ありふれない怨霊こそ世界最愛 作:白紙
■月●日
<悲報>ブルックの町は変態の巣窟だった<倫理とは>
久々の柔らかいベッドで目覚めた俺はハジメ達と朝食を平らげた後、迷宮攻略に向けた買い出しをする事になった。本当なら全員で行く筈だったんだが、ハジメは作りたいものが幾つかあると宿に残る事になった。てっきり昨夜の内に全て終わらせたもんだと不思議に思っていたら、当のハジメはジト目でユエさんと姉ウサギさんを見つめており、2人は露骨に話を逸らしていた。予想以上に昨夜は色々あったらしい。やっぱりお楽しみだったんじゃないか。
唯、以前俺が頼んだ物はもう既に完成させていたのだとか。以前にも作った事があるとは言え、仕事が速いのは流石である。後はこれを姉ウサギさんに渡して、ちょっとした頼み事をするだけ・・・だったんだが。何を勘違いしたのか姉ウサギさんは「社さんのお気持ちは嬉しいんですけど・・・私にはもう心に決めた人が居るので!ごめんなさい!」とか血迷った事抜かしてた。
渡した物のデザインがデザインなだけに、そういった誤解も止むなしーーーな訳があるか。余りにもふざけた勘違いだったので、思わず本気でデコピンした俺は悪くない。俺が■■ちゃん以外にアプローチかける訳無いでしょうに。その辺りの事情はまだハウリア姉妹には話していないが、そこはそれ、俺にも譲れない部分の1つや2つはあるのだ。バツン!と人体から出るとは思えない音と共に、叫びながら額を押さえて崩れ落ちる姉ウサギさんを見たら少しは溜飲下がったけど。
余りの痛みに悶絶していた姉ウサギさんだったが、渡した物の用途を説明して協力を仰いだところ「もちろんですぅ!」と快諾してくれた。やはり自分の家族が関わる事象であれば、とても真剣かつ真摯に取り組んでくれるらしい。そういった部分を見せてけば、ハジメもちゃんと見直すんじゃないかなー。
そんな一幕もありつつ、ハジメを除いた俺達4人は町に繰り出す事に。目的は食料品とポーション等の医療品、そしてハウリア姉妹の衣服である。特にハウリア姉妹の服は結構年季入ってるので、一通り買い替えてしまうそうな。武器・防具類はハジメがいるので必要無し。
武器と言えばで思い出した。今現在俺の所有している呪具の内、〝 ■■ちゃんの『呪い』を移している刀〟を除いた〝
天祓と流雲に俺の『呪力』を流すと、呼応するかの如く元々宿っていた『呪力』が俺に干渉しようとする・・・気がする。何と言うか、指向性を持つと言うか、まるで
まぁ、『呪力』≒負の感情なので、天祓と流雲に意思が宿っても不思議では無いだろう。付喪神とか割とメジャーだしな。問題があるとすれば、自我を持った際に「下克上じゃー!」と再び俺を襲う可能性があるくらいか。まぁ現状この2本から悪意は感知出来ないし、俺の『呪力』を流すのに抵抗する様子も無いので、多分大丈夫だろう。
キャサリンさんから貰った地図を頼りに、俺達は冒険者向きの衣服店に足を運んだ。他にもいくつか候補は有ったんだが、機能的な服の他、普段着もまとめて買える点が決め手だった。
店に入った俺達を迎えてくれたのは、店長であるクリスタベルさん(♂)。身長2m強、筋肉モリモリな恵体の持ち主であり、弁髪の先端をピンクのリボンで結んだ、正に絵に描いたような
そんな人がクネクネと身を捩りながら、語尾にハートマーク付けて話しかけてくるもんだから、女性陣は完全に硬直していた。姉ウサギさんに至っては意識が飛び掛かっていたし。第三種接近遭遇かな?こんな未知との遭遇は嫌すぎる。
仕方無いので、俺が代表して話を通す事に。俺達に向ける悪意は微塵も感じられなかったし、真剣に話を聞いてくれてもいたから悪い人では無いんだろう。普段と変わらない様子でクリスタベルさんと話す俺に、女性陣は畏怖と畏敬の視線を向けていた。気持ちは分からんでもないが、失礼なのでやめて差し上げて。
と言うか、元の世界で『呪霊』やら妖やらを祓ってきた俺に言わせれば、あからさまに人外染みた見た目をした奴よりも、美形だったり美人だったりする奴等の方が邪悪且つ凶悪且つ悪辣だった記憶がある。正確に言うのならば
無論、皆が皆そうでは無かった。俺の『
