ありふれない怨霊こそ世界最愛   作:白紙

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36.各々の心情

 ワイワイと騒ぎつつも向かって来る魔物達を片っ端から薙ぎ倒していたハジメ達は、遂にライセン大峡谷から脱出できる場所にたどり着く。〝(さと)(ふくろう)〟と〝遠見〟の技能を併用した社の目には、岸壁に沿う形で壁を削って作られた階段が映っていた。階段のある岸壁の先には樹海も薄らと見え、ライセン大峡谷の出口から徒歩で半日くらいの場所が樹海になっている様だ。と、同じく〝遠見〟で樹海を見ていたハジメに、シアが不安そうに話しかけてきた。

 

「帝国兵はまだいるでしょうか?」

 

「ん?どうだろうな。もう全滅したと諦めて帰ってる可能性も高いが・・・。」

 

「そ、その、もし、まだ帝国兵がいたら・・・お2人は・・・ハジメさんはどうするのですか?」

 

「?どうするって何が?」

 

 質問の意図がわからず首を傾げるハジメに、意を決したようにシアが尋ねる。周囲の兎人族も聞きウサミミを立てているようだ。

 

「今まで倒した魔物と違って、相手は帝国兵・・・人間族です。ハジメさんや社さんと同じ。・・・敵対できますか?」

 

「残念ウサギ、お前、未来が見えていたんじゃないのか?」

 

「はい、見ました。・・・ハジメさんの姿だけでしたが、確かに帝国兵と相対していました・・・。」

 

「だったら・・・何が疑問なんだ?」

 

「疑問というより確認です。帝国兵から私達を守るということは、人間族と敵対することと言っても過言じゃありません。同族と敵対しても本当にいいのかと・・・。」

 

 シアの言葉に周りの兎人族達も神妙な顔付きでハジメ達を見ている。小さな子供達はよく分からないとった顔をしながらも、不穏な空気を察してか大人達とハジメを交互に忙しなく見ている。しかしハジメと社は一度顔を見合わせると、そんなシリアスな雰囲気などまるで気にした様子もなくあっさり言ってのけた。

 

「「それがどうかしたの(か)?」」

 

「えっ?」

 

 疑問顔を浮かべるシアに、ハジメは特に気負った様子もなく世間話でもするように話を続けた。

 

「だから、人間族と敵対することが何か問題なのかって言ってるんだ。」

 

「そ、それは、だって同族じゃないですか・・・。」

 

「お前らだって、同族に追い出されてるじゃねぇか。」

 

「それは、まぁ、そうなんですが・・・。」

 

「大体、根本が間違っている。」

 

「根本?」

 

 さらに首を捻るシア。周りの兎人族も疑問顔だ。

 

「いいか?俺はお前等が樹海探索に便利だから雇った。んで、それまで死なれちゃ困るから守っているだけ。断じてお前等に同情してとか、義侠心に駆られて助けているわけじゃない。まして、今後ずっと守ってやるつもりなんて毛頭ない。忘れたわけじゃないだろう?」

 

「うっ、はい・・・覚えてます・・・。」

 

「だから、樹海案内の仕事が終わるまでは守る。自分のためにな。それを邪魔するヤツは魔物だろうが人間族だろうが関係ない。道を阻むものは敵、敵は殺す。それだけのことだ。なぁ?」

 

「そうだな。俺も概ね同意見だ。」

 

「な、なるほど・・・。」

 

 何ともらしい考えに、苦笑いしながら納得するシア。〝未来視〟で帝国と相対するハジメを見たといっても、未来というものは絶対ではないから実際はどうなるか分からない。見えた未来の確度は高いが、万一帝国側につかれては今度こそ死より辛い奴隷生活が待っている。表には出さないが〝自分のせいで〟という負い目があるシアは、どうしても確認せずにはいられなかったのだ。

 

「はっはっは、分かりやすくていいですな。樹海の案内はお任せくだされ。」

 

 カムが快活に笑う。下手に正義感を持ち出されるよりもギブ&テイクな関係の方が信用に値したのだろう。その表情に含むところは全くなかった。

 

 

 

 一行は階段に差し掛かるとハジメを先頭に順調に登っていく。帝国兵からの逃亡を含めて、殆ど飲まず食わずだったはずの兎人族だが、その足取りは軽かった。亜人族が魔力を持たない代わりに身体能力が高いというのは嘘ではないようだ。

 

〝社。帝国兵の相手は俺がする。〟

 

 と、その最中。先頭にいたハジメから、不意打ち(バックアタック)警戒の為最後尾にいた社に向かって〝念話〟が飛んだ。唐突なハジメの言葉を不思議に思い、疑問を返す社。

 

〝それは会話と戦闘、どっちの事を言ってるんだ?〟

 

〝どっちもだ。お前は流れ弾に備えて、兎人族達を守っててくれ。〟

 

〝・・・理由は?〟

 

〝人間を相手にした時に必要な、ドンナーや技能の出力の調整とーーー人を殺した時に俺が何を思うかの確認だ。〟

 

