一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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ハルカとシュウがグランドフィスティバルに出場すると聞いたので応援の手紙だけ送っておいた。ジョーイから手紙が来てたのは無視。

テレビ放送で様子を見てやっぱりロバートが来たか、と脳内でコーディネーターのシンヤと頷いた。

 

「シンヤ、ちょーっと先の話なんだけどさー」

「…なんだ?」

「カントー地方のロータに行かない?」

「…行かない」

「まあまあ、考えといてね」

「……」

 

ブラッキーの笑みが凄く怪しかった…。なにを企んでいるんだ、アイツは…。

 

そしてポケモンリーグ、サイユウ大会が行われる数日前。

忙しなくジョーイからの手紙が来たが勿論無視…、していたのだがジュンサーさんから電話が掛かってきた。

なんでも聖火であるファイヤーの炎が消えてしまったらしい。ちゃんと管理しておけよ、と思いつつ。テレビの取材などが来て騒ぎになるのが目に見えているホウエンリーグには絶対に行かない!!もう誘うのも無し!!という約束をして、ファイヤーの炎を入手しに向かったのが、

カントー地方。

ファイヤーにわざわざ炎を貰いに行くわけではなく、カントー地方にある家で管理していたファイヤーの炎をジュンサーさんに渡すだけ。

なので、移動が面倒なだけで炎自体は問題なくジュンサーさん達の経由でサイユウシティへと渡った。

……までは良かった。

 

「シンヤー」

「なんだその笑みは…」

 

ニヤニヤと笑ったブラッキーが目の前に立ち塞がった…。

 

「ロータ、行かない?」

「…行かない」

「せっかくカントー地方に来たんだからさ~、良いよね?良いでしょ?良いって言って?」

「遠いじゃないか、なんでそんなところまでわざわざ行かないといけないんだ…!」

「バトル大会あんの!!しかも貸し衣装付きのバトル大会!!」

 

絶対に嫌だ、そんなところ。

すぐにホウエンに戻る理由はない。カントーに来たんだから暫くこっちに居てもなんら問題はないが…。わざわざロータまで行くなんて…めんどくさい…しかも、バトル大会に行くためだなんて余計に嫌だ…。

 

「シンヤ、オレのお願い聞いて欲しいな?だってね、だってね~、エーフィも行きたいって言ってたんだよ~」

 

なんだその無駄に甘えた声色、もの凄く気持ち悪いぞ!!

 

「だから、逃さないぞっ」

「ぐっ!?」

 

くろいまなざし…!!!本気で逃がさない気だ!!

ニヤニヤと笑って近付いて来るブラッキー、何をするんだと思っていれば表現し難い凄まじい音が鼓膜を震えさせる。

 

「くっ、いやなおとか…!!」

「耳を塞いでも無駄だぜ、シンヤー…。さあ言え、ロータに行くと言え!!」

「ぐ、ぅぐ…耳がッ…、!!」

「逃げられないぞー、逃さないぞー、その口からオレの望む返事が出るまではー…」

「わかった!!わかった!!行く!!ロータに行こう!!」

「ぃよっしゃ!!」

 

ガッツポーズをしたブラッキー。

ある意味、拷問だった。逃げられない状況でいやなおと…、もうコイツの技のレパートリーからいやなおと消しとこう…。

 

「エーフィー!!エーフィのドレス姿の為にオレ、ロータ行きの許可ゲットしたよ~!!!」

「はぃ!?」

 

え…、そんなくだらない理由の為に…!?

 

「シンヤ、シンヤ、大丈夫?」

「大丈夫じゃない…耳が痛い、なんか耳鳴りしてる…」

「シンヤ…!!待ってて、俺様が!!俺様がシンヤの代わりに仕返ししてくるね!!」

「仕返し…?」

「ブラッキー!!」

「はぁーい?」

「死ね」

「ちょっ、ちょっ、ちょっと待って!!ミロちゃんストップ!!目がマジ!!目がマジだって!!!」

「シンヤを苛める奴はブラッキーでも許さない!!」

「わーわーわー!!でも、ほら、オレのおかげでシンヤとデート出来るんだぜ!?」

「…でも、ダメ」

「ごーめーんー!!謝るからー!!」

「シンヤ苛めたからダメー!!」

「ふぶき反対ー!!!やーめーてー!!!」

「しーねー!!」

 

