一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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ラルース内の広場にて療養中のレックウザの様子を見に行く途中、余計な拾い物をしてしまった…。

 

「…なにをやってるんだ、お前達は…」

「シンヤニャー」

「シンヤー、なんか食べる物くれ~」

「お腹空いてんのよー!!もうペコペコー!!」

 

サトシ達はもう出発したがこの二人と一匹はまだラルースに居たらしい。

お腹空いたニャ、とぐったりと地面に寝転がるニャースを見ては放置は出来ない。

 

「しょうがないな…」

「「「おお!!」」」

「でも、ちょっと用事があるからそっちをすませてからな」

 

うんうん、と頷くロケット団を確認してから私は広場へと足を進める。

後ろをついて来るロケット団、こいつらを引き連れてる時にジュンサーさんに会ったらどうしたら良いんだろう…。

 

「何処行くのよ」

「治療中のポケモンの様子を見に行くんだ」

「へぇ~、見えなくてもやっぱり医者なんだなぁ…」

「失礼なやつだなお前」

 

広場に行く途中で移動販売ロボットからホットドックを購入してロケット団に渡す。

頬を目一杯膨らませてホットドックを頬張るロケット団を見てから広場へと足を踏み入れた、広場の中央にはとぐろを巻いて眠るレックウザ。

後ろでぼとぼとっ、と何か落ちる音が聞こえて振り返ればロケット団がホットドックを地面に落していた。

 

「おい、食べ物を粗末にするな」

「いや、食べるけど!!」

「レレレレレレックウザじゃないのよ!!」

「ニャニャニャー!!」

 

落ちたホットドックを拾ったコジロウ。

…粗末にするなとは言ったが落ちた物を食べるのも良くないと思うぞ…。

 

「治療中のポケモン」

 

あれ、とレックウザを指差せばロケット団はなんとも言い難い表情を浮かべていた。

とりあえずそんなロケット団は放置して私は仕事に取り掛かる。とは言ってもレックウザの様子を見るだけだがな。

ポン、とレックウザの体を叩けばレックウザが頭を上げる。

 

「調子はどうだ?」

「グルルゥ」

「ん、眠いのは投与した薬が効いてる証拠だな。もう暫くは寝てろ」

 

レックウザの鼻先を撫でればレックウザはまたゆっくりと頭を地面におろして目を瞑る。

私が帰る頃にはすっかり元気になってるだろう、帰りは家まで乗せて行ってもらうことにしよう。その方がかなり早いし。

さて、とロケット団の方に向き直る。

 

「ポケモンセンターに行くか」

「あのさぁ、今…会話してなかったか?」

「してたニャ」

「なにアンタ、ポケモンの言葉わかるの?」

「分かるからなんだ」

 

ポカンと口を開けるロケット団。

そんな今更なことを聞かれるとは私も思わなかったぞ。

 

「シンヤ、アタシ達の仲間になりなさい!!アンタなら幹部昇進、支部長就任も夢じゃないわ!!」

「シンヤが仲間になってくれたらオレ達も楽々昇進だぜ~!!」

「嫌に決まってるだろ…」

 

ロケット団に入って何の利益があるんだ、しかも入ったらその『R』の文字が入った服を着ないといけないんだろ?

もの凄く嫌だ。

 

「というか、お前らこそ仕事変えた方が良いと思うぞ」

「なっ!?」

「酷ぇ!!」

「安定した収入のある仕事しろ」

「そんな正論過ぎること言われても…」

「あ、アタシ達はロケット団こそが天職よ!!」

 

まあ、そのタフさはある意味天職かもしれないが…。

 

「とりあえずロケット団が解散したらニャースはくれ。私が雇うから」

「ニャーかニャ!?」

「三食おやつ付き、仕事内容は私の仕事の手伝い。器用なニャースはうちに欲しい、人語も喋れるしな」

「三食おやつ付き!!み、魅力的過ぎるニャ…!!」

「ずるい!!」

「三食おやつ付きなんて豪華過ぎる!!」

 

