「アルトマーレに行きたーい!!」
「…は?」
ソファに寝転がっていたミロカロスの言葉にテーブルから顔を上げミロカロスの方へと視線をやる。
ブラッキーの買って来た雑誌を両手で広げて見せたミロカロス…。雑誌でも良いから読め、とは言ったが…そんな急に強請られても困る…。
「水上レースー…」
アルトマーレで水上レースが行われるのだろう…。
水の都と呼ばれる場所なのだから、まあそれぐらいの催しがあっても可笑しくは無い。
永遠なる海、アルトマーレ。ヒワダタウン沖にありラティアスとラティオスに危機から救われたという伝説のある島だ。
私室の本棚にアルトマーレの伝説に関するおとぎ話の本がある…。
別に興味は無いな…。
「行きたーい!!水上レースー!!」
「行きたーい!!オレも遊びに行きたーい!!」
ミロカロスと一緒になってブラッキーも駄々をこね始めた。それを見たエーフィが深く溜息を吐く。
うるさい、うるさい、うるさい、両手で耳を塞いだミミロップがぶつぶつと文句を言っている。私の仕事の手伝いをしてくれていたがこれ以上続けるのはどうやら無理そうだ…。
テーブルに置かれた冷めたコーヒーを飲み干して小さく溜息を吐く。
「シンヤー!!アルトマーレ行きたいー!!」
「良いぞ」
「!!!!」
「連れて行ってやる」
うるさかったミロカロスとブラッキーが笑みを浮かべた。
エーフィとミミロップが目を見開いて私を怪しむかのような視線を向けてくる。
「ただし、私は水上レースに参加しないからな」
「え!?」
「連れて行くだけだ」
「えぇー!?!?」
ヤダヤダヤダー!!とミロカロスが再び騒ぎ出したが無視だ。
持っていたボールペンをテーブルに置いて背筋を伸ばす、疲れてるから息抜きの散歩だとでも思って出掛けるとしよう。
「仕事どうすんの?」
「帰って来たらやる」
「ワタシがやっておこうか?これぐらいならワタシだけでも出来るからさ」
「なんだ一緒に行かないのか?」
「良いよ、別に出掛けたくないしー」
なら、ボールは何個だ……。
ミロカロス、ブラッキー、エーフィ、トゲキッス…。
指を折って数えればサーナイトが「はい!」と手を上げたのでサーナイトを指差して小さく頷く。
サマヨールは?と聞けば留守番が良いそうだ。まあ水上レースなんて興味が無いだろうしな…うん、私も無い。
「あ、ミロカロス!!オレ良い事考えた!」
「…なに?」
「オレが参加する!!」
「………へ?」
*
「さーあ、皆さんお待ちかね!アルトマーレ夏のフェスタが始まります!!恒例のポケモン水上レースはまもなくスタートでーす!!」
賑わう人混みの中から水上の様子を見てみる。
人の姿になったエーフィ、トゲキッス、サーナイトが私と同じように水上を眺めていた。
「サトシとカスミが居るな…」
「あ、ホントですね!」
「ミロさん、ツッキーさん、頑張ってー!!応援してますわー!!」
「ポケモンがポケモンを使ってレースに参加するなんて…良いんですかコレ…」
ミロカロスがポケモンの姿のまま小舟を引く。その小舟には人の姿のブラッキーが乗った…。
まあ、ルールに人の姿のポケモンは参加してはいけないなんて無いし。バレなきゃ良いんじゃないか…?