また話が逸れた。極論、俺にとっては俺と身内に悪意が向いてさえいなければ良いのだ。そしてクリスタベルさんが俺達に向ける悪意が皆無である以上、彼女の容姿が如何なる物でも俺にとっては
実際、クリスタベルさんの目利きは見事な物だった。色々な意味で躊躇していたハウリア姉妹から巧みに要望や好みを聞き出し、少なくない品揃えの中から彼女達に見合う服装をキチンと見立ててくれたのだから。最初こそ屠殺場に向かう家畜が如き目をしていたハウリア姉妹も、この結果には満足だった様で素直にお礼と謝罪をしていた。クリスタベルさんも気にせず「また来てねん♥」と良い笑顔で返していた。やさしい世界だった。
因みに、姉ウサギさんは比較的露出の多目な服を、妹さんは露出皆無な服をそれぞれ見立てて貰っていた。『呪力』のコントロールも上達してきたので、余程でなければ妹さんに見た目の異常は出ない筈ではあるが、まだ何となく素肌を隠さなければ不安らしい。この辺りは気長にやってくしかないだろう。姉ウサギさんはその事を知ってか何も言わなかったが、それでもいつか必要になった時のためにと、妹さんに内緒で洒落たスカート等を見繕って貰っていた。こういった細やかな気遣いを見ると、同じく義妹を持つ身としては素直に姉ウサギさんを尊敬する。いつの日か妹さんが気にせずオシャレできる日が来る事を祈ろうかね。
と、ここで終わってくれたなら「麗しい姉妹愛だなぁ」で済んだんだが、そうは問屋が下さなかった。問題が起きたのは店を出た後、道具屋に向かって歩みを進めていた時の事。他愛の無い雑談をしていた俺達を、妙な悪意を向けた集団が取り囲んだのだ。
俺達を取り囲んでいたのは、数にして30人強の男達。冒険者風の男が大半だったが、中には店番放って来たのかエプロンをしている男もいた。変な奴らがいる事には俺も気付いてはいたんだが、彼等には悪意は有っても敵意が無かった。俺とユエさん達女性陣とで向ける悪意の種類が異なっていた、と言うべきか。それ故、一先ず様子見に徹していたのだ。
訝しむ俺達の前に、男衆の内の一人が前に進み出た。今にして思えばあの男、俺達がキャサリンさんと話している時に冒険者ギルドにいた1人だったんだろう。ユエさんとハウリア姉妹の名前を確認する様に聞くと、他の男連中達も覚悟を決めた目でユエさん達を見つめていた。何が起こっても良い様に、怪しまれない範囲で迎撃体制を整える俺をよそに、男衆はそれぞれユエさんとハウリア姉妹の前に出た。そして。
「「「「「「ユエちゃん、俺と付き合ってください!!」」」」」」
「「「「「「シア/アルちゃん!俺の奴隷になれ!!」」」」」」
男衆が声を揃えて叫びやがった。予想の斜め上を突き抜けた答えを聞き、思わずズッコケそうになった俺。シリアスさを返して欲しい。大の男が真っ昼間から大勢で何してんだマジで。
とは言え、こうなるのはある種予定調和ではあったのだろう。方向性は違えど*1美少女と言って良い3人が集まっているのだから、こういった奴等が集まるのも止む無しだったのかも知れない。元の世界ーーー特に日本ではまずあり得ない事態ではあるが、そもそも価値観が違い過ぎてその辺りを論ずるのも無駄だろうしな。
ユエさんとハウリア姉妹で口説き文句が異なるのは、亜人か否かの違いだろう。本来なら奴隷の譲渡は主人の許可が必要である筈だが、ハジメに声を掛けない辺り、昨日の宿での仲睦まじい(ハジメは否定するだろうが)やり取りが知れ渡っているのだろう。一先ず奴隷側から説得しよう、とでも考えたのかね。
だが生憎と、そんな話を馬鹿正直に聞く面子はウチには居ない。誰一人反応を返す事なく、彼等をシカトして歩き続ける女性陣。文字通り眼中に無い感じである。うーん、強い。
それでも諦めが悪い奴は居る者で「なら力づくで俺のものにしてやるぅ!」と雄叫びを上げた男を中心に、他の連中も俺達を逃さない様に取り囲んで、ジリジリと迫ってきた。いい歳した男衆が顔を赤らめ鼻息荒くして迫ってくる絵面は、シンプルにキモかった。