お前らどういう生活してるんだ。

オレも雇ってくれ、アタシも、とムサシとコジロウが詰め寄ってくるが人間は要らん。家に居たら手持ち連中らも居るからかさ張る。これ以上、家の人口密度上げてたまるか。

 

「ニャースだけで良い」

「ニャー…次の転職先を確保出来たニャ…。いや、でもニャーにはサカキ様の…」

 

ぶつぶつ、と何か呟きながら考えるニャース。

人語も喋れて手先がかなり器用、頭も決して悪くないニャース、なんでこんなところに埋もれてるのか甚だ疑問だな。

というかそもそもロケット団ってどういう為のなんの組織なのかも分からん。

一応、悪い奴らとして認識されてるらしいけどな…。

 

「シンヤ…」

「なんだ?」

「腹減ったよぉ~」

「そうね、とりあえずご飯にしましょう!!」

「分かった分かった」

 

ガツガツと勢いよく料理を口に運ぶロケット団。

とんでもない早さでテーブルの上の料理が消えて行く…凄いな…。

一通り食べ終わってデザートに手を付け出した頃やっと静かな食事となった。この代金、絶対にジョーイに請求されるな…。

 

「そういえば、シンヤって前はコーディネーターだったんだニャ」

「そうそう!カイナ大会のこと雑誌で読んでびっくりしたもんなー!!」

「どぉーりで見たことある顔だと思ってたのよ!!」

 

スプーンで人の顔を差すな…、と思いつつ黙ったままコーヒーを啜る。

 

「オレ、サイン貰っとこうと思ってたんだ。サイン下さい」

「断る」

「ケチだニャ」

「ケチー」

「お前達の場合、複製してあることないこと言いながら売りさばきかねない」

「「ギクッ!!」」

「バレてるニャ」

 

アハハハハ、と誤魔化すように笑うロケット団。

ロケット団のことは嫌いじゃないが、ロケット団相手に絶対に油断はしないぞ…犯罪の片棒を担がされてたまるか…。

ジュンサーさんと知り合いなだけに何を言われるか分かったもんじゃない。

 

「ま、まあ、サインの下りは置いといて…、シンヤの次にトップコーディネーターとして華々しくデビューを飾るのはこのアタシ!!その時はシンヤにも友情出演させてあげるわ!!」

 

オーホッホッホ!!と高笑いするムサシ。

ムサシってコーディネーターだったのか、それは知らなかった。

しかし、隣で顔色を悪くするコジロウとニャースが不思議でならないぞムサシ…。

 

「嫌だ。テレビもカメラも嫌いだ」

「…元トップコーディネーターの癖に…、…まあ良いわ、とりあえず何処ぞの雑誌の記者にでも期待する新人は?って聞かれたらちゃんとアタシのこと言っておいてよね!」

「ムサシの技量を知らないから言わない」

「いくらでも話盛っといて良いから、いっぱい持ち上げといて」

「嘘はつかない」

「キーッ!!ああいえばこういう!!」

「頑固だな…」

「頑固ニャ…」

 

ずずず、とコーヒーを啜った時に「失礼します!」と大きな声。このハキハキとした喋り方は…まずい…っ!!

ムサシとコジロウの頭を掴んでテーブルの下に押し込めばニャースも慌ててテーブルの下に隠れた。

それを確認してからテーブルを背にして立ち上がって、なんとかテーブルの下を自分の体を使い隠して見る。

覗き込まれなければ、いける…っ!!