しかし、サトシとカスミも居るなんて予想外だ。その辺にタケシも居るのだろうか。
「栄えあるアルトマーレグラスの優勝メダルは誰の手に!?」
ネイティ、ネイティ、ネイティ、ネイティオ。
少し風変わりなシグナル、サトシの「いっけー!!」という声と同時に周りの連中も一世にスタートした。
橋の下を通る時、橋の上からピカチュウが落ちてサトシの顔面に着地した。
お、タケシ発見。と思った所で目の前をブラッキーとミロカロスが雄叫びをあげて通り過ぎる…。
「行け行けーですわー!!」
「楽しそうで何より、私はこの人混みからさっさと抜けたいがな…」
「シンヤ、ぼんやりしてると足踏まれちゃいますよ!」
「ツキー!!やるからにはぶざまに負けないで下さいよー!」
結局、エーフィも応援してるしな…。
大きな液晶画面に映るサトシとカスミとホエルコに船を引かせる男性の三人が競い合い水上を走っている。
エーフィが小さく舌打ちをした時に画面にミロカロスとブラッキーの二人も映り込み、三人のすぐ後ろを走っている。いつでも追い抜く気満々だな…。
「あ…」
サトシが落ちた。
一瞬、ぼんやりとした変な影が見えたような気がしたが…気のせいだろうか。
「狭い水路をすすーっと通り抜けて最初に大運河に戻って来るのは誰だ!!…さあ!出て来ました、先頭は昨年の優勝者ロッシ選手とホエルコ、そしてカスミ選手とサニーゴ、更にツキ選手とミロカロス。優勝争いはこの三人にむぎゅっと絞られたようだ!!」
「勝てますわー!!」
「ツキー!!頑張りなさーい!!」
「ミロさん、ツキさん、もうちょっとですよー!!行けー!!」
身を乗り出して応援する三人。
私は実況アナウンサーの変な言い回しが気になって仕方がない。なんでそんな擬音ばっかり使うんだ…、すすーっととかむぎゅっととか…。
「あれっとえっと!?後方から猛烈なスピードで追い上げてくる選手が居ます!!サトシ選手とワニノコです!!あぁーっと抜いたー!!」
ロッシ選手とカスミの間を抜けたサトシを見て、ミロカロスがグンとスピードを上げた。
というか……あのぼんやり見える影はなんだ…。
「ひゃっほー!!凄いぞワニノコー!!」
「ワニワニワニワー!」
水面をワニノコが走っている。
隣に居たエーフィが「なんですアレ!」と不満気に言葉を漏らした。なんかあのぼんやり見える影が引っ張ってるらしい…。
「ポケモンですかね…」
「トゲキッスにも見えるのか?」
「はい、ぼんやりと…」
「エスパータイプの気配ですわ!!」
こうなったら邪魔をしてやる!と技を放とうとしたサーナイトを慌てて押さえるとサトシはコースを逸れてしまった。
「あらっとなんとサトシ選手はコースを間違えたようだ!嫌ぁーだぁ!!」
「…いま、別の影が…」
「一回りほど大きく見えましたね…」
「なんでも良いですよ!ツキー!!今ですよー!!」
「ツッキーさんゴーゴー!!ミロさんもう一頑張りですわー!!」
トゲキッスと顔を見合わせて首を傾げる。
レースがラストスパートにさしかかった所でエーフィとサーナイトの興奮も最高潮に達したらしい。傍から見ると美人の女二人が物凄い勢いで捲し立てている様は少し…こわい…。
もうちょっとおしとやかに出来ないのか…なんて男に求めるのは間違っているんだろうな…。
「ゴール前のもうスタート!どちらも譲らない物々交換!!全くの横一線だぁー!!」
「はぁ!?なんだと!?今なんて言った!?」
「シンヤ、ちゃんとレース見て下さいってば!!」
