一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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ポケモンレンジャー支部へとシンヤがゲットしてくれたグラードン、カイオーガのデータが記載されているファイルを提出。

アクア団とマグマ団も解散して、グラードンとカイオーガも元通り自分たちの住処へと戻った。万事解決、シンヤ様様!!

少しの休暇を貰って次のミッションまで待機することになった僕はツバキちゃんにグラードンとカイオーガのことについて連絡する為ポケモンセンターにやって来ていた。

 

<「マジすかー!!シンヤさんにすぐに連絡してデータ貰わないと!!あの人、絶対に回収してるって!!」>>

「シンヤ、電話報告してこなかったの?」

<「全くして来ない!!ヤマトさんは頻繁に連絡くれるけどシンヤさんはホントに連絡してこない!!雑誌とかテレビで見た方が早いし正確ってどういうこと!!」>

「シンヤらしいねぇ~」

<「ノリコ達にチクッてやるんだから~!!」>>

「あはは、ノリコちゃんとカズキくんによろしくね」

<「はーい!!それじゃ、また連絡お願いしまーす!!」>

「うん、じゃあね!」

 

ツバキちゃんとの電話が終わって、さて何をしようかと考えてみる。

シンヤみたいに忙しいわけじゃないしなぁ、ミッションがないと基本的に暇…。野生ポケモンの様子を見て回るのも良いかもしれない。

とりあえず、と唯一の手持ちである色違いのユキワラシをボールから出してユキワラシの視線に合わせてしゃがむ。

 

「ユキワラシ!暫くお休みだからどうする?」

「ユキー」

「うーん、やっぱりシンヤの家に行こうかなぁ…野生ポケモンいっぱい居るし楽しいもんねぇ…」

「ユキユキー!!」

 

ぶんぶん、と首を横に振るユキワラシ。首ないから体だけど…。

でも、これはダメって言ってるのかな…。

 

「ダメ?」

「ユキ!」

 

コクン、と頷いたユキワラシを見て腕を組んで考えてみる。

確かに…今、シンヤのところに言ったら怒られるかも…。いや、絶対に今、顔を合わせたら「今度はなんだ!!」って怒鳴られそう…。

やっぱりこの辺りにいる野生ポケモンを見てこようかな~…。

 

「ヤマトさん、どうしたんです?」

「あ、ジョーイさん。今からなにをしようか考えてたんですよ」

「なら近くの村に行ってみたらどうです?ここはルネシティに行くトレーナーさんもよく通るから、小さいながらも活気ある村にトレーナーさん達が集まってるんです」

「トレーナーさん達が…」

 

ってことは、育てられたポケモンたちが沢山…!!

足元に居たユキワラシに視線をやればユキワラシはコクンと頷いた。

 

「よっし、行こう!!」

「ユキー」

「相変わらずポケモンがお好きなんですね!」

「世界一のポケモン好きですからー!」

「あら、私も負けてませんよ!」

 

ジョーイさんと朗らかに会話をして僕とユキワラシは近くにある村へと向かった。

 

*

 

ジョーイさんの言う通り、小さいながらも活気ある村。美味しそうな木の実や野菜を売るお店が並んでいて鮮やかな色で溢れている。

こういうところ良いな、まあ生まれ故郷のズイも良い所だけど。

木の実を買って、ユキワラシと一緒に並んで木の実を頬張った時。

ジグザグマを連れた男の子が息を荒くして走って来る。急いでいるような男の子に「どうしたの?」と聞けば男の子は息が荒いまま顔に笑みを浮かべて言った。

 

「あのシンヤさんがこの村に来てるんだって!!」

「へ?」

「ぼくのジグザグマも見てもらうんだ!!」

 

そう言って走って行った男の子の背を見送ってから僕はユキワラシと顔を見合わせた。

僕の中の選択肢は今「逃げる」という選択肢しかないんだけど…。でも、シンヤがこんなところに居るなんてどうしたんだろう…。

急患のポケモンでも居た?でも、ジョーイさんはそんなこと一言も言ってなかったし…。

 

「見に行く?」

「ユキー」

「うん、怒られるのを覚悟で何があったのか聞きに行こう。手伝えることあったら手伝いたいしね」

「ユキ!」

 

頷いたユキワラシと一緒に男の子が走って行った方向へと走る。

でも、ホントにシンヤってばこんなところに何しに来たんだろ?