 

「シンヤさん、バトルタワー前に居るカビゴンのことで…ってどうしたんです?」

「いや、別に…」

 

首を傾げるジュンサーさん。

テーブルの上にある料理の皿を見てジュンサーさんが眉を寄せた。

 

「凄い量ですけど…誰か居たんですか?」

「ああ、まあな。それよりカビゴンがどうしたって?」

「え、あ、はい、カビゴンなんですけど。なかなか動いてくれなくて、お忙しいところ申し訳ないのですが協力お願いします」

「手持ちを回収したら向かうから先に行っててくれ」

「分かりました。では、失礼します」

 

びしっと敬礼したジュンサーさんがポケモンセンターを出て行く。

それを見送ってから大きく息を吐いた。

なんで私がこんなに必死にならないといけないのか…変な汗かいた…。

 

「あ、危ねぇ…」

「ナイスよ、シンヤ!!」

「シンヤは優しいニャ!」

「…私は仕事に戻るからお前たちはさっさと街を出ろ、街の被害を調べるのに警察が巡回してるんだ」

「「はーい」」

 

笑顔を浮かべるロケット団を見て溜息を吐く。

危機感のない奴らだ…。

 

*

 

ロケット団と別れた後、ノーマルタイプ用のポケモンフードの大袋を両肩に担ぎミミロップに声を掛ける。

ジョーイの手伝いで書類を片付けていたミミロップが疲れた表情のまま顔を上げた。

 

「んぁ?シンヤ、どっか行くの?」

「カビゴンのところにな、誘導するから付き添って欲しい。他の奴でも良いぞ」

「おっけー、ワタシが行く。サマヨールは野生ポケモンの様子を見に出てるからさ」

 

持つよ、と両手を差し出されたがその両手に視線を落とし迷う。

持つってことはこの私が今持ってるポケモンフードのことだよな。一袋およそ15キロ…。

 

「いや、私が持って行くから大丈夫だ」

「だって両手塞がってるじゃん、片方持つってば」

「……」

「大丈夫だって」

 

そこまで言うなら、と右肩に担いでいた一袋をミミロップに渡せば袋を受け取ったミミロップは「うわ!」と声をあげてよろめく。

あ、倒れる。

そう思った時にとんとミミロップの肩をブラッキーが押さえた。

 

「…なにやってんの?」

「ぅ、うるさいっ!!」

 

そのまま倒れてたら尻もちをついて15キロのポケモンフードの下敷きになってたな…。

ひょい、とミミロップからポケモンフードの袋を奪ったブラッキーがそれを私と同じように肩に担ぐ。

それを見てミミロップが苦々しげに顔を歪めた。

 

「ワタシ、筋トレでもしようかな…」

 

己の非力さが恨めしいらしい。

体の大きさからして筋力は丁度良いとは思うが…、ミロカロスは細いわりにかなり力が強いもんな…。

 

「脚力あるから良いじゃん、気にすんなよ」

 

ぽん、とブラッキーがミミロップの頭に手を置いた。

ミミロップは無言で口を尖らせる、それを見てブラッキーが笑った。

 

「大丈夫大丈夫、ミミローはオレの出来ないこと出来る奴なんだから。無理になんでもしようと思わなくて良いって」

「…、」

「こっちはオレがやるから、他はよろしく。特にここを使うこととかねっ」

 

ニッと笑いながら頭をツンツンと突いたブラッキー。

それを見てミミロップが呆れたようにでも少し照れながら「うっせぇ!」と吐き捨てた。

ミミロップにニコニコと笑みを返すブラッキー。

前はそんな対応じゃなかったよな、と思いつつブラッキーの様子を観察してみる。

これがブラッキーのいう女の子扱いなんだろう…、とりあえず女の子には優しく接するのが大事ってやつか?

