朝、目が覚めるとそこは暗闇ではなかった。
(そういえば幻想郷に来たんだったな)
遥は物心ついた時から暗闇で寝起きしていたため、朝起きて周りが明るいことに違和感を覚えてる。
(日に当たっても大丈夫になったのは
「………?」
起き上がろうとすると身体が動かないことに気付く。
「……すぅ……」
隣を見ると霊夢に拘束されていた。そこでようやく昨日の夜寝る時に霊夢に抱き枕にされていたことを思い出した。
「……とりあえず起きるか」
なんとか霊夢の拘束から抜けだし、ふと左手首を見ると、そこには赤い紐がくくり付けられていた。
手首から視線を外し、そういえば昨日前髪が邪魔だったことを思い出す。
服の中から首にかけてあった銀色の鍵のようなものを取り出し、それを虚空にむけるとそこに魔法陣のようなものが現れ、そこに鍵を差し込み、ひねるとガチャリという音とともにそこから2本の赤いヘアピンが落ちてくる。
それを前髪でクロスするように付けた。
「……ごはんつくるか」
料理自体は5人で共同生活を始める前から自分の分は自分で作っていたので、料理歴は意外と長い。大抵昼前まで寝ていたので朝食を作ることはなかったが。
ちなみに彼方の料理のうでまえはというと、
『遥〜なんか作ってくれ〜』
『なんで?』
『やる気が出ないからだな。息子の手料理は親にとっての最高の活力だぞ』
『娘の手料理じゃだめなわけ?』
『……あれは、まあ、うん、アレじゃん?』
『……そだね』
というとある親子の会話から察してほしい。
などと昔のことを思い出している間に朝食を作り終わった遥は霊夢を起こしに行く。
「れいむー朝ご飯できたよー」
「う〜ん」
遥が朝食を作り終えてから1時間後、ようやく起きた霊夢とともに朝食をとり終え、片付けを済ませた遥は、
「そういえば今日は忙しいって言ってたけどどこ行くの?」
「あんたの住み込み先兼働き口ね、紅魔館っていう吸血鬼の館があるのよ。てかそのヘアピンどうしたの?」
「へ〜、吸血鬼かたしかに会ってみたい。これはきのう前髪が邪魔だったから付けた」
「なんでそんなもん持ってんのよ」
霊夢の質問はおそらく男だったのになぜヘアピンを持っているのかということを聞いているのだろう。
「……よく
「……なんか、あんたも大変ね」
(ちょっとその人達に会ってみたいわね)
そんな会話から数分後、
「んじゃ、そろそろ行きますか」
「ん、……ねぇあれだれ?」
そろそろ出発しようとしていた矢先、遥は白い人影を見つけた。
「ん〜?あぁ、あれは冥界の所の半霊よ」
そんな会話をしていると、その白い人影が話しかけてきた。
「あ、霊夢さんこんにちは。……そちらの方は?」
「こんにちは妖夢、こいつは昨日幻想入りしてきた人間(?)よ」
「はじめまして、文霧 遥です」
遥がペコリと頭を下げつつ挨拶をすると、
「これはどうもご丁寧に、私は冥界で庭師をしています、
すると白髪を肩口で切りそろえ、黒いリボンのようなカチューシャに、黒目に白いブラウスに緑のロングスカートに同色の上着を羽織り2本の刀を帯びた少女、魂魄 妖夢は丁寧に答える。
「よろしく」
自己紹介を終えた後、妖夢は思い出したように、
「あぁそうそう
と、今日来た要件を伝えた。
「わかった、今夜行くわ」
「わかりました、幽々子様にはそう伝えておきますね。……本来はこれだけだったのですが、遥さん、あなた剣を扱いますね?」
少し気配の変わった妖夢に面くらいつつ、
「あんた武器は昨日の銃じゃないの?」
「あれはわたしの能力とのかねあいでつくったもの。本来の武器は刀」
「やはりそうでしたか、なかなかの手練の様でしたので、私と一度手合わせ願えませんか」
その妖夢の言葉に遥は、
「……いいよ、このからだにもなれておきたかったし」
その後、少し開けた場所に移動した2人。
妖夢は2本の刀を抜き、構える。
遥はというと、虚空に手をむけ、
「
すると虚空から黒い刀身に、刃の部分が薄く紅く染まった刀が出現し、遥の容姿にも変化がおきる。毛先と、前髪が一房紅く染まり、どんよりと全てを喰らい尽くすような妖気が周囲に流れ始める。
これには傍観していた霊夢も驚き、
「妖刀!?しかもこれは……半妖化!?」
その霊夢の反応に遥は、
「やっぱわかるよね〜、そうだよ、この妖刀:
「んじゃ、いくよ」
そんな言葉とともに遥の姿が消える。
次の瞬間には妖夢の目の前に現れ、ギィン、という音を響かせる。すんでのところで妖夢が2本の刀で受け止めたのだ。
「ぐぅ、速いですね。この速度、まさか縮地!?」
「少し違うかな。よっと」
鍔迫り合いが始まった瞬間に遥は後ろに下がり、僅かに体制を崩した妖夢に蹴りを放つ。彼方も使っていた
「これも試してみようか…なっ!!」
続いて刀を裏返し、峰打ちの状態にしてから振るう。
「なっ!!」
妖夢が思わず飛び退くとそこに紫電が通り抜ける。遥が刀を振るったことでプラズマが発生し、それを飛ばしたのだ。
もちろん魔法等は使っていない。完全な物理技である。
「やっぱ避けるよね〜」
(しまったな、ここまで不意打ちオンパレードで押してるけど剣術の腕なら向こうが上だろうし……)
紫電を躱した妖夢は今度は霊力の斬撃を大量に放ってくる。
それを全て躱すことに成功するも、既に妖夢は遥の眼前に迫っており、2人の間で初めてまともな刃の応酬が始まる。
「あなた、その剣術やはり我流ですね?」
「教えてくれる人がいなかったもので」
(やはり剣術なら私が上、このまま押せる!!)
妖夢がそんなことを考えた刹那、
ガギィィンというけたたましい音とともに妖夢の左手に持っていた刀が宙を舞う。
その光景を見、妖夢は目を見開いて驚いていた。
(何、今の、突然スピードとパワーが上がった?)
妖夢は一度距離をとる。
見ると遥からは紅い光が炎のようにたちのぼっている。刀にも同様のことがおこっており、先程の一撃の原因はこれと思われる。
「うーん、剣術もだいぶ頑張ったんだけどなー。まあそれ以外に格闘術魔法霊術妖術銃術とやってたら剣術一筋に比べたらむらが出るかー。……ならそっちも合わせりゃいいだけだけどね」
そう言うなりまた姿を消し、再び音速の壁を超えた遥は妖夢に最初と同じ一撃を浴びせるが、結果は初めと同じようにはならなかった。
その一撃を受け止めた妖夢は、そのあまりの威力に後方へ吹き飛ばされる。
それをみた遥は刀をいつの間にか腰にさげられていた鞘に戻し、そこへたちのぼっていた魔力、霊力、妖力が凝縮させていく。
「!!」
それを見て妖夢が目を見開くが、もう遅いとばかりに遥はその刀を居合切りの要領で引き抜く。
次の瞬間、閃光が爆ぜ、膨大なエネルギーが衝撃波と化し、妖夢へ襲いかかる──