ありふれない怨霊こそ世界最愛 作:白紙
「ちくしょう、なんで無いんだ・・・」
場所はオルクス迷宮の奥深く。肩を落としながら、見るからに落胆した様子で力無く呟く人影があった。この世界の人類にとって最高到達記録である65階を優に下回る程の迷宮深部に於いて、人間がいる事自体がまず異常であるが、それ以上に彼の風貌は常人とはかけ離れたモノだった。
まず、髪の色が真っ白である事。白髪混じりだとか、灰色に近いと言うレベルでは無い。仮に染料を用いたとしても考えられない程に綺麗に染め上げられた純白の髪。次いで目を引くのが、隻腕である事だろう。左腕の肘から先が存在しておらず、その断面は鋭利な刃物でスッパリと切り取られた様に綺麗なものだった。身長は180cmあるか無いかと言った所で、ボロボロになった衣服の間からは、非常に良く鍛えられた筋肉や、薄らと赤黒い線が幾本か覗いていた。
(俺が
白髪隻腕の少年ーーー南雲ハジメは、呆れる様に自らの境遇を思い出す。
橋から落下していた最中、運良く壁から噴き出る鉄砲水に何度も流された事で、衝撃が殺され何とか助かった事。流れ着いた先、地上に戻ろうと迷宮内を探索していく中で遭遇した、蹴りウサギや二尾狼等の尋常では無い魔物達。それらの魔物すらも餌にしか見ていない、この階層の頂点に立つ爪熊に遭遇して左腕を喰われた事。錬成を駆使して辛くも逃げ果せた先で、たまたま〝神結晶〟と〝神水〟を見つけた為に傷を癒せた事。〝神水〟により生きる事は出来たものの、強烈な飢餓感と幻肢痛により地獄すら生温い様な苦痛を味わった事。ーーーそして、生きる為に、邪魔する全てを殺すと決意した事。
(上に行く階段が見付からない。まだこの階層の全てを探索したわけじゃ無いが・・・)
必ず生きて故郷に帰る為、今までの自分と決別したハジメは、蹴りウサギや二尾狼、そして自らの腕を食らった爪熊を殺した後、上階へと続く道を探し続けていた。既にこの階層の8割は探索を終えているが、見つかったのは
(錬成で無理矢理上への道を作ろうにも、一定の範囲を進むと壁が錬成に反応しなくなる。神代に作られた迷宮っていうのは伊達じゃ無いな)
考え事をしながらも周囲の警戒は怠らないハジメ。溜息を吐きながら、まだ探索していない場所に向かおうと踵を返そうとしたその時。強化されたハジメの聴覚が、聞き慣れない音を耳にする。
(何の音だ?蹴りウサギでも、二尾狼でも、爪熊でも無い。少なくともこの階層で見かけた魔物が出す音じゃ無いのは確かだ。・・・どこかで聞いたことがある様なーーー此方に近づいてくる!?)
断続的に聞こえてくる
(気になるのは、音を出している存在が
ホルダーに収められた〝閃光手榴弾〟のストックを数えながらも思考を止めないハジメ。この音を出している存在には、〝周囲を警戒しながら進む〟と言う慎重さが存在していない様に感じられた。この階層の魔物の強さを知っているハジメからすれば、狂気の沙汰にも思える行動。それが意味するのは、この音の主人は爪熊等歯牙にも欠けぬ程に強い存在である可能性が非常に高い、という事だろう。
(上等だ、鬼が出ようが蛇が出ようが、邪魔するってんなら、殺して喰ってやんよ!)
