レンの行方不明から1ヶ月は経っただろうか、始めは落ち込んでいたレミリア達もかなり元気を取り戻していた。
遥の記憶が正しければ遥が紅魔館に来てから3ヶ月は経っており、外はかなり寒くなっている。
「遥、お茶するらしいからパチュリー様読んできてくれる?」
「りょーかい」
という会話から、現在遥はパチュリーを呼びに図書館へ向かっていた……のだが、
(誰だろあれ)
視線の先では白黒のエプロンのついた服にいかにも魔女だと言わんばかりの白いリボンのついた三角帽子を被った金髪の少女がなにやらコソコソとしてる。
(たしか咲夜が『侵入者は遠慮なく撃退していいわよ』って言ってたっけ)
そこまで思い出すと遥は数枚のカードとビー玉サイズの紅玉を取り出し、おもむろに炎の槍を数本生み出し、目の前の白黒魔女っ子に叩きつけた。
「おわ!?なにすんだ急に!!」
少女はすぐさま驚きつつ避けた。
「泥棒退治」
「泥棒じゃねぇよ!」
「じゃあなにしてるの?」
「そりゃあもちろん本を盗……借りに来てるんだぜ!」
『本でも盗みに来たのかしら?』『私を
今となっては懐かしい、遥が初めて紅魔館に来た時の咲夜と霊夢の会話を思い出す。
(あぁ、こいつが魔理沙か。てかあれ伏線だったのか)
ともかくこれで目の前にいる少女が本泥棒常習犯ということがわかったので、撃退することにする。
手元では先程使用した紅玉が砕け、大気に溶けるように消えていっている。
完全な不意打ちを避けられたことで、いちいちただでさえ効率の悪い魔法を使うのはめんどくさい相手だと判断する。
(今はさっさと終わらせてパチュリー呼びに行かなきゃだしな……しょうがない、能力使うか)
幻想郷初日以来使っていなかった能力を使う事にする。
「はぁ、『右手《炎》
そう言うなり、左足で圧縮してあった風を爆発させ、高速で魔理沙に接近し、右手に生成した炎の太刀を振り抜く。
「あっぶねぇ!!」
しかし目の前の少女、仮称魔理沙は掠りはしたものの、それも躱してみせた。
左手に生成した氷の細剣にて突きを放つも、魔理沙の周囲に展開された星の弾幕によって相殺される。
(星の魔法?凄いな、この火力で星型を維持出来るんだ。普通火力上げれば上げるほど制御は難しいのに)
そのまま炎の太刀を槍へ変え、氷の細剣も同じく槍へ変え、同時に投げる。さらにボールを蹴るように左足で圧縮空気弾を蹴り、その勢いを殺さず一回転し、右足で空を蹴ると、三日月型の黒い斬撃が飛ぶ。
「『ブレイジングスター』!!」
しかし魔理沙は取り出した六角形の金属塊の魔道具と思われるものから魔力砲を噴射し、高速で後ろに下がり、
「今度はこっちの番だ!『ファイナル……」
(あ、やべ)
その魔力の高まりを感じ、流石の遥も危機感を覚えた。
「マスター……」
「
「スパァアアアアアアアアク』!!」
──魔砲『ファイナルマスタースパーク』
極光が遥の視界を埋めつくし、遥どころか紅魔館ごと消し飛ばしそうな魔砲が遥へと迫り──
「ふぅ、ちょっとやりすぎたかな………──ッ!!」
極光が収束し、魔理沙が呟くと、そこには信じられない光景が広がっていた。
「あっぶな……わたしが止めてなかったから紅魔館消し飛んだんじゃない?」
毛先と前髪を一房紅く染め、黒い刀身に紅い刃の刀──妖刀:夢幻を持った遥が無傷でたたずんでいた。
さらに信じられないことに、廊下等にも焦げ跡1つ無い。
「な、どうやって!?」
「この刀の2つ目の能力で《
だからといって先程の『ファイナルマスタースパーク』はそう簡単に吸収出来るようなものではないし、そもそも吸収した魔力はどこへ行ったのかという疑問も残る。
そんな事を魔理沙が考えていると、
「そんなことよりはやくつづきしよ?」
影を固めたと思われる黒い大鎌を構えながら遥が言うと、
