ありふれない怨霊こそ世界最愛   作:白紙

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ありふれ世界に乙骨君オマージュオリ主と里香ちゃんオマージュオリ主をぶっ込んで幸せにしたいだけです。


0章.日常
1.夢


○月○日

 

 日記を自主的につけるなんてマメな事は今の今までしなかったので、書き始めにとても迷う。下手したら小学生の夏休みの宿題以来ではないだろうか。■■ちゃんと一緒に宿題をやったのを思い出す。■■ちゃんと一緒ならなんでも楽しかったなー。

 

 ・・・駄目だ、いきなり脱線しかけた。早いうちにこの日記を付け始めた理由でも書いとこう。まず、昨日の夜に見た夢のおかげで、俺の人生における目標だとか、初心なんかをあらためて見つめ直すことが出来たから、その想いを忘れずにいつまでも覚えておけるように、と言うのが一つ。もう一つが、日々の記録をつける事で■■ちゃんの呪いを解く鍵を見つけられるかもしれないから。日記を付けてる最中でもいいし、後から見返した時でもいい。当時気づかなかったなんでもないような事から、もしかしたらヒントが見つかるかもしれない。夢から覚めた時に、どんな小さな事でもやれる事はやっておくべきだと思ったからだ。

 

 夢如きで大袈裟である、と普通は思うかもしれないし、それもまたまっとうな意見であると思う。が、俺と言う人間は夢を殆ど見ないのだ。寝つきはいい方で布団に入れば朝までグッスリだし、『呪術師』として妖怪やら呪いやら悪霊やらをしばき倒す曰く付きのバイトを日々こなしていても、それらにまつわる悪夢なんてものをついぞ見たことはなかった。夢を見たこと自体を忘れている可能性はもちろん有るけれども、まあ、どちらにせよ、そういう繊細さなんかとは無縁の体質なんだろう。自分の事ながら図太いとは思う。

 

 そんな自覚があるので、今回のように夢を見た上に、すぐさま「あ、これ夢だ」と意識することが出来たのはとても珍しい事だった。と言うか覚えている限りでは初めてだった。そして意識することが出来たその理由にもすぐ様思い立った。ーーーそれこそが、俺が日記を書くに至った最大の理由。何故なら、見ていた夢は俺にとっては掛け替えのない、初恋の記憶だったから。

 

 

 

 夢の中で最初に見たのは、初めて■■ちゃんに出会った時の記憶。父方の爺さんの見舞いに来ていた俺が暇潰しで持っていた本と、検査入院かなんかで病院にいた■■ちゃんが持っていた本が同じだったのが交流のきっかけだった。あの時に初めて一目惚れと言うものを言葉ではなく心で理解できたんだった。日記を書いている今、しみじみと若いーーを通り越して幼いーー自分の初恋のことを思い返す。そう言えば本を読む様になったのもあの時の出会いがキッカケだった。その時からずっと読書が趣味になっている辺り、我ながら単純である。

 

 だがしかしマジでよくやったなあの時の俺。暇潰しにとあの本を選んだお前の直感と判断は、今まで生きてきた約17年という短くも充実した我が半生だけでなく、これから生きていくであろう50年以上もの人生の中で最も称賛されるべきものであると断言できる。少なくとも3本の指には間違いなく入っているだろう。

 

 夢の中で、病院内で楽しそうに話していた■■ちゃんとの記憶を見ていると、突如テレビの早送りの様に思い出が流れていき、しばらくすると別の場面で再生が始まった。今度の記憶は退院した■■ちゃんが俺と同じ学校に編入して来た所。夏休み明けで、俺がボンヤリと教員の話を聞いていた所に、名前を呼ばれた■■ちゃんが転校生として教室に入ってきた所だった。■■ちゃんは、黒板に綺麗な漢字で自分の名前を書くと、教員に促され自己紹介を始めた。愕然と目を見開く俺に対し、■■ちゃんがクスクスと上品に笑っていたのが印象的だった。

 

 ・・・書いてて思ったけど、この感じだと俺がいるってわかってて編入黙ってたんじゃねーのか■■ちゃん。こうして日記を書くまで気づかなかった俺もアホだが。

 

 ■■ちゃんの自己紹介が終わると、また不意に記憶が早送りされていった。どうやら過去から現在に向けて、俺にとって印象的な部分を切り取った記憶を、ダイジェスト風に見せられるらしい。夢を見ている間は便利だなーとしか思っていなかったが、日記を書いている今改めて考えてみると、なんか走馬灯を彷彿とさせる様にも見えるため微妙に不安を煽る。

・・・日記書くの早まったかな?

