一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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「無理ぃいい!!絶対に無理ぃいい!!何が無理ってもう全部無理!!生理的に無理ぃいいい!!」

 

誰に言ってるのか一人叫び続けるミミロップをシンヤとヤマトが見つめる。

瞬きを数回してから首を傾げたシンヤがヤマトに視線をやった。

 

「あちらの方はヤマトの知り合いですか?」

「え?シンヤのミミロップだよ」

「私のミミロップ?どう見ても人間ですが?」

「人の姿になれるポケモンの存在、知らなかったっけ?」

「初耳です」

 

少し驚きながらシンヤはもう一度ミミロップを見る。叫び続けるミミロップの行動はどうにも理解出来なかったのか眉を寄せてから近くに居たブラッキーへと視線をやった。

 

「ブラッキー?」

「ん?なに?」

「私のブラッキーですか?」

「そうだけど…」

 

まじまじと観察されてブラッキーは少し居心地が悪そうにシンヤから視線を逸らした。

周りに居る面々を見渡してからシンヤはふむと小さく声を漏らす。

 

「ヤマト以外、ポケモンなんですよね?」

「そうそう」

「どうにも見分けが付きません、参りましたね…」

 

シンヤって見分けらんなかったっけ?という疑問が一瞬ヤマトの脳裏を過ったが自分も説明を受けなければ人の姿をしているポケモンが分からないのですぐにその疑問は消えた。

 

「だよねー」

「あなたは何のポケモンですか?」

 

ブラッキーの隣に居たトゲキッスの頬に手を当てたシンヤが首を傾げる。

その行動に少し照れながらトゲキッスは自分の名前をシンヤに伝えた。

 

「俺はトゲキッスですよ」

「おやおや、私の可愛らしいトゲキッスは随分と男前くんなのですね」

 

よしよし、とトゲキッスの頭を撫でたシンヤが目を細めて笑った。

隣でその光景を見ていたブラッキーは「わぁ…」と小さく声を漏らす。

 

「(マジにコーディネーターのシンヤだよ、この甘ったるい感じはまさに…!!)」

 

エーフィ出してやろう、とシンヤのカバンからブラッキーがボールを取り出し、ベリベリとテープを剥がしてボールを投げればポケモンの姿のエーフィが出て来た。

その姿を見たシンヤがエーフィの傍に腰を下ろした。

 

「フィ…!?」

「少し毛並みが荒れてますね…、どうしたんですエーフィ?大丈夫ですか?」

「フィ、フィー…??」

 

自分の頭を撫でるシンヤの変わりように驚いたエーフィがその場で固まった。

 

「エーフィ可愛いよ!!エーフィ!!」

 

エーフィの頭を撫でるシンヤに便乗してヤマトもエーフィの背を撫でる。

そのままエーフィを抱き上げてヤマトはエーフィの頭に頬を擦り寄せた。

 

「可愛い可愛い可愛い!!」

「あまり変に触らないで下さい、私の可愛いエーフィの毛並みが乱れるでしょうが」

「後でブラッシングすれば良いでしょ!!」

「しますけど!」

 

ぬいぐるみのようにヤマトに抱きかかえられたエーフィは困惑したままブラッキーへと視線をやった。

そのエーフィの視線に気付いたブラッキーは苦笑いを返すだけ。

部屋の隅まで移動してブツブツと何かを呟くミミロップの傍に座ったサマヨールがミミロップの背を擦る。

花瓶を片付け終わったらしいチルタリスが不安げな表情を浮かべる。

 

「トゲキッスさん…、ご主人様戻るんですか?」

「うぅん…どうだろう、ね…」

 

困った笑みを返したトゲキッス。チルタリスは小さく溜息を零した。

 

「やだぁああ!!シンヤが戻ってない!!やだぁああ!!」

 

「ミロカロスさん、やっぱりもう一発やるしかないですわ!!ワタクシ、微力ながらお手伝い致します!!」

「…一発?」

「一発強いのをガツンと!!」

「ガツン…、ハイドロポンプ?」

 

それ今度こそ死ぬから、

ブラッキーが苦笑いを浮かべながらミロカロスを止めた。

 

「私のミロカロス!とっても美人さんじゃありませんか!!」

「………」

「強くて美しい、パーフェクトですね!」

「……ありがと」

 

お礼を言ったミロカロスの表情はどう言い表して良いのか分からない微妙な表情だった。

可愛らしいラルトスも美しいサーナイトに進化したんですね、と笑顔でシンヤにそう言われて満更悪い気もしなかったのかサーナイトが照れたように笑みを浮かべる。

 

「どういう事です、ブラッキー!!シンヤさんが今度はコーディネーターに!!」

「ヤマトがシンヤの頭を花瓶で殴ったら変わった」

「そう……って、花瓶!?バカじゃないですか!!シンヤさんを殺す気ですか!?」

「(トレーナーのシンヤ、ぶっ殺そうと飛び掛かったくせに…)」

 

