ありふれない怨霊こそ世界最愛   作:白紙

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62.〝愛ちゃん護衛隊〟

 夜中。時刻は既に深夜を周り、〝水妖精の宿〟に居る殆どの人間が眠りに着いた頃。人気の無い筈のレストランVIP席に、ランプの光が灯っていた。ぼんやりと辺りを照らすランプの光は、引かれたカーテンに6人分の影を写し出している。

 

「はぁ〜・・・何つーか、怒涛の1日だったな。」

 

「それな。」

 

 玉井の呟きに答えたのは相川だ。今この場にいるのは〝愛ちゃんをイケメン軍団から守る会〟ーーー園部優花、菅原妙子、宮崎奈々、相川昇、仁村明人、玉井淳史ーーーの6人だった。通称〝愛ちゃん護衛隊〟の彼等彼女等は、皆一様に眠れぬまま気を紛らわす為に集まって雑談をしていた。

 

「でも、本当に何があったんだろう。宮守君も南雲君も、あの変わり様は・・・。」

 

「そうね。きっと、私達じゃ思いもつかない事があったのかもね。」

 

 菅原の呟きに園部が返すと、部屋に再び静寂が広がる。今の彼等が1番気になっている人物達の話題ではあるが、しかし誰1人として明確な答えなど持っていない故の沈黙であった。

 

 クラスメイト達が再会したハジメと社に対して感じたのは、驚愕と恐怖もあるが、何よりも大きかったのが困惑だった。少し変わった所はあれど優等生だった社、そして誰にでも優しく親切だったハジメの変貌は、クラスメイト達をして余りにも予想外過ぎた。ハジメ達があの場から去って尚、彼等は正確に事実を飲み込む事が出来ないでいた程だ。

 

「はぁ〜〜〜、あの2人が生きてたのは良かったけど、一体清水達に何て言えば良いんだよ。アイツ等が今の南雲達見たら、気絶するんじゃないか?」

 

「いやぁ、ハジメは兎も角、俺に関しては大丈夫じゃないか。ぶっちゃけ俺は元からこんな性格だし、幸利達にはバラしてるし。」

 

「そういや猫被ってたって言ってたっけな。・・・あれ、今、宮守の声しなかったか?」

 

「え、まだ頭の中に宮守君の声が聞こえるの?大丈夫、玉井君?」

 

「いや、そうじゃないんだけど・・・あれぇ?宮守?実はその辺に隠れてたりしない?」

 

「おう、何か呼んだ?」

 

「「「うわぁあああ!?」」」/「「「きゃぁあああ!?」」」

 

「うおっ、ウルセッ。」

 

 突然の渦中の人物の登場に悲鳴を上げる〝愛ちゃん護衛隊〟の面々。この世界に来て戦闘訓練を受けた彼等は、元の世界に居たときよりも他人の気配に敏感になっていた。にも関わらず社の気配は全く感じ取れなかったので、驚きも一入(ひとしお)だった。

 

「ビックリした、マジでビックリしたっ・・・!」

 

「し、心臓止まるかと思った・・・。」

 

「おいおい、宿の人に迷惑だろー。もっと声量落とせー。」

 

「あぁ、うん、そうね。気をつけるわ。・・・宮守は、どうして此処に?」

 

「俺?何となく目が覚めて、何となくブラブラしてたら、明かりがついていたから何となく寄ってみただけだけど。」

 

「そんな灯りに集る虫じゃ無いんだから・・・。」

 

「マイペース過ぎる・・・。」

 

 社の答えにおもいっきり脱力するクラスメイト達。ハジメ達について悩んでいたのが酷く馬鹿らしくなった気分である。否、ハジメの方は大分根が深そうだが、少なくとも社の方は特に問題無いらしい。

 

「まぁ、何も無いなら良いわ。じゃあなー。」

 

「っ、待って、宮守。貴方に、聞きたい事があるの。」

 

