一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

91 / 221
29

 

「はい、もしもし?」

 

電話に出れば画面いっぱいにツバキの顔。

私の名前を大声で呼んでいる途中で電話を切ってやった。

 

< …切って良いのか? >

「嫌な予感しかしない」

 

再び電話が鳴り出したが暫く放置してやろうと電話に膝掛けを被せて少しの防音対策を取ってみた。

ミュウツーの座るソファの向かいに座ってコーヒーを啜る。

延々と鳴り続ける電話が気になるのかミュウツーは電話の方に視線をやったまま。

ファウンスでジラーチとの一件があってからミュウツーはミナモシティに滞在中。たまにフラリと居なくなるが暫くしたらいつの間にか帰って来ていている。

居心地が良いというより、気兼ねなく読書が出来るから気に入ってるんだろう。ミュウツーは意外と勤勉な奴だ、自分が気になったものはとことん調べたいらしい。千年彗星しかり…。その調べたい対象に私も含まれているようだがそこは気にしないでおこう…。

他の連中に比べてずば抜けて頭も良いのでミミロップとサマヨール、エーフィ、サーナイトがミュウツーに意外と友好的でよく話をしている。ミロカロスは相変わらずミュウツーが来る度に拗ねてるけどな。

コーヒーを啜りながら届いていた手紙を確認する。

コーディネーターのシンヤが派手にコンテストに参加したものだから手紙の量も増える一方で手紙の整理も一仕事だ…。

知った名前、知らない名前と分けていると知った名前から初めて手紙が来ていて思わず手を止める。

コーディネーターであるシュウからの手紙だった。子供ながら綺麗な字で書かれた宛て名が自分の名前であるのを確認してから封を切る。

手紙の内容は、礼儀正しい挨拶にカイナ大会以降のコンテストバトルでの報告、コンテスト会場で見たハルカの様子に自らの向上宣言…。

グランドフェスティバルに出場するのも近いな、とシュウの手紙を見ながら小さく頷いた。

そして数枚の手紙の文末…。

 

『ぼくはラルースシティ出身なのですが、シンヤさんはラルースシティに行かれた事はありますか?ミナモシティからそう遠くないのはご存じだと思います。ラルースシティは科学の進んだハイテク都市、カイナシティでは休息を取れなかったとのことなので是非一度足を運んでみて下さい。自然豊かでのんびり出来ますし、施設も多くありますから退屈することはないですよ』

「ふむ…」

 

確かにミナモからラルースはそう遠くない。遠くないからこそあまり足を運んだことのない場所だ。確かバトルが出来るスタジアムがあるってのは聞いたことがあるけどな…。

施設も多くあるって何があるんだ…。とタウンマップを広げて観光雑誌も広げてみる。

 

< 何処か行くのか? >

「んー…ラルースシティにな、良い施設があれば休息がてら行こうかと…」

 

緑豊かな自然公園に、植物園もあって、……ん!?

 

「図書館もあるのか!」

 

こんな近くに図書館が!!

盲点だった!!

 

「今度、ラルースシティに行こう」

< ハイテク都市か、面白そうだ >

 

雑誌を手にしたミュウツーが笑みを零す。どうやら一緒に行く気らしい。

とりあえず、行ってみることを伝えるのとお礼も兼ねてシュウに返事を書かないとな。旅をしている人間に手紙は送り難いがポケモンセンターに預けておけば問題無い。

こういう時に少しジョーイと顔見知りで良かったな、と思う。顔見知りで最悪だと思うことの方が多いけど…。

 

「あのぉ、ご主人様?」

「ん?なんだ?」

「電話が鳴り止みません…」

 

チルタリスが電話の方に視線をやった、電話は未だ鳴り続けている。

チッと舌打ちをしてから電話に出た。画面には半泣きのツバキの顔が映る。

 

<「シンヤさんのお馬鹿!!」>

「用件はなんなんだ、面倒な事はごめんだぞ」

<「ミシロタウンに一緒に行って下さい!」>

「嫌だ!」

<「オーキド博士がオダマキ博士のとこ行くって言ってたんだもん!!オーキド博士、オダマキ博士と初対面って言ってたからね、あたしも一緒に行きますよーって言ったの!」>

「だから?」

<「シンヤさんも一緒に連れて行きまーす、って行ったらオーキド博士がめっちゃ喜んでたの」>

 

余計なことを…!!