 

*

 

「ふっふっふっ」

「はぁーい、かの有名なポケモンドクターのシンヤさんはこちらですよー」

「今ならポケモンの健康診断を行ってるのニャ!!さあさあ、ポケモン達を預けていってニャー!!」

 

沢山の人に囲まれる中、腕を組んで佇む男。

シンヤの格好をしたコジロウと、そのシンヤの助手と言い張るムサシとニャース。

サトシ達の後を追っていたが途中のこの村をサトシ達が寄らずに通り過ぎた為、悪事を働いていた。

今回思いついたのは他でもない。知り合いであるシンヤが有名なのを良い事に健康診断と称してポケモンを預かりトレーナー達のポケモンをそのまま奪う作戦だ。

シンヤの格好をしたコジロウ。

直接、シンヤの姿を見たことのない人からすればわりと似ている気もする。しかし直接会えばシンヤの方が身長があるので一目瞭然なのだが…小さな村でそれが気付かれることはない。

 

「シンヤさん!ぼくのジグザグマも見てください!」

「ああ、ちゃんと診ておこう。助手に預けておいてくれ」

「はい!」

「はいはーい、こちらでお預かりしまーす!」

 

ひょい、とジグザグマをムサシが抱きかかえた時、人混みの間からヤマトがひょこっと顔を出した。。

そして辺りを見渡して首を傾げた。

 

「えっと、シンヤは何処ですか?」

「なにを仰るのお兄さん!!こちらに居る方がシンヤさんですのよ!!」

「今日は出張健康診断の日なのニャ!!」

「…え?」

「私がシンヤだが?」

 

コテンと首を傾げたヤマトにシンヤに変装するコジロウも軽く首を傾げてみせる。

それを見てからヤマトはぴ、とコジロウを指差して言い放った。

 

「ユキワラシ、冷凍ビーム」

「ユキィイイイ!!!」

「ぎゃぁあああああ!!」

 

カチンコチンに凍ったコジロウを見てムサシとニャースが顔を蒼くした。

 

「僕、シンヤの幼馴染のヤマトって言います。あなた達はどちらさま?」

 

ニッコリと笑ったはずのヤマトの目は微塵も笑っていない。

逃げようと後ずさるムサシ、氷の溶けたコジロウも顔を顔を蒼くしながらヤマトから距離をとった。

 

「よ、よう、ヤマト!」

「誰?シンヤは自分から進んで出張健康診断なんてする男じゃないから、っていうか。シンヤはそんな背低くないし、顔も違うし何処をどう見てもシンヤじゃないよね?」

「……」

 

ヤバイよ、知り合い来ちゃったよ!!と焦るロケット団。

そんなロケット団をよそにヤマトはどんどんと不機嫌になっていく。

 

「僕の幼馴染の名前を使ってポケモンを盗もうとするなんて…許せない…」

「いや、それはその…」

「お、落ち着いてお兄さん…!!」

「話せば分かるニャ!!」

 

どんどんとボロを出すロケット団を見て周りに居た村人も眉間に皺を寄せる。

村人の一人が「なんなんだお前たちは!」と声を荒げたことでロケット団がバッと衣装を変えた。

 

「なんなんだお前たちは!と聞かれたら」

「答えてあげるが世の情け!!」

「世界の破壊を防ぐため」

「世界の平和を守るた 」

「ユキワラシ、冷凍ビーム!!」

「「ぎゃあああああ!!!」」

 

口上の途中で攻撃を食らったムサシとコジロウ。それを見てニャースがガタガタと震えだす。

そんなニャースの目の前に立ち、ニャースを見降ろしたヤマト。

 

「悪いことは駄目だよ!」

「ごめんなさい、ニャ…」

「……」

「…ニャ~…」

「喋るニャース、可愛い…」

「ニャ?」

「いやいや、今はそんなこと言ってる場合じゃないし!!キミ達はなんなの?何処の人?」

「ニャー達のセリフを途中で遮って謎にしたのはそっちニャ!!」

「?」

「ニャー達は世界に名を轟かせる組織、ロケット団ニャ!!」

「ロケット団!?」

 

あ、そういえば、このニャースとあの二人どこかで見たかも…と記憶を辿ってみるが、結局、辿りつかなかったのでヤマトは途中で諦めた。

 

「じゃあ、逮捕だね」

「ニャ!?」

「僕、ポケモンレンジャーです」

「退却ニャー!!!ダッシュで退却ニャー!!!」

「待てこらー!!!」

「待てと言われて待つやつはいないのニャー!!」

「ちくしょう!!喋るニャース可愛いなー!!」

「ニャ!?」

「保護だ保護!!ニャースだけ保護ー!!ユキワラシ、冷凍ビームー!!」

「ユキィイイ!!」

「あいつ、オレらだけ殺す気だぜ!!ムサシ!!」

「逃げるのよ!!」

 