その内に我慢出来なくなった男の1人がユエさんに飛びかかったんだが、俺が迎撃するよりも速く、首から下を瞬時に凍らされて敢えなく墜落させられていた。人目に着く場で詠唱無しの魔法を使うのヤバいか?とも思ったんだが、周囲の反応を見るにセーフっぽかった。「事前に呪文を唱えていた」とか「魔法陣は服の下にでも隠しているに違いない」とか聞こえたので、良い感じに解釈してくれたらしい。
その後ユエさんは氷漬けにした男の元に歩み寄ると、何故か氷を溶かし始めていた。それを見て「俺の想いが伝わったのか!」とめでたい勘違いをしていた男だったが、しかしユエさんの真の狙いに気付いて顔を青くした。氷を溶かしたのが下半身の一部分ーーー所謂男の象徴がある場所であり、そこに狙いを定めていたからだ。
そこから先は地獄だった。ユエさんの指先から風の礫が放たれる度に、大の男の酷く情けない悲鳴が響き渡る。一撃で仕留めるのでは無く、意識を奪わず最大限に痛みを与える為にされた
永遠に続くかと思われた
隙あらば飛び掛かろうとしていた他の連中も、目の前で行われた処刑の余りの惨さに及び腰になっていた。関係ない野次馬やら近くの露店の店主やらも股間を両手で隠していたのは正直可哀想ではあった。気持ちは痛いほど分かる。流石にここまでやられたら周りの連中も諦めるーーーかと思いきや。今度はコイツら、俺の方に絡んで来やがったのだ。
このタイミングで何故俺が標的に?と訝しんだんだが、ふと気が付いたら妹さんが何故か不安そうに俺の後ろに隠れていた。その様子を見て、思わず「え?何してんのこの子?」的な目線で妹さんを見てしまう俺。言い方悪いがこの程度の有象無象、今の君なら一蹴出来るでしょうに。
そんな俺の視線に気付いたのか、ワタワタと慌てながらも弁解を始めた妹さん。彼女曰く「
ハウリアは元々
一族から捨てられ、他の亜人からは
と、そんな事を話している内に、心折れた筈の男衆が再び立ち上がろうとしていた。その目に爛々と嫉妬の炎を燃やしながら、である。彼等の品の無い言い分曰く「見た目クール系美少女が心細そうにしているギャップに庇護欲が湧き、頼られつつもイチャイチャしているアンタには嫉妬しか湧かぬ!!(意訳)」だとか。目ん玉ガラス玉でも詰まってんのか。後「同じ男だし、ユエさんみたいな
しかし「ハウリア姉妹のそれぞれどちらを俺とハジメの奴隷にするのか」までは気が回っていなかった。設定上とは言え、人の
そんな風に考えを巡らせている内に、醜く叫ぶ男衆を見て軽くビビった妹さんは余計に俺の後ろに隠れるし、それを見て血の涙を流さんばかりに気炎を挙げる男衆。喧しいし、舐められたままなのもこれからの買い物に支障が出る。良い加減面倒にもなってきたので、男衆が行動するよりも速く、ユエさんが処刑した男の腰から剣を拝借。「ここでやるつもりか!?」と身構える男衆の前で、
唖然とする男衆を尻目に「これ、何だと思います?ーーー10秒後の貴様らの姿だ」と笑顔で凄んだところ、彼等は仲良く血の気を失って土下座していた。
「次に絡んで来たら手足の1、2本は覚悟して下さいね?」としっかり念押しして、俺達はその場を後にした。その言葉を聞いて、取れんばかりの勢いで首を縦に振った男衆。あの様子ならもう無駄に絡んでは来ないだろう。俺達の目の前にいた奴らが、道を開ける様にズラッと左右に移動したのは少し笑いそうになったが。
畏怖の視線を向けてくる男達の視線を無視して、俺達は買い出しの続きに向かった。その後は特に問題が起きる事も無く、平穏無事に宿へと帰還。そのままチェックアウトしてブルックの町を後にしたのだった。・・・買い物の道中で町の女の子達が「ユエお姉様・・・♡」とか呟いて熱い視線を向けてたり、どこで聞いたのかユエさんとハウリア姉妹のファンらしき人々が見送りに来てたのは見なかった事にした。どこか甘ったるい様な、ネットリした悪意を感じたのでユエさんとハジメには一言報告しておいたけど。
後、魔導四輪でライセン大渓谷を目指す道中、ハウリア姉妹に謝罪とお礼を言われた。妹さんは無意識とは言え俺を盾にした事について、姉ウサギさんは自分の義妹を庇ってくれた事について、である。これに関しては彼女達が悪い訳では無いので、特に謝る事も無いよと返しておいた。悪いのはどう考えても男衆だったしな。