 淡々と。感情の籠っていない声で、酷く端的な内容が聞こえて来る。ハジメは冷静なフリをしているのか、或いは本当に何とも思っていないのか。表情も見えない為、余計に判断が難しかった。が、どちらであれ社の返す答えは変わらない。

 

〝分かった。〟

 

〝・・・反対しないのか。〟

 

 社の答えは、ハジメにとって予想外のものだったらしい。先程とは打って変わって分かりやすく驚いているハジメに苦笑しつつ、社は自分の考えを話す。

 

〝思うところが無いとは言わない。だが、状況はそれを許してくれないだろ。お前さんが心から決めた事なら異論は無いさ。人殺し、と言う点では俺も変わらないしな。〟

 

 社が力を求め呪術師になったのは、■■の呪いを解く事の他に、周りの人間に降りかかる理不尽を跳ね除ける為と言う理由があった。その一環として、人に仇なす者達を殺した事もあった。友人が手を汚さなければならない事態も理不尽(その中)に含まれはするが、それと友人の覚悟を踏み躙るかはまた別問題だろう。必要に迫られたからとは言え、ハジメは戦うことを自分で選んだのだから。

 

〝・・・悪いな。〟

 

〝言いっこなしだろ。さぁ、もう頂上だ。そっちは任せたぞ。〟

 

〝ああ。そっちもな。〟

 

 各々のやる事を決めあった2人は、自らの仕事を果たす為に気合を入れる。そして遂に階段を上りきり、ハジメ達はライセン大峡谷からの脱出を果たす。登りきった崖の上、そこには・・・。

 

「おいおい、マジかよ。生き残ってやがったのか。隊長の命令だから仕方なく残ってただけなんだがなぁ~。こりゃあ、いい土産ができそうだ。」

 

 30人近くの帝国兵がたむろしていた。周りには大型の馬車数台と、野営跡が残っている。全員がカーキ色の軍服らしき衣服と共に剣や槍、盾を携えており、ハジメ達を見るなり驚いた表情を見せた。だがそれも一瞬のこと。直ぐに喜色を浮かべ、品定めでもするように兎人族を見渡した。

 

「小隊長!白髪の兎人もいますよ!隊長が欲しがってましたよね?」

 

「おお、ますますツイテルな。年寄りは別にいいが、あれは絶対殺すなよ?」

 

「小隊長ぉ~、女も結構いますし、ちょっとくらい味見してもいいっすよねぇ?こちとら、何もないとこで3日も待たされたんだ。役得の1つや2つ大目に見てくださいよぉ~。」

 

「ったく。全部はやめとけ。2、3人なら好きにしろ。」

 

「ひゃっほ~、流石、小隊長!話がわかる!」

 

(モラル低っ。ドン引きする位ケダモノじゃん。穏便に事を済ますのは無理そうだな。・・・どうせ殺すなら、こっちの方が後腐れなくて良いか。)

 

 帝国兵の言葉に、呆れ半分軽蔑半分の表情になりながらも物騒な事を考える社。世界は変われど、こう言う輩は消える事は無いらしい。帝国兵は兎人族達を完全に獲物としてしか見ていないのか、下卑た笑みを浮かべ舐めるような視線を兎人族の女性達に向けていた。

 

 帝国兵達が好き勝手に騒いでいると、兎人族にニヤついた笑みを浮かべていた小隊長と呼ばれた男が、ようやくハジメ達の存在に気付く。

 

「あぁ?お前誰だ?兎人族・・・じゃあねぇよな?」

 

「ああ、人間だ。」

 

「・・・兎人族の人達。恐らく戦闘になるので、ハジメが帝国兵達と話している間に俺の後ろに下がって下さい。」

 

 ハジメが代表して小隊長らしき人物と会話している内に、社は兎人族達に指示を出す。帝国兵の視線に怯えて震えていた兎人族だったが、社の声にハッとなると直ぐに指示に従った。

 

「はぁ~?なんで人間が兎人族と一緒にいるんだ?しかも峡谷から。あぁ、もしかして奴隷商か?情報掴んで追っかけたとか?そいつぁまた商売魂がたくましいねぇ。まぁ、いいや。そいつら皆、国で引き取るから置いていけ。」

 

 勝手に推測し勝手に結論づけた小隊長は、さも自分の言う事を聞いて当たり前、断られることなど有り得ないと信じきった様子で、そうハジメに命令した。ーーー当然、ハジメが従うはずもない。

 

「断る。」

 

「・・・今、何て言った?」

 

「断ると言ったんだ。こいつらは今は俺のもの。あんたらには1人として渡すつもりはない。諦めてさっさと国に帰ることをオススメする。」

 

 聞き間違いかと問い返し、返って来たのは不遜な物言い。小隊長の額に青筋が浮かぶ。

 

「・・・小僧、口の利き方には気をつけろ。俺達が誰か分からないほど頭が悪いのか?」

 

「十全に理解している。あんたらに頭が悪いとは誰も言われたくないだろうな。」

 

