ありふれない怨霊こそ世界最愛   作:白紙

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お待たせしました。某狩ゲーにどハマりしてました。


40.アル・ハウリア

 1番最初に彼等を見た時の印象は「ヤベーぞこの人達」だった。

 

 姉サンの存在がフェアベルゲンにバレてしまい、アタシ達は捕まる前にハウリア族総出で樹海を脱出した。途中で帝国兵に見つかりながらも必死に逃げまわり、命辛々ライセン大峡谷に着いた矢先。今度は姉サンが何かを見つけたかの様に突然飛び出したのだ。

 

 今思えば〝未来視〟を使って未来(さき)を見た結果なんだろうケド、それにしたって一族の誰にも言わず飛び出すのは如何(いかが)なモノだろうか。偶々アタシが気付いて後を追っかけたから良かったものの、凶悪な魔物が蔓延る峡谷をたった1人で動き回るのも危険すぎると思う。・・・イヤ、アタシに何が出来たのかって言われればその通りなんだケド。

 

 閑話休題(それはともかく)、案の定ダイへドアに追われる事になったアタシ達を(そんなつもりは無かっただろうケド)助けたのは、皮肉な事に人間族だった。

 

 白髪に片眼鏡(モノクル)を掛け、左腕を丸々義腕にした南雲ハジメサン。流れる様な金髪と紅い双眸を持つ、文字通り人形の様な美しさを持つユエサン。南雲さんと同じ白髪で、でも前の2人と比べると少しだけ特徴に欠けている所為で地味にも見えた宮守社サン。・・・でも、そんな印象は直ぐに覆った。

 

 ダイへドアを始めとしたライセン大峡谷の中でも上位に位置する魔物達や、峡谷の入口でハウリア族を待ち伏せていた帝国兵を、彼等は歯牙にも欠ける事無く屠っていた。道端に生えた雑草を摘み取る様な、或いは群れを成していた蟻を踏み潰す様な、酷く淡々とした様子で。戦う力の無いハウリア族を40人近く抱えながら、圧倒的な力を振るう姿は今尚アタシの目に焼き付いている。

 

 でも、だからこそ。アタシは彼等が理解出来なかった。

 

 何も差し出せるモノが無かった姉サンが、対価に自分の身体を渡そうとした時、南雲サンと宮守サンは心底興味無さそうにソレを拒んでいた。姉サンが自分達の身の上話をしても、彼等は眉1つ動かさずアタシ達への助力を拒んだ。・・・正直な話、そこまでは当然だと思った。彼等とアタシ達は無関係な他人で、対価を払えないアタシ達を助ける義理も義務も無いんだから。

 

 雲行きが怪しくなったのは、ユエサンの提案からだった。彼女曰く、ハルツィナ樹海の案内人を探しておりハウリアなら丁度良いのでは無いか、との事。その話を聞いた時に、目の前の人達は頭がオカシイのかと思ってしまったアタシは悪く無い筈。イヤ、一応の恩人に対してかなり失礼ではあっただろうケド。

 

 だって、本当に意味が無いのだ。南雲サンが言った通り、帝国から追われているわ、樹海から追放されているわ、姉サンとアタシは厄介のタネだわと、アタシ達は疫病神でしか無いのだから。そもそもの話、そこまでの力が有るのなら、アタシ達に態々恩を売る意味なんて無い。それこそ、アタシ達を1人2人位にまで間引いて、力づくで従わせれば良い。帝国と戦うのを避けたいのなら、売れ残りそうな何人かだけを案内人として引き取り、残りは受け渡せば良かったんだから。

 

 でも、あの人達はそれをしなかった。アタシでも簡単に気付く様な事を、彼等3人が全く気付かないなんて事は無いだろう。だから、帝国兵を躊躇無く処理する姿を見て、アタシは彼等が本気で約束を守るつもりなんだと理解出来た。

 