 立ち去ろうとする社を思わず呼び止めたのは、〝愛ちゃん護衛隊〟のリーダー格である園部優花だ。彼女が社を引き止めたのを見て一瞬ギョッとする他の面々であったが、社達が気になるのは全員同じらしく園部を止める事は無かった。

 

「聞きたい事、ねぇ。檜山やらチェイスさんやら、気に入らない奴を躊躇無く半殺しにする人間に?下手な事を聞けば、自分達も同じ目に合わされるとかは考えないのかい、園部さん?」

 

「それは・・・。」

 

 社の何処か小馬鹿にした様な言い様に、しかし即座に言い返す事が出来ないクラスメイト達。檜山しかりチェイスしかり、彼等側に非があったとは言え、あれ程の報復が必要であったのかと聞かれれば園部達は言葉に詰まる。少なくとも、社の行いを無条件に肯定する事は彼等には出来ない。

 

「・・・・・・・・・そう、ね。確かに、それを考えなかったと言えば嘘になるわ。でも、それでも、貴方達が私達を理由無く傷つける事はしないって、皆思ってたわよ。」

 

「へぇ。その心は?」

 

「簡単よ。だって、オルクス大迷宮で体を張って私達を助けてくれたのは、他の誰でも無い、貴方達だったじゃない。それを忘れる程、私達は薄情じゃないわよ。」

 

 園部の言葉を聞き、肯定する様に頷きを返す〝愛ちゃん護衛隊〟の面々。ハジメや社の殺気に怯えた事も、余りの変わり様に困惑した事も、クラスメイト達にとっては誤魔化しようの無い事実であった。それらの想いは未だ心から拭い切れていないし、整理なんてつけられる筈も無い。だが、それでも。ハジメ達が自分達を助けてくれたからこそ、今こうしていられると言う思いもまた、クラスメイト達の紛れも無い本心だった。ハジメ達の死を感じて戦えなくなった彼等だからこそ、ハジメ達に守られたという事だけは良くも悪くも心に刻まれていた。

 

「南雲や宮守に何があったのかは分からないし、もしかしたら理由があって私達に何も伝えないのかも知れない。それは分かっているつもりだけど・・・でも、それでも、少しでも良いから、私達に何か話せない?どうしても話せないのなら、せめて私達に何か出来る事は無いか、教えてくれない?」

 

「・・・どうして、そこまで気にするんだ?」

 

 園部の願いを聞いた社は、先程とは打って変わって真剣な表情で問い掛ける。クラスメイト達が、そこまで必死になる理由が分からなかったからだ。

 

 社は元々、クラスメイト達を様々な意味で戦力として見ていなかった。唯、それは彼等を見放したとかそう言う事では無く、単純に斬った張ったの殺し合いに適性が無いと考えていたからだ。己を殺そうと襲い来る敵に対して、即座に迎撃、無いし殺し返そうと動ける人間はまずいない。ハジメの様に死の淵から生還するか、社の様に適性がある(イカれている)か、或いはメルド達の様に長く厳しい訓練を経る事で戦士としての心身を作っていくか。何れにも当て嵌まらないクラスメイト達が、戦えると思える方がおかしいだろう。今まで生きてきて命懸けの戦いなどした事は無かったのだから、社の評価も至極当然のものであり、決して間違った判断では無い筈だった。今の、今までは。

 

「何もかも、誰かに任せきりにするのはもう沢山なのよ。私達を守る為に、南雲や宮守達が必死に体を張って。南雲達が居なくなった後、怖くて戦えなくなった私達を、愛ちゃん先生が王国の人達から庇ってくれて。貴方達が死んだかも知れなくて怖い筈なのに、清水や中村さんはまだ迷宮で戦っていて。皆みたいに何が出来るかなんて今も分からないし、私達は戦うのが怖くなって逃げ出したけど・・・それでも、もう何も出来ないままなのは嫌なのよ。」

 

