ありふれない怨霊こそ世界最愛 作:白紙
○月▼日
本日は放課後久々に俺とハジメともう1人、
○月◀︎日
ーーー清水幸利。通称ユッキー。といってもそう呼ぶのは仲間内で幸利をからかう時だけだが。こいつも俺と同じ高校のクラスメイトであり、同じ中学校出身でもあり、さらには3年間同じクラスメイトでもあるという、結構な腐れ縁の仲だった。そして俺の友人4人の内の1人であり、ハジメと同じように俺が呪術師であることやその理由を知っている1人でもある。
性格に関しては、なんといえばいいのやら、後ろ向きに前向きというか、弱いのに強気というか、ネガティブな内容をポジティブに言うというか。大真面目な顔で「引きこもり万歳!!」とかしょーもないことを大声で宣言した時は思わず吹き出したが。なんにせよ一緒にいて飽きない人間である。
あとツンデレ。そして結構口が悪い。特に、格ゲーやらFPSやらの通信対戦で鍛えたらしい煽りテクは、文系のテストで上位に入る程の頭脳とボキャブラリーもあり、一周回って感心する程だった。本人に会ったばかりの時は、もっと卑屈と言うか、暗かった印象があったが、いつの間にか開き直っていたらしい。
特筆すべきは、幸利自身も結構なレベルのサブカル好きであるということか。それもハジメに張り合えるくらいの。ハジメを、両親から受け継いだ血筋と、幼いころから施された英才教育によって生まれたナチュラルボーンオタクとするのであれば、幸利のほうは自分の代でサブカルに目覚めた、いわば現場上がりの叩き上げオタクとでも言うべきか。2人の影響である程度詳しくなったとはいえ、俺にしてみればどちらも並大抵のオタクには見えないのだが、全くの別物である、と言うのは2人の共通した見解の様だ。なんでもハジメは様々なジャンルに手を出す、言わば雑食タイプなのに対し、幸利の方は自分の好きな物のみに深くのめり込む偏食タイプだとか。
家族に関しては、両親の他、兄弟が居るとか聞いた。「兄弟なんかいても喧嘩しかしねぇよ」とは、本人の言葉だが、暗い感じではなかったので、言うほど仲は悪くないのだろう。そんなだからツンデレって言われるんだよ。言ってんの俺とハジメだけだけど。
こいつとの出会いは、これまたと言うべきか、例によって呪術関連のゴタゴタを絡めたものだった。しかも厄介な事に、怨霊がらみ、よりにもよって1級相当の案件だった。詳細は、幸利の名誉を守る為にもこの日記に記すのは止めておく。が、結論だけ言えば、彼奴はその件が原因で異性への対応が苦手になった。いきなり話しかけられたりすると、固まったり敬語になったりする。特に黒いセーラー服を着たロングヘアのヤンデレ風美人が怖いらしい。完全にピンポイントでトラウマになってる。
正直な所、幸利との付き合いがここまで長いものになるとは、当時の俺は全く思っていなかった。ハジメや恵理に関しては、同じように呪術絡みで付き合いが始まったといっても、正直な所、そこまで危険な案件ではなかったので、その後も縁は切れずに済んでるというのはわかる。が、幸利の際の案件は、フツーに死人が出るレベルだった。
今思い返しても本当にふざけていた。なんだよ推定1級って。1級はここ200年近く出てないんじゃなかったのかよ。なんでそんな骨董品が俺と幸利の中学校に出てくんだよ。霊の強さを図る簡易呪符が、一瞬で燃え尽きたのにはマジでビビった。幸利が死ななかったのは本当に奇跡だった。まあ、その後色々あって事件を解決。結構な恐怖体験をしたであろう幸利は、しかし俺と縁を切ることなく、そのままズルズルと腐れ縁を続けたのだから人生とは分からないものだと思う。あの頃からツンデレの片鱗を見せていたのか・・・。
宝くじ1等を3連続で当てるよりも珍しい、と言っても過言では無いレベルの不運に遭って大変ではあっただろうが、友人としては強く生きてほしいと願うばかりである。
追記.書いた後に思い出したが、この前「アレの所為で、セーラー服とかヤンデレとか出てくる恋愛ADVゲームが出来ねぇんだよ!」と血涙を流さんばかりに吠えていたため、案外大丈夫かもしれない。
△月〇日
本日の放課後、何度目になるかわからない【南雲ハジメに白崎香織さんが絡むのをなんとかしようの会(仮称)】が開催された。
今回の参加者は、俺、ハジメ、雫、恵里の4名。ハジメは当事者なので当然参加として。俺としては友人の恋バナなんて聞く気しか無いので、バイトが無い限り大体参加している。幸利も「惚気かよ!非モテの敵ですかアァン⁈」とかガラの悪い返事しながらも、なんだかんだ付き合い良いので参加頻度は俺と同じくらい多い。というかお前女の子と上手く喋れないからどっちにしろ駄目じゃね?実際問題、ハジメが困っているのは事実なので、見捨てられないのだろう。そんなだからお前はあざといツンデレ野郎って言われるんだよ、主に俺とハジメから。
本来ならば、俺、ハジメ、幸利の3人でハジメの愚痴を聞きつつ駄弁っていると言う、ある意味中身スカスカな男子高校生らしい会合なのだが、本日は珍しい事に雫と恵里が参加していた。因みに、この二人の参加が確定した時点で幸利は逃げた。判断が早い。
雫に関しては、親友の白崎さん絡みで迷惑かけて申し訳なく思ってたらしい。そこで対策として、ある程度ハジメ側の状況を把握しておくことにより、ブレーキ兼誘導役を試みるとか。そんな真面目な集まりじゃ無いぞ、雫よ。「ここはハジメの苦しみを共に分かち合うフリをして、それを肴に愉悦する場所だ」と言うと、ハジメは心底絶望した目で「薄々わかってたよ畜生!」と机を叩きながら吐き捨てていた。その反応が愉しまれるんだぞーハジメよ。
恵里に関しては、要約すると「面白そうだったから」だそうな。相変わらず分からん奴。恵里との付き合いも何だかんだ長い筈だがイマイチ考えが分からん。俺ーーーというか■■ちゃんが持つと思われる体質や、呪術師としての感覚も、別段、恵里から悪意が感じ取れるとは言っていないし、悪い奴ではないんだろう。友人としては信用も信頼もしているつもりだしな。自由奔放な部分といい、相変わらず楽しそうにニコニコと笑っている事といい、チェシャ猫を連想させる奴だ。
まあ、俺達3人では解決策も出ないし、出す気もあんまり無かった(この事実を口に出した瞬間、ハジメは崩れ落ちた)ので、この2人の助っ人は大いに役立つものになるだろう。
尚、肝心の話し合いの結果が「諦めて受け入れちゃいなよYou☆」だったのはクッソ笑ったけどな。