来たぜ、ハイテク都市ラルース!!
ヒャッホーイと両手をあげて叫べばエーフィに後頭部をベシンと一発叩かれた。叩かれたところを押さえてエーフィを振り返れば少し不機嫌なエーフィ。
「周りに迷惑ですよ」
「ごめんなさい…」
謝ればエーフィは小さく笑みを浮かべる。
隣を通った女の人がオレを見てクスリと笑った。
人通りの多いところでハシャぐの恥ずかしいな、笑われちまったよ。と肩を落としたところでまたオレの傍を女の人が通り過ぎる。
「ぅおう!!!今の見た!?シンヤ!!今の見たぁ!?」
「な、なんだ急に…!」
ラルースの観光マップを広げていたシンヤの袖を掴んでついさっき通り過ぎた女の人の後ろ姿を指差した。
その女の人を見たシンヤが少しの沈黙の後に「なんだ?」と言って首を傾げた。
「なんだ?じゃないよ、見たでしょ!?」
「見たには見たが…あの女がなんだ…」
「違うー、あの人間と一緒に歩いてた子!!」
「クチートだったな」
そう、と頷けばシンヤは「だから?」とまた首を傾げた。
駄目だな、シンヤは本当に分かってない…。
「めっっっちゃ、可愛かったじゃんかぁああ!!」
「知るかっ!!」
シンヤの袖を掴んでいたオレの手を振り払ったシンヤがまたラルースの観光マップを広げた。
ポケモンドクターの癖にメスポケモンの可愛さが分からないなんて…。あれ、でもそういえばシンヤって人間の女の可愛さとかも分からなかったけ…?
「かなりの可愛こちゃんだったよな?」
な?とシンヤの横にいたミュウツーに賛同をもとめてみた。
ちなみにミュウツーは人の姿になってるんだけど、髪の毛が真っ白で後ろ姿はじいさんっぽい。言わないけど。
「比べる基準はなんだ」
「えー…、比べる基準とか言われても…」
「他のメスのクチートと比べるのか、全体的なメスのポケモンと比べるのか」
「あー、全体的な方で」
「なら中の上ってところだ」
「ぶっ!!!」
結構、採点厳しいなオイ。
オレより色んなポケモン見て回ってるミュウツーが言うんだからそうなのかもしれねぇけど…、いや、でも、まてよ…。
さっきのクチートで中の上ならミュウツーの言う、特上って…。
「ツーくん!!ちょっとツーくんの思う特上を紹介してくれ!!」
「…後ろ、」
「オレの後ろに特上がっ!?」
慌てて振り返れば腕を組みながらオレを睨み付けるエーフィ…。
め、めっちゃ怒ってるんですけどぉぉぉ…!!
怒りマックスだよ、ラルース来て早々に怒りマックスってどういうこと!?まだここ駅だよ!!ラルースシティに足を踏み出してないのに!!
「うるさいんですよ…さっきから…」
「ご、ごめん…フィー…、さん」
「次、騒いだらシンヤさんに言ってボールに戻してもらいますから…」
「!?」
思わず、さん付けしちまったよ…。
エーフィ、マジ怖い。なんか最近どんどん怖くなってきてる。なんなの?オレそんなにうざいの?
「……」
キョロキョロと辺りを見渡しているミロカロスの背中を突いて聞いてみた。
「ミロ、ちょっと良い?」
「なに?」
「オレってうざい?」
「…?そんなことないよ?」
「だよなー!!!」
「…???」
首を傾げるミロの手を取ってバンザーイと両手をあげる。
近くに居たミミロップが「うぜぇ」と吐き捨てた。
「……」
「ミミロー…全力で空気読めよ…」
「はぁ?ホントのことだし、っつーか、聞く相手間違ってんだよ」
「ヨル!!オレ、うざくないよね!?」
「…自分に聞くのか」
「ヨォルゥウウ!!」
「まあ、鬱陶しいか鬱陶しくないかで言うと…鬱陶しい…」
「ぅぐっ…!!!」
やっぱオレ、うざいの…?
オレってうざいの?とミュウツーに聞けばミュウツーは腕を組んで眉間に皺を寄せた。
「比べる基準はなんだ」
「またそれ!?」
頭の良い奴と会話するのめっちゃ疲れるな!!
「他のブラッキーと比べるのか、」
「全体的!!基本、全体的に見ての意見求めてるから!!」
「そうか」
「そう!」
「なら、うざい」
「ぶっ!!!」
救いがないとかどんだけ!!