さっきから混じる実況アナウンサーの言葉になんかイライラするんだよな…他に人間居なかったのか…。
私が腕を組んで小さく息を吐いた時、「1、2、3、ダー!!」と言うふざけた実況と共にブラッキー達はゴールしたらしい。
「あらっとなんと、まさかの同時ゴールだ!!さあ、写真判定の結果は!!」
画面を食い入るように見つめたエーフィが祈るように両手を握った。
「あれっとれっと赤白黄色!!ツノの差でサニーゴだー!!」
「はぁ!?だから、なんて言った今!?」
「シンヤ、落ち着いて!!」
「いぃいいやぁああ!!なんでもっと首を伸ばさなかったんですかミロカロスー!!」
「ツノの差ぁああ!?そんなのってないですわぁあ!!」
その場で嘆く二人を見下ろしていると少し離れた所で小舟の上に立ったブラッキーが手を振っている。
「負けちゃったー!!」
「ミロォー!!」
アハハと笑いながら手を振るブラッキーに手を振り返そうとしたら、私の後ろに居た観客が「カッコ良かったー!!」なんて言って手を振り返していた。
見事に女ばっかりだな…。
ブラッキーは一瞬キョトンとしていたがすぐに笑顔に戻って「ありがとー」とお礼を言って更に大きく手を振っていた。
後ろでキャーキャーと甲高い声が上がる。
全く調子の良い奴だな、と笑みを零した所でトゲキッスが私の腕にしがみ付く。
「なんだ…?」
「あれ、あれ…」
「ん?」
トゲキッスの指差す先を見ると眉間に皺を寄せながらブラッキーを睨み付けるエーフィが居た…。
「きっと負けちゃったから怒ってるんですよー…!」
「そんな無茶なっ…!」
「(この二人、本当に鈍いですわね…)」
*
ミロカロスはこっそり人の姿になって逃げ出してきたらしくブラッキーを見捨てて私のところに戻ってきた。
そしてミロカロスに見捨てられたブラッキーは若い女連中に囲まれて身動きが取れなくなっていた…、カスミ達に声を掛けようと思ったのにタイミングを逃したな…。
「シンヤ、アイス買ってー」
「ブラッキーはどうするんだ…」
「あ、じゃあ俺が迎えに」
行ってきますねー、と手を振って女の傍に行ったトゲキッス。トゲキッスの声に反応したブラッキーが片手を上げるとトゲキッスまで女連中の人混みに飲まれていった。
「おぉ…一瞬で飲まれた…」
「アイスー…」
私の服の裾を引っ張るミロカロスに視線を落とす。
全くもう!!と声を荒げたエーフィがズカズカと人混みへと突っ込んで行った。その後をサーナイトも続いて歩いて行く。
女連中をかき分けてエーフィがブラッキーの腕を引っ掴み、サーナイトがトゲキッスの手を取って戻って来た。
「邪魔ですよ!!」
「ごめんなさいねー」
不機嫌を隠そうともしない女連中を睨み付けるエーフィとサーナイト。
今、あたし達が喋ってたんだけど!!と文句を言われてエーフィがキッと女を睨みつけた…本当にこわいぞ…。
「私のツレにこれ以上の用でもあるんですか?」
「関係のない人間は邪魔なだけですわ」
フンとエーフィとサーナイトが厭味ったらしく笑った。女連中は苦虫を噛み潰したような顔をして引き下がって行く…。
女同士の戦いはこわいな…と一瞬思ってしまったが、エーフィとサーナイトはオスだ。
「あのー、お一人ですかぁー?」
「大きい荷物ですね!ご旅行か何かなんですか!!」
「…、」
腕を掴まれたかと思うと見知らぬ女が私を見上げていて、数人の女に囲まれていた…。私もトゲキッス同様…一瞬で飲まれていたのか!!気付かなかった…!