…そういえばブラッキーは普段からサーナイトとミロカロスには優しいもんな。一応、ブラッキーの中で女子として分類されているのかもしれない…。

こうして考えてみると対応は大分違ってたような…。

 

「なんか今日のツキ、超気持ち悪ぃんだけど!!」

「え、オレの優しさ蹴り飛ばしちゃうの!?」

「だからその優しさがキモイっつってんの!!」

 

そんな顔真っ赤にして言ってもブラッキーがニヤニヤするだけだぞ、ミミロップ。

というか、ジュンサーさん待たせてるから早くどっちでも良いからついて来てくれ…。

 

「…オイ、いい加減に…」

 

照れているらしいミミロップをからかうブラッキー、そんな二人のやりとりを見ていたがいい加減待ちくたびれた。

いい加減にしろ、と言い掛けたところで外に出ていたサマヨールが戻って来た。

 

「…主、出掛けるのか…?」

「ああ、カビゴンの誘導に行くんだ」

「なら、自分がお供しよう…」

 

サマヨールは良い子だな…。

よし行こう、と言葉を返そうとしたところでミミロップがサマヨールの背に隠れた。

 

「ヨル!!なんか今日のツキめっちゃキモイんだよ!!見てあれ!!」

「…いつもと同じ顔だと思うが」

「顔じゃねぇし!!」

「ヨル、オレはいつもイケメンだよな!」

「ああ、そうだな…」

「真顔で返事すんなよ!!」

「イケてるメンズでごめんよ、バニー♪」

「蹴り飛ばして良い!?」

「ミミローでからかって遊ぶのはやめてやれ…」

「ワタシ、今、からかわれてんの!?」

 

ミミロップがぎょっと目を見開いて驚いた表情をした。

気付いて無かったのか…。

ブラッキーとサマヨールが苦笑いを浮かべて顔を見合わせた。

 

「反応超ウケる~」

「真面目なんだ…、冗談も真に受ける…」

「悪タイプとゴーストタイプ、タチ悪い!!」

 

からかわれてると分かったミミロップは頬を真っ赤にして怒鳴り散らす。

そして、私は放置か…。ジュンサーさん待ってるんだけどな…。

はあ、と溜息を吐けば目が覚めたらしいエーフィと手当てを終えたミロカロスがやって来た。この二人なら連れていけるのはミロカロスだけだな、エーフィはまだ本調子じゃないだろうし…。

 

「なにやってんのー?」

「騒がしいですね…」

 

エーフィとミロカロスを見てブラッキーはヘラリと笑い、ミミロップは口を尖らせた。

 

「ミミローからかって遊んでんのっ」

「やめなさい」

「ちょーっとからかってただけだって…」

 

エーフィに凄まれてたじろぐブラッキー。

ミロカロスは私の持っている袋が気になるのか首を傾げて袋を指差した。

 

「それなに?」

「餌だ」

「なんの?」

「カビゴン誘導用の」

 

私の言葉に最初の目的を思い出したのかミミロップがはっと顔を上げた。

 

「ご、ごめん、シンヤ…。すっかり忘れてた…!!」

「これカビゴンのだったのかー、重てぇわけだ」

 

袋を担ぎ直したブラッキーがケラケラ笑う。

とりあえず誰でも良いから付き添ってくれ…、カビゴンからもし攻撃受けた場合、対処出来ないから…。

 

「ツキ、荷物を…自分が主のお供をする…」

「え?いやいや、オレ行くよ?暇だったし」

「だぁー!!ワタシが行くって最初に言ってたんだっつーの!!」

 

あ、なんかややこしくなって来た。

そう思った時にブラッキー、サマヨール、ミミロップの様子を見ていたミロカロスへと視線を落とす。バチ、と目が合ったのでニッコリと笑みを向けてやる。

 

「ふぉ!?」

「ミロ、私と一緒に行こうか?」

「う、うん!!行く!!」

「よし、ツキ荷物貸せ。これ以上ジュンサーさんを待たせてられるか」

 

ブラッキーから荷物をひったくり両肩に担いでポケモンセンターを出る。後ろから付いて来るミロカロスを確認して大きく息を吐いた。

 

「眠い…」

 

*

 

ポケモンセンターを出て行ったシンヤとミロカロスを見送ったブラッキーはぽりぽりと自分の頭をかく。

 

