いながら話してやろう。

エンテイが消えて、眩しかった光も納まると天井からアンノーンと四角いピースのような物が振って来た。カラカラと音を立てて落ちたピースを一つ拾い上げる。

ジョンさんが持ち帰って来たのはコレか……。

青白くピースが光ったかと思うとエンテイと同じようにピースは消えてしまった。

ピースが消えたのを合図にアンノーン達が空間の歪みへと飛び込んで行く。自分たちの住処に帰るらしい……。

胸元にくっ付いていたアンノーンを手に取って放すと、私の周りをくるりと回って空間の歪みへと向かって行った。

 

「ノーン」

「ああ、またな…」

 

アンノーンが消えて空間の歪みも無くなると足元を覆っていた結晶がみるみる消えて行く。

この結晶塔を作り保っていたアンノーンが居なくなった為、全て元に戻るようだ。

玄関の扉を開けて外に出れば丁度、日が顔を出した時間だったらしい。

視界いっぱいに広がる景色に感嘆の息を漏らす。緑豊かなグリーンフィールド、まさに名の通りだな。

 

「これがホントの」

「グリーンフィールド」

「綺麗だ…」

 

サトシ達の言葉に賛同する様にエーフィが頷きながら鳴いた。

すると車のクラクションの音、視線をあげれば向こうから沢山の車が走って来る。今更ながら広い敷地内だな…。

 

「おーい、みんな無事かー?」

「オーキド博士ー!!」

 

車の助手席から顔を出して手を振るオーキド博士にサトシ達が手を振り返す。

 

「ん?」

 

不意に見上げた空に雲が見えた。

小さなミーの肩を突いて、空を指差せばミーにも私と同じように見えただろう。

 

「ぁ…」

 

ほんの一瞬だけ、その形に見えた。

小さく「ありがとう」と呟いた声は私にしか聞こえなかっただろう。

 

「ピカチュー!」

「お出迎えに行こうぜ、ミーちゃん!」

「みんな心配してたのよ!」

「さあ!」

「うん!!」

 

走って階段を下りて行ったミー達に続いて私も階段を下りる。

車から降りて来たジョンさんと執事のデイビットさん。ミーがデイビットさんに抱き付くのを見て小さく笑みを零す。

 

「シンヤさーん!!アンノーンの一匹でもお土産を!!」

「無い」

 

ガクンとその場で膝を付いたツバキを見てサトシ達がアハハと笑っていた・

ジュンサーさんにご苦労様ですと敬礼されて思わず苦笑いを零した所で気付いた。そういえばロケット団は何処に行った…?

途中まで一緒に居たよな…、背後を振り返ってみたがやっぱり居ない。

 

「シンヤさん!!この騒動について何かコメントをお願いします!!」

「ああ、そうだな…凄く眠い」

「えぇ!?」

 

アハハ、と笑い声が飛び交う中で「良い感じ~」と上の方から聞こえた気がして見上げてみたが姿は見えなかった。

 

*

 

騒動が終わった昼頃、行方不明だったシュリー博士と連絡が取れたらしく三日程で帰って来れるかもしれないとの事だった。

アンノーンの調査はもう嫌という程したから話なんて聞かなくても良い。とツバキを適当にあしらったら怒られたが…。

 

「えー!?シンヤさんって有名なポケモントレーナー!?」

「そうよ!最もポケモンマスターに近い男と言っても過言では無いわ!」

 

いや、過言だと思う。

ポケモンセンターで昼食を食べているとサトシに驚愕の目で見られた。

トレーナーのシンヤのファンだというリンが私の事を事細かに説明したせいだ。

 

「シンヤさんってポケモンドクターなんじゃ…」

「ノンノン、甘いぞタケシくん」

「ツバキさん!!」

「シンヤさんはポケモントレーナーとして名を広めた後にポケモンコーディネーターに転身、数多くのコンテストを総なめにしたトップコーディネーターでありながら優秀なポケモンブリーダーでもある!!その経験を活かし、現在ポケモンドクターとしてここに居るわけよ!!どやぁ!!」

「す、すごい!!」

 

私であって、私じゃないんだけどな。

暫くポケモンセンターに留まるつもりなので是非ともブリーダーとして勉強させて下さい、とタケシに頭を下げられて小さく頷く。

別に教えるだけならな…。

 