「・・・・・・他の奴等は?園部さんと同意見か?」

 

 言いたい事を言い切ったからか、園部の顔からは迷いが消えていた。社が他のクラスメイト達に問いかけると、彼等も覚悟を決めた様に表情を引き締めると迷わずに頷く。どうやら社達が居ない内に、とっくに腹を決めていた様だ。嬉しい誤算の様な、そうで無い様な複雑な思いを抱き、ため息を吐く社。

 

「お前さん達が此処に集まっているって知ってるのは?」

 

「え?えーっと、私達が眠れない事を知ってVIP席を貸してくれたフォスさんだけ、かな。他の護衛騎士の人達には、黙って集まったから。」

 

「成る程、それは好都合。『ーーー闇より出でて闇より暗く、その穢れを禊ぎ祓え』」

 

 園部の答えに満足気に頷いた社は、『呪力』を練り上げると『帳』を展開する。半径10m弱の『帳』はVIP席を丁度すっぽりと包み込むと、光一つ漏らさずに外と内とを遮断する。

 

「え!?ちょっ、何よこれ宮守!?」

 

「防音兼盗聴防止用の結界。害は無いから気にしなくて良い。『式神調 (きゅう)ノ番〝(くゆ)(きつね)〟』」

 

 園部の疑問をいなしながら、社は次いで燻り狐を召喚。『帳』内部が燻り狐の背負う煙管(キセル)から出る白煙で満たされるが、不思議と嫌な匂いは全くしない。いきなりの事に困惑するクラスメイト達を見据えながら、社は酷く真剣な声で本題を切り出す。

 

「さっきも言ったが、オルクス迷宮で何があったのか、何を知り得たのかをお前さん達に言うつもりは無い。だがその代わり、俺達が何を考え、何を目指して動くつもりなのかを伝える事は出来る。ーーーこれを話すのであれば、もう色んな意味で後戻りは出来ない。今ならまだ、何も聞かなかった事にして部屋に戻れるが・・・その様子だと、聞くまでも無いか。」

 

「勿論。ここで尻込みする様なら、宮守を引き止めたりしないわよ。」

 

「男前過ぎんだろ、園部。」

 

「黙りなさい。引っ叩くわよ、仁村。」

 

 社の最後通告を聞いて尚、クラスメイト達は揺るがない。恐怖心が消え去った訳では無いだろうに、それでも自分達の出来る最善を尽くそうとする姿勢は、トータスに来てから培かわれた物だろう。異世界に無理矢理拉致され戦争への参加を強要されると言う類を見ない災難が、この世界で生きていく為の力に成ろうとしているのは皮肉でしかない。

 

「皆の意志は分かった。まずは俺達の目的を話そう。俺達の最終目標は〝自力での地球への帰還〟だ。その前準備として、七大迷宮全ての攻略を目指している。」

 

「あー、成る程。この世界の戦争に本格的に巻き込まれる前に、逃げちまおうって魂胆か。」

 

「いいや、違う。この世界の戦争が終わったところで俺達は間違い無く帰して貰えないし、そもそも戦争自体が終わらない様に出来ている。」

 

「「「「「「はぁ!?!?!?」」」」」」

 

 余りにもしれっと落とされた特級の爆弾に、声を揃えて驚愕するクラスメイト達。然もありなん、幾ら覚悟していたとは言え、大前提であった〝戦争に勝てば地球へ帰れる〟が元から白紙同然だったのだ。結論から語るのは確かに効率的ではあるが、園部達からすれば最初からクライマックスも良いとこだった。

 

「いやいやいや!?お前等が生きてたんだから、今更有り得ないなんて言わないけどよ!言い切るだけの理由はあるんだよな!?」

 

「あるぞー?例によって話す気は無いけどな。」

 