それと同時に、仮初とは言え妹さんの主人である事を否定しなかった事も、説明と共に謝罪しておいた。今後誰かに問われた時は、姉ウサギさんがハジメ、妹さんは俺の奴隷であると明確に受け答えしてくれとも。致し方無かったとは言え、年頃の娘さんを奴隷扱いしてそのままなのは、少しばかり良心が欠けている。異世界では俺達の常識や道徳が通用しない為、多少なりとも強引な手段に出ざるを得ない時もあるだろうが、俺の両親や義妹、爺さんに顔向け出来ない事はあんまりしたく無い。尚、俺の良心が適応されるのは、身内に友人、精々が俺の身内に害の無い他人までである。敵?敵は人扱いしません。某檜山とか檜山とか檜山とか。
有難い事に、ハウリア姉妹は名目上の奴隷扱いに気を悪くした様子は無かった。何だかんだ言いつつもしっかり話せば分かってくれる辺り、ハウリアの人の良さは受け継がれていた。・・・姉ウサギさんは「何でこんな紳士的な人がハジメさんの親友やっているんですぅ?」とハテナマーク浮かべてたが。言いたい事は分かるけど、あんまり言わないであげて。ハジメも色々あったんだ。俺も俺でハッチャケる時はハッチャケるし、何より「女の子には優しくするものよ」と■■ちゃんも言ってたしな。「特に私には1番優しくしてね?」とも。
妹さんに関しても「少しずつ慣れていけば良い」的な事を言ってフォローしておいた。・・・薄々自覚していた事ではあるが、どうにも妹さんには対応が甘くなってしまう。その理由もハッキリしてはいる。ハウリア達が予想以上に家族思いで、悪意とは無縁の善人達だったのも理由の1つではあるが。1番の原因は、俺の家で引き取った義妹達と重ねてしまっているからだ。
親も身寄りも無かったあの子達は自分の『
その後双子の姉妹を実家に連れ帰る道中で改めて事情を話し合い、帰宅後に両親並び爺さんに開幕土下座をかまして「俺の
・・・あの村に居た人々が悪人だったのかどうか、俺には未だに判断が付かない。邪悪では無かったのだろうが、何の罪も無かったあの子達を寄って集って悪様に言う姿は、俺の目には
それでも結局、俺はあの子達を見捨てる事が出来なかった。或いは、無意識に
爺さんの伝手を頼り
妹さんも含め懸念事項はまぁまぁあるが、俺1人で気負い過ぎても肝心な時にポカやるだけだろう。ハジメやユエさん達を頼りつつ、上手くやって行こうと思う。
■月◎日
ブルックの町を出立し、ライセン大峡谷に突入してから早5日が経過。今のところ、ライセン大迷宮(仮)が見つかる様子は無い。【オルクス大迷宮】の転移陣が隠されていた洞窟も2日前には通り過ぎており、このまま見つけられずに通り過ぎてしまう可能性も高くなってきた。大火山に行くついでなのだからと言われればそれまでなんだが。
谷底には相変わらず多種多様な魔物達が生息しており、どいつもこいつも俺達に気付いた途端に襲い掛かってくる。無論、全て撃滅しているが。異なるのは死因くらいか。銃殺、斬殺、圧殺、焼殺、撲殺・・・レパートリーだけは豊富。
この世界の基準で言えばまぁまぁ上位に位置する強さの筈だが、やはり
最初はおっかなびっくり戦ってたハウリア姉妹だったが、自分達の力が通用するのに気付くと、少しずつ積極的な動きが増え始めた。流石に複数体の相手は覚束ないが、
姉ウサギさんは強化した身体能力でもって、ハジメ謹製の大槌型アーティファクト:ドリュッケンを豪快に振り回す戦闘スタイル。このドリュッケン、待機状態だと「ハンマー部分が不自然に大きいトンカチ」にしか見えないが、魔力を流す事で格納されていた取っ手が伸縮し、大槌の名に相応しい見た目になるのだ。しかも幾つかギミックが隠されているとか。何それかっこいい。
勿論それに見合った重量はあるみたいだが、それを苦にせず姉ウサギさんはバッタバッタと魔物をミンチにしていく。「硬い?デカい?知るか死ね」と言わんばかりの一撃必殺っぷりは、端的に言って凄い男心を擽る戦い方だった。何せ「見た目は華奢なウサミミ美少女が」「容姿にそぐわぬ剛力で」「身の丈以上の大槌を振り回して」「同じく身の丈以上の敵を」「一撃で薙ぎ倒していく」のである。浪漫てんこ盛りを通り越して、属性の過剰搭載と言えるだろう。だがそれが良い。