 それでもやっぱり、アタシの中に有った「ヤベーぞこの人達」と言う印象は変わらなかった。初めて出会った時も。魔力で動く乗り物の中で彼等の事情を知った時も。魔物や帝国兵を一蹴したのを目にした時も。樹海の中でアタシが暴走しかけた時に止めてくれた時も。フェアベルゲンの長老達にケンカを売ってまでアタシ達を生かしてくれた時も。勿論、心から感謝はしているし、有難いとも思ってはいたけれど。彼等の中にある理屈に対して、理解や納得がいく事は殆ど無かった。

 

 ・・・多分、アタシが本当のハウリアであれば、ここまで考え込む事は無かったのだと思う。実の親の顔すら知る事無く捨てられたらしいアタシは、ハウリア族の皆の様に素直に喜ぶ事が出来なかったから。

 

 そして、南雲サン達がハウリア達を鍛えると言った時も、アタシは彼等を信じ切る事が出来ないでいた。・・・自分の弱さを棚に上げたまま、その提案に1番最初に飛びついたのはアタシ自身だと言うのに。

 

 訓練が始まってからハウリアの皆と特訓する傍で、アタシは宮守サンから『呪術』に関する知識を教えられていた。『呪力』の事、『術式』の事、『呪力反転』の事、『順転と反転の術式』の事、『呪霊』の事、etc。当然自分の事なのだから真剣に耳を傾けはしたけれど、やっぱり心の何処かで目の前の人の事が理解出来ない気持ちがあった。

 

 アタシと同じ呪い(ちから)を宿すと言う宮守社サン。アタシと違って肌を隠す素振りも無く、振るう力は似ても似つかないのに、アタシの身体は同じ呪い(ちから)だと確信を持っている様な、不思議な感覚。でも、ともすれば南雲サンやユエサン以上に、アタシは宮守サンの事が理解出来なかった。

 

 南雲サンがハウリア族(アタシ達)を助けたのは、「そう約束したから」だ。自分でした約束に責任を持つ為、若しくは自分の中での譲れない一線を守る為、南雲サンはアタシ達をフェアベルゲンの掟から守った・・・のだと思う。多分きっと、恐らく、余り自信は無いけど、そんな理由なら理解は出来る。ユエサンは長老達の前では何も言わなかったけど、それはアタシ達に興味が無かった・・・と言うよりかは、南雲サンが決めた事なら文句無いってカンジに見えた。傍目から見ても2人はラブラブだから、ユエサンの理由にもある程度理解は出来た。

 

 でも、宮守サンはどこか違った雰囲気があった。多分、アタシ達を助ける事に異論は無かったんだろうケド。その理由は南雲サン達とはまた違ったモノなんじゃないか、とアタシは感じていた。『呪力』や(推定ではあるけれど)『術式』が暴走しかけた時も、宮守サンはアタシに何も言わなかった。予め『呪術』に関する知識があったからかも知れないけれど、それを踏まえても宮守サンの在り方は不気味ーーーとは言わないまでも、得体が知れないとアタシは感じていた。宮守サンがアタシを見る目は、何処かアタシを見ていない様にも感じたから。

 

「ーーーでも、そんな力があっても、目の前で1番大切な人が死んだ時、俺は何も出来なかった。」

 

「ーーーーーーーーー。」

 

 結論から言えば、アタシの懸念は全て無駄だった。訓練開始から3日目の逢魔ヶ時、宮守サンがアタシ達に話したのは自分が力を求めた理由、その原点(オリジン)だった。

 

 目の前に立ったハウリア族の1人を見据えて、敬意と優しさとほんの少しの哀愁を込めて語る宮守サンの言葉は、アタシが今まで聞いたどんな言葉よりも説得力があったと思う。南雲サンよりもユエサンよりも、宮守サンはアタシ達に近い想いを抱いていたから。唯一つ違ったのは、その想いを抱いた後にどうしたか。

 

 南雲サンから「奈落の底で生き残る為に、手段を選ばず強くなった」と聞いた時。アタシも他のハウリア族も慄きはしたケド、共感はしなかったーーーイヤ、出来なかったと思う。南雲サンの語った経験が、強くなった理由が、余りにも壮絶だったから。

