槍と杖が打ち鳴らされる光景を見、遥は安堵の吐息を吐いた。
「ふぅ、彼方が殺す気はないみたいで安心した」
「いや、バリバリ殺気こもってるんだが?てか、あれ誰?」
「初撃で美琴が弾け飛んで無いなら殺す気はないと思う。んで、あれは俺の妹の
大和の質問に遥が事も無げに答える。しかし男達が呑気に会話している視線の先では激しい攻防が繰り広げられている。
彼方からは黄色に近い橙、美琴からは赤寄りの紫の光が炎のようにたちのぼっていることから、2人とも身体強化を使っているのだろう。
現状彼方が押しているようにみえる。槍と杖、どう考えても槍の方が速いはずである。さらに美琴は先程遥に対して使用した不可思議な移動方も駆使している。
にもかかわらず彼方はその速度に対応し、それを美琴がなんとか凌いでいる形である。
しかし決定打を与えられないことに焦れたのか、彼方がバックステップで距離をとり、
「《
その言葉とともに
「防御は最大の攻撃です。《発射》!」
4つの立方型結界が発射されると同時に彼方は地を蹴り、自らの結界をさらに足場にすることで加速、一瞬にして美琴に迫り、杖を打ちつける。
その一撃を身体強化を全開にすることでなんとか防いだ美琴にさらに立方型結界が追い討ちをかける。
「ぐうっ…」
3つは身体を捻って躱したが、命中した1つに苦悶の声をもらす。
さらに距離を開けようと後ろへ跳ぶも、そこへ足裏から魔力と霊力をジェットのように噴射したことによる
ちなみにこのノーモーションシリーズだが、遥が開発したもので、蹴りと裏拳が存在する。瞬間的な加速に使われる技術と同じなので難易度は低く、同じ方法で空中で変幻自在に軌道を変える蹴りを放つ事も出来るのだか、魔力消費の関係で使われることはあまりない。
彼方の蹴りを利用して無理矢理距離を離した美琴は槍を掴んでいない左手の人差し指と中指を揃えて立てて手のひらを向ける、
その瞬間彼方が取り出した3枚の御札からレーザー、炎の槍、風の刃が放たれ、その全てが美琴の突き出した手の前で壁に当たったように弾けた。
「おい、なんだあの御札。属性の定義しかされてねぇぞ。どうやって形決めて撃ってんだよ」
そんな大和の疑問に遥は、
「残り全部自分で術式組んだらいいじゃん。慣れると属性定義する必要ないから便利だぞ」
「そんな簡単なもんか?」
さらに武龍も会話に参加してくる。
この3人は短時間で随分と仲良くなった様だ。
「その辺もまた教えるよ。それより彼方のあれ防いだのって美琴の能力だよな?」
「そーだぞ。……その様子だと美琴の能力はわかったみたいだな」
遥の少し楽しげな様子に大和が確認すると、
「よくわかったな」
「お前無表情だけど意外とわかりやすいことに気付いた」
「?」
そんな会話をしている間にも2人の戦闘は激化し、彼方が杖を振るって放った衝撃波も美琴に通らないと見るや杖を投擲する構えをとり、美琴もそれにならって槍を投擲する構えをとる。
2人の魔力が圧縮され、それぞれの得物に込められていく。
2人がそれぞれの得物を投擲しようとしたその瞬間、
「はいそこまで」
突如2人の横を黒紅の風が過ぎ去り、2人の間には毛先と、前髪を一房紅く染めあげ、黒い刀身に刃が薄く紅く染まった刀を携えた遥が立っていた。
(あの暴発しそうな魔力の塊を
武龍がそんなことを考えている間に、
先程まで荒れ狂っていた魔力は最初からそこになかったかのようになりを潜めていた。
「……
「むぅ、お兄ちゃんがそういうなら、」
と、しぶしぶといった様子で、左側の前髪でクロスするように付けられた赤いヘアピンと、後頭部で一房だけ縛られた赤い紐──おそらく髪を縛る用途は無く、飾りだろう──を揺らし、にっこりと元気な笑みで、
「
と、元気に挨拶した。
これがこの4人の運命とも言える最初の出会いだった。
──後にこの出会いがとある世界を狂わすのだが、そのことを5人はまだ知るよしもない……。
思った以上に長くなりましたが、過去編は一旦終了です。
次回からは幻想郷です。