ガクンとその場に膝を付けば観光マップから視線をあげたシンヤと丁度、タイミングよく目が合った。
「…何やってるんだ?」
「シンヤ…、オレってうざいらしい…」
「…………そうか」
「ダメだ、これからうざくない男になろう…こんなんじゃモテな……、シンヤ!!見て!!今通ったキレイハナめっちゃ可愛くない!?」
「…色々諦めろ」
「え!?なに!?いや、っていうか、今のキレイハナ!!!どうよ、ツー!!!」
隣に居たミュウツーに賛同を求めてみた。
「並」
「…マジで特上紹介しろよぉおお!!!」
「シンヤさん、あのうざいのボールに戻して下さい」
「…お前達、駅でもうすでに楽しそうだな…」
*
エーフィから逃げるブラッキーを眺めながら溜息を吐く。
シンヤが図書館行くって言うからサマヨールと一緒について来たけど、もう帰りたい…。
人多過ぎだし、うるさすぎだし、めっちゃだるい。
「来たの失敗だったかも…」
「…そうか?」
「ワタシはこういうとこ嫌いなんだよ」
「まあ、自分も好きではないが…たまには良いだろ。観光でもして帰る…」
「え!?観光すんの!?」
「ああ」
頷いたサマヨール。
マジで?このワタシより人混み嫌いのサマヨールが?ほとんど人の姿で出掛けないヤツが観光って…。
「なんか面白いものあんの?」
「この街のことはしらないが…、あれが…」
「あれ?」
サマヨールの指差した先を見れば朝っぱらの青空にオーロラ。
なにこの怪奇現象!!!いや、怪奇現象だからこそサマヨールがちょっと楽しげなのは分かったけど…!!
「なにあのオーロラ!!ありえねぇ!!」
ワタシが声をあげれば同じように空を見上げていたらしいシンヤがワタシの方に視線をやった。
「ハイテク都市ならではの電子映像じゃないのか?」
「…そうなの?」
「いや、私は知らん」
観光マップに書いてないなら違うんじゃないの?とは思ったけどシンヤは特に気にしてないのかブラッキーを追いかけ回すエーフィに声を掛けていた。
シンヤの周りに集まればシンヤは駅にある時計をチラリと見てからワタシたちに視線を戻す。
「夕方の6時頃にポケモンセンターに集合、それまで自由行動だ」
ヤッター!!とブラッキーが声をあげながら両手をあげた。
それをエーフィが不満気に睨み付けている。
何かあったらバトルタワー内にある図書館に来い、とシンヤが言ったところで浮遊するロボットがシンヤに近付いて来た。
「ん?」
<「ようこそラルースへ!!ウェルカーム!!」>
「ぉお!?」
急に喋ったロボットにびっくりしたらしいシンヤが声をあげた。
液晶画面に映るロボットを目を輝かせたミロカロスが覗き込むとロボットの頭部だと思われるところからレンズが飛び出した。
<「はい、チーズ!!」>
「…!?」
パシャッとシャッター音。
写真を撮られたらしいミロカロスはパチパチと瞬きを繰り返していた。
そのままロボットはシンヤの方へと移動して同じようにシャッターをきる。
順番に写真を撮っていくらしいロボット。
「イェーイ」
ピースをするブラッキーを見たエーフィが呆れたように溜息を吐いた。
全員の写真を撮り終わったロボットがシンヤにカードを差し出した。
<「この街でのパスポートになります」>
「ふむ」
<「この街に居る間はこのパスポートをお持ち下さい。お買い物などもこのパスポートで出来るようになっております」>
「…」
パスポートを受け取ったシンヤを見てブラッキーがロボットに飛び付いた。
「オレにもくれよ!!」
<「出身地などのデータが確認出来ません」>
「データなんてオレらにあるわけねぇー!!」
<「一切の保障無し、料金は後払いとなりますがパスポートを発行しますか?」>
「はい!」
「おい、払うの私なんだぞ!!」
ロボットに返事を返したブラッキーにシンヤが声をあらげる。
ニヤニヤと笑うブラッキーはロボットからパスポートを受け取った。この街ではパスポート必須みたいだから受け取らないわけにもいかない。
ワタシもブラッキーと同じようにパスポートを受け取った。
「緑色だな…」
「あ、ホントだ。シンヤのは赤いもんな」
「人の姿になってるポケモンを見極める機能くらい付けて欲しいものだ…」
溜息を吐きながら呟いたシンヤ。
それは無茶な話だ、とサマヨールが小さな声で呟いた。