「主に迷惑を掛けてしまったじゃないか…」

「オレのせいかよ~?」

「お前のせいだ!!ワタシが最初に頼まれたのに!!」

 

その三人を見てエーフィがやれやれと小さく溜息を吐く。

 

「ミミローがいちいち可愛い反応するから悪ぃんだろ~」

「……はぁ!?」

 

ぼっ、と音が聞こえるかのように一気に顔を赤くしたミミロップ。

それを見て一瞬キョトンとしたもののブラッキーはお腹を押さえて笑いだした。

 

「なんだその反応!!」

「お前が気持ち悪いこと言うからだろーがっ!!このアホボケカス!!」

「顔、真っ赤だし!!」

「うるせぇっつーの!!!」

 

げしげし、とブラッキーの足を蹴りながら怒るミミロップ。

その様子を見てエーフィが眉を寄せ、サマヨールは首を傾げた。

 

「…どうしたんだ?ツキ…」

「へぇ?なにが?」

 

笑い過ぎで出た涙を目尻に溜めながらサマヨールに視線を返すブラッキー。

サマヨールは首を傾げたままブラッキーとミミロップを交互に見比べた。

 

「いや、なにか違和感がな…」

「オレは今日からミミローちゃんに優しく接することに決めたのです!」

「あぁん!?」

「オレは紳士のフェミニストなので」

「フェミ…ワタシは男だっつーの!!!」

「え、女の子扱いされたいんだろ?」

「え、なに死にたいの?」

 

ブラッキーの胸倉を引っ掴んだミミロップはこめかみに青筋を立ててギリギリと歯を噛み締めた。

 

「あぁれぇ?オレ、てっきりミミローはオレに恋する乙女なのかとばっかり…」

「なんでじゃぁああああ!!鳥でもねぇのに鳥肌立ったじゃねぇかクソキモイわぁあああ!!」

「オレ、女の子には優しい男なのでー。サナっちとミロちゃんは乙女認定してたからミミローも仲間入りかと…」

「あの馬鹿どもの中に入れられるとか!!一生の不覚!!何があってそうなった!!殺すぞ!!」

 

首を傾げたブラッキーの胸倉を引っ掴んだまま叫ぶミミロップ。

落ち付け、とサマヨールがミミロップの腕を掴むがミミロップはブラッキーの胸倉から手を離さない。

 

「オレの勘違い…!?」

「どういう勘違いしたわけ!?マジで!!!」

「うわぁ…オレ、痛い子…」

「もっと痛くしてやるよ!!とりあえず、その顔面ボコボコにして良い!?」

「お、落ち付けミミロー!!喧嘩すると主にまた迷惑が…っ」

 

ミミロップを必死に押さえつけるサマヨールがエーフィの方に視線をやった。

 

「フィー、お前も止めるのを手伝ってくれ…!」

「……」

 

サマヨールの言葉に反応せず、エーフィは眉を寄せたままブラッキーを睨み付けている。

その様子にサマヨールはまた首を傾げる。

 

「ツキ…、」

「ごめんってー!!」

「許すかぁああ!!」

 

ケラケラと笑うブラッキーに掴みかかるミミロップ。

ぐっと一度口を閉ざしたエーフィは大きく声を荒げた。

 

「ブラッキー!!!」

「ぅぁはいっ!?」

 

急にエーフィが大きな声を出すものだからびっくりしたミミロップが硬直してパチパチと瞬きをする、ブラッキーも同じように瞬きをしながらエーフィを見る。

 

「ど、どうかした…?」

「ブラッキー…」

「は、はい?」

 

俯いてしまったエーフィを見てブラッキーは困ったような表情を浮かべる。

エーフィの様子にミミロップも慌ててブラッキーの胸倉から手を離して数歩後ろに下がった。

 

「私も…」

「ん?」

 

なに?と首を傾げたブラッキーを見てエーフィは眉を寄せた。

苦しげに表情を歪ませたかと思うと目を瞑って息を吐いた…。

 