シンヤさんが一緒に行ってくれないと博士としてのあたしのメンツが…とどうのこうのと言い訳を並べるツバキ。

 

<「だから、ミシロタウンに一緒に行こうよシンヤさん!!」>

「めんどくさい」

<「ヤマトさんのお願いは聞いてあたしのお願いは聞いてくれないとかどういうこと!?酷い!あたしにだけそんな冷たいとか酷い!」>

 

ヤマトめ、アイツも余計なことを…!!

 

<「ノリコに愚痴ってやるぅ~!!ノリコの兄ちゃん冷酷だって愚痴ってやるぅ~!!」>

「やめろ!」

<「じゃ、ミシロタウンにれっつごー!!」>

「…分かった、用意しとく」

<「すぐそっち向かいまーす、エンペラー!お出掛けして来るねー!留守番よろしくー!」>

 

電話が切れる直前にエンペラーの「事故って怪我すれば良いのに」という声が聞こえた気がした。アイツ相変わらずだな…。。

大きく溜息を吐いてチルタリスへと視線をやる。

 

「お出掛けですね」

「ああ、出掛けて来る」

 

読書を再開させたミュウツーを睨めばユラリと尻尾を揺らしていた。さっさと行けって意味が含まれている気がしなくもない。

 

「家に残ってるのは誰だ?」

「サマヨールさんが書庫で書物の整理中です、サーナイトさんとエーフィさんが庭でお茶をしていて、ミロカロスさんがご主人様の自室でお休み中です」

 

またアイツは勝手に人のベッドで…!!

 

「ブラッキーさんは遊びに出掛けてしまっています、トゲキッスさんはミミロップさんを乗せて早朝からカナズミシティのポケモンセンターまでお出掛けになられました」

「ああ、そうだったな…」

 

なら、ティータイム中のと昼寝中のを連れて行くか…。

 

家にツバキが迎えに来たのでカイリューの背に乗ってミシロタウンへと向かう。

空を飛んでる間、延々とツバキが喋り続けるのを聞き流していた。なんか前にもこんな事があったような気がする…。

ミシロタウンへと着いてオダマキ博士の研究所へ向かっていると前方に大きな緑色の物体。

 

「なんだあれは…?」

「バォ?」

「お、大きいポポッコ!?うわー!!すごい!!」

 

カイリューの背の上で暴れるツバキ。

背の上で暴れられたカイリューが嫌がったので慌ててツバキを止める。

大きいポポッコ、ってあんなのが居るわけがない。近付いて行けばその全貌が明らかになっていく…ロボットだ。そして見知った連中が乗り込んでいた。

相変わらず目立つ事が好きだよな…。

ロケット団が居る所にはサトシ達もいる。いや、逆か。

 

「なんてことをするんだ!!」

「はぅあ!?愛しのジョシューさんがお怒りだわ!!」

 

愛しのジョシューさん?

カイリューが研究所へと降り立てば大きなポポッコは空へと飛んで行く。ニャースの「バイニャラ!」との声も遠ざかって行った。

 

「おお、シンヤ!!それにツバキくんも良い所に来てくれた!」

「シンヤさん大変なんだよ!!新人トレーナー用のポケモンたちが!!」

 

まあ、ロケット団だしな。

 

「ジョシューくん、キミはここに残って研究所を守るんじゃ!わしはヤツらを追う!!」

「わかりました!」

「状況が分からないけどあたしもジョシューさんと二人で研究所を守ります!!初、二人の共同作業!!」

「……」

「シンヤさん、目が冷たい!!っていうか、さっさと追って下さい!!」

「……」

 

ツバキに視線をやってから走って行ったオーキド博士とハルカとマサトを追いかける。

 