 

 でも、宮守サンは違った。大切な人を失うって言う酷く悲しくて、でも世界にはありふれた悲劇を、宮守サン自身が許せなかったから強くなったと聞いた時。アタシは漸く、宮守サンがアタシ達を助けた理由が分かった。特別な理由なんて、初めから無かった。宮守サンは家族の為に身体を張れるハウリア族に、唯共感していただけだったのだから。

 

 アタシ達は家族を失う辛さを知りながら、武器を手に戦う事も強くなる事もしなかった。そこが、宮守サンとアタシ達の唯一にして絶対の違いだった。でも、宮守サンはそこを指摘する事もせず、只々アタシ達を静かに励ましていた。自分の為に戦うのではなく、自分の大切な家族の為に戦え、と。貴方達にはもう、それが出来ているのだから、と。

 

 姉サンが宮守サンでは無く南雲サンに惹かれる理由も、何となく分かった。勿論、〝未来視〟で見たのが南雲サンだったからと言う理由もあるんだろうケド。南雲サンが重視していたのは「シア・ハウリア(姉サン)との約束」で、宮守サンが重視していたのは「ハウリア族の在り方」だったのだから。南雲サンは姉サンを見ていない様でその実、根底にはしっかりと姉サンとの約束が有って。宮守サンは姉さんやアタシを見ている様で見ていなかった。宮守サンはアタシ達姉妹ではなく、ハウリア族全体を見ていたのだから。

 

 南雲サンと宮守サン、どちらの見方が正しいかは意見が分かれるとは思うし、或いは正しさを決める事自体が間違ってるのかも知れないケド。アタシが好ましいと思ったのは、宮守サンの見方だった。面と向かってなんて照れ臭くて言えないけれど、アタシの大切で大好きな家族達(ハウリア)の在り方を肯定してくれるのは、とても嬉しい事だったから。

 

 宮守サンの話を聞いて、ハウリア族の皆も思う所はあったんだと思う。少なくとも、前みたいに怯えた目をしなくなったから。だから、今度はアタシの番だ。良い加減、自分自身の体質に向き合わなきゃ、姉サンにも義父サンにも家族達(ハウリア)にも、合わせる顔が無くなる。その為にも、まずは宮守サンに打ち明けるべきだろう。アタシ自身の事を。

 

 

 

 

 

 ーーー話したい事があります。

 

 訓練開始から4日目の朝。アルからそう告げられた社は、彼女に連れられて人気の無い場所まで案内されていた。と言っても、仮の拠点からそこまで離れている訳でも無く、精々ハジメ達やハウリア族の目につかない程度であるが。

 

「・・・アタシがハウリア族に拾われたのは、凡そ15年前。アタシは全く記憶に無いんですケド、未だ物心つく前ーーーそれこそアタシが産まれてから1年経つか経たないか位の頃だったらしいっス。」

 

 社が理由を問うよりも早く、アルが語り始めた。昨日、社がハウリア達に語った様な唐突さで自分の出生について話すアルの言葉を、社は遮る事無く黙って耳を傾ける。

 

「食料を探していたハウリア族の1人が、妙な場所を見つけたんス。生き物が豊富な樹海の中で、ポツンと、何にも無い空白みたいな場所を。」

 

(・・・?包帯を、解いている?)