如何に爪熊よりも強かろうとも、今のハジメが怯む事はない。この階層にいた魔物は例外無くハジメよりも強かった。しかし、その全てを乗り越えてハジメは此処に立っている。今更自分よりも強い程度の相手に、
迷いを見せずにハジメが戦闘準備を整えると同時、近づいていた音が止んだ。そして次の瞬間、通路の先から飛び込む様に駆けて来る何者かの姿がハジメの目に映った。対象とハジメとの距離は100m弱程だろうか。正確な大きさは分からないが、恐らく二尾狼よりも大きく、爪熊よりは小さい。二足歩行の様に見える魔物は如何やら人型をしている様で、真っ直ぐハジメに向かって走って来る。
「真っ正面からとは良い度胸だ、死ね」
敵の姿を認識したハジメの呟きと同時、右腕のドンナーから破裂音と共に弾丸が撃ち出された。燃焼石を粉末状にして火薬とし、更に〝纏雷〟によって生み出された電磁加速を加えられ、指先程の弾頭は秒速3.2kmもの超加速を得る。
階層最強の爪熊すら防戦一方にならざるを得なかった、文字通り必殺の兵器。瞬きすら許されない神速必滅の魔弾は、しかしハジメに向かって来た魔物に擦りもしなかった。
「ーーー何だと?」
疑問の声を上げるハジメだが、そこには油断も動揺も無い。何かタネがあるのか、ある場合はどうやってそれを撃ち崩すか。避けられたという事実を元に思考回路を回し、冷静に殺すべき敵を見定めながら、検証の為に続けて2発弾丸を叩き込む。が、それらもどういう訳か容易く避けられ、全く当たる様子が無い。
(爪熊の様に殺気を感じとって避けてる訳じゃねぇ。俺がドンナーの引き金を引くよりも、避ける動きの方が明らかに早い。にも関わらず当たらないって事は、何か予知系の能力持ちか?それとも社みたいにーーー)
ハジメの脳裏を過るのは、自らにとって大切だった友人の姿。優秀で猫被りが上手く、割と天然な所もある変人と言って良い人間。情に厚く、自らの愛の為、怨霊となった婚約者すら笑顔で受け入れた男。
(今はアイツの事を考えている場合じゃねぇ!!目の前のコイツを殺す事だけ考えろ!!)
自らの豹変と共に捨てた筈の未練。それらを振り払う様にハジメは殺意と闘志を燃やす。敵との距離は既に50mを切っており、依然として弾丸が命中する様子は無い。1発でも当たればただでは済まないのは、感覚や本能で分かっている筈だろうに、この敵は恐怖で止まるどころか減速する素振りすら見せない。空になった弾倉に片手で器用に弾を込めたハジメは、ドンナーをホルダーに戻すと、収納されていた閃光手榴弾を自分と敵の間に投げた。
そして、きっかり3秒後。
(予知系の固有魔法だか何だか知らんが、防げない様にすれば問題無いだろ。目を瞑るにしろ耳を塞ぐにしろ限度はある筈だ。俺が投げた物が何なのか知ってれば話は別だろうがな!)
〝錬成〟により床を変形して作った簡易バリケードに身を隠したハジメ。耳を塞ぎ壁に身を隠しているにも関わらず、耳を
(ーーー先手必勝!)
閃光手榴弾がどこまで効いてるのかも分からない以上、悠長に確認する暇すらハジメには惜しい。相手が
「動くな」
「ッ!?(人間だと!?)」
状況を打破する為にハジメが動くよりも先に、目の前の人型が言葉を喋った。目の前の敵が人間である可能性も想定してはいたものの、まさか本当にそうだとは思っておらず、動揺まではしないものの小さくない驚きと共に機先を制されてしまう。
(頭部が真っ黒な布か何かで覆われている。これで閃光を防いだのか?爆音も効いてる素振りが無い以上、普通の布じゃないのか、他にも防御方法が有るのか。装備は上下共に軽装、敢えて鎧を付けず機動力を上げ、回避に徹するタイプか。ドンナーを避けきった以上、生半可なレベルじゃねぇな。この距離で当てられるかどうか・・・)
ドンナーの引き金に指を掛けながら、ハジメは相対する敵の姿形を観察する。ハジメの構えるドンナーは人型の頭部に狙いを定めており、いつでも打ち抜ける状態にある。対する人型の持つ剣もハジメの首下に添えられており、何時でも首を跳ねられるだろう。
互いが互いの命に手を掛けている、ある種の
「ーーーもしかして、ハジメか?」
その声を聞いた瞬間、今度こそハジメの頭が真っ白になった。
