一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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何度かトゲキッスが街の様子を見に行ったが特に誰も暴れていないそうだ。

でも、グリングス・コーダイが街の中で何かを探しているのは見た…と…。

 

「グリングス・コーダイ…聞いた事がありますね」

「私も思った」

 

エーフィの言葉に返事をすれば窓の外を眺めていたブラッキーがお菓子を食べながらこちらに視線をやった。

 

「未来を知る男、とかそんな感じの偉い奴だろ?オレ、雑誌とかで見た事ある」

「ああ、そうですそうです!!事業を成功させたとかいう人間ですよ」

 

意外と情報通のエーフィとブラッキー。

でも、なんでそんな人間がポケモンバッカーなんてスポーツに参加してるんだろうな。

名を広める、宣伝目的という理由も無くはないだろうがすでに十分なほど有名人なんじゃないのか…?私はあんまり覚えてなかったけど…。

それに連れていたというエンテイ、ライコウ、スイクン…。実際には偽物なのかもしれない疑いもあるわけだし、怪しい男だ。

 

「ただーいま」

 

その辺を歩いて来ると出掛けていたミミロップとサマヨールが戻って来た。トゲキッスはまだその辺を飛び回っていて戻っていない。

 

「あのさ、そこらに居た野生の奴らに聞いたらセレビィ見たって」

「何処に行ったんだ?」

「それは分かんないみたいだけど、ピカチュウとポッチャマ、そんでゾロアって奴と一緒だったって」

「ゾロアというのはゾロアークの進化前のポケモンらしい。そして暴れ回っていたというゾロアークを探しているそうだ…」

 

そんな情報を貰ってもさっぱり分からないな…。

外はもうすっかり日が暮れる…、散歩がてらのお出掛けのはずがとんだ災難だ…。

 

「シンヤ!!セレビィを見つけました、街の外れにある大きな木の所に居ます!!」

 

駆け込んできたトゲキッスの言葉を聞いて立ち上がった。

 

「よし、行くか」

 

ここで座り込んでるのにも飽きたし、持ってきた本も全部読んでしまったし…。

ポケモンセンターにでも行ってゆっくり休みたいところだ。

 

*

 

「海の方で何か爆発したぞ!?」

 

「今はセレビィが、先…!」

 

大きな爆音と暗闇に光る赤い火を見つけて後ろを振り返るがスイクンに腕を引っ張られて走る。

トゲキッスが前を先導してくれているのを見失わないように追いかけた。

人の姿で走っている為にスイクンの表情がよく分かる、何処か焦ったような顔だ。セレビィに何かあったのかもしれない…。

開けた場所、大きな木が見えた所でスイクンが空を見上げて立ち止まった。

 

「落ちてくる…!」

「え?あっ!!トゲキッス!!」

 

トゲキッスに声を掛けたのと同時にトゲキッスが分裂した…ように見えた。もう一体のトゲキッスが落ちてくるピカチュウとポッチャマを受け止める。

 

「エアスラッシュ!!」

 

とりあえずあの攻撃を仕掛けてくるテッカニンを蹴散らせておこう。

 

「キーッス!!」

 

トゲキッスの攻撃を受けてテッカニンがぼとぼとと地面に落ちる。セミの死骸みたいだ…。

 

「あ!!シンヤさん!!」

「お?サトシか!!」

 

パッと笑顔を向けてくれたサトシ。だがグリングス・コーダイに視線をやるとその表情を一瞬で怒りの表情に変えた。

何かしたのか、グリングス・コーダイ…。

ピカチュウとポッチャマが攻撃を仕掛けるとサトシと見知らぬ少女は駆けだした。

 

「セレビィ!!」

「ゾロア!!」

 

二体のポケモンを拾い抱えて来た道を戻って行く。物凄い剣幕で睨んでおいて逃げるのか…。

 

「シンヤさん、こっちに!!」

「タケシ、これは一体どういう事なんだ…」

「説明は後で!!セレビィ達の治療もして欲しいので早く!!」

 

タケシに急かされて走るサトシ達の後を追い、サトシ達が乗って来たらしいボートに飛び乗る。

物凄いスピードで走るボート、そのボートを追いかけて並んで飛ぶ二体のトゲキッス。

全く状況が理解出来ない…。そしてこのポッチャマを連れた少女は誰だ。カスミは?