 焦りを隠さず詰め寄る相川に飄々(ひょうひょう)と返す社。『戦争が終わったところで帰しては貰えないし、恐らく戦争自体が終わらない』と言うのは、あくまでも社とハジメが立てた仮説でしか無い。が、今まで得た情報を加味すれば、この世界の神が心底腐り切っているのは明白だ。何の関係も無い若者を拉致した挙句、無理矢理戦争に参加させようとする奴が、ハジメ達の苦労に報いてくれるとは到底思えない。

 

「もしかして、その証拠とか根拠自体が、聞いたら不味いヤツなのか?」

 

「おっと、玉井鋭い。ほら、良く漫画とか映画で一足先に真相を知った脇役が『お前は知り過ぎた』って殺されるじゃん?あれあれ。少なくとも、俺やハジメを殺すのには躊躇しないだろうな。」

 

「嘘でしょ?そんなヤバい状況なの・・・?」

 

 社から矢継ぎ早に語られる事実に、驚愕を隠せない園部達。次から次へと語られる内容は、どれもこれも信じ難いものばかりだ。それでも、驚きこそすれどこの世界に呼び出された時の様に恐慌状態に陥らない辺り、彼等が決めた覚悟もまた生半なものでは無かった。そんなクラスメイト達の姿に感心しながらも、社は説明を続ける。

 

「ああ、少なくとも、俺とハジメはそう考えてる。で、今その話せない事情ってやつを、ハジメが愛子先生に話してるとこだ。」

 

「ちょ、それ大丈夫なの!?下手しなくても愛ちゃん先生が危ないんじゃ!?」

 

「正直な所、危なくはある。だが、俺達が知り得ている秘密は、今は話せないってだけで、何れはお前さん等に必要になるかも知れない。そんな時、誰も真実を知らないままってのは少し不味い。その点、愛子先生は秘密を教えておく相手として的確なんだよ。信用出来る大人としても、俺達の担任としてもな。」

 

 愛子の行動原理は、異世界に来る前も来た後も、常に一貫して生徒が中心となっている。それは言い方を変えれば、異世界の事情に囚われず生徒のために冷静な判断が出来ると言う事でもある。そんな彼女の言葉なら、万が一真実がクラスメイト達に知られても大事には至らないだろう、とハジメと社は考えていた。

 

「さて、此処からが本題だ。俺とハジメが元の世界への帰還方法を探る間、皆にやってほしい事がある。まず1つ目が、愛子先生に近づく怪しい奴を見逃さない事。王国・教会関係者かそうでないか関係無しにな。そしてもう1つが、俺とこうして会話した事や内容を、他の誰にも話さない事。愛子先生は例外として、その他の誰にも話すのは止めてくれ。」

 

「愛ちゃんの護衛は今もやってるし問題無いけど、もう1つは何でなの?」

 

「簡単な話だよ、菅原さん。俺達と関わってると知れれば、君らにも被害が出る可能性がある。」

 

 社にとって最大のアキレス腱は、清水達を始めとした身内・友人を人質として取られる事だった。かつて〝解放者〟が味方である筈の人々を操り敵対させられた事を見ても、自称神が陰険な手段を得意としているのは明らかだ。そんな相手が、社にとって大切な人々を見逃がすとは思えない。

 

「俺達とは出会わなかった、と言うのは護衛騎士の連中も居たし流石に無理だろうが、それでも第三者から不仲に見せる事は出来る。もし、俺やハジメについて聞いてくる人がいれば、出来る限り俺達を悪く言っといてくれ。俺達とお前さん達は、可能な限り無関係であると知られておきたい。」

 

「いや、理屈は分かるけどよ、それは無理じゃないか?」

 

「は?何でだ。なんかおかしい事言ったか、俺。」

 

「いや、だって宮守、夕飯の時に愛ちゃん先生と俺達を人質にしたっつって、チェイスさんの事丸焦げにしてたじゃんか。」

 

「・・・・・・・・・・・・あ。」

 