「うぅん、こっちに来たと思ったんだけどな…」

「何処に消えちゃったのかしら…」

「あれだけの大きさじゃ隠れる場所はそう無いはずじゃが…」

 

辺りを見渡す。

目の前を流れる川の上流には滝があった。

 

「あの滝が怪しいな!行ってみよう!」

 

オーキド博士の言葉にハルカ達が返事をする。

滝の方まで近付けば滝の裏に洞穴があった。

 

「滝の裏に洞窟があるよ!」

「中に灯りが付いてるわ!」

 

ロケット団の連中はどうしてこうもツメが甘いんだろうな…。

新人トレーナー用のポケモンを連れて行かれるのは困ることだが、もうちょっとどうにか出来ないものか…。

 

洞窟の中に入る。

人為的に作られた構造でこれをロケット団が作ったのだとしたらもうアイツらは別の所に転職した方が良い。

 

「良いな…、静かに進むんじゃぞ…!」

「「はい…!」」

 

その動きは必要なのですか、オーキド博士。

抜き足差し脚忍び足の動きで三人が進むのを少し離れて後ろから"普通に"ついて行く。

ゆっくり進んでいるのは分かるが…今、なんかセンサーに引っ掛かったぞ。足元の壁に設置されていたランプが点灯したし…。

 

「……」

 

センサーに反応して、入口も閉まったんだが…。

静かに、静かに、と言いながら進む三人は全く気付いていないようで何も言えず黙ったまま私は三人の後をついて行く。

監視カメラも見付けてしまいました、オーキド博士。

まあ、相手がロケット団だから特に警戒する気も失せるんだがな…。それにしてもこんな設備を洞窟の中に付けることが出来るなんて凄いなロケット団。本気で転職するべきだ。

暫く歩いて行くと前方に檻に入れられた新人トレーナー用のポケモン達。

キモリ、アチャモ、ミズゴロウにオーキド博士が連れて来たのだと思われるフシギダネ、ヒトカゲ、ゼニガメだ。

檻には四方からライトが当たっている。

ここに居ますよ、と主張してライトアップされているようだ。こんな罠に誰が引っ掛かるのか…。

 

「あ、あれは!」

「今、助けるぞー!!」

 

マサトが声を発したかと思うとオーキド博士を先頭にハルカたちも檻に向かって走り出した。

え!?と声を発する前に三人は土煙と共に消えた。

どうやら落とし穴に落ちたらしい、ロケット団…落とし穴好きだな…。

 

「罠だったんだ~…」

「早く脱出しなきゃ!!頼むわよみんな!」

 

ハルカの声。

隠れていたらしいロケット団が私の目の前に出て来て落とし穴を見下ろしている。

私に気付いてないらしく私にはロケット団の背中しか見えないがハルカのモンスターボールを機械が吸い込んだのは確認出来た。

 

「ご苦労様~」

「よそ見なんかしてるからそうなるのニャ!」

「ドードリオ、前見て横見て後ろ見て」

「それはわしの句じゃ!」

「ここは私達の難攻不落の秘密基地なのよ」

「幹部昇進、支部長就任したあかつきにはお役立ちなのだぁ!」

「それはもうすぐだけどニャー!!」

 

三人の背後にゆっくりと近付いて両手を前に出す。

 

「残念ながら昇進にはまだまだ遠い」

 

どーん!!

 

「「「どわぁ!?」」」

 

落とし穴にロケット団を突き落としてみた。落とし穴からハルカの驚いた声があがる。

コジロウの持っていた機械からハルカのボールを取り出して落とし穴を覗き込めばロケット団が悲鳴染みた声をあげた。

 

「うっそだー!!!」

「こんなことってぇええ!!」

「酷いニャ!後ろからなんて卑怯ニャ!」

「…よそ見なんかしてるからそうなるの、にゃ」

「それはニャーのセリフだニャー!!」

 

悔しいぃいい!!と喚くロケット団を見てマサトがケラケラと笑った。

 

「シンヤ!よくやった!!」

「さっすがシンヤさん、やるぅー!!」

「ざまーみろだ、ロケット団め!!」

「くっ、一生の不覚だわ…!!」

「シンヤのバカヤロー!!」

「ニャー達の秘密基地が逆手に取られたニャー…」

 