「とりあえず、解散!」
「おーぅ!!」
「行くぞ、ツー!!図書館まで走れ!!」
走って行ってしまうシンヤを見てミロカロスが声をあげる。
名指しで呼ばれたミュウツーに視線をやればミュウツーと視線が合った。
「年甲斐もなくハシャいでるな」
「テンションマックスのシンヤとか超レア」
「主が楽しいなら良いことだ」
小さく溜息を吐いたミュウツーがシンヤの後を追って歩いて行った。
完全に置いて行かれたミロカロスはその場に蹲る。シンヤ、絶対にうるさいの置いて行った。わざと走って行ったよあれ。
「うえぇぇぇぇぇ…!!!」
「はいはい、ミロちゃん。オレと遊びに行こうなー!」
「シンヤがぁ…」
ミロカロスの手を引いてブラッキーが辺りを見渡した。
子守りを自ら買って出たブラッキーはうざいけど良い奴。マジで良い奴。ああいうところあるからワタシはブラッキー嫌いじゃねぇよ。
「…自分はその辺を見て回るが、どうする?」
「んー、ワタシも一緒に行く。サナにお土産買って来いって言われてるし…」
めんどくさいけど、買って帰らないと余計にめんどくさい。
じゃあ、また後で。とエーフィに声を掛けて歩きだした。
「ミロ!!オレが見事な口説き方を伝授してやるぜ!!」
「くど…?」
「やめなさい!!!」
もうアイツら、ほっとこ。
*
バトルタワー内にある施設、図書館へと入ったところで大きな窓の外にまたオーロラが浮かび上がった。
「あのオーロラ、気になるな…」
「そうか?何かイベントでもやってるんだろ」
窓の外を眺めるミュウツーを見てから本棚へと視線を戻す。
何を読もうか、とんとんと本の背表紙を指で叩きながら本の種類を確認していく。
「シンヤ、少し様子を見て来る」
「んー…」
「…シンヤ、受付カウンターのところで本の種類が確認出来るみたいだぞ」
「本当か!?」
「じゃあ、いってくる」
「ああ」
ヒラリと手を振ったミュウツーの背を見送ってから、受付のカウンターの前に立つ。
<「何をご所望でしょうか?」>
「受付もロボットか、凄いな」
<「ご用件がありましたらお伺いします」>
「本の一覧表みたいなのないか?」
<「館内の書籍一覧はこちらになります」>
カウンターにある液晶画面にズラリと本のタイトルと内容の一部が抜粋されているのが並んだ。
便利だ。うちの家にも欲しい…。
ミミロップとサーナイトが買ってきたりして本棚に知らない本が増えてること多いんだよな…。良いな、これ本当に欲しい…。
「とりあえず、医学書一覧…」
*
お土産用の商品が並ぶ店内。
たくさんある商品を見比べながらミミロップがサマヨールに声を掛けた。
「なあ、お土産ってお菓子で良いと思う?」
「…良いんじゃないか?」
「なんでも食うよなぁ…、どれにしようか…」
ラルースのマークの入った饅頭を手に取ったミミロップが口を尖らせる。
「お兄さん、可愛いこ連れてるね!こっちのお菓子も美味しいよ!!オススメ!!」
「「……」」
店員の声をぼんやりと聞きながらミミロップはラルースのマークが入ったクッキーも手に取った。
「こっちとこっちどっちが良いと思う?」
「…両方買うと良い」
「お嬢ちゃん、その二つのお菓子とだとこっちがオススメだよ!!」
チラリとミミロップが店員の方へと視線をやればバッチリと目が合った。
「…おい、さっきからワタシに言ってんのか?」
「そうだけど?」
コテンと首を傾げたミミロップに店員もまたコテンと首を傾げて返す。
「誰がお嬢ちゃんだゴラァアア!!!ワタシは男だぁあ!!!」
お菓子を放り投げたミミロップが店員に飛び掛かる。
胸倉を引っ掴み店員を外へと引きづりだそうとするミミロップ、それを横目にサマヨールは一つのお菓子を手に取った。
「表出ろぉおおお!!」
「ひぃいいい!!!!!」
「こっちの菓子は主が好きそうだ…買おう。」
*
娯楽施設が多く立ち並ぶ通り。
ミロカロスとエーフィを左右に連れて歩くブラッキーの肩が掴まれた。
「おうおう、兄ちゃん!!美人引き連れて羨ましいねぇ!!」
「え?オレ?オレに言ってる?」
少々ガラの悪そうな男の言葉にブラッキーが驚きながら返事を返す。
「どっちか一人置いてってくれよ!!」
「え、ミロとフィーのこと?え、二人とも男だけど良いの?オレ的にはアンタの連れてるブースターちゃん置いてって欲しいんだけど…」