「いえ、なんでもないです…」

「へ?」

「まだ調子が悪いみたいなのでもう暫く休みます…すみません…」

「え!?だ、大丈夫か!?」

「静かに、してて下さいね」

 

苦笑いを浮かべたエーフィにブラッキーはコクコクと頷き返す。

そんなエーフィを見てミミロップは眉を寄せた。

 

「フィーは…まだ調子が悪かったのか…」

「はぁ!?」

「…なんだ?」

「ぃ、いや…予想外なこと言うから…びっくりして…」

「…?」

 

サマヨールから視線を逸らしたミミロップ。

エーフィの背を見送ったブラッキーは深い溜息を吐いた。

 

「オレの攻撃のせいで…大丈夫かな…」

「主はまだ本調子じゃないものの、問題はないと言っていた…大丈夫だ…」

 

溜息を吐くブラッキーの肩を叩いたサマヨール。

その二人を見て少し迷ったもののミミロップは「あのさ、」と言葉を漏らした。

 

「ツキはさ、…フィーのことどう思ってんの?」

「…どうって?」

「いや、お前にとってフィーってどんな存在?」

「どんなって…」

 

ミミロップの急な言葉に眉を寄せて迷いながらブラッキーは「ううん…?」と考えているのか口をへの字にした。

その返事を待つのに自分のことでもないのにミミロップはドキドキしながらブラッキーを見つめる。

 

「お前達、双子の兄弟じゃなかったか…?」

「いや、それはわかんねぇんだけど…生まれたときから一緒なことは一緒だなー」

 

でも、どういう存在とか聞かれちゃうとなんて言えばいいのか分かんねー…と言葉を漏らしながら頭を抱えるブラッキー。

その様子を見てミミロップは「頭、良くないもんなぁ…」とは思ったが言葉には出さなかった。

 

「んー、片割れ?もう一人のオレみたいなー…あー、でも、うーん…。オレの駄目なとこを補ってくれる存在…?いや…、んー?」

「一応、大事には思ってるんだよな?」

 

ミミロップのその言葉にブラッキーはうんと頷く。

 

「当たり前だろ、オレの太陽なんだから」

「…はぁ!?」

「え?」

「今、なんて…?」

「え?なんか変なこと言った?」

「…恥ずかしいことを恥ずかしげもなく、さも当然のように言った…」

「え、嘘!?ちょ、待ってなんで!?え?だって、え?フィーって太陽だろ?え?」

「まあ、たいようポケモンではあるが…」

「え?え?フィーはオレの太陽で、オレはフィーの月だろ?え?違うの?」

「自分には言ってる意味が分からない…」

 

サマヨールと顔を見合わせるブラッキーを見てミミロップは口元を押さえ眉間に皺を寄せる。

コイツ、マジの馬鹿だったんだ…と思いながらどうしたものかと考えを巡らせた。

 

「え?」

 

なんて説明したら良いの?

そう思いながらミミロップが眉間にぐっと皺を寄せた時、首を傾げたブラッキーに合わせてサマヨールも首を傾げた。

 

「…よく分からないが、ツキはフィーが好きなんだな」

「あ、うん、そう」

「ぶっ!!!!!」

「そうか…」

「おう」

 

ニコリと笑ったサマヨールにブラッキーがヘラリと笑い返す。

そんな二人を見てからミミロップの頭の上にはクエスチョンマークが飛び交った。

 

「(な、なにがどうなってどういう状況???結局、どういうこと???)」

「ツキは相変わらず…からかって遊ぶのが好きだな…」

「だぁって、反応が可愛いんだもん」

「え?ちょ、ま…」

「ほどほどにな…」

 

サマヨールの言葉にニヤリと笑って返すブラッキー。

その表情を見てミミロップはポカンと口を開けた。

 