「ーーーもしかして、ハジメか?」
社が友人の名を呼んだ瞬間、目の前の白髪隻腕の青年は驚きに目を見開いた。
(
ハジメの首元に当てていた刀を下ろし、〝影鰐〟の能力で顔に巻いていた影を戻した社は、身体中の疲れを吐き出す様に大きく息を吐いた。ハジメの捜索を諦めるつもりは最初から無かったが、既に死んでいる可能性を考えなかった訳でも無い。探し当てたのが友人の遺体だった、というオチも十二分にーーーと言うか、そちらの可能性の方が遥かに高かった為、こうしてまた会えたのは社にとって
最悪の展開すら予想していた中で、しかし友人は生きていてくれた。多少身なりが変わっている様ではあるが、異形になった婚約者を躊躇無く受け入れた社にとっては、その程度は気にもならない。最も困難と言える目的を達成した今、後はハジメと共に迷宮内から脱出するのみである。
「しっかし、お前さんも大分様変わりーーーハジメ?」
改めて気合を入れ直しつつ声を掛ける社だが、ハジメからの返答が無い。まさか怪我でもしているのかとハジメの身を心配した所で、
ジャキリ
「・・・俺の目がおかしくなったのでなければ、世間一般で言う〝銃口〟がコッチに向いてる様な気がするんだけど」
「・・・お前が、俺の知る宮守社である証拠が無い」
(そう来たかー・・・)
銃口を向けられながら至極真っ当な正論を聞かされ、思わず天を仰ぎたくなる社。チラリとハジメの方を見ると、眉間にシワを寄せながら此方を射殺さんばかりに睨んでいる。が、その瞳は僅かな迷いに揺れ、殺意も若干ながら
(まぁ、こんなとこにずっと居たら疑り深くもなるか。廃人になって無いだけマシだわな)
今の社が知る由も無いが、橋の崩落を命辛々生き延びたハジメを待っていたのは、強力な魔物達が
「確かにその通りだ。どうしたら信じてくれるよ?」
「・・・・・・俺の質問に答えろ。まずは、どうやって此処まで来れた。何故俺の居場所が分かった?」
ハジメが本気である事を感じ取った社の問いに、ハジメは少し考えてから質問を始めた。それを聞き、問答無用で攻撃されなかった事に安堵しながら、社は答えを返す。
「あの
「俺が居た、と。・・・〝悟り梟〟の能力は視力・視界の強化じゃなかったか?」
「あー・・・。実は俺も今まで知らなかったんだが、『
社の話を遮るハジメを見て、「そう言えば、『術式』の詳細は話してなかったっけな」と呟く社。その余りに呑気な様子に、ハジメは思わず頭を抱えたくなる。真面目に詰問している自分が馬鹿みたいに思えてくるものの、警戒を解くつもりはまだ無い。
「俺の『式神調』は、術者である俺と特定の相手が互いに向けている感情から式神を創り出す『術式』だ。で、ここで言う感情ってのは、友情とか敬意とか親愛とかの好感情に限定されている」
「・・・成る程。つまり〝悟り梟〟は俺と社の好感情から創られた、と」
「ピンポーン、正解でーす。だからまぁ、危機察知位なら出来ても可笑しくは無いんじゃないか。あと、ハジメに呼び捨てにされるのは何か新鮮だな」
「・・・・・・・・・そうかい」
ハジメから銃口と殺意を向けられているにも関わらず、社からは敵意を感じないどころか、自らの呼ばれ方を気にする始末である。余りの温度差にハジメは頭が痛くなる気分であった。左手が無事であれば、間違い無くこめかみを揉んでいただろう。
唯、これに関しては社を一概に責める事は出来ない。ハジメからして見れば目の前の相手は(疑いも晴れつつはあるが)自称宮守社である。それに比べて、社は目の前の相手が南雲ハジメであると確信している。そう判断した理由については色々あるが、最悪遺体すら見つからないと思っていた友人が、多少の問題こそあれど生きていたのだ。その喜びに比べれば、殺意を向けられるだとか銃を突き付けられるだとかは、社にとっては些細な問題であろう。
「それで?疑いは晴れそうか?」
「・・・何とも言えないな。お前がした話は筋は通ってはいたが、真実であると言う証明も出来ない」
「まぁ、そうだな。だから俺から提案がある」
「?」
ハジメの突っぱねる様な言葉を気にする様な素振りも無く、社はハジメに対して説得を試みる。