 

*

 

サトシ達の後に続くまま、見知らぬ民家へと入る。

一緒に居た男の家なのか知らないが慣れたように男が部屋の電気を付けると部屋の中は時計だらけだ。

 

「ここは?」

「おじいちゃんの仕事場さ」

 

サトシが男に聞いた。

その返答にふぅん、と内心頷きつつ辺りを見渡す。

恐る恐ると室内へと入るスイクンの手を引くと奥の部屋からグラエナを連れた男性が顔を出した。今朝に見た花壇に水をやっていた女性とモジャンボも一緒だ。

 

「みんな!」

「無事だったのね!!」

「ジョーさん」

「トモさん」

 

サトシ達の知り合いらしい。

気を失っていたセレビィが起きたのを見つけると驚いて声を発した。

 

「セレビィ!!」

「あぁ!!」

 

とりあえず、私にも状況を説明してくれないだろうか…。

 

*

 

「そうか、20年前の事件もコーダイの仕業だったとはな」

 

ジョーさんというらしい男性が言葉を漏らした。

私もクルトさんとリオカさんという二人の話を聞いてなんとか状況を把握出来た。

グリングス・コーダイは未来を見る力がある、だがそれはセレビィが時を渡る為に必要になる"時の波紋"というものをセレビィから奪った為に得た力。

しかし20年前に得た力であった為、奪った力が現在は無くなりつつある。その為、グリングス・コーダイは再び未来を見る力を手に入れる為に時の波紋を探していると……。

偽物のスイクン達が居たのも時の狭間を手に入れる為、ゾロアークの化ける力を使ってクラウンシティから人払いでもしたかったのだろう。

それだけの為に連れて来られて汚名を着せられたゾロアークはとんだ災難だな、うん、私より災難だ…。

そしてそのゾロアークを"マァ"と呼び慕っているのがゾロア。グリングス・コーダイに利用されているゾロアークを探していた途中でセレビィ達と出会い仲良くなったらしい。

まあ、詳しい事までは知らないが大体の話の流れは何とか把握出来た…。

あと、もうひとつ分かった事は…、ここが私にとって未来の世界だと言う事だ…。

セレビィはどうやら時渡りの力を使って私達を未来へと連れて来たらしい…。サトシと一緒にいる私が知らないはずの少女ヒカリは私の事を知っていた…。それはもうバッチリと知っていた…むしろトップコーディネーターとして尊敬されていた…私じゃないのに…。

サトシ達にここに居る私は過去の世界から来たシンヤなんだと説明するのも面倒で黙っているが…、この時代に生きるシンヤとばったり出会うなんて事にならないか不安だな…。

出会って何かが起こる、とかそんなのは分からないが絶対に出会いたくない。いや、未来の私ならこの状況を知っているだろうから気を利かせて出会うような真似はしないか…。

というか、なんでこんな面倒な状況に巻き込まれたのか…ゆっくり観光も出来やしない…。

 

「はぁ…」

「レビィ?」

「ん?ああ、もう良いぞ」

「ビィ!」

 

怪我をしていたセレビィの手当てをすませた。全体的に消耗してしまっているのは暫く休むしかないが、痛みはほぼ無いだろう。

空を飛ぶのもなるべく控えた方が良いだろうな…。

 

< おいら、セレビィ守れなかったゾ… >

 

ゾロアのテレパシーだ。

落ち込んだようにテーブルの下に隠れてしまったゾロアを目で追った。

まあ、生きて見つかっただけでも良かった。セレビィが居なくなったら私は元の世界に帰れない…最悪、帰れなくなったら未来の私に助けを求めに行かなければならなくなる…。

想像しただけで気持ち悪いし、嫌な光景だ…。

 

「あたし達さっき本物のエンテイ、ライコウ、スイクンがやって来たのを見たの」

 

ほぉ…。

チラリとスイクンに視線をやったがスイクンは窓の外を眺めていてこちらを見てはいなかった。むしろ話もほとんど聞いてないんじゃないだろうか。

 

「きっと街の危機を察知して来てくれたんじゃ」

「でもゾロアークを敵だと思ってるの」

「なんとか誤解を解いてやることは出来んかのぅ…」

< マァ!! >

 

外に出ようと走り出したゾロアを追いかけようとセレビィが飛び上がる。そのセレビィの小さな羽を指で摘まんだ。

 