 ハジメの言葉にスっと表情を消す小隊長。周囲の兵士達も剣呑な雰囲気でハジメ達を睨んでいる。その時、小隊長がハジメの後ろから出てきたユエに気がついた。幼い容姿でありながら纏う雰囲気に艶があり、えもいわれぬ魅力を放っている美貌の少女に一瞬呆けるものの、ハジメの服の裾をギュッと握っていることからよほど近しい存在なのだろうと当たりをつけ、再び下碑た笑みを浮かべた。

 

「あぁ~なるほど、よぉ~くわかった。てめぇが唯の世間知らず糞ガキだってことがな。ちょいと世の中の厳しさってヤツを教えてやる。くっくっく、そっちの嬢ちゃんえらい別嬪じゃねぇか。てめぇの四肢を切り落とした後、目の前で犯して、奴隷商に売っぱらってやるよ。」

 

「あ、死んだなこりゃ。・・・兎人族の皆さんは子供達の目と耳を塞いであげて下さい。心臓が弱い人も同様です。今から非常に教育に良くない絵面になるので。」

 

 これから何が起こるか確信した社は、兎人族達に再び指示を出した。小隊長の言葉を聞いたハジメは眉をピクリと動かし、ユエは無表情でありながら誰でも分かるほど嫌悪感を丸出しにしている。目の前の男が存在すること自体が許せないと言わんばかりに、ユエが右手を掲げよう(魔法を放とう)とした。が、それを制止するハジメ。訝し気なユエを尻目にハジメが最後の言葉をかける。

 

「つまり敵ってことでいいよな?」

 

「あぁ!?まだ状況が理解できてねぇのか!てめぇは、震えながら許しをこッ!?」

 

 ドパンッ!!

 

 苛立ちを表にして怒鳴る小隊長だったが、その言葉が最後まで言い切られるより早くにその頭部が砕け散った。眉間に大穴を開けながら後頭部から脳髄を飛び散らせ、そのまま後ろに弾かれる様に倒れる小隊長。何が起きたのかも分からず呆然とその様子を見ている兵士達に、躊躇無く追い打ちが掛けられる。

 

 ドパァァンッ!

 

 1発しか聞こえなかった銃声に反し、6人の帝国兵の頭部が吹き飛んだ。何の事は無い、ハジメの射撃速度が早すぎて射撃音が1発分しか聞こえなかっただけであり、実際にはしっかり6発撃ち切っている。

 

「ーーーあらゆる害意は塞がれて、此方側には来ること(あた)わず。」

 

 ハジメが攻撃を開始するのと同時、社は〝岐亀〟を呼び出すと結界を展開した。拳程の大きさをした正六角形の結界は、鱗状に広がる様に増殖すると、兎人族達を丸ごと包み込む様に半円の形に展開した。

 

 一方、突然小隊長を含め仲間の頭部が弾け飛ぶという異常事態に、兵士達は半ばパニックに陥るものの、直ぐ様前衛と後衛に分かれてハジメ達に武器を向けた。過程は分からなくても原因は分かっているが故の、中々に迅速な行動だ。流石は帝国兵、実力は本物らしい。が、ハジメ達に比べれば、その程度の実力は誤差でしか無い。彼我の実力差は、そのまま一方的な蹂躙劇へと変わっていく。

 

 ドガァンッ!!

 

 魔法発動の詠唱を開始した後衛組の足元に転がってきた黒い筒状の物体が、轟音と共に炸裂した。燃焼粉を詰め込んだ〝手榴弾〟ーーー金属片が仕込まれている為、〝破片手榴弾〟でもあるーーーの爆発である。地球産と比べても威力が段違いなのは、燃焼石という異世界の不思議鉱物をふんだんに使用しているからだ。

 

 この一撃で密集していた10人程の帝国兵が即死、無いし四肢の欠損か内臓破裂を負って絶命。更に7人程が巻き込まれ苦痛に呻き声を上げた。背後からの爆風に思わずたたらを踏んだ突撃中の前衛は、何事かと背後を振り向いてしまった直後に頭部を撃ち抜かれて崩れ落ちた。血飛沫が舞い、それを頭から被った生き残りの1人の兵士が、力を失ったようにその場にへたり込む。

 

 彼等は決して弱い部隊ではない。むしろ上位に勘定しても文句が出ないくらいには精鋭だ。それがほんの一瞬で殲滅されたのである。心が折れるのも当然と言える。そんな彼の耳に、これだけの惨劇を作り出した者が発するとは思えないほど飄々とした声が聞こえた。

 

「うん、やっぱり、人間相手だったら〝纏雷〟はいらないな。通常弾と炸薬だけで十分だ。燃焼石ってホント便利だわ。」

 

「正直この結果は見えてたろー。手榴弾まで使ったのは勿体無い気もするが。」

 

「お前、 ラストエリクサー症候群(貴重な薬最後まで使えないタイプ)だろ。」

 

「何故バレたし。」

 