というか、あの馬鹿は何処に行ったと視線を動かせばアイスを売っている店の前で指をくわえてメニューの書かれた看板を眺めていた…。
やめてくれ、買ってやるからそんな卑しい真似をするな…。
「あのぉー」
「ああ、旅行みたいなものだ」
「観光なら私達と良かったら一緒にぃ…」
「悪いがツレが居るんだ。他をあたってくれ」
男性のお友達ですか!?それならご一緒に!と一人の女が提案してきた。
アイスを眺めていたミロカロスがこちらに気付いたのかキョトンとした表情でこっちを見ていたので手招きをして呼ぶ。
「ツレだ」
「…?」
ミロカロスの肩に腕を回せば女達は一瞬表情を失くしたがすぐに笑顔になって「そうですかー、それじゃー」と呆気なく去って行った。
アルトマーレ、恐ろしい所だ…。
あと、私のツレに女は見事に居ないんだけどな…。
「アイスー…」
「買ってやるぞ、ダブルでもトリプルでもな」
「ホント!?」
「ただし私の傍から離れるな。絶対に、絶対だ!」
「…?」
「分かったな?」
「分かったー」
はい、と手を差し出せばお手をするようにミロカロスが私の手に手を乗せた。
小さく溜息を吐いてから一度手を放してミロカロスの手を握り直して手を繋ぐ。
「…!」
「エーフィ達は何処に行った…」
辺りを見渡せばエーフィに頬を抓られるブラッキーを見つけた。隣で顔を蒼くしたトゲキッスの腕にサーナイトが腕を絡ませている。
あそこもなんとか無事に人混みを抜けられそうだな。
「アイス、何にするか選んだのか?」
「イチゴとバニラとキャラメル!!」
「(結局、トリプルか…)」
クレープも買うと走って行ったブラッキーをトゲキッスが慌てて追いかけて行った。私以外に今お金の入った財布を持っているのがトゲキッスだけだからだ…。
こんな事ならブラッキーに持たせれば良かったか…いや、アイツに持たせるのはダメだな…。
走って行った二人を見てエーフィとサーナイトも慌てて走って追いかけて行く。あの二人はこの危険区域に男二人で挑んでいくとは猛者だな。私はこわいぞ…。
エーフィとサーナイトが居た所で男は四人なんだが…、女顔と居るだけで大分違う、それも美人な女顔と来れば見事な魔除けだな…なんか違うか…でも似たようなもんだ…。
「シンヤ、あそこロケット団居るよ」
はぐはぐとアイスを頬張りながらミロカロスが繋いでいる手を持ち上げて「あそこ」と指した。
視線をやれば水面の傍にある階段に並んで座る見慣れた後ろ姿…、サトシ達が居る所にロケット団は居るな…きっとサトシ達を追いかけ回しているんだろうが…。
声を掛けようと近付いた所でミロカロスが急に立ち止まった。
「「「いっただっきまー…」」」
クルーザーが水上を通り過ぎた。
通り過ぎた勢いで水飛沫がロケット団にかかる…。そんな所に座ってるからだ…。
「いきなり何よぉ!!」
「ぁ…!ザンナーとリオンだ!!」
「何よそれぇ…」
「ニャ?有名人なのかニャー?」
「盗みの世界じゃ、ナンバーワンだ!きっと何かあるんだこの街に!」
「ふふーん…そのナンバーワンをアタシ達がダシ抜いたら!!」
「ニャー達が真のナンバーワン!ニャ!!」
「良いじゃん良いじゃん、そういうのー!!」
「ソーナンス!!」
勝手に出て来たソーナンスをムサシがボールに戻す。
ザンナーとリオン?盗みの世界じゃナンバーワン?この街に何かある?