「ビィ!?」

「あまり飛ぶな。途中でバテて絶対に落ちる」

 

ドクターストップだ、と言ってやればセレビィはしゅんと落ち込んだ様にゾロアに視線をやった。

 

「時の波紋に連れて行けばセレビィは元気になるはずなんだけど…」

「時の波紋はどこに…」

 

リオカさんがパソコンのキーを打ちながら言う。

 

「コーダイはカウントダウンクロックのある場所を追っていた。でも、すでに全部チェックしてるわ」

「じゃあ、もうコーダイが時の波紋を手に入れたってことですか!?」

 

カウントダウンクロックって何だ。あの歩いてる時に見た変な奴なのだろうか。

そういえばセレビィに連れて来られた時、目の前にもあの変な奴はあったな…。

ふむ、と腕を組んだ時に窓の所にさっきまでなかった変な機械があった。

 

「いや、まだだ。街の緑は枯れていない」

 

私が機械に手を伸ばそうとした時、ジョーさんが声を発した。

 

「カウントダウンクロックならもう一つあるぞ」

「えっ?」

「ほれ」

 

ジョーさんの視線の先を目で追った。

額縁の中にカウントダウンクロックとやらの設計図と完成した写真が入っていた。私が最初に見たのもあれだ。

 

「こいつはわしが設計したんじゃ。スタジアムの中じゃ。あそこには街から移された森がある。スタジアムの完成記念に試作機をそこに置いたんじゃ」

「時の波紋はそこだ」

 

クルトさんが言葉を発した時、後方で変な音が鳴った。さっきの機械に付いていたプロペラが回っている。

虫みたいだ、と思っているとピカチュウが十万ボルトで破壊してしまった。

 

「これは…?」

「コーダイのメカだわ!!」

「じゃあ今の話…」

「聞かれちゃったわね」

 

え!?と驚くサトシ達…。

すまん、私も一緒に驚いてしまった。気付いた時に手に取っておけば良かったんだが、気付いてたなんて知られたら責められそうだから最後まで気付いていなかった事にしてもらおう…私は何も見てなかった。

 

「やつは時の波紋に向かう」

「20年前と同じ事が起きるのか」

「それは駄目!」

「止めなきゃ!!」

「先にセレビィを時の波紋に連れて行くんだ」

 

クルトさんの言葉にセレビィが空を飛ぼうとするが、ここからスタジアムのある所まで飛んで行くのは体力的に不可能だ。

ふわり、とセレビィが浮いたが地面に落ちる。落ちそうになったセレビィを受け止めたサトシが言った。

 

「セレビィ、お前はオレが連れて行くから!!」

「あたしも行く」

「オレも」

 

ヒカリとタケシが賛同して、ピカチュウとポッチャマも頷いた。

ゾロアもサトシの前に立つ。

 

< マァは絶対に負けない!だから、おいらセレビィと一緒に行くゾ!! >

「レビィ~!」

「行こう、みんな!!」

 

サトシの言葉にみんな頷いた。そしてサトシが私を見たので私は首を横に振る。

 

「私は行かない」

「えぇ!?シンヤさん、一緒に来てくれないんですかー!?」

「私はエンテイ、ライコウ、スイクンの方に行く」

 

窓の外を見ていたスイクンが私の方に視線をやり頷いた。

少し渋ったが、サトシは分かりましたと頷いて外へと出て行こうとする。

 

「ちょっと待ってくれ。コーダイは未来を知っている」

 

そのクルトさんの言葉に全員が息を飲んだ。

だから何だ、と思ってしまった私だけ恐らく状況を把握しきれてないんだろうな…。

 

「だから…みんなの力で未来を変えよう!!」

「……」

 

未来って変わるのか…?

ディアルガにでも頼まないと難しそうだ。

外に出るとスイクンに腕を引っ張られて家の裏へと回る。私達が飛び出して行ったものだからクルトさん達も家から出て走って行ってしまった…。

先に行かれたぞ、と指を差したがスイクンは目を瞑って小さく息を吐いた。

 

「うん、近くに居るポケモン達も集まってくれる、行こうシンヤ…」

 

何かしたのだろうか…ポケモンの力は本当に分からないな、と思いつつもスイクンの言葉に頷いた。

私が頷いたのを確認したスイクンがポケモンの姿へと戻る。

 

「……」

「……」

「ああ、乗れってことか」

 

一言でも言ってくれ。

カバンをしっかりと肩に掛け直してスイクンの背に跨った。スイクンの靡く毛はサラサラしていて体はひんやりと気持ち良い。

これは、寝れる…!!