冗談混じりの言葉に適当に返事を返すブラッキー。
視線は男より、男の足元に居たメスのブースターに釘付けだ。
「男ぉ!?」
「気の強そうなブースターちゃん…っ、イデデデデデ!!!イタイ!!フィーさん痛いです!!背中抓られると痛い!!背中めっちゃ痛い!!」
ツンとした印象のブースターにヘラリと笑みを向けたブラッキーの背中をエーフィが思いっきり抓り上げる。
驚きの声をあげた男などそっちのけでブラッキーは悲鳴をあげた。
「俺様、ソフトクリーム食べて良い?」
「良いですよ。そこに座って食べてて下さい」
「フィーさん!手!!手離して!!」
ブラッキーの背中から手を離さないエーフィはミロカロスの言葉に笑顔で返事をする。
ブラッキーの背中を抓り上げるエーフィはずっと笑顔。
「ぇと、ミロさん?って言ったっけ?」
少々ガラの悪そうな男に呼び止められたミロカロスは男の言葉に「うん」と頷き返す。
「男なの?」
「うん」
「嘘だろぉおお!?」
頭を抱えて声をあげた男。
ソフトクリームを売っている機械の前で頭を抱えるものだからミロカロスは少しムッとしながら男にしっしっと手を払う。
「あっちいって、ソフトクリーム買うから」
「こんなに可愛いのにぃいい!!」
*
ビルの屋上から見つめた先にバトルタワー。
「……何かが、近付いて来る」
ポツリと呟いてミュウツーは青い空を見上げた。
<「緊急事態が発生しました。街からの退去をお願いします」>
忙しなく動くロボット、走る人間、鳴り止まぬ警報音。
ビルの屋上から見下ろしたミュウツーは面白くなりそうだと笑みを浮かべた。
*
<「緊急事態が発生しました、街からの退去をお願いします」>
読書に没頭していた私はジュンサーさんの声にハッと顔を上げる。
辺りを見渡せば図書館内に人影はない。
どうやら私は警報が鳴っているのに気付いていなかったらしい。
しかし、この本欲しいな…。今度探して買おう。
本のタイトルを頭の中で反芻しながら本を棚に戻せば、鳴り響いていた警報音が消える。
緊急事態ってなんだ、と思いつつ受付のカウンターに行けば受付担当のロボットは電源でも落ちているのか反応がない。
おや?と首を傾げてロボットの頭をトンと指で突いてみるが反応は無かった。
機械類が停止してしまったのだろうか、図書館から出ようと扉に手を掛けたが扉が開かない。手動のドアだったはずだが、鍵はオートロック式だったのか。
ロボットも動かない、扉もロックされている。緊急事態で機器類が全部停止したのかもしれない。
図書館に閉じ込められた。
この扉を蹴破っても良いが…そこまでする状況なのだろうか…。外の情報が無いのは困るな…。
「……」
窓から外の様子を眺めてみる。
静かなものだ、あれだけ人が多く居たのに人の姿はない。
「…とりあえず、」
閉じ込められて避難出来ないのだから仕方ない。
読書をして時間を潰そう。というか、本が読みたいんだ、私は。緊急事態なんてしらん。何かあったらジュンサーさんが居るし助けに来てくれるだろ…。
本棚から数冊抜き出して椅子に座りなおす。
図書館内は飲食禁止だが、閉じ込められてる状況なんだから仕方ない。
お湯を沸かしコーヒーを淹れてコーヒーを啜る。
「…うん、美味い」
…普段は重いが…、こういう時は持ち運んでて良かったと思うよな…。
周りも静かだし、本は読み放題だし。
良い日だ、と思ったところで外から攻撃でも受けたかのような轟音が響いた。
「……」
チラリと窓の方を見ればポケモンだと思われる薄暗い色合いの生物が横切った。
「……」
今のは確か、デオ…、
……いや、忘れよう。私は何も聞かなかったし見なかった。
コーヒーを啜って本を開く。
後で聞かれたら読書に集中してて気付かなかったって言おう。
*
<「緊急事態が発生しました、街からの退去をお願いします」>
聞こえた警報音、ジュンサーさんの声にミミロップは店員の胸倉から手を離した。
辺りでは悲鳴をあげながら走る観光客。
「…緊急事態ぃ?なにそれ、なにがあったわけ?」
バタバタと走って逃げて行く店員を見送ったサマヨールはバトルタワーへと視線を向ける。
「主…」
「ワタシ達も避難する?」
「…主は大丈夫だろうか」
「シンヤもさっさと避難してんじゃないの?」