「ちょ、ま、こうさ──」
降参、と魔理沙が言いかけた所で、
「ちょっと遥何してるの。早くパチュリー様を呼んで来てと──いや本当になにしてるのよ」
「さっきから騒がしいわね。ゆっくり本も読めやしない──げ、魔理沙」
「ちょっとあんた達なにやってんのよ。あ、遥久しぶりね。あと魔理沙も」
騒ぎを聞きつけて咲夜、パチュリー、さらに霊夢までが現れた。
「てゆうか何よその大鎌。貴方魔法は使えないんじゃなかっなの?」
「つかえないよ?これはわたしの能力」
「へー、あんたの能力って結局何なの?模倣じゃないって言ってたけど」
そんな霊夢達の質問に遥は、
「《概念を構築し操る程度の能力》だね」
「「「「は?」」」」
その場にいた霊夢、魔理沙、咲夜、パチュリーまでもが思わず絶句した。
それもそのはず。本来能力とは、それぞれのパーソナルや種族にあった概念を操るものである。
例えば霊夢の《空を飛ぶ程度の能力》なら、ただ空を飛ぶだけではなく、空間を『跳ぶ』ことによる零時間移動や、次元から『浮く』ことにより、相手からは一切の干渉を受けずに一方的に攻撃する等が出来る。
後半は少しややこしいので解説すると、次元から浮くというのは、例えば絵の中の人物がどれだけ暴れようとも、その絵を見ている人間には何の害を及ぼす事も出来ないが、絵を見ている人間が絵を殴れば絵の中の人物を破る事が出来る。
つまりこの能力を使った時の霊夢が絵の外の人間で、それ以外が絵の中の人物というわけである。霊夢の攻撃は周りにあたるが、それ以外の人間の干渉は霊夢をすり抜ける。というわけである。
話を戻すが、遥が概念を構築し、操るということは、遥はあらゆる能力をつかう事が出来る。と霊夢達は考えたのである。
だが、もちろんそんなに都合のいい能力があるはずがない。
「「「「………」」」」
4人が何に絶句しているのかに気付いた遥は、
「?……あぁ、もちろんそんなに都合のいい能力じゃなくて、正しくいうと《自分のパーソナルで構築出来る範囲の概念を構築し、物、あるいは体の部位に付与し、操る程度の能力》だよ。霊夢の能力は相性よかったからまねできたけど《治癒》とかはつかえないし」
ちなみに霊夢の能力と相性が良かったのは、霊夢の能力である重力、風、空間、次元にすら干渉されない、すなわち完全なる『自由』。霊夢のパーソナルである『自由』と遥のパーソナルが似通っていただけてある。つまり究極の自由人がこの2人である。
ついでに言うと、レミリアの能力である《運命を操る程度の能力》は、遥は真似出来ない。
自分の邪魔をするものは何人たりとも許さないし、障害は壊す。あと他人の運命など興味がない、という理由もある。
逆にフランの能力である《ありとあらゆるものを破壊する程度の能力》は、仕組みは違うものの、扱う事が出来る。
理由は先程と同じである。
「あと、この銃もそのためにつくった」
と言いつつ、能力と同じく幻想郷初日以来使っていなかった『魔銃:ノーション』を取り出す。
メイド服だと腰にホルスターを付けられないので太ももに付けられていた。いわゆる、ふじこスタイルである。
「あとほかには、もちろんのことながら本来の能力よりスペックは下がるし、いちいち詠唱しないと能力発動しないし、あとからだに付与する場合付与出来る場所も決まってるし。」
スペックに関してはもちろんのことながら、例えば《風を操る程度の能力》と遥が先程使用した《風》の概念を付与する方法だと遥の方が火力も精度も下がる。
からだの付与出来る場所は、大体身体全体、両手、両足、あとは心臓、目、耳位だろうか。物なら1つの物につき付与出来る概念は1つまでである。
「──とまあ、こんなところかな?ところで霊夢はなんか用があったんじゃないの?」