 戦いーーーと言えるかは疑問符が付くーーーが終わったのを見計らって、社はハジメの方に近づいて行く。ハジメはドンナーで肩をトントンと叩くと、軽口を返しながらゆっくりと兵士に歩み寄る。黒いコートを靡かせて死を振り撒き歩み寄るその姿は、さながら死神だ。少なくとも生き残りの兵士には、そうとしか見えなかった。

 

「ひぃ、く、来るなぁ!い、嫌だ。し、死にたくない。だ、誰か!助けてくれ!」

 

 命乞いをしながら這いずるように後退る兵士。その顔は恐怖に歪み、股間からは液体が漏れてしまっている。ハジメは冷めた目でそれを見下ろし、おもむろに銃口を兵士の背後に向けると連続して発砲した。

 

「ひぃ!」

 

「おー、全弾命中(フルヒット)。残るはコイツだけか。」

 

 兵士が身を竦めるが、その体に衝撃はない。ハジメが撃ったのは、手榴弾で重傷を負っていた背後の兵士達だからだ。社の言葉に生き残りの兵士が恐る恐る背後を振り返り、今度こそ隊が全滅したことを悟った。と、振り返ったまま硬直している兵士の頭にゴリッと銃口が押し当てられる。再びビクッと体を震わせた兵士は、醜く歪んだ顔で再び命乞いを始めた。

 

「た、頼む!殺さないでくれ!な、何でもするから!頼む!」

 

「そうか?なら、他の兎人族がどうなったか教えてもらおうか。結構な数が居たはずなんだが・・・全部、帝国に移送済みか?」

 

 ハジメが質問したのは、100人以上居たはずの兎人族の移送にはそれなりに時間がかかるだろうから、まだ近くにいて道中でかち合うようなら序でに助けてもいいと思ったからだ。帝国まで移送済みなら、わざわざ助けに行くつもりは毛頭なかったが。

 

「・・・は、話せば殺さないか?」

 

「お前、自分が条件を付けられる立場にあると思ってんのか? 別に、どうしても欲しい情報じゃあないんだ。今すぐ逝くか?」

 

「ま、待ってくれ!話す!話すから!・・・多分、全部移送済みだと思う。人数は絞ったから・・・。」

 

 〝人数を絞った〟。要するに、老人など売れそうにない兎人族は殺したということだろう。兵士の言葉に悲痛な表情を浮かべる兎人族達。社はスッと目を細め、ハジメは兎人族達をチラッとだけ見やり、直ぐに視線を兵士に戻すと瞳に殺意を宿した。

 

「待て!待ってくれ!他にも何でも話すから!帝国のでも何でも!だから!」

 

 ドパンッ!

 

 兵士の必死な命乞いへの返答は、1発の銃弾だった。息を呑む兎人族達。あまりに容赦のないハジメの行動に完全に引いているようである。その瞳には若干の恐怖が宿っていた。それはシアも同じだったのか、おずおずとハジメに尋ねた。

 

「あ、あのさっきの人は見逃してあげても良かったのでは・・・。」

 

 はぁ?という呆れを多分に含んだ視線を向けるハジメに「うっ」と唸るシア。自分達の同胞を殺し、奴隷にしようとした相手にも慈悲を持つようで、兎人族とはとことん温厚というか平和主義らしい。ハジメが言葉を発しようとしたが、その機先を制するようにユエが反論した。

 

「・・・一度、剣を抜いた者が、結果、相手の方が強かったからと言って見逃してもらおうなんて都合が良すぎ。」

 

「そ、それは・・・。」

 

「・・・そもそも、守られているだけのあなた達がそんな目をハジメに向けるのはお門違い。」

 

「・・・。」

 

(ユエさんの怒りもごもっともではある。価値観の違いはデカイな。・・・最も、()()()()()()()()()()()()()()。)

 

 ユエの静かな怒りに兎人族達がバツが悪そうな表情をしている最中、社は唯一の例外の方に目を向ける。ただ1人、アルだけはハジメに対して負の感情を向けず、先程からずっと帝国兵の残骸を見つめ続けていた。

 

「ふむ、ハジメ殿、申し訳ない。別に貴方に含むところがあるわけではないのだ。ただ、こういう争いに我らは慣れておらんのでな・・・少々、驚いただけなのだ。」

 

「ハジメさん、すみません。」

 

 シアとカムが代表して謝罪するが、ハジメは気にしてないという様に手をヒラヒラと振ると、無傷の馬車や馬のところへ行き、兎人族達を手招きする。樹海まで徒歩で半日くらいかかりそうなので、せっかくの馬と馬車を有効活用しようというわけだ。

 

「ハイハイハーイ!馬車は四輪で引いて、俺が二輪に乗りつつ先行するのが良いと思いまーす!」

 

「どんだけ乗りてぇんだよ。却下だ却下。魔力にも限りがあるんだ。」

 

「えー。」

 