「…そうだろうか、一応、確認しに行っておいた方が良い気がするんだが…」
悩むように眉を寄せたサマヨール。
普段は片目以外包帯で覆われている顔は今日は外出の為に包帯は右目のみ。むむむ、と口を尖らせたサマヨールの表情を見てミミロップはぽりぽりと指で額をかく。
「じゃあ、一応図書館行ってから避難する?」
「…ああ、そうしよう」
「シンヤってそこまで間抜けじゃないと思うけど…」
「いや、主は集中していると話しかけても反応が無い時が多いぞ…」
「あー…それは確かに…」
読書してたらご飯食べるのも忘れてるもんなぁ、と思いつつミミロップはバトルタワーへと続く電動で動く道に乗った。
「…あれ?」
「…停止してるな」
始終、動いてるはずの電動道路が停まっている。
緊急事態で機械が停止したのか、とミミロップとサマヨールは顔を見合わせてからバトルタワーへと続く道を歩き始めた。
歩き始めたところで前方からこちらに向かって飛んでくる影。なんのポケモンだ?とミミロップが首を傾げればそのポケモンは分裂して二体になりこちらに向かって来る。
「あぁ?」
「……」
その場で立ち止まったミミロップとサマヨール。二体になったポケモンは両手を触手のように広げてこちらに向かって来る。
「ぉおおお、ヨルゥウウ!!」
「、走れ!!」
「こっちくんなぁあああ!!!」
「…、あのポケモン、何かで見た気が…」
「あれ!あれだよ!!あの、ツバキがシンヤに送ってきた研究論文!!」
「…宇宙の、」
「あああ、デオキシスだ!!あれ、デオキシス!!写真となんか色違うけどデオキシス!!」
「何故ここに…!?」
「わかんねぇ…、って増えてるぅうう!?」
「、!?」
*
<「緊急事態が発生しました、街からの退去をお願いします」>
「緊急事態?」
「今のオレもまさに緊急事態ぃぃ…、フィーさん、マジで手離して…痛い…。涙出てきた…」
ブラッキーの頬を抓りあげていたエーフィが辺りを見渡した。
ベンチに座ってソフトクリームを食べるミロカロスを視界におさめてから逃げる人々の背を見つめる。
「私達も避難しましょう」
「ソウデスネ…、っていうか、オレの頬っぺたどうなってるこれ…。めっちゃ熱持ってるんだけど、見た目的にはどんな感じ…?」
「男前度が上がってますよ」
「わぁい…」
頬を押さえながら少し涙を流すブラッキー。
そんなブラッキーを無視してエーフィはミロカロスに声を掛ける。
「ミロ、避難しますよ」
「…シンヤは?」
「…シンヤさんはシンヤさんで避難してると思いますけど…」
「俺様、シンヤのとこ行く…!!」
「避難先はバトルタワーとは逆方向ですよ!!」
「シンヤー!!!」
避難する人々とは逆方向には走り出したミロカロス。
頬を押さえていたブラッキーが慌ててミロカロスの背を追いかけて走り出した。
「ミロ、ちょっと待てって!!」
「ッ、来ないでください!!!」
「んぁ?」
ミロカロスを追いかけて走っていたブラッキーはエーフィの声に振り返る。
ブラッキーの視界には遠くに逃げる人々の後ろ姿と見たことのない浮遊するポケモンに今にも襲われそうなエーフィ。
「はぁ!?」
「、ツキ…!!!」
「フィー!!」
その場で急ブレーキを掛けてエーフィの傍へと走るブラッキーは勢いのままポケモンに蹴りを食らわせた。
地面に倒れ込んだブラッキー、蹴りを食らったポケモンは霧のように消えてしまった。
「な、なんです…っ、今のポケモン…!」
「フィー!!走れ!!」
「え?」
「走れぇええ!!!」
ブラッキーに手を掴まれて引き摺られるように走るエーフィ。後ろを見れば先程消えたはずのポケモンがわらわらと空を飛んでいる。
ブラッキーへと視線を戻したエーフィは声を張り上げる。
「ツキ!!ミロを追いかけて下さい!!私があのポケモンを引きつけておきますから!!」
「はぁ!?」
「だ・か・ら!!ミロを追いかけて下さい!って言ったんですよ!!私があのポケモンを引きつけておきますからその間にミロの方へ…」
「馬鹿なこと言ってんじゃねぇ!!」
「ば、馬鹿!?」
「お前を置いて行けるわけねぇだろ!!」
「…ッ、」
キッとブラッキーに睨み付けられたエーフィは肩を揺らす。
痛いほどに掴まれた手へと視線を落として、エーフィは下唇を噛み締めた。
「…ブラッキーのバカ…ッ」
*