 

 自分の過去を語るアルから、スルスルと衣擦れの音がする。社達と出会ってから一切解こうとしなかった包帯を、意を決した様に社の目の前で緩めていくアル。

 

「もっと正確に言うなら、1人を除いて全ての生き物が死に絶えていたらしいんデス。草花は枯れ果て、虫達の鳴き声1つ聞こえず、動物はおろか魔物までもが干からびる様に死んでいたとか。そして、その空間の中心に居たのがーーー。」

 

(これは・・・。)

 

 徐々に露わになっていく手足を見て、社の眉間に深い皺が刻まれる。隠されていた筈の素肌は包帯を取り去って尚、全く目にする事が出来ない。健常な人間であれば無い筈のモノが、アルの素肌を覆っていたからだ。

 

「ーーーこんな、元の種族も分からない様な、アタシでした。」

 

 最後に頭を覆っていた包帯を取り切って、アルは自嘲する様に呟いた。その顔には捩れ曲がった角や、灰色に硬質化した皮膚、長く尖った耳、そして爬虫類の鱗の様なモノが生え揃ったーーー人型の合成獣(キメラ)とも言うべき容姿をしていた。

 

 

 

「・・・成る程、ね。」

 

 アルの話を聞き、吐き出す様に納得の声を上げた社。

 

(これなら確かに、今までの行動にも説明つくわな。)

 

 今の今まで余り触れはしなかったが、アルの見た目や行動には不可解な点が幾つかあった。包帯から覗いていた錦糸の様な毛髪然り、微弱ながら社達に警戒心と言う名の悪意を向け続けていた事然り、最初から兎人族っぽく無い点は幾つかあった。(尚、この件に関しては疑心1つ無いハウリア族が頭オカシイ、もとい例外に近い為、特に問題では無いが。)

 

 社の力、特に『呪力反転』に興味を示したのも、自分の体質の事があったからだろう。肉体の治癒が出来る『呪力反転』の力であれば、或いは自分の肉体も元に戻せるのでは、と考えてもおかしくは無いからだ。

 

(んー・・・。しっかし、どうしたもんかな。十中八九、彼女の『術式』絡みでこんな風になったんだろうけど・・・何がどうなったらこうなるんだ?)

 

「・・・・・・あの。」

 

 1人で思考に耽る社に、オズオズとアルが声を掛ける。何処か気まずそうな、所在無さげな様子でいるアルを見て、社が我に帰る。

 

「ん?ああ、ゴメン、考え事してた。」

 

「いや、それは良いんすケド・・・・・・。え?それだけ?いや、もっと、こう、なんか無いんスか。」

 

「え?いや、別に。」

 

「えぇ・・・?あれぇ、アタシがオカシイの・・・?」

 

 社の酷く端的な否定に、アルは拍子抜けしつつも頭を抱えたくなる。家族以外には見せた事の無い秘密を、全くの他人に打ち明ける。この時点でアルにとっては非常に勇気がいる行為であったし、その上内容が内容の為、最悪罵倒や暴力が振るわれる可能性すら考慮した上での賭けだったのだ。にも関わらず、余りにも軽い反応であった為、アルの内心は困惑で一杯だった。

 

 一方、社の内心はと言うと、誤解を恐れず表すのであれば、アルの見た目に関しては「割とどうでも良い」のだった。別に悪意を持って突き放している訳では無い。この男、唯只管(ひたすら)単純(シンプル)に、■■以外の美醜に興味が無いだけである。

 

 社にとっての最愛は■■である。この時点で既に、他の女性の容姿が真の意味で社の目に映る事は無い。例えばユエを見て「やーい、ハジメの彼女、超美人〜」等と軽口を叩く事はあるだろうが、それは綺麗な風景を見た際に抱く感想とさして変わらない。社にとっての1番は、■■である故に。

 

 と言うか、肝心の■■が現状(社としてはあくまでも客観的に見ればの話ではあるが)悍ましい化け物であるのにも関わらず気にしていないのだから、それ以外の見た目など気にする筈も無かった。・・・もし仮に、この想いを突き崩す方法があるとすれば。友人として社の懐に完璧に入り、社が簡単に切り捨てられ無くなる程に親しくなったタイミングで、異性として愛していると告げる他無いだろう。

 