 暗くなった雰囲気を吹き飛ばす様に、社が努めて明るい声で発言する。その提案をすげ無く拒否したハジメは、魔力駆動四輪を〝宝物庫〟から取り出して馬車に連結させると、馬に乗る者と分けて樹海へと進路をとった。無残な帝国兵の死体は、ユエが風の魔法で谷底に落として処理し、後には彼等が零した血だまりだけが残されたのだった。

 

 

 

 

 

 七大迷宮の一つにして、深部に亜人族の国フェアベルゲンを抱える【ハルツィナ樹海】を前方に見据えて、ハジメが魔力駆動四輪で牽引する大型馬車2台と数十頭の馬が、それなりに早いペースで平原を進んでいた。

 

 四輪はハジメを運転手としてユエが助手席に、後部座席にはシアとアル、見張りの為荷台に社が乗っている。当初、シアには馬車に乗るように言ったのだが、断固として四輪に乗る旨を主張し言う事を聞かなかった。ユエが何度叩き落としても、ゾンビのように起き上がりヒシッとしがみつくので、遂にユエの方が根負けしたという事情があったりする。アルに関しては、姉の付き添いで乗っていると言う面が強かった。シアを1人にするのが心配だったのだろう。どちらが姉だかわからない姉妹である。

 

 シアとしては、初めて出会った〝同類〟である3人と、もっと色々話がしたい様だった。後ろの座席から運転席のハジメにしがみつき上機嫌な様子のシア。果たして、シアが気に入ったのは四輪の座席かハジメの後ろか・・・。場合によっては手足をふん縛って引きずってやる!とユエは内心決意していた。

 

「・・・ハジメ、どうして一人で戦ったの?」

 

「ん?」

 

 ユエが言っているのは、帝国兵との戦いのことだろう。あの時、魔法を使おうとしたユエを制止して、ハジメは1人で戦うことを選んだ。ユエが参加しようがすまいが結果は〝瞬殺〟以外には有り得なかっただろうが、どうも帝国兵を倒した後のハジメは物思いに耽っているような気がして、ユエとしては気になったのだ。

 

「ん~、まぁ、ちょっと確かめたいことがあってな・・・。」

 

「・・・確かめたいこと?」

 

 ユエが疑問顔で聞き返す。シアも座席越しに興味深そうな眼差しを向けており、アルも窓の外を見つつもしっかりと聞き耳を立てている様だ。

 

「ああ。一言で言えば〝実験〟だ。レールガンやら技能やらの出力調整とーーー俺が殺人に躊躇いを覚えないかどうかの、な。」

 

 先に社にも伝えていた通り、ハジメが単独で全ての帝国兵を相手取った理由は2つ。自身が持つ力の調整と、殺人を経験した際に変調が出るかどうかを確かめる為である。

 

 前者に関しては、主に周囲への被害を鑑みた時の予防策のためだ。街中等で戦闘になった際、暴漢相手にレールガンを放とうものなら間違いなく周辺にも被害は出る。敵は殺しても良いが、流石に何の関係もない人々を無差別に殺す気は無い。流石のハジメもそこまで堕ちるつもりは無かった。なので、どの程度の炸薬量が適切か実地で計る必要があったのである。実験の甲斐あって結果は上々。威力の微調整にも具体的な見当がついた。

 

 後者に関しては、自分が殺人に躊躇いを覚えないか確かめる為だった。すっかり変わってしまったハジメだが、人殺しの経験は未だ無かった。それ故に、殺す前も殺した後も動揺せずにいられるか試したのである。結果は〝特に何も感じない〟だった。やはり、敵であれば容赦なく殺すという価値観は強固に染み付いている様だ。

 

「とまぁ、初の人殺しだったわけだが、特に何も感じなかったから、随分と変わったもんだと、ちょっと感傷に浸ってたんだよ・・・。」

 

「・・・そう・・・大丈夫?」

 

「ああ、何の問題もない。これが今の俺だし、これからもちゃんと戦えるってことを確認できて良かったさ。」

 

 あれだけ容赦なかったハジメが、実は初めて人を殺したという事実に内心驚くハウリア姉妹。同時にシアは、ハジメの僅かな変化に気がついたユエの洞察力(おそらくハジメ限定)にも感心していた。どこか寂しげに笑うハジメの手を、慰めるように掴んだユエ。甘い空気が漂う中、ふと思い出したようにユエが社に聞いた。

 

「・・・社は、もしかして知ってた?」

 

「まあね。峡谷から出る直前に、ハジメから〝念話〟で釘刺されてた。」

 

「むぅ・・・社だけ・・・。」

 

 あっけらかんとした社の言葉に、どことなく不満気なユエ。別に社の事を責めるつもりは毛頭無い。無いがそこはそれ、ユエにとっては社も信頼できる仲間で有る為、自分だけ蚊帳の外なのは気に食わなかった様子。そんなユエの内心を見抜いた様に、ハジメと社は苦笑した。

 

「そう膨れなさんな。俺は元々敵を殺す(そういう)のを率先してやる立ち位置だったから、ハジメが予め伝えてたってだけさ。元の世界(その辺り)の事情も、ハジメを交えておいおい話そうか。」

 

