遥が紅魔館に来てから1ヶ月が経とうとしていたある日、遥は珍しく朝起きてこないレミリアを起こしに行っていた。
普段なら咲夜が行っていたのだろうが、今は妖精メイドが倉庫でなにかやらかしたらしく、そちらの対処に向かっていた。
(にしても咲夜の時止め便利だな、知覚速度最大まで上げて見たらものすごいスピードで飛んで行くように見えるのが面白い。咲夜の能力が時止めじゃなくて分身とかだったらどうなってたんだろ……常にフル活用してるのが目に浮かぶな。)
そしてレミリアの部屋の前に着きドアをノックしながら、
「レミリア〜おきてる〜?あさだよー」
声をかけるが一向に返事が無い。さらに言うとドア越しに気配を探るが動く気配も無い。
「……入ったよ」
しびれを切らし、遥がドアを開け、部屋に入った。
「入るよ」ではなく事後報告らしい。
中に入ってレミリアの寝ているベッドに近づき、揺すったり耳元で声をかけてみるも、起きる気配はない。
こうなったらと最終手段を行使すべく首の鍵から白に何かの文字が書いてあるトランプ位のサイズのカードを取り出し、最後のチャンスとしてもう一度耳元で声をかける。
「レミリア〜おき──」
「むにゃむにゃ………はむっ」
「みゃあ!?────ッ!?」
最後の呼びかけをしようとしたところ、寝ぼけたレミリアに首すじに噛みつかれた遥は、思わず変な悲鳴をあげた後、血を吸われ始め、からだが動かない事に気付いた。
吸血鬼の唾液に含まれる催淫作用の影響である。血を吸う際相手を逃がさないために進化した形だろう。麻痺毒では駄目だったのだろうか、生物の進化は不思議である。
「むにゅむにゅ……もうたべられない」
「ひゃっ……ふぁっ………じゃ、あ、吸うなぁ!!」
なんとかからだを動かし、頭が回らず精密な術式が組めないのでそのまま手に持っていたカードに魔力をこめる。するとカードが発光し、遥のすぐ近くからジュウ、というなにかが焼けるような音がし、
「むにゅ………熱ッ!!」
レミリアが飛び起きた。
解放された遥はその場でへたり込み、飛び起きたレミリアが赤い顔でぜぇぜぇと息を吐く少し涙目になっている遥を見て首すじから少し血を流しているのに気付きいた。そして自分が何をしていたのかに気付き、
「だ、大丈夫!?えぇと…………お、美味しかったわよ?」
どうやらパニックなっているようで、おそらくレミリア自身も自分が何を言っているのかわかっていない。
「…………」
その様子を見、遥はなんとかからだを動かして指を窓の方に向け、
「熱ッ!!」
レミリアの頬を窓の方から飛んできた熱線が掠めて行った。レミリアの火傷の治りが遅い事から日光を曲げて収縮させたものだろう。よく見ると窓の方に鏡やレンズのような結界が浮かんでいる。
「……えぇっと怒ってる?」
「……べつにおこってない」
その後、咲夜が、あまりに遅い2人を見にくるまでレミリアの平謝りが続いた。
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「と、いうわけでなんかおやすみいただきました」
「そこからどうして私の所に来る事になったにのよ」
現在、場所は紅魔館の図書館にて、遥はパジャマのようにゆったりした服にナイトキャップを被った紫髪の女性、パチュリーと話していた。
あの後、別に大丈夫だと言ってもレミリアは「私のせいだから」と譲らず、遥は今日1日休みとなった。
「ひまだったんで」
「………」
「そういえばパチュリーって属性魔法、つまり精霊魔法つかうんだよね?」
「……そうよ」
どうやらパチュリーは諦めて遥の話に付き合うことにしたようだ。
「わたし属性魔法つかえないからちょっとうらやましい。霊術や妖術はつかえるけど」
「?なんで使えないのよ。最初にレミィ焼いたの属性魔法でしょう?」
ちなみにレミィとはレミリアの事である。レミリアはパチュリーの事をパチェと呼ぶ。
「なんか精霊に嫌われてるんだよね。妹も仲間もみんなつかえたんだけどねぇ。わたしがつかえてるのは『カード』があるからだね。」
「カード?」
「『カード』ってのはわたしがつくった『
といって遥が取り出したのは赤青緑黄白黒の6色のトランプ位のサイズのカードにそれぞれ文字が書かれたものである。
「それぞれの『属性』と、特定の魔力波に対する『魔力増幅』『消費魔力軽減』が書かれているわね。最後2つは魔力認証の鍵に使われる術式が組み込まれてるわね。」
「そ、魔法は条件をしぼれば効果があがるからね。そのかわりわたししかつかえないけど。これを中心に術式を展開しないと属性魔法つかえないの。あとわたし魔力少ないし」
その遥の言葉にパチュリーは訝しげな顔をしながら、
「魔力が少ない?」
今までの遥の戦闘を見ても魔力をジェットのように使った加速だったり魔力武器だったりと魔力を多用しており、とても魔力が少ないようには見えなかったのだ。
「今はまだましになったけどね。ふだんから『魔力増幅』やら『魔力消費軽減』の術式つかってるのと、呼吸によって大気中の魔力を取り込んで体内魔力を増幅させたり霊力や妖力とまぜて反発されたり、あとこんなのつかってる」
そう言って遥が取り出したのはビー玉サイズの紅い透き通った玉である。
「魔力結晶?」
「そ、わたし元は魔力は少ないけど回復速度は早くてね。回復と同等の速度で『鍵』の空間にある魔力結晶の生成装置に魔力を送り込むの。魔力はつかえばつかうほど最大容量が増えていくしね」
「なるほど。自分の弱点はカバーしてるのね。鍵はどうやって作ったのよ」
「仙人の術に『仙界』ってのがあってそれをまねた。一応魔法の座学は優秀だったんだよ?妹達の方がつかうのうまかったけど……」
はぁ、とため息を吐いた後、
「ただなによりの弱点が銃弾にせよ結晶にせよカードにせよ消耗戦に持ち込まれるとまずいんだよね。在庫は大量にあるけど。そのときは能力の大盤振る舞いだね」
「ふーん、貴方の能力私は知らないけどデメリットでもあるの?」
「まあ、紅魔館きてから新しく能力つかってないしね。……デメリットってほどのものはないかな。たまに融通きかないけど汎用性は高いし。能力あれば魔法つかえなくても問題ないくらいには。魔法は半分趣味かな」
そんな事を話しているうちに遥は面白そうな本を見つけたらしく、それを本棚から取り出す。そこでかなり高い所まで飛んでいた事に気付いたらしく、鍵から金属の棒のようなものを取り出し、それを宙に浮かせ、そこに座って足をプラプラさせながら本を読み始めた。
「……なによその棒」
「『空間固定』機能付きの棒。昔魔法の箒をつくろうとした時の成れの果て」
「……それ箒はどうなったの?」
「空飛ぶ槍になった」
「………」
その後、聞きたい事が増えたものの、気にしたら負けな気がきて自分の本を読み始めるパチュリーだった。