なんかテレビでやってたんだろうな。

最近、腹が立ったりしたら「死ね」って言うのがミロカロスのマイブームらしい…あんまり良くない影響だよな…。

ミミロップ曰く「死ね死ねブーム到来」らしい…。

 

*

 

ロータにある城、オルドラン城へとやって来た。

なんでもこのオルドラン城で波動の勇者アーロンを讃える祭りが行われるらしい。

そしてその祭りの中でバトル大会がありそこで勝利したものはこの年の波動の勇者として讃えられるそうだ……。

出たい出たいと駄々を捏ねたブラッキーをエーフィに宥めてもらい、なんとか観戦側に回った私。

優勝して波動の勇者として讃えられるなんて絶対にゴメンだ…。

勿論、出場して負けるとは微塵も思っていない。なんとも自信たっぷりな思考だったので本気で拒んだ。トレーナーのシンヤが張り切って出て来るから本当にやめて欲しい。

 

「まあ良いや、本命衣装!!豪華なパーティー!!」

 

そんな理由でこんな遠方まで引っ張り出さないで欲しい…。

シンプルな物から派手な物までズラリと揃った衣装室、勇者アーロンが生きていた頃の人々が身に纏っていた洋服だって言ってたが大分バラつきがあるよな。

あ、ポケモン用のもあるのか…。

 

「シンヤは何着る?これ着る?つーか、これね」

「え…、もっと軽くて着やすいのにしてくれ…」

「これが良いよ。シンヤは足長いから着れるっしょ。鎧」

「おい、これ洋服としての重量じゃないぞ」

「オレも足が長ければなー、いやホントに、全身カッチリの衣装着れたのになー、身長欲しいわー」

「私の話を聞け」

 

重たい衣装を押し付けて他の衣装を物色しだすブラッキー。

本当に私はこれを着ないといけないのかと手にした衣装に視線を落とす…。いや、重い。

 

「俺様、これ着る。どう?」

「なんだその衣装、傭兵か?」

「わかんないけど着やすそう、被るだけー」

「良いな、私もそんなのが良い」

 

これにしよう、と衣装を両手で広げたミロカロスの手から衣装が消える。

 

「はい、ミロちゃんこっちね」

「え…」

 

ミロカロスの持っていた衣装を奪い、別の衣装を押し付けたブラッキー。

押し付けられた衣装を見てミロカロスは口を尖らせた。

 

「俺様そっちが良いのに!!」

「は?こんな垂れ幕着てどうすんだよ!!そっちの方が可愛いだろ!!」

 

垂れ幕って……。

 

「なんだよー!!こっちの方は…、…可愛い!!」

「だろ!!」

「これにする!!」

「おう!!」

 

ミロカロス、お前の意思は何処に行ったんだ。

まあ良いなら良いんだけど…。

周りの様子を見ればサーナイトは自分の着替えをすませトゲキッスの体に衣装を合わせながら考え込んでいた。トゲキッスはマネキンか…、そして男なのに当然のように女物のドレスを着るんだな。似合ってるけど。

 

「シンヤさん、着替えないんですか?」

「着るけど…」

 

エーフィに話しかけられて振り返れば男物の洋装なエーフィ

 

「お前は男物なのか」

「まあ、男なので」

「うちに女は居ないぞ」

「知ってます」

 

まあ、男に見えなくもないか…?とエーフィの姿を失礼ながらも上から下、下から上にと見てみる。

小柄だし女顔だからネクタイを絞めてる女にしか見えん…。

ミミロップにサーナイトとミロカロスらと比べると体型がなんか…。

 

「な、なんですか…ジロジロ見ないで下さいよ…」

「ああ、お前、下半身が女みたいに丸いんだ」

「はぃ!?」

「お尻が大きい」

「セクハラじゃないですか!!なんですか急に!!」

 

顔を真っ赤にして怒るエーフィ。

セクハラとか言われた…、今気付いた事を言っただけなのに…。というか男相手にセクハラとかあるもんなのか…。

 

「フィーはこれ着てーって、なにその衣装!!勝手に着るなよ!!これ!!」

「女性用ですよそれ…」

「大丈夫だよ、フィーは胸の無い女の体型だから。それより足をバンバン出して、より女に見えるから」

「はい!?」

「ああ、足も太いのか」

「シンヤさん、殴りますよ!?」

 

えぇー…。

ブラッキーの言葉に気付いて言っただけなのに…。

 

「シンヤ、太いとかダメ。むちっとしてんの」

「言い方変えただけじゃないか…」

「やめてください、本当にやめてください」

 