檻から新人トレーナー用のポケモンたちを出す。

エーフィをボールから出してサイコキネシスの指示を出してオーキド博士、ハルカ、マサトを落とし穴から救出する。

 

「助かったー!」

「ポケモン達も無事で一件落着だね!」

「酷い目にあったわい」

 

落とし穴から私達も助けなさいよー!と怒鳴るロケット団。

新人トレーナー用のポケモン達が各々でロケット団に技を食らわせるものだから、ロケット団が落とし穴の中で悲鳴をあげていた。

まあ、死にはしない連中だけど……。

 

「さて、ここから脱出じゃな!」

「出入口は閉まってましたよ」

「なんと!?」

 

オーキド博士に出入り口が閉まっていた事を報告すれば落とし穴からロケット団がザマーミロと声をあげる。

 

「オーキド博士たちは来た道を戻って下さい、私が開けさせますから」

「大丈夫か?」

「サイコキネシスで捕まえたまま連行するんで」

 

サーナイトもボールから出して、エーフィとサーナイトが協力してロケット団を落とし穴からサイコキネシスで持ち上げる。

わーとか放せーとか喚いているがエーフィとサーナイトのサイコキネシスから逃れるのは不可能だ。

 

「うむ、では頼んだぞ!」

「えぇ!?シンヤさんだけで大丈夫なんですか!?」

「シンヤだから大丈夫なんじゃ、行くぞ二人とも!」

「シンヤさん、気を付けて下さいね!」

「ああ」

 

ロケット団相手に何処をどう気を付けたら良いのか分からないがとりあえず返事を返しておいた。

 

*

 

「なー、シンヤー…見逃してくれよぉ~…」

「出入り口の扉を開けたらジュンサーさんに連絡はしないでおいてやろう」

「それはそれで嬉しいけどー、私達は幹部昇進、支部長就任でイイ感じー!!になりたいわけよぉー…」

「新人トレーナー用のポケモンで幹部昇進、支部長就任、イイ感じーにはなれないと思うけどな」

「なんでニャ!」

「レベルが低い。経験が浅い。特に珍しいわけでもない。何に役に立つんだ」

「「「あー…」」」

 

言われてみればー…と言葉を漏らす二人と一匹。

コイツらは技量はある癖に頭が悪いな。

サイコキネシスでロケット団を連行したままメインのコンピュータールームだと思わる場所に着いた。監視カメラの映像があることから間違いないな。

出入り口付近のカメラを見ればオーキド博士たちが居た。後は扉を開けるだけだ。

 

「エーフィ、ニャースを解放しろ」

「フィ」

 

サイコキネシスから解放されたニャースが地面に落ちる。

そのニャースの首根っこを掴んで椅子に座らせた。

 

「開けろ」

「ニャー…」

 

ニャースがボタンを押すと出入り口の扉が開いた。

そこからオーキド博士たちが外に出るのを確認してからロケット団をサイコキネシスから解放する。

 

「いてっ!!」

「もぉー!!」

「ここの秘密基地も明け渡せ。野生ポケモンには住み難い」

「せっかく造ったのに!?」

「約束通り警察に連絡はしないが…、ここで痛い目にあわせても良いんだぞ?」

 

エーフィとサーナイトがロケット団の周りを囲む。

顔を蒼くしたロケット団がガクリと肩を落とした。今の私の方がロケット団より悪役っぽいのは気のせいだ。

ロケット団を放置してオーキド博士達の所へと向かう。

外に出ればオダマキ博士とサトシ達も居た。

 

「シンヤさん!!大丈夫でしたか!?」

「ああ、問題な…」

 

問題無しだ、と言い切ろうとした時に洞窟から轟音。

 

「ナーッハッハーッ!!」

「な、なんだ!?」

 

見逃してやったのに…。

 