泥棒の世界での有名人がこの街に何かを盗みに来てるってことか…、なにかあると言われるとやっぱりラティアスとラティオスがこの街に贈った宝石…。
「こころのしずく、か…?」
「シンヤ、アイス溶けてる!」
「げ…」
「チョコミント美味しい?」
「まあまあ」
一口一口、と言って私の手から二口も三口も食べるミロカロス…まあ別に良いけどな。
自分の分はもう食べたらしいミロカロスにアイスを押し付けて空を見上げた。
そういえばぼんやりと見えたあの影、もしかするとラティアスとラティオスだったんじゃ…。
*
「チョコもバナナもカスタードも美味ッ!!」
「美味しいですね、ここのクレープ」
「アルトマーレで一番美味いクレープ屋だって女の子が教えてくれたからな!」
「…へえ」
両手にクレープを持って頬張るブラッキーを軽く睨み付けたエーフィは自分のクレープに視線を落として小さく溜息を吐いた。
「シンヤたちと逸れちゃいましたね」
「そのうち、会えますわよ」
まあ、いざとなったら自分で空を飛んで探せば良いかと思いトゲキッスはサーナイトに頬笑み頷き返す。
クレープの最後の一口をトゲキッスが口に入れた時に大きな怒鳴り声が聞こえた。
「なにやってるんだよ!!」
その声に反応したブラッキーが大きな口を開けてクレープを全部口に入れた。
「ふふぉ!!」
「はいはい、向こうですね」
先頭をきって走るブラッキーの後をエーフィ、トゲキッス、サーナイトが追う。
「この子のファッションチェックしてあげてるだけよぉ」
「嫌がってるじゃないか!!」
「あらぁ、私すっごく楽しいんだけど」
「あたしもー」
「お前たちのことじゃない!!」
クルーザーに乗った女二人と見知った少年、サトシの姿を見て四人は顔を見合わせた。
一緒に居る少女、人の姿をとる事に慣れている四人には当然"人間"には見えない。
「私が行きますよ、今の"ツキ"はミロカロスを連れたトレーナーですからね」
「あ、オレが指示出すのかオッケー」
任せろ、と拳を握ったブラッキーを見てエーフィがポケモンの姿に戻る。
少女の手を引いて走るサトシの前に人の姿のブラッキーとポケモンの姿のエーフィが立った。
「え、あ!ツキさん!?」
「足止めしてやるから、そのまま走れ!」
「はい!」
驚きその場で足踏みをしたサトシに笑みを返したブラッキー。
サトシ達が通り過ぎたのを確認してからブラッキーは敵の二体を指差した。
「お、メスのエーフィじゃん!オレも使ってみたい技、エーフィ!メロメロ!!」
「…フィー…」
その選択に私は不満です、という目をブラッキーに向けてから渋々エーフィはメスのエーフィにメロメロを食らわせる。
「フィ、フィ~…」
「……」
メロメロになったメスのエーフィを見てチッと小さく舌打ちをしたエーフィ。
攻撃を仕掛けて来たアリアドスを避けエーフィはくるりと空中を一回転した、バトルはあまり好きではないエーフィにもこの二体はあまりにも弱い相手。
特に苦戦するまでもない、あきらかなレベルの差があった。
「サイコキネシス!」
「フィィイイ!!」
アリアドスとエーフィを吹き飛ばし、ブラッキーとエーフィは顔を見合わせてニッと笑みを浮かべた。
*
「大聖堂、つまんなかったね」
「そうか?」
「つまんなかった」
「ポケモンの化石とか見れて面白かったと思うけどな」
「死んでるし」
「まあ、そうだけど」
「あの機械が動いたら面白いかもしれないけどさー」
「お前はアトラクションとかがある方が好きそうだもんな」
「動いてるのが良い!もっと面白いやつ!」
「そうだな、今度また遊びに行く時はそういうのがある所にするか」
「やった!!」
楽しみーと言ってハシャぐミロカロス。
楽しみなのは良いんだが、エーフィ達は何処に行ったのやら…。ポケモンセンターに行けば会えるだろうか…。
「シンヤさーん!」
「ん?」
オーイ、と手を振るカスミとタケシを見て私も手を振り返す。