「・・・なら、白崎って人物について、詳しく。」

 

「オイ馬鹿止めろ2人共!」

 

 社のフォローに乗っかったユエの発言に、今度はハジメが焦りだす。疚しい事など無いと断言できるはずのハジメだが、この話題(白崎関連)になると何故か背筋が寒くなる気がしていた。

 

 途端にワイワイと騒がしくなる車内。ここだけ見るのであれば、先程の蹂躙劇を引き起こした人物が居るとは到底思えないだろう。それを眺めていたシアは、改めて自分は3人の事を何も知らないのだなぁと少し寂しい気持ちになる。

 

「あの、あの!ハジメさん達の事、教えてくれませんか?」

 

「?俺達の事は話したろ?」

 

「いえ、能力とかそういう事ではなくて、なぜ、奈落?という場所にいたのかとか、旅の目的って何なのかとか、今まで何をしていたのかとか、お三方自身の事が知りたいです。」

 

「・・・聞いてどうするの?」

 

「どうするというわけではなく、ただ知りたいだけです。・・・私、この体質のせいで家族には沢山迷惑をかけました。小さい時はそれがすごく嫌で・・・もちろん、皆はそんな事ないって言ってくれましたし、今は自分を嫌ってはいませんが・・・それでも、やっぱり、この世界のはみだし者のような気がして・・・だから、私、嬉しかったのです。お三方に出会って、私()みたいな存在は他にもいるのだと知って、はみだし者なんかじゃないって思えて・・・勝手ながら、そ、その、な、仲間みたいに思えて・・・だから、その、もっとお三方の事を知りたいといいますか・・・何といいますか・・・。」

 

「・・・・・・・・・姉サン。」

 

「「「・・・・・・・・・。」」」

 

 シアは話の途中で恥ずかしくなってきたのか、次第に小声になってハジメの背に隠れるように身を縮こまらせた。そう言えば出会った当初も随分嬉しそうにしていたとハジメ達3人は思い出し、シアの様子に何とも言えない表情をする。あの時はユエの複雑な心情により有耶無耶になった挙句、すぐハウリア達を襲う魔物と戦闘になったので、谷底でも魔法が使える理由など簡単な事しか話していなかった。きっとシアは、ずっと気になっていたのだろう。

 

 確かにこの世界で、魔物と同じ体質を持った亜人など受け入れがたい存在だろう。仲間意識を感じてしまうのも無理はない。かと言ってハジメやユエの側が、シアに対して直ちに仲間意識を持つ訳ではない。が・・・樹海に到着するまで、まだ少し時間がかかる。特段隠すことでもないので、暇つぶしにいいだろうとハジメ達3人はこれまでの経緯を語り始めた。その結果ーーー。

 

「うぇ、ぐすっ・・・ひどい、ひどすぎまずぅ~、ハジメさんもユエさんも社さんもがわいぞうですぅ~。そ、それ比べたら、私はなんでめぐまれて・・・うぅ~、自分がなざけないですぅ~。」

 

 号泣した。滂沱の涙を流しながら「私は、甘ちゃんですぅ」とか「もう、弱音は吐かないですぅ」と呟いている。そしてさり気なく、座席越しにハジメの外套で顔を拭いている。どうやら自分は大変な境遇だと思っていたら、ハジメ達が自分以上に大変な思いをしていたことを知り、不幸顔していた自分が情けなくなったらしい。しばらくメソメソしていたシアだが、突如、決然とした表情でガバッと顔を上げると拳を握り元気よく宣言した。

 

「ハジメさん!ユエさん!社さん!私、決めました!お3方の旅に着いていきます!これからは、このシア・ハウリアが陰に日向にお3方を助けて差し上げます!遠慮なんて必要ありませんよ。私達は仲間なんですから、共に苦難を乗り越え望みを果たしましょう!」

 

「ちょっ、姉サン!?」

 

 勝手に盛り上がっているシアに、驚きの声を上げたアル。一方、ハジメとユエは実に冷めた視線を送り、社に到っては何一つ聞かなかった風を装っていた。結構な塩対応だった。

 

「現在進行形で守られている脆弱ウサギが何言ってんだ?完全に足でまといだろうが。」

 

「・・・さり気なく『仲間みたい』から『仲間』に格上げしている・・・厚皮ウサギ。」

 

「な、何て冷たい目で見るんですか・・・社さんは反応すらしてくれないし・・・心にヒビが入りそう・・・というかいい加減、ちゃんと名前を呼んで下さいよぉ。」

 

 意気込みに反して、冷めた反応を返され若干動揺するシア。だが、そんな彼女に追い討ちがかかる。

 

「・・・お前、単純に旅の仲間が欲しいだけだろう?」

 

「!?」

 

 正鵠を射たハジメの言葉に、シアの体がビクッと跳ねる。

 

「一族の安全が一先ず確保できたら、お前、アイツ等から離れる気なんだろ?そこにうまい具合に〝同類〟の俺らが現れたから、これ幸いに一緒に行くってか?そんな珍しい髪色の兎人族なんて、1人旅出来るとは思えないしな。」