「な、なに?」

「なにが?」

「どういうこと?」

「ん?どういうことって、…イケてるメンズでごめんね♪ってこと?」

「…はぁ?」

「ん?」

 

なんか違う?とサマヨールに聞いたブラッキー。

そのブラッキーに違わないとは思うが…と返事を返すサマヨール。

 

「ぇ、それって…結局、あれだろ…」

「ん~?」

「お前…ただの、ド…、ドS…!!」

 

ブラッキーを震える指で指差したミミロップ。その言葉にブラッキーはキョトンとした表情をミミロップに返す。

 

「え、オレ、ヤキモチ焼いて怒るフィーが好きなだけなんだけど…それってドSなの?」

「さあ…?」

「悪タイプとゴーストタイプ、タチ悪過ぎるぅううッ!!!!」

 

頭を抱えて叫んだミミロップを見てブラッキーとサマヨールはお互い顔を見合わせて首を傾げた。

 

「怒ってるフィー、可愛いよな」

「そうか、自分にはよく分からない…」

「でも、最近は痛いことするから困っちゃうね。抓るし殴るんだもんよー」

「…困ってるわりには楽しそうだよな」

「まあ、可愛いから」

「そうか…」

「(ノーマルタイプのワタシには理解出来ないとこまで行ってる!!絶対に理解出来ないとこ行ってる!!)」

 

ブラッキーの好きなもの……。

食べること、楽しいこと、構ってもらうこと……。

 

*

 

「カビゴーン、こっちだよー!」

「そっちに餌投げろ!!そこに居るな!!踏みつけられるぞ!!」

 

カビゴンに両手を振るミロカロス。餌袋を抱えて走る警備隊の連中に指示を出しながら私も餌袋を担いで走る。

広場の方まで誘導中、人の姿のミュウツー…。あだ名はツーと遭遇。

 

「寝てないのに随分と元気だな、シンヤ」

「眠いに決まってるだろうが!!手伝え!!」

「私はこれから図書館に行くから忙しい」

「くっ…!!」

 

これだから野生ポケモンは扱い難い…!!

ニヤニヤと笑うミュウツーを睨んでから大きな足音を立てながらついて来るカビゴンへと視線を戻す。

 

「カァビィー!!」

 

投げろー!!広場に餌投げろー!!と警備隊の大きな声、私も担いでいた餌を広場へと投げ入れる。

カビゴンはそのまま餌の方へ向かって歩いて行き、広場の中でズシンと音を立てて座りこみポケモンフードを食べ始めた。

なんとか終わった…。

人懐っこい気質のカビゴンだったから攻撃されるというのは杞憂に終わったな。

あー…疲れた…と言葉を漏らせば、図書館に行くと言ったくせに最後まで眺めていたらしいミュウツーがまたニヤニヤと笑っている。

最後まで見てるなら手伝え…、お前ならサイコキネシスで一発だったのに…!!

 

「…人が苦労するさまを見ててそんなに楽しいかっ」

「ああ、見てて飽きない人間はお前くらいだがな」

「……」

 

反応に困るようなこと言われてもな…微塵も嬉しくないし…。

はぁ、と溜息を吐けば、空になった餌袋を引き摺りながらミロカロスがこちらに向かって歩いて来る。

その姿をぼんやりと眺めていると隣でミュウツーが「シンヤ」と私の名前を呼んだ。ミュウツーの方に視線をやれば紫色の瞳がじーっとこちらを見ている。

 

「な、なんだ…?」

「人間とポケモンの異種交際とでもいうのか…?それになんの意味があるんだ?」

「……、いや…特に意味は…」

「それも異種とはいえ、同性…。異種との交配を調べることも出来ない」

「まあ…、そうだな」

「生産性も利益もない、理解出来ない所業だな」

 

呆れたように眉を寄せたミュウツーを見て、思わず笑いが零れた。

ふ、と声が漏れればその後はもう止めようがない。

 