「優勝おめでとうカスミ」
「見てたんですか!ありがとうございますー!」
「ああ、タケシの姿も橋の上で見たんだけどな。声を掛ける前に見失ってしまって」
「そうだったんですか!」
というか、もう一人が居ない。
辺りを見渡してみてもやっぱりサトシの姿が無い。何処に居るんだ、と聞く前にカスミが苦笑いを浮かべた。
「あー、サトシならなんかどっか行っちゃって」
「ポケモンセンターで会う予定です」
なるほど、と相槌を打てばタケシが素早い動きでミロカロスの前に跪きミロカロスの手をとった。
「ミロさん…相変わらずの輝かしい美しさにこのタケシの目は潰れてしまいそうです…!」
「はいはーい、勝手に潰れててねー」
「「……」」
サラリと酷いこと言うな。
タケシから離れて私の手を握るミロカロスを確認してから時計を見る。私たちもポケモンセンターに行って待っていた方が良いかもしれないな。
「ポケモンセンターに行くか」
「うん、行くー」
「ミロさん、ハスキーめなお声も素敵です!!」
「あんたしつこいわよ」
ポケモンセンターに着くと意外にもエーフィ達は先に来て待っていたようだ。
ヒラリと手を振ったブラッキーを見てカスミが「ツキさん!」と声をあげた。
「シンヤさんとお知り合いだったんですね!」
「えー…っと、まあね!!」
ポケモンの姿で待ってれば良かったのにな。
冷や汗をかいたブラッキーに「へー」と頷き返すカスミ、しかしタケシは顎に手を当てて首を傾げた。
「そういえばツキさんのミロカロス、あの美しさもさることながらしなやかな曲線に輝き…。シンヤさんのミロカロスと凄く似ていたような…」
「「「……」」」
やっぱり見てる奴は見てるな。
内心、チッと舌打ちをすればブラッキーは「そうそう」と適当に返事をしてみせた。
「水上レースにどーーーっぉしても出たくて借りたんだよ。だからオレじゃなくてシンヤが出てたら優勝だったかもな!」
「うんうん、シンヤが出てたら優勝だった!!」
なー!!と顔を見合わせて笑うブラッキーとミロカロス。
まあ、言うだけなら何とでも言えるさ。何があっても出るつもりなんて無かったから良いんだけどな。
「あ、シンヤさん。戻ってたんですね、部屋はとっておきましたから」
「ああ、助かる」
「はぅあ!!!」
私がエーフィに礼を言うと横でタケシが胸を押さえて変な声を上げた。
「セレビィの森でシンヤさんと一緒に居たお姉さん!!」
「そういえば居たー!あ、セレビィの森って言うとツキさんも居ましたよね!?」
居たかなー、あははー、なんて適当に返すブラッキー。アイツ全部適当に流す気満々だな。
まあ、嘘の吐けない奴だからあれが精一杯なんだろう…。
「あの時は状況が状況なだけにお名前も聞けず、結局お話も出来ないまま別れてしまいましたね…またこうして会えるなんて運命です!!」
「そうですか?シンヤさんのツレなので運命も何もないと思いますけど」
「お名前は!!」
「フィーです」
「フィーさん!!自分はタケシと…」
「知っています」
こっちもこっちでかなり適当にあしらってる…冷たいぞエーフィ…。
タケシが傷付いたんじゃないかと思って様子を見たら「辛辣な態度に涼しげな視線、良い!」とあっちはあっちで喜んでるみたいだった。強いなタケシ。
素敵な出会いだー、と喜ぶタケシはその後もサーナイトを見て同じように声を掛けていた。
「サナさん!!素敵なお名前ですね!!」
「ありがとうございますわ」
「ミロさんにフィーさんにサナさん!!素敵な女性陣に囲まれ感無量です!!」
「ま、お上手!」
「囲まれてんのはシンヤさんでしょーが」
「……」
いや、私も囲まれてない。
タケシに事実を言うべきか迷ったが言ったら恐らく相当なショックを受けるだろうから…。ここは言わずにおこう…。
「あれ?女性陣って言ったけど、オレらみんなオ…」
「ツキ…、菓子やるから黙ってろ」
「え、くれんのそれ?食べて良いの?やったね!」
*