 

「・・・あの、それは、それだけでは・・・私は本当にお三方を・・・。」

 

 図星だったのか、しどろもどろになるシア。シアは既に決意していた。ハジメの協力を得て一族の安全を確保したら、自らは家族の元を離れると。自分がいる限り、一族は常に危険にさらされる。今回も多くの家族を失った。次は、本当に全滅するかもしれない。それだけは、シアには耐えられそうになかった。

 

「・・・()()()()()が言うのも難だケド、義父さん達は反対すると思うよ。それは姉サンが1番よく分かってるでしょ。」

 

「・・・それでも。これ以上一緒には居られません。」

 

 シア自身の考えが一族の意に反する、ある意味裏切りとも言える行為だとは分かっている。だが〝それでも〟と決めたのだ。最悪1人でも旅に出るつもりだったが、それでは心配性の家族は追ってくる可能性が高い。しかし、圧倒的強者であるハジメ達に恩返しも含めて着いて行くと言えば、割りかし容易に一族を説得できて離れられると考えたのだ。見た目の言動に反してシアは、今この瞬間も〝必死〟なのである。

 

 もちろん、シア自身がハジメ達に強い興味を惹かれているというのも事実だ。ハジメの言う通り〝同類〟であるハジメ達に、シアは理屈を超えた強い仲間意識を感じていた。一族のことも考えると、シアにとってハジメ達との出会いは正に〝運命的〟だったのだ。

 

(家族の為、か。その思いには心底共感出来るんだけどなぁ・・・。)

 

「別に、お前を責めているわけじゃない。だがな、変な期待はするな。俺達の目的は七大迷宮の攻略なんだ。恐らく、奈落と同じで本当の迷宮の奥は化物揃いだ。お前じゃ瞬殺されて終わりだよ。だから、同行を許すつもりは毛頭ない。」

 

「・・・・・・。」

 

(まぁ、ハジメの言った事が全てだわな。)

 

 ハジメの全く容赦ない言葉に、シアは落ち込んだように黙り込んでしまった。ハジメもユエも社も、特に気にした様子が見えないあたりが更に追い討ちをかける。シアとアルはそれからの道中、大人しく四輪の座席に座りながら、何かを考え込むように難しい表情をしていた。

 

 それから数時間して、遂に一行は【ハルツィナ樹海】と平原の境界に到着した。樹海の外から見る限り、ただの鬱蒼とした森にしか見えないのだが、一度中に入ると直ぐさま霧に覆われるらしい。

 

「それでは、ハジメ殿、ユエ殿、社殿。中に入ったら決して我らから離れないで下さい。お三方を中心にして進みますが、万一はぐれると厄介ですからな。それと行き先は森の深部、大樹の下で宜しいのですな?」

 

「ああ、聞いた限りじゃあ、そこが本当の迷宮と関係してそうだからな。」

 

 カムがハジメに対して樹海での注意と行き先の確認をする。カムが言った〝大樹〟とは、【ハルツィナ樹海】の最深部にある巨大な一本樹木で、亜人達には〝大樹ウーア・アルト〟と呼ばれており、神聖な場所として滅多に近づくものはいないらしい。峡谷脱出時にカムから聞いた話だ。

 

 ハジメ達は当初【ハルツィナ樹海】そのものが大迷宮かと思っていたのだが、奈落の底の魔物と同レベルの魔物が彷徨っている魔境に、亜人達が住める筈も無い。なので【オルクス大迷宮】と同じく真の迷宮の入口が何処かにあるのだろうと推測した。そして、カムから聞いた〝大樹〟が怪しいと踏んだのである。カムはハジメの言葉に頷くと、周囲の兎人族に合図をしてハジメ達の周りを固めた。

 

「ハジメ殿、出来る限り気配は消してもらえますかな。大樹は神聖な場所とされておりますから、あまり近づくものはおりませんが、特別禁止されているわけでもないので、フェアベルゲンや他の集落の者達と遭遇してしまうかもしれません。我々は、お尋ね者なので見つかると厄介です。」

 

「ああ、承知している。俺もユエも社も、ある程度なら隠密行動は出来るから大丈夫だ。」

 

 ハジメはそう言うと社と共に〝気配遮断〟を使う。ユエも、奈落で培った方法で気配を薄くした。

 

「ッ!?これは、また・・・ハジメ殿、社殿。出来ればユエ殿くらいにしてもらえますかな?」

 

「ん?・・・こんなもんか?」/「此方も調整しましたが、如何(いかが)ですか?」

 

「はい、結構です。さっきのレベルで気配を殺されては、我々でも見失いかねませんからな。いや全く、流石ですな!」

 

 元々、兎人族は全体的にスペックが低い分、聴覚による索敵や気配を断つ隠密行動に秀でている。地上にいながら奈落で鍛えたユエと同レベルと言えば、その優秀さが分かるだろうか。しかしハジメと社の〝気配遮断〟は更にその上を行く。普通の場所なら一度認識すればそうそう見失うことはないが、樹海の中では兎人族の索敵能力を以てしても見失いかねないハイレベルなものだった。