「俺が何者かが化けた偽物だと仮定して。一体どうやって偽物は宮守社の姿を取っているのか、って話になるよな。俺の知識ではこういう場合に考えられるのは主に2種類。幻覚を見せているタイプと、実際に変身しているタイプの2パターンだ。ここまでは良いな?」
「・・・ああ。」
「OK。で、前者を見破るのは比較的簡単だ。何せ幻覚だから、視覚以外で判断すれば良い。声でも感触でも良いし、話せるのならば本物しか知らない事を聞いても良い。【対象にとって都合の良い幻覚】を見せるタイプとかだったら、複数人で集まっているだけで見破れる場合すらある。なんせ、それぞれ都合なんて違うんだから、誰1人として同じ幻覚を見ないしな。」
「・・・問題は後者の場合か。」
「その通り。実際に変身するタイプは、精度にも寄るがその辺りを高確率で誤魔化せる。中でも厄介なのが、対象の記憶を読みとって変身するタイプだ。このタイプは
「・・・なら、どうするんだ。お前がそうで無いと、本物であるとどう証明する?」
「簡単な事さ、ハジメが知らず俺が知っている事で尚且つ、
「ハッ、そんな都合の良い話が「無論、あるんだなコレが」ーーー」
社の理論と理屈を聞き、本物の証明の難しさを鼻で笑うハジメ。だが、その言葉に被せる様に、社は難無く証明出来ると断言した。その自信に満ち溢れた言動に気圧されるかの様に息を呑むハジメを他所に、社は昔を思い出す様に語り出した。
「あれは、そう。中学2年生の冬。最高学年になるまで残り1ヶ月を切った時だった。お前さんと幸利、そして別の友ーーー友達の影響でPCゲームに興味を持っていた俺は、バイトで他県に出ていた際に立ち寄った古いゲーム屋で【月の出ぬ朝に】を見つけたんだ。ハジメも名前くらいは知ってるだろ?」
「は???」
茫然自失とは正にこの事だろう、ハジメは開いた口が塞がらなかった。今コイツは何て言った?【月の出ぬ朝に】?余りに予想外の言葉に自らの耳と、目の前の
「・・・確かに、知ってはいる。それが如何「新品未開封の初回限定生産版が定価で売られていたぞ、しかも2つ」何・・・だと・・・?」
何とか言葉を返したハジメを、更なる驚愕が襲った。【月の出ぬ朝に】は、元の世界で爆発的な人気を誇った
そんなマニア
「それを見つけた俺は、迷わず2つとも購入する事にした。で、その後特に問題無く買えはしたんだが、店を出た後に冷静になって、買った2つの処遇に悩んでな。取り敢えず1つはさっき言った別の友達に譲ったんだが、もう1つをどうしようかなー、と考えた訳だ」
「んなもん、普通に遊べば良いじゃねぇか。然るべき所で売れば高値で買い取ってくれもするだろ」
「いや、俺も最初はそうしようかと思ったんだけどな。そこでふと日付を見た時に俺は気付いたのさ。〝エイプリルフール〟が近い、と」
「・・・・・・」
社の口から出た〝エイプリルフール〟と言う単語。それを聞いたハジメは、生命の危機やそれに準ずる危険とはまた異なる非常に嫌な予感を感じとっていた。話の雲行きが怪しくなって来た事を自覚しながらも、ハジメは黙って社の話に耳を傾けていく。
「まさに天啓だった。悪魔的発想と言っても良い。俺はこの稀代の名作にして、ある意味でかなりの問題児と言われたこれを、4月1日に俺名義で友人宛に送れば非常に面白い事になるんじゃないか、と考えた。そして実行した。宛先は勿論お前さんだ、ハジメ」
「オイ」
社の一際ふざけた発言に、とうとうツッコミを入れてしまうハジメ。今までの会話の中でもツッコミどころは多々あったが、今の発言は群を抜いて如何しようも無いものだった。真面目な空気?シリアス?既に息絶えていた。
「待て待て待て!お前の話が本当だとして!俺の元にはそんなもの届いてないぞ!?本当に俺の所に送ったのか!?」
「うん。さて、ここで問題です。〝中学3年生という受験を控えた多感な時期の息子宛に、数少ない友人から「BL沼への第一歩」「BL登竜門」等と評される名作ゲームが送られて来たのを知ったご両親の反応はどんなものになるでしょうか?〟」
「ーーーーーーーーー」
南雲ハジメ、文句無しの絶句である。
(今コイツは何て言った?あのゲームをよりにもよって俺の両親が見つけた?マジで?嘘だろ?)