「な、なんだかんだと聞かれたら」

「答えてあげるが世の情け」

「世界の破壊を防ぐため」

「世界の平和を守るため」

「愛と真実の悪を貫く」

「ラブリーチャーミーな敵役」

「ムサシ!」

「コジロウ!」

「銀河を駆けるロケット団の二人には」

「ホワイトホール、白い明日が待ってるぜ」

「ニャーんてニャ!」

「ソーナンス!!」

「ロケット団!!」

「ピピカチュウ!!」

 

相変わらず長い…。

深く溜息を吐けばエーフィとサーナイトが苦笑いを浮かべた気がした。

 

「これぞ秘密基地一体型ポポッコメカなのだぁ!」

 

まあ、それで洞窟が野生ポケモン達に明け渡されるのは良いことだけどな。

 

「それでは早速!!」

「シンヤ、お前のポケモンを寄越せー!!」

「私のか?」

 

ポポッコメカから手が出て来てエーフィとサーナイトが捕まった。

大人しく捕まったエーフィとサーナイトを見てロケット団が高らかに声をあげて笑った。サトシ達が慌てたように声を発する。

 

「まだ持ってるならドンドン出しなさーい!」

「今日はエーフィ、サーナイトとこれだけだな。ほら」

 

ぽい、っとミロカロスの入ったボールを投げて渡すとロケット団はキョトンとしながらもミロカロスのボールを受け取った。

 

「シンヤさん…!!駄目ですよそんな事しちゃ!!」

「でも、あのメカ…見るからに硬そうじゃないか」

「そりゃそうですけど…でも、ポケモンをあっさり渡すなんて!!」

「我らロケット団のメカに恐れをなしてポケモンを渡すなんて、シンヤってばやっぱり頭良いわね!!」

「有難く貰って行くぜ!!」

「シンヤのポケモンをボスにプレゼントすれば幹部昇進、支部長就任間違い無しニャ!!」

「このボールの中身は何かしらね~」

 

ムサシが私から受け取ったボールをメカの内部に乗り込んだ状態で開けた。

ボールから出て来たのはミロカロス、そのミロカロスを見てムサシが「キャー!」と歓喜の声をあげた。

 

「良いじゃないのー!!」

「こりゃ強そうだ!ボスにプレゼントすれば大喜び間違い無しだぜ!!」

「ミロ!?」

「「「幹部昇進、支部長就任、イイ感じ~!!」」」

 

高笑いするロケット団。

サトシが私の腕を掴んで私の体を揺する。

 

「シンヤさん!!ポケモンが連れてかれちゃうよ!!」

「大丈夫だ、そろそろ暴れるから」

「え?…暴れるって…」

「ミロォオオオオ!!!」

「ニャニャニャ!?嫌がってるニャ!!」

 

ポポッコメカに捕まっていたエーフィのサーナイトもミロカロスの雄叫びを合図にサイコキネシスをメカ全体に食らわせる。

ぐねぐね、とメカから出ていた手が動き回り。ポポッコメカが不気味に振動する。

 

「ちょ、ちょっと大人しくしなさいってば!」

「ポポッコメカは頑丈だから大丈夫だ!!」

「ミロォオオオ!!」

「内部からの攻撃は想定の範囲外ニャァアア!!!」

 

ミロカロスがふぶきでロケット団に攻撃をするとメカから変な煙が出て来た。内部の機器類がふぶきによって破壊されたんだろう。

捕えられていたエーフィとサーナイトが地面に降り立つ。ミロカロスもメカから飛び降りて空中を飛びながら煙を出すポポッコメカを睨み付けた。

 

「ミロォオオ!!」

「フィィイイ!!」

「サナァアア!!」

 

ふぶき、シャドーボールにマジカルリーフ。

痛いなぁ…と思ったのと同時に爆音。

 

「「「ヤな感じぃいい!!!」」」

 

結局、そうなるんだな…。

引き際くらい見極めろ、と言いたい所だが見極められてたら毎度同じことになってないか…。

 

「敵を騙して内部からの攻撃、見事だったよシンヤくん!!」

「どうも」

「指示を出さずともポケモンがシンヤの意思に応える、ポケモンとの信頼関係があっての賜物じゃな!!」

「そっかー!!そういう作戦だったのかー!!」

「オレ、てっきり本当にシンヤさんがポケモンを渡しちゃったのかと思ったぜ…!」

「…」

 