馬鹿な考えを抱いた瞬間にスイクンが地を蹴ったものだから慌てて体勢を低くした。

スイクンは屋根の上を走ったり、草むらを揺らして走ったりとわざと遠回りをしているようだった。その度にガサリと隠れていたポケモン達が顔を出してスイクンを追いかけて来ている。

スイクンなりに考えがあるのだろう。

とん、と屋根の上で立ち止まったかと思うと下にゾロアークと、ゾロアークを囲むようにエンテイ、ライコウ、スイクンが居た。なんか色が違うのは、まあ良いか。

その三体は結晶のようなもので拘束され身動きが取れなくなっているようだ、あれもゾロアークの使う幻影とやらなんだろうか。

ジョーさんのグラエナがゾロアークの目の前に目覚めるパワーを放った。

消えて行く結晶を見てスイクンが雄叫びをあげる。

 

「クォオオオ!!!」

「!?」

 

雄叫びをあげてゾロアークの前に立ったスイクンは色違いであるエンテイ、ライコウ、スイクンへと視線をやった。

三体は一瞬身構えるように体勢を取ったが、スイクンの後ろからついて来ていた野生ポケモン達がエンテイ達を取り囲む。

やめて、やめて、ゾロアークは悪くない、そんな感じの事をわさわさとポケモン達が言っている。

エンテイ達もキョトンとしたようにポケモン達を見ていたがスイクンの方に視線をやってから小さく頷いた。

お前たち知り合いなのか…?という疑問はさすがに場違いなので言葉には出さなかった。

 

「ガァウッ!!」

 

三体が大人しくなったのを確認するとゾロアークが周りに居るポケモン達を飛び越えた。慌ててスイクンの首元を叩く。

 

「待て!!」

 

同じようにポケモン達を飛び越えてスイクンがゾロアークに並行するように走る。

チラリとこちらを見たゾロアークに私は指示を出す。

 

「良いか、コーダイが時の波紋の近くに居たらコーダイが時の波紋を手に入れるまでの幻影を見せるんだ!!」

「ガゥ!?」

「お前の幻影の中で、手に入れさせろ!」

 

コクンと頷いたゾロアークが大きく地を蹴り屋根を伝って行った。

その場で立ち止まりスイクンと共にゾロアークの姿を目で追う…。

 

「時間稼ぎとして考えを言ってみたが…グリングス・コーダイに幻影…効くよな?」

「クゥ…」

 

そんな事言われても…と返されたが今更ながら不安になって来た。

私がグリングス・コーダイの立場ならゾロアークを利用する前提に動いているのだから、当然、その幻影への対策も立てておくしな…。

一気に不安になって来た。

小さく溜息を吐けば追いかけて来たらしいクルトさん達が私の名前を呼んでいる

 

「シンヤさーん!!」

「……」

 

そういえば、クルトさん達は新聞記者だって言ってたな……。

 

「シンヤさん、そのスイクンは…」

「急いで追いかけてみるか」

「え?」

「コーダイが時の波紋を手に入れる所なんて大スクープだろ」

「それを阻止したいのに!?」

「ゾロアークの幻影はカメラで撮れないのか?」

「…幻影?」

 

話を聞いていたリオカさんが「ゾロアークの幻影は映像をも騙すわ」と言ってくれたのでクルトさんが驚きの声をあげる。

もし、ゾロアークの幻影が上手くいけばグリングス・コーダイが時の波紋を手に入れる映像が撮れる。

 

「よし、クルトさんたちも乗れ」

「スススス、スイクンに!?」

 

別にさっきの色違いのエンテイとライコウに乗りたいんならそっちに乗れば良いんじゃないか、と言ってやればクルトさんは首を横に振った。

 

「私は乗るわ!」

「リ、リオカ…」

「三人くらい大丈夫だよな」

「クォオー」

 

*

 

「やめろ!コーダイ!!また森が枯れてしまう!!」

「知った事か!私だけが未来を手に入れられればそれで良いんだ!!」

「お前はこの街がどうなっても良いのか!?」

「確かに20年前にも私は時の波紋に触りこの街の緑を枯らした。だがそれを知っている者は誰も居ない、そして今度も私がした事は誰も知らない。私はただ悪いポケモンのゾロアークを捕まえようとしていただけなのだ!」