 

 その後も色々と、懐かしい記憶の数々を見せ付けられた。学校内外で■■ちゃんと遊び倒した記憶やら、放課後一緒に帰りそのまま俺の家で遊んだ記憶、学校行事かなんかの遠足で■■ちゃんと同じ班で遊んだ記憶、長期休暇で■■ちゃんが俺の家に泊まり込んで遊んだ記憶ーーーって■■ちゃんと遊んでばかりの記憶しかない。ほかに友達はいなかったんだろうか、俺の少年時代は。いや違うか。コレ一目惚れした相手と遊べて舞い上がってたから印象に残っているだけだな。じゃあしゃあないな、俺だもの。というか書いてて思ったが、これ俺の思い出っていうか、■■ちゃんとの思い出じゃん。やはり出来事を日記に書いて見直すというのは効果有りの様だ。今後も続けよう。

 

 そういえば、睡眠時に見る夢は過去の記憶の整理をするための物だと言う説があるとか。とすると俺の少年時代の印象的な記憶殆どが■■ちゃんとの思い出と言う事か。マジかよ最高じゃん。よくやった俺の夢、俺の記憶。こんな夢なら毎日見たいなー。

 

 

 

 そんなこんなで夢の中で思い出(一緒に勉強会した記憶とか、■■ちゃんに『社は私がいないとダメね』とよく言われてた記憶もあった)に浸っていると、■■ちゃんが真剣な顔で俺の方を向いている場面にたどり着く。

 

 この記憶こそが、俺の人生の中で最も罪深く、しかしそれ以上に最も幸せな思い出だろう。場所は多分、近所の公園。俺と■■ちゃんはそこで2人で遊んでいたんだろう。記憶の中の■■ちゃんは、俺に向かって『大事なお願い』があると言うと、微笑みながら俺に婚約指輪を渡し、大きくなったら俺と結婚しようと逆プロポーズかましていた。■■ちゃんってば天使かな。いや女神かな?

 

 

 そして肝心の俺はと言うとーーー作った砂山にトンネル作るため、腕突っ込んだまま目を見開いて固まってた。

 

 

 これに関しては何一つ言い訳ができない。日記を書いている今でさえ苛立ちがハンパない。主に俺の間抜けさと真剣味の無さに。真面目なお願いって言ってたんだから真面目な姿勢で聞きなさいよ俺。初恋の子からの逆プロポーズだからね?もし夢の中で声を出せていたのならば、きっと脳味噌を絞り出し、記憶にある限りの凡ゆる罵倒と皮肉を人生最大の声量で吐き出していただろう。夢の中で良かった。まあ、その後記憶の中の俺は満面の笑みでOKを出していて、それを聞いた■■ちゃんも見たことないくらいの満面の笑みで喜んでくれていたので、■■ちゃんの笑顔に免じてその醜態は見逃してやろう。我ながら掌返しが早すぎるとも思うが、夢の中とはいえ、今でも心から愛している人の満面の笑みを見ることが出来たのだからしょうがない、とここに自己弁護をする。

 

 夢の中の2人はそのまま、大人になったらどうしようか、2人だけで遠くの街に旅行に行こう等、未だ見ぬ未来について、微笑ましく話し合っている。

 

 そしてーーー

「ずっとずっといっしょにいようね」

喜びで有頂天になった俺は、■■ちゃんに対して無邪気な笑顔で返しーーー

 

 その返しに目を見開いて驚いた■■ちゃんの方も『ずっとずっといっしょにいようね』と俺に対して誓っていた。

 

 そこで記憶の再生が終わり、早送りが再び始まる。次が最後だった。早送りはすぐに止まった。何せ数日後の事だからだ。

 

 早送りが終わると、記憶の再生が始まる。が、今までは僅かに色褪せながらもハッキリした輪郭のある記憶だったのに対し、今回の記憶にはノイズと雑音が混じる、不鮮明な映像のまま再生がなされていた。

 

 日記を書いてる俺自身、その日の記憶はあまり覚えてない。何よりも目の前で起こった事故が頭から離れなかったから。

 

 再生された記憶にあるのは、鳴り響いたクラクションの音。周りの人間の悲鳴。彼女を轢き、壁にぶつかって中身ごと潰れた車。そして。

 

 俺の目の前で轢かれて、頭を潰された■■ちゃん。

 

 何が起きたか分からず、呆然とたたずむ記憶の俺はーーー

 

『だいじなおねがいがあるの』

 

数日前の結婚の約束を思い出し、

 

「ずっとずっといっしょだよ」

 

俺の口から出た誓いの言葉を思い出し、

 

『ずっとずっといっしょだよ』

 

『ズットズットイッショダヨ』

 

 記憶の中の■■ちゃんの誓いと、目の前の、頭の無い■■ちゃんの体から出たナニカの言葉が重なった。

 

 

 

 

 

 以上が俺の見た夢の内容全てである。・・・なんか日記っぽくないけど書き方はこれで良いのだろうか。まあ誰にも見せないし良いか。

 

 

 

 

 

 

 ーーーこれは、俺が『呪い』を解くまでのお話。あるいは、俺が■■ちゃんを再び真に■■せる様になるまでのお話。

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