「バトル!!」

「しないぞ」

 

ガクンと肩を落としたサトシの肩をカスミが苦笑いしがなら叩いた。

オーキド博士とハナコさんは朝少し休んでから昼前にマサラタウンへと帰ってしまったがエーフィもグリーンフィールドを満喫したいだろうし私も暫くポケモンセンターに泊まる事にしよう。

昼食を食べ終わった私は食器を片手に立ちあがる。未だリンとツバキが熱く語っているが放って置こう。たとえその話がシンヤの事でもだ。

私じゃない、別のシンヤ別のシンヤ、と言い聞かせて食器をラッキーに手渡した。

 

「シンヤー」

「なんだ、何処行ってたんだ?」

「ミーちゃんのとこ!」

「……」

 

なんだかんだと、いつの間にか仲良くなったのか……。

そういえばエーフィとブラッキーも見てない…、カイリュー達はリザードンとポケモンセンターの庭でのんびりしているのを見たが…グリーンフィールドを散歩でもしているのだろうか。

見ていないと言えばロケット団も全く見ていないのだが大丈夫なのか…?まだ警察がウロウロしてるし、悪人の身としては動き難いだろう…。

まあ私自身は悪人とは思えないんだが……。

 

「シンヤー」

「なんだ」

「あのな、ミーちゃんがヒメグマ欲しいって言ってたから俺様がシンヤに頼んでみるって言っちゃった」

「ヒメグマか…」

 

まあ、ジョウト地方の家の方に野生のが居るんじゃないか?

とりあえず、どうにかなるだろう、ミロカロスの言葉に頷けばミロカロスは目を輝かせた。

 

「良いの!?」

「ああ」

「やった!!」

 

えへへ、と笑ったミロカロスの頭を撫でる。

 

「それじゃ、ミーちゃんに言いに行って来る!!」

「……」

「何?」

「いや、大分懐いてるみたいだと思ってな。そんなに懐いたならボールごと置いて行ってやろうか?」

「ッ!?!?」

 

ブンブンと首を横に振ったミロカロスの目は涙目だった。

 

「冗談だ」

「そういう冗談嫌いだ!!」

 

頬を膨らませたミロカロスの頬を片手で掴む。

オクタンみたいな口になったミロカロスを見て笑えばミロカロスは眉間に皺を寄せて私を睨んだ。でも手は振り解かないんだな。

手を離せばミロカロスは自分の頬を両手で押さえて私を睨む。

 

「次、置いてくとか行ったら許さない…!!」

「どう許されないのか見物だな」

「くぁあああ!!意地悪!!」

 

ぶーぶーと怒るミロカロスを見て口元に笑みを浮かべる。

 

「オイ……、そいつは返してもらうぞ!」

 

あの時、わざと置いて行くなんて言ったがあそこでミロカロスが正気に戻らなかったら私はどうしていただろうか……。

思わず零れそうになった言葉は周りの目を感じて飲み込んだ。

それは、私のものだ。

絶対に私から離れて行かないという自信がある、自信があるだけに奪われそうになると何故か腹が立った…。

わざわざ自分から乗り込んで行くほど…冷静のつもりでも案外冷静じゃなかったのかもしれない…いや、でも時間が経っても帰って来なかったミロカロスが悪いんだ…。

少し…大人げない、か…?

 

「シンヤー?どうしたの?」

「別に…」

「俺様、ミーちゃんのとこ行って来るよ?行って来るけど置いてかないでね?」

「……」

 

私が返事をしないで居ると不安になったのかミロカロスの目に涙が溜まる。

 

「シンヤ…?」

「ミロカロス」

「?」

「お前、私の事そんなに好きか?」

「うんっ、大スキ!!!」

「そ、そうか…。さっさと行って来い」

「分かったー、行って来る!!絶対に置いてくなよ!!」

 

手を振るミロカロスに軽く手を振り返した。

ポケモンセンターから出て走って行ったミロカロスの背を見送って自分の足のつま先に視線を落とす。

 

「…。」

 

あまりにも早くそれが当然のように返事が返って来たから……。

 

「…馬鹿か、私は…」

 

柄にもなく、照れた……。

 

*

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