ハジメの脳内を、意味の無い言葉がグルグルと回っている。【月の出ぬ朝に】は深く練られたシナリオと様々な伏線、それらを綺麗に回収した感動のエンディングが高く評価された全年齢向けゲームである。が、見る人が見れば、男性同士の絡みが非常に多く散りばめられたゲームでもあった。それもその筈、作成に携わったシナリオライターがその筋ではかなりの大御所だったのだ。
それらの描写はかなり巧みに隠されており、匂わせるだけのものもあれば、シナリオの伏線になっているものもあった為、すぐに気付けたのはBL文化にズブズブの
さて、ここで最初の言葉を繰り返そう。このゲーム、全年齢対象である。全・年・齢・対・象、である。先程も言った様にこのゲームはシナリオが評価されたゲームであり、BL描写は余程慣れ親しんだ玄人で無ければ気付けないものではある。だが、その玄人達をして「下手なBLゲーより
そもそもの話、ビジュアルノベルゲームとは一言で言えば「絵や音声が付いている小説」である。故に、活字を追うのが苦手な小学生等の低年齢層の人間や、ゲーム自体を敬遠しがちの高年代の大人達を対象としていない。このゲームがターゲットにしているのは、中学生以上大学生以下の層、特に中学〜高校生を購買層に据えていたのだ。
子供から大人へ、或いは子供と大人の境界線上にいる様な学生達。そんな多感で、これからの一生すら決めかねない時期にいる人間が、このゲームをしたら如何なるか。それはもう(性癖が)歪む。盛大に歪む。玄人達からすれば、火を見るより明らかだったこの結果により、このゲームについたあだ名が「腐女子・腐男子量産機」「史上最も自然に性癖を捻じ曲げたゲーム」である。ーーーそして、このゲームに付けられたそれ等の評価を、方向性は違えども敏腕クリエイターであるハジメの両親が、知らない訳がないのだ。
「いや、俺も最初ハジメから何の連絡も無いなーって不思議に思ってたんだけどさ。流石に1週間しても反応が無いのはおかしいなーとハジメにそれと無く聞いてみたら、何も知らないって言われてな。もしやと思ってご両親に聞いてみたら、まさかまさかの大当たり。あ、誤解は解いておいたから安心してくれ。因みにゲーム自体は、お詫びの印に引き取ってもらったぞ」
愕然とするハジメを余所に、呆気らかんと笑いながら言う社。社によれば、ハジメの両親は最初
「じゃあ、あの当時2人が妙に優しかったり、俺を見る目が生暖かかったのはーーー」
「間違い無くコレが原因だな。唯、ご両親もあのゲームの価値が分かっていたから、流石に俺に事情を聞くまでは取り敢えず預かっとこう、って事になったらしいけどな」
ワナワナと震えるハジメに、補足する様に話す社。下手をすれば値段にして6桁に届き得るモノを、そう簡単に受け取る訳にもいかない、というのがハジメの両親の意見だった。尚、息子の性癖が捻じ曲がる可能性については目を瞑ったそうな。息子を思い遣る気持ちと良識を持ちつつも、色々な意味で大らかな人達だった。
「さて、この話こそ俺が本物の宮守社であるという証明になると思うんだけど、どうだろうか。ハジメが知らず、俺だけが知っていて且つ、お前さんが納得出来るだけの内容だと思うんだがな?」
「・・・そうだな、確かに納得したよ。お前は、きっと本物の宮守社だろう」
ガシッ バチバチバチッ
「・・・ハジメさんや。そう言いつつ、俺の腕を強く掴んでいるのは何故なのかな?後、今にも電流が流れそうな不穏な音がするのは俺の気のせいかな?」
さもやり遂げたと言わんばかりにドヤ顔をかました社に対して、ハジメはドンナーをホルスターにしまうや否や、目にも止まらぬ速さで社の腕を掴むと、そのまま握りしめた。自分の話を信じてもらえた喜びも束の間、不穏な空気を感じた社は、俯いたままで表情が読めないハジメに早口で疑問を投げかける。
「あぁ、間違い無い。ーーーこのタイミングで、こんな馬鹿話を暴露する様な奴が偽物の訳ねぇからなぁ!!!」
ミシミシと音が聞こえる程に社の腕を強く握り締めながら叫ぶハジメ。ハジメ自身は他者の
「あっれぇ!?そういう信じられ方!?ていうか、ハジメってばキレてーーー」
「うるせぇ、死ねぇ!!」
ヴァリヴァリヴァリ!!!
「ギャアアアァァァ!?」
ハジメの腕を伝い、紅い電撃が社を襲う。一時静寂に包まれていた迷宮内に、電撃が炸裂する音と共に情け無い叫び声が響き渡ったのだった。
恐らくありふれ二次創作史上で、ここまでどうしようもない合流は無いのではなかろうか。
追記
誤字報告してくれた方、有り難うございました。