 仁村に図星を突かれ、思わず固まる社。確かに表向き不仲・無関係を装うならば、あの場でチェイスに対して激昂した事は余り良いとは言えなかった。唯、あの場で釘を刺さなければ、護衛騎士達は今後もハジメ達やクラスメイト達に対して、好き勝手な言動を繰り返していただろうと言う確信が社にはあった。少なくとも、その辺りの悪意を読み違えた事だけは無かったからだ。

 

「・・・宮守。お前、実は意外と行き当たりばったりだな?」

 

「待って、弁解させてくれ。確かにカッとなったのは認めよう。唯、ぶっちゃけた話、皆にこうして俺達の目的を話す事自体、予想外だったんだよ。だから、行き当たりばったりだとか、そんな事は、無い、筈。多分、きっと、メイビー。」

 

「もう既に語尾が怪しい。・・・え?なら、勝手に私達に色々話しちゃったって事?南雲君から何か言われないの?」

 

「あ、それは大丈夫だ、宮崎さん。予想外ではあったけど、想定内でもあったから。最初から、誰にどこまで話すか、ハジメと予め決めといたんだよ。」

 

 ハジメと社にとって1番予想外だったのは、このタイミングで愛子とクラスメイト達に出会った事だった。が、それ以外について、例えば愛子に自分達の知り得た真実を話すか否か、と言った事については既にハジメと社で話し合って決めていた。

 

「俺達が考えていた案では、俺とハジメが(わざ)と威圧して愛子先生と皆をビビらせた後、①愛子先生と皆が両方共俺達を避ける②愛子先生だけはビビらずに俺達に向かってくる③愛子先生と皆、両方共俺達にビビらずに向かってくる④皆だけが俺達にビビらずに向かってくる、の4パターンを想定してた訳だ。で、今回はパターン③だから、先生には真実を、お前さん達には俺達の目的を話した訳さ。因みに、可能性が高いと思ってたのは①→②→③→④の順だな。」

 

「成る程。だから、予想外だけど想定内なのね。」

 

 社の説明に納得の声を上げる〝愛ちゃん護衛隊〟の面々。身も蓋も無い言い方をすれば、最も楽なのはパターン①だった。愛子達に邪魔される事無く、引き続き大迷宮攻略に全力を注げるのはハジメ達にも、回り回って愛子達にもメリットになり得る。そうしなかったのは、偏に愛子達の覚悟がハジメ達の予想を上回っていたからだった。

 

「いや、ここまで腹括ってるのも予想外だが。それより、よくもまあ俺達の話を聞く気になったよな。」

 

「それは、まあ、色々あったんだよ。面倒見てもらってなんだけど、王国の人達も信用出来なさそうだし・・・。」

 

「うん?何があったのか?」

 

「「「「「「・・・・・・・・・。」」」」」」

 

「え?全員(だんま)り?マジで何があったのよ。」

 

 先の張り詰めず緩過ぎない、程よい雰囲気から一転して重苦しい沈黙が降りる。完全にお通夜ムードだった。本当に何があった?と、真剣に考える社。誰かの地雷を踏んだにしては激昂する様子も無く、誰かが死んだにしては恐怖や悲しみが無い。どちらかと言えば、感じるのは社やハジメに対する気遣いと、それとは別の存在に向けた怒りーーー〝悪意感知〟が捉えたのは、クラスメイト達から王国に対する憤りだった。

 

「・・・・・・ははぁ、さては貴族とかメイド共が、俺達の悪口を言ってたな?『死んだのが役立たずの錬成士で良かったですなぁ』とか、『あんな得体の知れない呪力(チカラ)を使って、幾ら神の使徒と言えど罰が当たったのでしょう』とか、そんなとこか。」

 

「ちょ、おまっ、宮守!折角、気を使って黙ってたのに!」

 

「あれ、違ったか?」

 

「大当たりだよ、この仮面優等生!」

 

「いや、なんかもう、見てきたかの様にズバリだね・・・。」

 

