思ったより長くなりそうなので前編と後編に分けました。
朝、目が覚めるとそこは暗闇だった。
雨戸は全て閉じられており、一切の光を遮断した木造の一室だった。
だが、物心ついた頃からここで寝起きしている少年にとっては見慣れた光景で、しばしぼーっと虚空を眺めた後、手馴れた様子で時計を探す。時計には起きるべきか二度寝するべきか悩む位には微妙な時刻が指されていた。
「………ねよ」
と、少年が二度寝を決行しようとしたところで本来あまり人が来ることの無いこの建物内に人の気配がした。
この建物内に入ってくる者は限られており、その中でこの足音といえば……
と、そこまで考えたところでその人物がノックをしようとした気配に気付き、
「どうぞ」
「!」
と先んじて言うと、少し驚いた気配があり、「失礼します。」という言葉と共に扉が開かれた。
「おはようございます遥様」
「おはよ黒野さん」
そこに現れたのは、黒いスーツをピシッと着込み、少し長めに伸ばされた黒髪を後頭部でひとつにまとめたいかにも秘書といった雰囲気の女性である。
ちなみに秘書では無い。遥が住んでいるこの家、文霧家の使用人長である。
その女性、黒野が部屋の電気をつけると、少年の姿があらわになる。
「うぅ、まぶしい」
乱雑に伸ばされた特徴的な白髪に日にあたったことが無いかのような白い肌、微かに濁った紅い瞳を眩しそうに細めている。
「黒野さんが来てるってことは……今日なんかあったっけ?」
「はい、当主様からのご指示で本日から3名の方と妹様と
「そんな話したっけ?………………したわ。あれ今日だったのか」
それを頼まれた時のことを思い出したらしく、納得の声をあげる遥。
ちなみに当主とは遥の実の父親のことである。
ちなみにその時の会話は以下の通りである。
『遥〜、お前同年代の友達欲しくないか?』
『は?』
とても長年続く名家の当主とその子息の会話には思えないがこの2人はいつもこんな感じである。
『だから友達だよ友達、お前同年代の友達いないからな』
『人をボッチみたいに言うなや。そもそも同年代の知り合いがいないよ?てか急にどうしたの?』
『親の配属先が変わったから今度うちに3人位引っ越してくることになった。んで、なかなか見所があるらしくついでに
その父親の言葉に遥は少し苦々しげな声で、
『ここ住むの?てか誰?』
『俺の弟達の子供、つまりお前にとっちゃいとこだな』
『……今この瞬間までいとこがいるという事実すら知らなかったんですが?』
『そうだっけか?まあ頼んだぞ』
その言葉に遥は嫌そうな雰囲気を滲ませながら、
『えぇ、めんどくさ』
『ちなみにこの話を
『喜んでさせていただきます。てかそれを最初に言ってくれ』
見事な手のひら返しを披露し、その話はそこで決定となった。
『てかどんな人達?』
遥が聞くと、父親は少し考える素振りを見せ、
『なかなか面白い奴らみたいだぞ。3人とも面白い能力で、あと全員武器持ちだ』
『この歳で武器持ちって確か珍しかったよね?』
『お前が言うと説得力無いけどそうだな』
その経緯を思い出し、そういえば日付けを聞いていなかったことに気付く。
「それでは私は先に行っております」
という黒野の言葉で現実に帰還した遥は、黒野が出ていってからのそのそと着替え始るのだった。
その目には、これから会うであろう3人に対する感情はひと欠片も無かった。
──この出会いが後の人生を大きく変えるということも知らずに……。