結局、ブラッキーの選んだ衣装を着るらしいエーフィ。

顔を赤くしながら着替えに行ったのを見送るとブラッキーにポンと背中を押された。

 

「なんだ…」

「なんだじゃないよ、シンヤもさっさと着る」

「これを…?」

「それを」

 

重たい着難い、と文句を言いながら来たら意外にもピッタリしてて動きやすいかもしれない。

あと着てたら重さは気にならん。

 

「意外と着心地は良いな…!」

「シンヤ…、カッコイイ…!!」

「マジ足長ぇなクソ…選んだのオレだけどー…」

 

*

 

そして思い思いの衣装を身に纏い、バトルを観戦中。

バトル大会に出場しているサトシの姿を発見。

おーおー、知り合いが出てるということはこの辺にタケシ達もいるんだろうな…当然、ロケット団も居るんだろう…。

決勝へと上がったサトシが優勝、どうやら今年の波動の勇者はサトシらしい。衣装も波動の勇者のものなんだな、なんかどっかで見たことのあるような服だと思うんだが…どこで見たのやら…。

ううん、と考え込んでいるとバトルフィールドにエイパムが降りて来てサトシのピカチュウの両手を取って喜んでいる。

 

「…エイパム?」

「どったの?」

「いや、何か…」

「あ、タケシとマサトだー」

 

ミロカロスの言葉に視線を下にやれば確かにタケシとマサト。

ピカチュウの傍に居るエイパムを見て少し違和感がある気がしたが…、まあ良いか。

 

*

 

優勝したサトシが今年の波動の勇者になった。

オルドラン城の姫、アイリーンから波動の勇者が持っていたとされる勇者の杖が手渡される。

 

「この国の平和を守ってくれたアーロンを讃えて今宵は楽しみましょう!」

 

アイリーン姫がそう言って両手を広げた。

讃えるのは別に良いが…と思いつつ壁に描かれた肖像画へと視線を移す。

 

「…ゲン」

 

懐かしい面影の立ち姿。

勿論、ゲンはアーロンなんて勇者ではないが…波動使いではあったからな…。ううん、他人とは思えん。

しかし今のこの世界にゲンは居るのだろうか…、シンヤがこの世界に生まれた記憶にはゲンという人間と接触した記憶はない…。

また何処かで会えると良いがな…。

優雅な音楽が流れ始め、男女が手を取りダンスを始める。

当然のようにサーナイトがトゲキッスを無理やり引き連れて踊りに行ってしまった。そして、豪華な食事を頬張るブラッキーの耳を引っ張ってエーフィがせっかくなんだから踊れとブラッキーを連れて行く。

 

「…ん?」

 

近くのテーブルの下を確認すれば、テーブルの下に料理をやまほど運び込んだニャースを発見。

ニャースが料理を食べているということはムサシとコジロウは踊ってるのかもな。

 

「エィパム!!」

 

エイパムがサトシのピカチュウ達を引き連れて歩いている。

足元を通り過ぎるエイパムとピカチュウが私に気付いて両手をあげた。

 

「パム!!」

「ピピカチュゥ!!」

「楽しそうだな、あんまりハシャいで暴れるなよ」

 

手を振ったエイパムとピカチュウに手を振り返して広間から出ていくピカチュウ達を見送った。

うーん、やっぱりあれ…エイパムじゃないよな…。

変身を使えるポケモン、でも私に対して警戒心は全くなかった…。私の異質さに気付くほどのポケモンか…。

この辺に生息してるのだと……。

腕を組んだ時、ピカチュウ達が出て行った扉を女が一人通って行った。パタンと閉じられた扉に視線をやってもしかしてと思いついた一匹の姿を脳内で思い浮かべる。

…まあ良いか。

気付かなかったことにしよう、いちいち考えるのはめんどくさい。なにか食べようかな、とテーブルに視線をやった時にミロカロスが私の腕を掴んだ。

 

「シンヤー、踊ろー!!」

「…ミロ、お前踊れるのか?」

「全然!!」

 

そんな自信満々に言われてもな…。

 

「…リードはしてやるが足は踏むなよ」

「気を付けるー」

 

*

 

「これにて、今宵のパーティはお開きとします。波動の勇者が皆様をお見送りします」

 

賑やかだったパーティも終わりらしい。

何度か踏まれた足を擦りながら椅子から立ち上がったサトシへと視線をやる。

 

「シンヤ…ごめん…」

「もうお前、ヒール履くな…」

 

サトシが勇者の杖を掲げると外で花火があがった。

粋な演出だな、と外を眺めていると頭に響いてくる声…、これはテレパシーだ…。

サトシの方へと視線をやれば勇者の杖が光っていて、それを持つサトシが慌てている姿があった。

勇者の杖からポケモンが現れた、あれはルカリオだ。

現れたルカリオがすぐにサトシへと詰め寄る。

 

< アーロン様!!何故、城を捨てたのですか!! >

 

アーロン?