「と言うか、そんな気にしてない感じ?」

 

「そりゃそうだ。そもそもの話、別の世界から拉致ってきた若者の事情すら全く考えず、あろうことか我々の為に戦って当然みたいな反応する屑どもだぞ?そんな奴らの良心なんて最初から期待してないさ。」

 

「「「「「「あぁ・・・。」」」」」」

 

 社の指摘に思い至る事があったのか、何とも言えない表情になる〝愛ちゃん護衛隊〟の面々。勿論、全ての貴族やメイド達が良心の欠片も無い屑な人間性の持ち主では無かったが、それでも死んだ(と思われていた)ハジメ達に対して言いたい放題の人間が居たのもまた事実。王国や教会の信用はストップ安も良いとこだった。

 

「つーか、その後も大変だったんだぞ。お前や南雲の悪口聞いて、清水や中村がブチ切れて貴族達をボコボコにしちまうし。何時もはブレーキ役の八重樫まで暴走するもんだから、メルドさん達が慌てて止めに来る始末だし。」

 

「確かに、あの時の八重樫さん、凄い怖かったよね。自業自得だし、スカッとしたから良いんだけど、ね。」

 

「うわぁ、よりにもよって雫切れさせたのかよ。馬鹿ばっかりか、王国の貴族共はーーーってそうじゃない、忘れてた!聞かなきゃなんない事があるんだよ!」

 

「え?ちょっと、いきなりどうしたの?」

 

 唐突に声を荒げた社に対して、驚きつつも詳細を聞き出そうとする園部。この場に来て初めて焦った様子を見せた社に対し、他の〝愛ちゃん護衛隊〟の面々も、怪訝な様子で顔を見合わせている。

 

「今から言う事に正直に答えてほしいんだがーーークラスメイト達から出た4人の行方不明者って誰の事だ?」

 

「「「「「「!!!」」」」」」

 

 社の口から出た思わぬ質問に、〝愛ちゃん護衛隊〟の面々は思わず硬直してしまう。それは「社が行方不明者が出た事を知っている」事に対する驚きからでもあったが、何よりも彼等にとっては()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からだ。ともすれば、先程よりも重苦しい空気が蔓延していた。一方で社はと言うと、〝愛ちゃん護衛隊〟の反応が予想とは異なる事に面食らっていた。

 

「あれ?もしかして、行方不明者って幸利達じゃないのか?雫とか恵里も無関係か。」

 

「え?え、えぇ。清水も八重樫さんも、中村さんも全員無事よ。今もまだ、貴方達2人が生きてると信じて、オルクス大迷宮に挑んでいるわ。」

 

「そう、か。それなら一応、一安心か。・・・え?なら何でこんな重い雰囲気なんだ?」

 

「それは・・・。」

 

 社の何気ない問いを最後に、再び沈黙が降りる。予想とは違ったものの、清水達が無事なのは、社にとって朗報以外の何物でも無い。故に、本来なら安堵で胸を撫で下ろしている所なのだが・・・園部達の表情が、どうにも引っ掛かる。

 

(・・・魔法的な何かで口止めされている様子は無い。誰かに言うなと脅されてる感じも無いし、そもそもそんな悪意は感知出来ていない。唯、単純に俺には言いづらいだけ、か?いや、本当に誰が居なくなったんだ。別に、行方不明者が出たからって、俺がそれを理由に園部さん達に切れる筈ーーー・・・!!!)

 

 思考を回していた社の脳内に閃きが走る。社の考えは前提から違っていた。園部達が酷く答えづらそうにしていたのは、社にとって親しい誰かが行方不明になったからでは無かった。寧ろ、その逆。社にとっての仇ーーー憎むべき相手が行方不明になったからこその沈黙だったのだ。

 

「居なくなったのは、檜山か・・・!」

 

 大きなため息と共に吐き出されたその言葉を、否定する存在はこの場には誰も居なかった。

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