 

コーダイが時の波紋の力を吸収すると周りの木々が枯れていく。

「私の勝ちだ」と言ったコーダイの高笑いが辺りに響いた…。

だが、次の瞬間に木々は再び豊かな緑へと戻り。コーダイの居る場所より後方に本物の時の波紋が現れる。

 

「これは一体……、幻影!?馬鹿な!!」

 

驚くコーダイを見て私はその場で膝を付いた。

 

「…ッ!!!!」

「……」

 

私と一緒に来てカメラでその全てを撮っていたクルトさんとリオカさんが前へ出る。

 

「もう諦めろコーダイ!」

「クルトさん!」

「お前ら…!!」

 

地面に膝を付く私の肩にスイクンが頬を寄せる。

カメラが回ってる間に吹き出さなかった私を誰か本気で褒めてくれ、腹が痛い…!!!

 

「ふはは…ッ」

「クゥン…」

「暫くは思い出し笑いしそうだ」

 

滑稽過ぎた。口元を押さえつつ、視線を上げるとゾロアがゾロアークへと近付いて行く。ゾロアークもまた両手を広げてゾロアへと近付いて行った。

マァ、というからには一応親子関係のようなものなんだろう。ゾロアークはメスなんだな。

微笑ましい光景でも後ろの方に居るコーダイが視界に入ると吹き出しそうだ、チラリとコーダイに視線をやればコーダイがカゲボウスに攻撃の指示を出している。

 

「…ッ!?危ない!!」

 

シャドーボールがゾロアに当たりそうになった瞬間、ゾロアークがゾロアを身を呈して守った。

攻撃を受けたゾロアークが起き上がり雄叫びをあげるとコーダイが拳をゾロアークへと向けた。

 

「絶対零度…!!」

「クォオオオ!!!」

 

ゾロアークへと襲いかかろうとしたコーダイの機械をスイクンの攻撃が防ぐ。その攻撃の衝撃でコーダイが後方へと吹っ飛んだ。

そしてサトシを拘束していたムウマージをポッチャマの攻撃が吹っ飛ばす。

タケシとヒカリも追いついたらしい。

ムウマージのサイコウェーブをドーミラーが防ぎ、ムウマージはピカチュウのボルテッカーを受け倒れた。

 

「ピカー!!」

「よし!!」

 

カゲボウズが吹き飛ばされたコーダイから視線をこちらに向けた。

シャドーボールを放とうとするカゲボウズを指差して、ゾロアークの方へと視線をやった。

 

「悪の波動!!」

「ガァアアゥ!!!」

 

ゾロアークの悪の波動を受けて吹き飛ばされたカゲボウズは後ろの木にぶつかり地面へと倒れ込む。

効果バツグンのうえに痛いとどめだ…、ポケモン大好きブリーダーのシンヤが良心を痛めている。ポケモントレーナーのシンヤは鼻で笑ってそうだが…。

逃げるコーダイをゾロアークが睨み付ける。

 

「時の…時の波紋は私のものだ!!」

 

コーダイがゾロアークに背を向けて時の波紋へと走って行く。

お前に奪われたら私たちが元の時代に帰れないじゃないか!!!

 

「させるか!!」

 

エーフィのサイコキネシスでサトシの二の舞にしてやろうと、声を荒げたらエンテイの雄叫びが聞こえた。

呻り声をあげたエンテイがコーダイを近づけないように時の波紋の傍へと降り立つ。

エンテイの出現に驚いたコーダイが後ずさるとそれを許さないと言わんばかりにライコウが道を塞いだ。

情けない声をあげながら逃げるコーダイを威嚇する様にスイクンが岩の上から吠える。

 

「うあッ…!!」

 

時の波紋になど目もくれずコーダイは無様に走って逃げて行く。

逃げて行ったコーダイを見てサトシ達が顔に笑みを浮かべた。

 

「エンテイ、ライコウ、スイクン!!」

「この街の守り神!」

「すごい!!さすがシンヤさん!」

「え…」

 

わ、私か!?

なにもしてないぞ、微塵も私は関係無かっただろ…!?