とは思ったが、言ったら自分が殺されかねないので口を閉じるブラッキー。

眉を寄せたままエーフィがシンヤに視線をやる。可愛らしいですね、とチルタリスを愛でるシンヤが居てエーフィは視線をブラッキーに戻した。

 

「まあ、結果オーライ」

「不満タラタラなのが二名ほど居ますけどー」

「トレーナーよりマシです」

「一名は発狂しましたけどー」

「私の安息第一です」

「(ひでぇ!!)」

 

チラリと部屋の隅に居るミミロップに視線をやったブラッキーは小さく溜息を吐く。

 

「(参ったなぁ…、色々面倒過ぎる…つーか、シンヤが戻って来てくんないとオレおやつ食えねぇし…)」

 

自分専用に作られたおやつが食べれない。おまけに専用のポケモンフードを作れるミミロップが沈んでる……。当分は市販のフードに市販のお菓子。

 

「シンヤが恋しい…」

 

ポツリと呟いた言葉は誰にも届かなかった。

 

*

 

シンヤとヤマトがリビングで会話を弾ませているのを確認してから、庭でポケモンによるポケモンだけの緊急会議が行われた。

庭にはポケモンの姿に戻った面々が円陣を組み顔を見合わせる。7

 

「よし、とりあえず今の状況を一言でオレが言い表す!!」

「…」

「"最悪"だ!!」

「全くもって同意見!!」

 

ブラッキーの言葉にミミロップは声を荒げる。

しかし、声を荒げたところで今のシンヤとヤマトには「ミミィー!!」という鳴き声しか聞こえていない。

 

「やっぱりもう一度強い衝撃を与えるべきですわ。元に戻るかもしれませんもの」

「でも、衝撃を与えてシンヤさんが戻って来る保障は無いですよ。下手をすれば殺しかねませんし、またトレーナーが出るか、それともブリーダーが出るか」

「確かにリスクが大き過ぎるな…、暫く様子を見るべきかもしれない…」

「えぇええええ!?!?ワタシ、ストレスで死ぬ!!」

「お、落ち着け…」

「無理無理無理ぃ!!もうワタシのボールをテープでぐるぐる巻きにしてワタシごとカバンに封印してくれ!!」

 

そこまで嫌か……。

今にも泣き出しそうなミミロップを見てチルタリスがうろたえる。

 

「あれじゃね、そんな嫌ならツバキの所逃げれば?」

「アイツの所もぶっちゃけ超嫌!!だ・け・ど…!!そうする」

「シンヤの許可、貰えますかね…?」

「貰えなかったら、強制的に送ってくれ…!!土下座するから…!!」

「そ、そこまでしなくて良いですよ!ミミロップさん、一度落ち着いて下さい!!」

 

蹲ったミミロップの背をトゲキッスが翼で擦る。

そして、それまで黙って話を聞いていたミロカロスが溜息を吐いた。

 

「大丈夫か?ミロカロス」

「うん」

「目が虚ろですね…」

「うん、大丈夫、俺様待てる…。良い子に待ってたらシンヤが戻ってくるもん、俺様待てる、大丈夫、待ってる。シンヤが戻って来るまで待ってる、俺様は良い子で待てる、大丈夫、シンヤが戻って来た時に褒めてくれる、大丈夫、俺様待てる…」

「おおおおおい!!!ダメだ!!全然大丈夫じゃねぇ!!お前が先に戻って来いってミロカロスー!!」

 

ブラッキーが慌てて前足でミロカロスの体を叩く。

目が虚ろのミロカロスはブラッキーの声に反応せずに何処かを見つめたまま「待てる、大丈夫」と繰り返し言葉を発した。

 

「やっぱり一発ガツンと行くしかないですわ!!」

「ダメだ…主不在で不安なのは分かるが…、主の身こそ第一だ…。暫く様子を見よう…」

「ま、シンヤが死んじまったら戻って来るとかそういう問題じゃなくなるもんな…」

 

はあ、と揃って溜息を吐いた時に窓を開けたヤマトが「わ」と声を漏らした。

 

「何々、みんなで揃ってお喋りしてたの?かーわいーいなー、もー!!」

「ミミィ!!(うぜぇ!!)」

「そっかそっかー」

「ミミィ!!ミミロォップ!!(ダメだ!!アイツ本気で蹴り殺す!!)」

「えへへ、なんか喋りかけられてるー。人の姿になってくれないと分かんないけど可愛いー」

 

落ち着け、とミミロップを制したサマヨール。

命の危機に立たされていたヤマトはのんびりと笑みを浮かべながらポケモン達を眺めていた。

 

「シンヤのとこのポケモンはホント特別可愛いなー」

「当然です、私のポケモン達ですから」

 

*

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