はて?と首を傾げてから壁に飾られた勇者の肖像画へと視線をやる。

目を瞑ったままのルカリオはどうやら目が開けられなくなっているらしい、目潰しでもされたのだろうか。

サトシの声に動揺しているルカリオへと近付けばサトシが驚いた表情で私を見た。

 

「あ、シンヤさん!!」

「ガゥ!?」

 

背後からルカリオの首を掴んで上を向かせ、濡れティッシュで目元を拭いてやればルカリオが目を開けて瞬きを数回。

手を放して解放してやればサトシの姿を見て驚いたかと思うと外へと飛び出して行ってしまった。

 

「……」

「あれは…?」

「ルカリオだな」

「ルカリオ?」

「勇者アーロンの従者をしていたというポケモンですね」

 

アイリーン姫の言葉にサトシが勇者の杖へと視線を落とした。

 

「この中に…!?」

 

モンスターボール的な役割を杖がしていたのだろうか…、不思議だな。

 

「っていうか、シンヤさん!!」

「しまった、目を瞑っていたルカリオを見て咄嗟に出て来てしまった…」

 

私の馬鹿。

面倒事に巻き込まれそうな気がしたのでルカリオを追いかけて行ったサトシ達を"追いかけない"という選択をとってみた。

そのまま宿泊しているポケモンセンターに戻って来てゴロリとベッドに寝転がる。

 

「シンヤ、あのルカリオは大丈夫なんでしょうか?とてもうろたえていたみたいでした…」

「そうだな、杖に封印されていたみたいだから急に未来にやって来たようなものだろう」

「それはとても寂しいです…」

「…まあ、そうだな」

 

自分のことのように落ち込むトゲキッスを見て少し私の心が痛む。いや、でもさすがに過去に戻してやるなんて事は出来ないしな……。

ディアルガ呼ばないと無理だろ…。

 

「あ、ピジョットが来たー」

 

ピジョット…?

はて、ピジョットの知り合いなんて居ただろうか…。

ベッドから体を起こしミロカロスと同じようにベランダへと出ると確かにピジョットがこちらへ向かって飛んでくる。

 

「ん…?なんか背中に乗…!!!」

「ッぉお!?」

「ピジョットー!!!」

「ニャニャニャー!!!」

「ぅおおおおお!?!?」

「シンヤー!!!!」

 

飛んできたピジョットに両肩を掴まれたかと思ったら体が空中に浮かぶ、そのまま視界は一面の夜空。

 

「シンヤニャー!!」

「ニャースか!!上が見えないんだ!!ピジョットの腹しか見えん!!」

「ピジョー!!」

「というか、お前ミュウだろ!!」

「そうニャ!!」

「やっぱりか!!」

 

*

 

「シンヤ……」

 

ベランダに残されたミロカロスは茫然と夜空を見上げた。

後ろを振り返り空を指差したミロカロスを見てブラッキーとサーナイトが頷いた。

 

「拉致られた!!」

「誘拐ですわ!!」

「俺、追い掛けます!!」

 

ベランダの柵に足を掛けたトゲキッスを引き留めたのはミロカロス。

 

「俺様も行く!!」

「ちょい待ち!!オレも行くっての!!」

「ワタクシも行きたいですわ!!」

「そんなに運べません…」

 

トゲキッスにしがみ付くミロカロス、そのミロカロスを引き放そうとするブラッキーにサーナイト。

そんな4人を見ていたエーフィは部屋へと戻りシンヤのカバンを片手に戻って来た。

 

「じゃあ、ボールに戻りましょうか」

「「「え?」」」

「私達がボールに戻って、トゲキッスがボールをカバンに戻してからそのカバンを持って追い掛ければ万事解決です」

「フィーさん、マジ天才なんですけどー!!」

「頭いいー!!」

「さすがですわー!!」

「早くボールに戻りなさい、後は頼みましたよトゲキッス」

「はい!」

 

*

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