一方で妹さんは『呪力』による肉体強化を駆使して魔物達をどつき回していた。基本戦術はヒット&アウェイで攻撃を掻い潜りつつ、隙あらば強化された脚力で敵を蹴り抜くカウンター型である。流石に姉ウサギさんよりも肉体の強化幅は小さい様だが、その差を埋めるべく相手の機動力を削いだり、急所を躊躇無くぶち抜いているので見劣りは全くしない。攻め手に容赦が無いのは非常にgoodである。
後、やはりと言うべきか、妹さん自身が持つ『
妹さんの容姿が変化していたのは、不完全とは言え『術式』の発動が原因だった。彼女の身体に魔物の特徴が表れたのは幼少の頃であり、今まで収まる事なくずっと続いていた。それはつまり『術式』の維持に使用して尚、余りある程に規格外の『呪力』を持っていた事の証左でもあった。良くもまあ、脳が焼き切れなかったもんだ。・・・逆説、彼女の『呪力』が簡単に使い切れる量であれば、もっと早くに『術式』の制御や解除が出来ていたと考えると皮肉でしか無いが。
因みに、彼女は姉ウサギさんの様に特注のアーティファクトは作られていない。流石にそんな時間は無かったし、俺達の旅にずっとついてくる訳でも無いので仕方ない。その代わりと言っては何だが、
妹さんが脚技メインなのは『術式』との兼ね合いがあるからだ。『術式』を発動する場合、対象に素手で直接触れるのが1番効率が良いらしい。触れていなくても出来なくは無いが、少しでも距離を取ると途端に効率が悪くなるのだとか。あくまでも感覚的なモノと言ってはいたが、恐らく間違い無いだろう。・・・依然として、妹さんは『術式』の発動がぎこちない。出力を一定に保ったり下げるのは非常に上手いんだが、逆に一定以上に上げようとすると途端に下手くそになる。普通は逆の筈なんだが・・・。念の為、
谷底から月(らしき星)を眺めつつ、野営の準備をする俺達。テント張ったり晩飯の準備してると、キャンプでもしてる気分になり少しだけワクワクする。最も、道具は全てハジメ謹製のアーティファクトだったりするので、快適さは段違いだが。
野営テントは〝暖房石〟と〝冷房石〟が取り付けられており、常に快適な温度を保ってくれるし、冷房石を利用した〝冷蔵庫〟や〝冷凍庫〟も完備されている。骨組みには〝気配遮断〟が付加された〝気断石〟を組み込んであるので、敵にも見つかりにくくなっている。調理器具には流し込む魔力量で熱量を調整できるフライパンや鍋、〝風爪〟が付与された切れ味鋭い包丁の他、なんとスチームクリーナーモドキ迄ある。相変わらずの凝り性っぷりだった。便利だから文句なんて無いけど。
後驚いたのは、姉ウサギさんが料理上手だった事だ。俺も1人暮らししていたのである程度は出来るが、比べるのが烏滸がましいレベル。今日の夕食だったクルルー鳥*3のトマト煮も、非常に美味でした。妹さんと一緒にお代わりまで貰ってしまった。
満足度の高い食事を終え、日記も纏めたので後は見張り番を立てつつ寝るだけーーーだったんだが。姉ウサギさんが何かを見つけたらしい。取り敢えずそれだけ確認して寝る事にする。
・社の日記について
割と今更な説明になりますが、題名に「異世界より」と入っている話は、社が書いた日記になっています。また、この日記は100%社の主観なので、必ずしも正しい事が書いてあるとは限りません。
・社の義妹について
話の流れとしては、
①村人達に害を為す『呪霊』が存在。②村人達は『呪霊』を認識出来ず、災いの原因が双子の女の子達であると盲目的に断定、迫害開始。③村人の悪意から生まれた『呪力』と、義妹達が元々持っていた『呪力』を吸収して呪霊はより強力に。④それに比例する様に被害が大きくなり、更に迫害が強くなる悪循環が生まれる。とこんな流れ。そこに祖父から修行がてら仕事を任された社が介入、紆余曲折を得て家で保護した感じです。『呪術廻戦』本編で詳しく描写された訳じゃ無いけど、夏油一派の美々子&菜々子と境遇的には同じイメージ。
唯、社は夏油程精神的に追い詰められてもいなければ、真面目でも無いのでどう頑張っても闇堕ちはしない。と言うか、身内・友人にバリバリ非術師が居るので「
・村人達について
↑で書いた通り、社は「