 閑話休題(話を戻そう)。社にとっては半ば無自覚ではあるが、アルの見た目に嫌悪を示さない理由がもう1つある。それは、社の中にある〝敵か否かを見分ける基準〟の存在だった。悪意を明確に感じ取れる社は、その分だけ他人よりもハッキリとした形で、目の前の存在が敵か否かを見極める明確な基準を持っていた。具体的に言うと〝一定以上の悪意の有無〟、〝一定以上の実害の有無〟、そして〝それら2点が自分の身内に向くか否か〟の3点。この3つの内どれをどこまで満たすかによって、社の対応は露骨に変わっていた。

 

 そして今この場で重要なのが、先に挙げた3点では()()()()姿()()()()()()()()()()()()()()()()。〝悪意感知〟を持つ社にとって、幾ら見目麗しい存在だろうと悪意があれば好ましく思う事は無いし、幾ら醜悪極まりない存在であっても悪意が無ければ嫌う事は無い。「悪意の多寡のみを重視する」と言う一点に於いて、社はどこまでも公平と言えた。・・・その所為で身内以外からは突拍子も無い事やる様に見えたり、そんな在り方を気に入った妖怪やら土地神やら吸血鬼やらの所謂影の住人達に好まれたりもしたので、プラマイ0だろうが。

 

「ああ、そうだ。じゃあ、折角だから1つだけ聞こうかな。」

 

「ッ!?あ、えっと・・・何スか?」

 

 丁度今思い付いた!と言わんばかりに軽い調子で声を掛けた社に、自問自答していたアルはビクゥッ!?と体を震わせて向き直った。アルとしては、何を言われるのか気が気ではないのだろう。社としてはそこまで緊張する様な事を聞くつもりは無いが、それを言ったところで無駄な事は目に見えている為、下手なフォローを言う事なく本題に入る。

 

「いや、ただ単純に、どうして今俺に打ち明けたのかなって。」

 

「・・・え?そんな事っスか?」

 

「・・・えぇ?自分でそんな事って言っちゃうの?妹さん的にはかなり重要な事なんじゃ無いの、ソレ?」

 

「いや、まぁ、そうですケド・・・。」

 

 社の質問にアルが拍子抜けし、アルの返答に社が呆れると言う、よく言えば緩んだ空気が、悪く言えば凄まじくグダグダな空間が広がっていた。とは言え、アルからしても社の疑問は最もであると感じられた。

 

「ーーーいや、ヤッパリ訂正します。アタシの体質は、()()()()()()()()()()()()()()。」

 

「・・・へぇ。」

 

 アルの迷い無い言葉に、社は感心した様な声を漏らした。先程の陰鬱な様子が嘘の様に、アルの目には決意が秘められていたからだ。

 

「アタシにとって1番大事なのは、ハウリア族なんデス。こんなフザケタ見た目で、しかも周りの生き物を干からびさせて殺すなんてフザケタ力を持ったアタシを。拾って、育てて、愛してくれた、そんな家族が何よりも大切なんスよ。」

 

(・・・ああ。あの時酷く怯えていたのは、自分の家族を傷付けるのを恐れたのか。)

 

 社が思い出したのは、ライセン大峡谷でハウリア族と合流した少し後の出来事と、フェアベルゲンへの道中での出来事。前者は感情の昂ぶったアルが呪力を溢れさせてしまい、後者では『術式』を暴走させかけていた。何方の時も、アルは何かを酷く恐れていた様子だったが・・・きっと彼女は、自分の力で家族を傷付けてしまう事を心底恐れたのだろう。

 

「そんな家族が腹決めて死に物狂いで頑張ってるって言うのに、アタシだけが何にもしないなんて、そんなのはアタシが1番許せない。ーーーだから、アタシに出来そうな事は、何でもしてやるって思ったんスよ。」

 

「・・・そっか。」

 

 アルの決意を聞いて、静かに瞑目する社。アルが覚悟を決めた理由は、酷くありきたりで、それでも社には他のどんな理由よりも納得できるモノだったから。

 

「じゃあ、頑張んなきゃな。」

 

 目の前に居る家族思いな兎人族(アル)と、何よりも自分自身に向けて。静かに気合いを入れる様に、社は呟いたのだった。

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