何か勘違いしてないか、とサトシに話しかけようとした時に体力の限界だったんだろうゾロアークが地面へと倒れる。

 

「ゾロアーク…!!」

< マァー!! >

 

ゾロアークの周りにサトシ達が駆け寄るのを見て、私も慌ててカバンから医療道具を取り出してゾロアークの傍へと駆け寄った。

もうずっと体を酷使していたんだろう、もはや気力だけで戦っていたのかもしれない。

 

「怪我の治療は出来るが回復をする設備が無い、かなり危険な状態だ…!」

< マァ!!マァ!!起きるんだゾ!! >

 

ゾロアークの頬に自分の頬を擦り寄せるゾロアを見て眉を寄せる。

いちかばちか、元気の塊を口の中に放り込んでみるか…。駄目か…、駄目だな…。

 

< マァ、おいら強くなるから…。マァみたいに強くなるから…! >

 

辺りが一面の草原へと変わる。

ぎょっとして辺りを見渡すと色違いのエンテイ・ライコウ・スイクンが居る傍の空中に時の波紋が見えた。

 

「ここはゾロア達の故郷だ…」

「ゾロア達の…?」

< マァ!一緒に帰るんだゾ! >

 

辺りを見渡しているサトシの腕の中に居るセレビィへと視線をやるとセレビィと視線が合った。

確かセレビィは植物や他のポケモンに生命エネルギーを分け与える力があったはず…。

 

「セレビィ、ゾロアークに生命エネルギーを」

「レビィ!!」

 

サトシの腕からセレビィが飛び上がる。

よろよろと飛びつつも時の波紋の中へと入って行ったセレビィを確認してからゾロアークの外傷の処置をしていく。

 

「レビィ~!!」

 

力が戻ったらしいセレビィが時の波紋から飛び出してきた。淡い光を放ちながらセレビィがゾロアークの額へと手を当てる。

セレビィから直接、生命エネルギーを与えられたゾロアークの体が光を放つ……。

 

< あ! >

 

ゾロアが声をあげるとゾロアークが両手を付いて起き上がった。

ゾロアークがゾロアに向かって小さく頷くとゾロアは涙を流しながらゾロアークへと抱き付いた。

 

< マァー!!マァ、マァ!! >

 

セレビィが私の肩に座った瞬間、辺りはゾロア達の故郷の姿から元の姿へと戻って行く。ゾロアの幻影が消えたようだ。

 

< やっぱりマァは強いゾ!! >

 

親子の姿にヒカリが目元の涙を拭っていたが私はチラリと肩に座ったセレビィへと視線をやった。

時の波紋が消えてしまったが…、勿論、私たちは帰れるんだよ、な…?

 

「良かったわね、ゾロア!」

< みんなのおかげだゾ!! >

「お前も頑張ったな!」

 

私の肩に座っていたセレビィが飛び上がりゾロアの前まで行く。

 

「レビィー」

< セレビィも元気になって良かったゾ! >

「レビィ~!」

 

セレビィが飛び回りつぼみの花を咲かせていく。

わぁ、とサトシ達が声を漏らし飛び回るセレビィを目で追った。そして今来たらしいジョーさんとトモさんもセレビィの元気な姿に安堵したように声を漏らしていた。

 

< セレビィありがとうだゾ!!お前もありがとうだゾ!! >

「お前って、私か…」

 

私が小さく息を吐けばゾロアが「ムヒヒヒ」と歯を見せて笑った。

ゾロアークも礼を言ってくれたので苦笑いを返しておく。

 

「レビィー!!」

 

行くよ、との言葉に顔を上げればスイクンが私の隣へとやって来た。肩に頬を寄せたスイクンの頭を撫でると鐘が鳴ったような音が響き渡る。

 

「!!」

 

デジャヴ!!!!

 

「セレビィが時渡りをするわ」

「え…?」

 

トモさんの言葉にサトシが驚いたように声を発した瞬間、私とスイクンの体が空中へと浮き上がる。

 

< おいらずっとお前と友達だゾ! >

「わぁああ!!シンヤさーん!!」

「ぅおッ!?」

「ビィー!!!」

 

観光もしてないのに強制送還!?!?

 

「レビィ~!!」

「セレビィ、お前ぇええ!!!!」

「「「シンヤさぁああん!!!」」」

 

結局、ポケモン・バッカーズってどんなスポーツだぁあああああああ!!!!

 

*

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