 

 カムは人間族でありながら自分達の唯一の強みを凌駕され、もはや苦笑いだ。隣では、何故かユエが自慢げに胸を張っている。シアはどこか複雑そうだった。ハジメの言う実力差を改めて示されたせいだろう。

 

「それでは、行きましょうか。」

 

 カムの号令と共に準備を整えた一行は、カムとシアを先頭に樹海へと踏み込んだ。道ならぬ道を突き進むと、直ぐに濃い霧が発生し視界を塞いでくる。しかし、カムの足取りに迷いは全くなかった。現在位置も方角も完全に把握しているようだ。理由は分かっていないが、亜人族は亜人族であるというだけで、樹海の中でも正確に現在地も方角も把握できるらしい。

 

 順調に進んでいると突然カム達が立ち止まり、周囲を警戒し始めた。魔物の気配だ。当然、ハジメ達も感知している。どうやら複数匹の魔物に囲まれているようだ。樹海に入るに当たって、ハジメが貸し与えたナイフ類を構える兎人族達。彼等は本来なら持前の優秀な隠密能力で逃走を図るのだそうだが、今回はそういうわけには行かない。皆、一様に緊張の表情を浮かべている。と、突然ハジメが左手を素早く水平に振った。微かにパシュ、という射出音が連続で響いた直後。

 

 ドサッ、ドサッ、ドサッ

 

「「「キィイイイ!?」」」

 

 3つの何かが倒れる音と、悲鳴が聞こえた。そして慌てたように霧をかき分けて、腕を4本生やした体長60㎝程の猿が3匹踊りかかってきた。その内の1匹に向けてユエが手をかざし、一言囁くように呟く。

 

「〝風刃〟」

 

 魔法名と共に風の刃が高速で飛び出し、空中にある猿を何の抵抗も許さずに上下に分断する。その猿は悲鳴も上げられずにドシャと音を立てて地に落ちた。

 

 残り2匹は二手に分かれた。1匹は近くの子供に、もう1匹はシアに向かって鋭い爪の生えた4本の腕を振るおうとする。シアも子供も、突然のことに思わず硬直し身動きが取れない。咄嗟に、シアの近くに居たアルと、子供の側に居た大人が庇おうとするが・・・無用の心配だった。

 

 パシュ!

 

 シャリリン

 

 先程と同じ射出音と共に、金属が擦れる音が響く。するとシアへと迫っていた猿の頭部に10cm程の針が無数に突き刺さり、子供に迫っていた猿は十字に裁断されて絶命したからだ。

 

「・・・やっぱカッコイイよな、それ。」

 

「だろ?作って正解だったぜ。」

 

 ハジメの左腕を見て、〝薙鼬(なぎいたち)〟を引っ込めた社は目を輝かせる。ハジメが使ったのは、左腕の義手に内蔵されたニードルガンである。かつて戦ったサソリモドキからヒントを得て、散弾式のニードルガンを内蔵したのだ。射出には〝纏雷〟を使っており、ドンナー・シュラークには全く及ばないが、それなりの威力はある。射程が10m程しかないが静音性には優れており、毒系の針もあるので中々に便利である。暗器の一種とも言えるだろう。樹海中では発砲音で目立ちたくなかったので、ドンナー・シュラークは使わなかった。

 

「あ、ありがとうございます、ハジメさん。」

 

「お兄ちゃん、ありがと!」

 

 シアと子供(男の子)が窮地を救われ礼を言う。ハジメと社は気にするなと手をひらひらと振った。男の子のハジメと社を見る目はキラキラだ。シアは、突然の危機に硬直するしかなかった自分にガックリと肩を落とした。その様子にカムは苦笑いしていたが、ハジメから促されると先導を再開した。

 

 その後もちょくちょく魔物に襲われたが、ハジメ達3人は静かに片付けていく。樹海の魔物は一般的には相当厄介なものとして認識されているのだが、何の問題もなかった。

 

 しかし樹海に入って数時間が過ぎた頃、今までにない無数の気配に囲まれ、ハジメ達は歩みを止める。数も殺気も、連携の練度も、今までの魔物とは比べ物にならない。カム達は忙しなくウサミミを動かし索敵をしている。

 

〝社。悪意感知に引っ掛かりは?〟

 

〝直前まで無かった。悪意を持って俺達を探していたんじゃなくて、見回りの部隊に偶然見つかったんだろう。〟

 

〝・・・面倒。〟

 

 〝念話〟により何となく相手の正体が掴めたハジメ達3人は、面倒臭さを隠そうともしない。だが、同じく正体を掴んだカム達は、苦虫を噛み潰したような表情を見せた。シアに至っては、その顔を青ざめさせている。そして。

 

「お前達・・・何故人間といる!種族と族名を名乗れ!」

 

 虎模様の耳と尻尾を付けた、筋骨隆々の亜人達が姿を表した。

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