エーフィとサーナイトは理解したうえでわざと捕まってたけど、ミロカロスは私の考えなんて全く分かってないぞ…。

ずりずりと体を引き摺りながら近寄って来たミロカロスの頭を撫でる。

ま、ミロカロスは分かってなくても…。

 

「私はお前の行動パターンなんてお見通しだ」

「ミロォ?」

 

*

 

オダマキ研究所に一晩泊らせてもらうことになった。

研究所では研究談義に花を咲かせる博士達…、研究者っていうのは何にでも議論出来て楽しそうだな…。

 

「ねえ、シンヤさん!」

「なんだ?」

 

ジョシューさんの淹れてくれたコーヒーを飲みながら読書をしているとマサトが声を掛けてきた。

今、良い?と聞かれたので頷きながら栞を挿んで本を閉じる。

 

「シンヤさんは何でポケモントレーナーを辞めちゃったの?せっかく強いポケモントレーナーになったのに!」

 

マサトの言葉に思わず口籠る。

トレーナーのシンヤからすれば辞めた覚えなどないのだから理由など無い。あえて言うならばディアルガ、パルキアがそういう風に世界を組み合わせたんだ。

アイツらはアルセウスのようにゼロから創るという事が出来ないポケモンだからな。世界の空間を繋げて時間を調整するってだけで凄いとは思うが…。

マサトにはなんと答えを返せば良いのか、私の理由で良いのか?私の思う理由で良いならそう答えるが…。

良いんじゃないかな、と頭の中でブリーダーのシンヤが答えた。

 

「バトルが好きじゃなかったからだ」

「…えぇ!?バトルが好きじゃないのにトレーナーだったの!?」

「バトルが好きじゃないと分かったからトレーナーを辞めたんだ」

「…、好きじゃないのに強くなれるものなの?」

 

確かに、それはもっともな意見だ。

トレーナーのシンヤは事実バトル大好き人間だしな。

 

「その時は好きだったのかもな」

「シンヤさんって変わってるね、そこからコーディネーターになってまたブリーダーになって今はポケモンドクターなんて」

「色々とやってみたい年頃だったんだ、多分な」

「ボク的には色々とやってみたいからって出来ちゃう方が不思議だけどさー」

 

私はそんなに出来る人間じゃないけどな。

そんな万能な人間みたいに言われても私一人じゃ不可能だ。

 

「シンヤさんはポケモントレーナーの時、どんな感じだった?お姉ちゃん達と同い年くらいだったんでしょ?」

「私のトレーナー時代か?それはもう…」

「それはもう…?」

「酷い」

「「「「酷い!?」」」」

 

マサトとの会話を聞いていたらしいサトシ達が声を発した。

思わず声が出たらしい、でもマサトは気にせずにどう酷いの?と再び疑問を問いかけてきた。

 

「強さこそ全て、強くないポケモンは役立たず、バトルは勝って当然、ポケモンとの必要以上の慣れ合いなんてものは不要、自分の手持ちを強くすることは勝つ為の術であり、自分の手持ちは勝利を手にする為の道具である」

「そんなのってないよ!」

「だから酷いって言ったじゃないか」

「シンヤさんにそんな時があったなんてボク信じられない!」

 

私も信じられない。

でも、他の私を知る人間はそう記憶しているんだから仕方ない。

 

「本当なんですか?その話?」

「ツバキに聞いてみろ、ツバキとは生まれた時からの知り合いだからな」

 

聞いてくる!と立ち上がったマサト。

今まさに会いに行こうと思っていた人物、ツバキが部屋へと入って来た。

 

「シンヤさん、コトキタウンのジョーイさんから電話ですよー」

「…居ないと伝えてくれ」

「もう居るって言っちゃったよーん」

 

溜息を吐いてからカバンに本を戻して席を立つ。

部屋から出て電話の前に立てば笑顔のジョーイ、「至急応援お願いします」と笑顔で言われて返事をしながら肩をガックリと落とした。

 