自分の能力を説明し終わり、これ以上話すこともないので今日霊夢が来た用を聞いた。
「あぁ、そうだったわね。今回のは異変なのかどうかも分からないものだけど危険なものには変わりないから念の為話しに来たわ。レミリアの所に案内してくれる?」
─────────────────
というわけで場所は移り、大人数で話す為にということで紅魔館の食堂にて。
「んで、霊夢がわざわざ話しに来る程ということはよっぽど厄介な異変でも起きたのかしら?」
と、先程までの待ちくたびれた様子から一転し、真面目な様子で霊夢に問いかけるレミリア。
机に突っ伏していたのか、頬にかたさえ付いていなければ完璧である。
ちなみに異変というのは幻想郷のシステムの1つであり、人間と妖怪のバランス(妖怪は人間を襲い、人間は妖怪を退治する。という関係)を保つ為、理由はそれぞれだが、主に妖怪等が起こした事件を『異変』と呼ぶ。
ようは妖怪等が人間に迷惑かけたら異変、という認識で問題無い。
その妖怪を退治する、『異変解決』を生業とするのが、『博麗の巫女』である霊夢の仕事である。
レミリアも以前、「真夏の太陽が鬱陶しい」という理由で妖霧で空を覆い隠す、『紅霧異変』を起こして霊夢に退治されている。
妖怪が異変を起こしやすく、人間が異変を解決しやすくする為に『スペルカードルール』というものを霊夢が制定したのだが、遥はお世話になる予定が無いので、説明は省略する。
「今回の異変、なのかどうかも分からないけど、幻想郷中で謎の黒い人型のもやが発生してるのよ」
「人型のもや?なにそれ?」
レミリアの質問に、
「遥、あんたが幻想郷に来た時に見た黒い人型のもやがあったでしょ?それよ」
と霊夢が遥に話を振ると、遥はその場全員にとって思いがけないことを言った。
「あぁ、黒いもやって
「「「「「!?」」」」」
「?どしたの?
その場にいた全員の驚いた表情に、なにを勘違いしたのかそう聞き返す遥に、一番驚きの大きかった霊夢が答える。
「あ、あんた何でアレについて知ってんのよ!?幻想郷でも最近現れ始めたものなのよ?」
「なんで、って……まぁ、家にいた頃はよく見かけた。とゆうより、アレを狩るのも仕事の内だったし。合体してでっかくなったり人に取り憑いたりと厄介なんだよね〜」
あっけらかんと答える遥に再び絶句していた霊夢が再起動し、
「じ、じゃああんたはアレの正体も知ってるの?」
「ん、アレは人間の負の感情が形を成すことなく凝った、妖怪のなりそこないだね」
またもやあっさりと答える遥に、霊夢は驚きをなんとか抑えながら、
「……あんた、何者よ」
「?……『文霧』って名前について紫は何か言ってなかった?」
「あんたをここに連れてきた後、幽々子の所であんたの話も出たけどあいつは何も言ってなかったわよ」
「……隠してる?いや、隠すようなことじゃないし、忘れてるのかな?」
なにやらブツブツ言っている遥に霊夢は、
「結局あんたは何者なのよ」
「えーと、どこから説明したらいいかな。……500年前、幻想郷の結界が張られる前はここがどういう所だったか知ってる?」
「……知らないわ」
「ここはね、妖怪が多く生息していた地に、妖怪退治を生業とする者達が集まった土地だったんだよ。わたしは幻想郷の結界が張られる時に幻想入りし損ねた妖怪や暴走した能力者を狩る為に外に出た一族の末裔」
「「「「「………」」」」」
初めて聞く情報の羅列に全員が目を見開いて驚いついるが、それに構うことなく遥は話を進める。
「『
結局その後、全員が驚きから解放されたところでその日はお開きとなった。
0話で出た銃身に彫られていた『notion』ってのはあの銃の名前でフランス語で『概念』って意味があります
前回言った通りしっかり0話で分かるようになっていたわけですね
次回、ヤツが来る
お楽しみに