「くくくっ、ふ…、ははははっ!!!」

「!?」

「は、腹が痛い…っ!!」

「な、なにが可笑しい!?」

 

眉間に皺を寄せるミュウツー。

その顔を見るとまた「ワハハ!」と馬鹿みたいに笑ってしまった。

腹が痛い、涙も出て来た、息が出来ない。

 

「、ツー…、お前…」

「なんだ?」

「昔の私にそっくりだな」

「……は?」

 

そうだ、私はこんな奴だったんだ。

考え方も行動もこうして考えてみるとよく似てる気がする。

 

「本当に似てるぞ」

「だから、なんだ。私の質問の答えになっていない」

「ツー、これからも…たまにでも良いから家に来い。お前にもいつか分かる」

「……」

「私にも分かったことだ。こうして意味のないことを受け入れた今に…どれだけの意味があるか…」

「意味のないことに意味がある?」

 

矛盾してるじゃないか、と言いたげに眉を寄せたミュウツー。

そんなミュウツーから視線を逸らせば餌袋を引き摺りながら走って来るミロカロスが見えた。

 

「なになになにー!?なんか面白いことあった!?」

 

どーん、と突進して来たミロカロスを受け止める。

引き摺られていた紙袋は底が破けてしまっていたが、まあ良いだろう…。

 

「どういうことなのか私には分からない」

「良いんだ、これは私にしか分からない」

「何故だ?」

「コイツ、」

 

ミロカロスの頭にぽん、と手を置けばミロカロスはキョトンとした表情を浮かべた。

 

「He makes me happy(コイツは私を幸せにしてくれる)、共にある理由はそれ、意味はないが…その意味のないことに意味はある」

「……」

「え?なに?」

 

小さく頷いて腕を組んだミュウツー。

なにいまの!?とミロカロスが私の腕を揺するので口元に笑みを浮かべて言ってやった。

 

「Your smile always makes me happy…(お前の笑顔はいつも私を幸せにしてくれる)。なんてな」

「ほあ!?」

 

口元に手を当てて笑うのを堪えるミュウツー。

私も随分と馬鹿になったものだと思いつつ、ミュウツーに笑みを返した。

フン、と笑ったミュウツーが私を見つめて言った。それは少し呆れたように。

 

「…I hope you'll be happy for ever(お前が永遠に幸せなことを祈ってるよ)」

「Thank you」

「なに!?なんて!?」

 

うろたえるミロカロスを見てミュウツーと顔を見合わせてクスクスと笑った。

わけのわからない言葉で会話されたミロカロスは泣きそうになりながらも口を尖らせて私の腕を揺すった。

 

「シンヤ~!!」

「悪口じゃないぞ」

「ホント…?」

「ホント」

 

なんて言ったの?と首を傾げるミロカロスに「勉強しろ」と言い放ってやれば喚きながら泣いた。

小さくミュウツーが息を吐く、チラリとミュウツーを見やればミュウツーは目を伏せたあと私達に背を向けて歩きだした。

ひらりと片手を振ったその背を見送った私は小さく笑みを零す。

なんとなく、分かってもらえただろうか、

この意味のない時間にどれだけの意味があるか…。

 

「……」

「シンヤ…?」

 

私はそこでハッキリと、

昔の自分と決別したのだ。

背を向けて歩いて行くミュウツーは確かに…、昔の私自身だった…。

 

「帰るか、」

「ん?うん!!」

「眠たいしな…」

「眠いねー」

 

ぎゅ、と手を握って来るミロカロスの手を握り返して心の中でもう戻ることのない自分に「さよなら」を言った。

世界は腐っていると、私は思うのだ……。

 

「良い天気だ…」

「ねー」

「……」

「…シンヤ、やっぱり気になる……。さっきなんて言ってたの?」

「内緒」

「なーんーでー!!!」

 

なんで…?

そんなの決まってるだろ…。

 

「shameful…」

「えー?わかんなぃー…なんてー?」

 

*

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