*

 

「ツバキ博士、シンヤさんがカイリューを連れて行くからと言ってましたよ」

「はーい、ありがとうございます!!ジョシューさん!!」

 

ジョシューに声を掛けられたツバキが返事を返す。

その上機嫌なツバキにマサトは声を掛けた。

 

「ねえねえ、ツバキ博士!」

「あーい?どうしたの?」

「シンヤさんがトレーナー時代、酷いトレーナーだったって本当?」

 

マサトの言葉にツバキはキョトンとした表情を浮かべる。それを聞いていたジョシューはクスクスと笑みを零した。

 

「誰が言ったのさ、そんなこと!!酷いトレーナーだなんて言った奴が酷い!!」

「シンヤさんが言ってたんだよ?」

「ああ、シンヤさんか、ならしょうがない」

「酷いトレーナーじゃなかったの?」

 

マサトの再びの問いにツバキは笑って言う。

 

「酷かったね~!!」

 

やっぱり酷いのかよ!!

とツッコミを入れたいのをマサト達はグッと堪えた。相手は若いとはいえ優秀な博士、無礼なことは言えない。

 

「あたしはまだ小さかったけど、よぉーっく覚えてるよ。だってポケモンを相手にしたシンヤさんめっちゃ怖かったんだもん。普段はそうでもなくて良いお兄ちゃんだったんだけど」

「そうなの?」

「うん、バトルで勝つってのにこだわりがあったのかねぇ…ポケモンに厳しいんだー、でもその分、自分にも凄い厳しいよ。妥協しない、甘えも許さない。小さい時は怖いと思ってたけど博士として働くようになってシンヤさんの凄さがよく分かったよ」

「ポケモンに優しくないんでしょ?道具だと思ってたって…」

「まあ、悪い意味だとそうだね。周りの人間から見ても悪い意味でしか伝わらないしね。でも、ポケモン達はついて行ったんだよ。そのトレーナーと強くなろうと思ってついて行ったの。今、シンヤさんのポケモンとして残ってる子たちは大体そう、めちゃくちゃ強いよ」

「ボクは強さが全てじゃないと思うな!だって仲良くして強くなって行く方が良いもん!」

「あたしは分かんないけど、トレーナー時代のシンヤさんについて行ったポケモン達にしか分からない何かがあったんだと思うよ。カリスマ性って奴なのかなー、頂点に立つ風格があったってことよ。あたしは今、博士として色んなトレーナーを見て来たから尚更そう思う。あの人は凄いって」

「……」

「シンヤさんがコーディネーターになった時も凄かったんだから!!バトル専門だったのを一転させてコンテスト用に磨きあげるって相当大変よ!?」

 

確かに!とハルカが声をあげて頷いた。

そこからは延々とツバキの独壇場、シンヤという人間をツバキの思うように語り続けられた。

シンヤ本人が居れば全力で否定しているところだがそこにシンヤは居ない。

 

 

「…っくしゅん!!」

「あら、風邪ですか?」

「そんなことはないと思うが…」

「じゃあ噂話でもされてるんですよ」

「変な事言われてなきゃ良いけどな」

「ふふふ」

 

他人の姿をどう捉えるかなど、他人の自由である。

それが勘違いを生むような大絶賛だったとしても、それを聞いた他人がまたそれを信じて鵜呑みにするのも自由だ。

 

「シンヤさん家、凄いよ!!地方によってね、飾られてるもの違うから!!ホウエン地方の家にはコンテストのリボンやらカップでしょ!!そんでカントーの家にはバッチにトロフィー!!ジョウトの家にはブリーダー最優秀賞の表彰状にメダルとかさー!!!」

「えぇー!!?ホントですか!?見てみたーい!!」

「シンヤさんはポケモンに懐かれるからさー、どの家に行っても野生ポケモンで溢れれててポケモン屋敷だよ!!」

「凄い!!ポケモンいっぱい居るんだぁ!!」

「良いなー!!」

「ポケモンに懐かれるのも大事ですもんね!」

 

…そう、自由なのである。

 

*

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告