結局、ロケット団はニャース気球に乗って逃げてしまった。

そんな気球を見上げてヤマトはむぅと口を尖らせた。

 

「なにあの気球!!めちゃくちゃ乗りたい…!!」

「ユキィ…」

 

*

 

<「っていうことがあったんだよ」>

「許すまじロケット団」

 

ギリリ、と拳を握りしめたシンヤは目一杯眉間に皺を寄せた。

まさか自分の名を使って悪事を働かれるとは……今度あったら覚えておけ、とシンヤは心の中で思った。

 

<「いやぁ、それにしても喋るニャース可愛かったなぁ…」>

「ロケット団のニャース良いよな、アイツ手先が器用でなポケモンを捕獲する為のロボやら基地も作るんだぞ」

<「マジで!?そんな技術を悪用してるなんてもったいない!!一緒にレンジャーやってくれないかなぁ…」>

「ダメだぞ、私が先に予約してるんだ。ロケット団が解散したらうちで雇う」

<「そんなのずるいよ!!喋るニャースなんて貴重過ぎ!!ポケモンの言葉も分かるなんて絶対に一緒に仕事したい!!」>

「私が先約だ!!」

<「シンヤは人手、じゃなくてポケ手は足りてるでしょ!!」>

「なんだポケ手って!!」

 

ぎゃーぎゃーと言い争うシンヤとヤマト。

電話画面の向こうに怒鳴る自分の主人の後ろ姿を眺めてトゲキッスはじょうろ片手に苦笑いを浮かべた。

 

「(なんの話、してるんだろう…)」

 

まあ、楽しそうだから良いか。と庭へと向かったトゲキッス。

シンヤとヤマトはなんだかんだで仲が良い。

 

<「あ、ニャースで思い出したけど!!あの気球も良いよね!!」>

「あれは私も乗せてもらおうと思ってた」

<「乗った?」>

「いや、忙しくてなかなか…。それに会った時はつい忘れるんだよな」

<「もしかしてあの気球もニャースが作ってる…?」>

「多分な」

<「ニャース良いなぁ!!!」>

「な」

 

楽しげに会話するシンヤを見てミロカロスが目一杯、頬を膨らませていた。

 

「なんなのその顔、ぶさいく」

「ぶー!!」

「超ウケる!」

「ニャース殺す!!」

「え゛、それ冗談に聞こえないんだけど…」

 

頬を膨らませたミロカロスを見て、ミミロップが顔を青褪めさせた。

 

*

 

「エーフィ、エーフィ!!」

「なんです?」

「聞いて聞いて!」

「だから聞いてるじゃないですか、なんです?」

「ロータってところでポケモンのバトル大会やるんだってー!!この雑誌に書いてた。しかも衣装の貸し出しもやっててさー!!この貴族の衣装とかカッケェ!!」

「そういうの本当に好きですねぇ…」

 

雑誌を両手で広げたブラッキーがニシシと笑った。

それを見てエーフィは苦笑いを浮かべる。

 

「エーフィも似合いそうだぜ、これとか!!」

「…女性物ですか?」

「やっぱりドレスでしょ!!」

「私は男ですが…」

「なんでだよー、良いだろー!!揃いのやつ着たいじゃーん!!」

「…そ、そうですか…」

 

雑誌のページを捲るブラッキーから視線を逸らしたエーフィの頬は赤い。

ぺし、と自分の頬を叩いたエーフィはこほんと小さく咳払いをしてからブラッキーへと視線を戻した。

 

「まあ、好きに想像してなさい」

「えー…想像だけ?」

「行かないでしょう?そんな遠方に…」

「確かにカントー地方…、だけど行きたくない?」

「行きたくない…というわけじゃないですけど…」

「それって行きたいんだろ?」

「い、行きたい…んですかね…?」

「素直じゃないだからー」

「ほっといて下さい…」

 

そんなの分かってます、と思いつつエーフィは眉を寄せてそっぽを向いた。

そっぽを向いたエーフィをチラリと見たブラッキーは少し考えてから、電話でヤマトと会話をするシンヤを盗み見る。

 

「…」

 

そしてエーフィの方へと視線を戻したブラッキーはニコリと笑った。

 

「ロータ、行きたいねー」

「…そうですね」

「ね!」

 

雑誌で口元を隠したブラッキーはニヤリと笑う。

 

「(行きたいったら行きたいんだもーん♪)」

 

楽しいこと大好きなブラッキー、

ちょっと本気になってみることにした…らしい。

 

*

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