ありふれない怨霊こそ世界最愛 作:白紙
「どれだけ数いるんだ、コレ。」
「さぁな。ざっと見て500近いんじゃないか。」
ウンザリした表情で、呆れ混じりに呟いたハジメと社。それもその筈、今彼等の目の前には、様々な種類の魔物が所狭しと並んでいた。普通の冒険者なら裸足で逃げ出す事請け合いの、悪夢の様な光景である。
「幾ら山を歩き回っても魔物1匹見当たらなかったのは、此処に集まってたからッスか。」
「そうだとしても、この数は異常すぎますよぉ。」
「・・・ん。多すぎ。」
魔物達から少し離れた林の中で観察しながら、多すぎる魔物に辟易するユエ達。現在ハジメ達が居るのは、〝
「魔物達の身体に咲いてる花に見覚えあるのは俺だけじゃないよな。」
「あぁ。フューレンに行く途中、襲って来た魔物が落としたやつとそっくりだな。」
「・・・咲き方も、アルラウネモドキの花と似てる。」
彼等を悩ませている問題は2点。その内の1つが、魔物達の身体に大きな花が咲いていた事だ。咲いている場所こそ手足だったり腹や背だったりとまちまちではあるが、毒々しい極彩色をした花はフューレンに向かう途中で馬車を襲って来た魔物が落とした花弁と、非常に良く似た色合いをしていた。恐らくは同一の物だろう。全ての魔物に咲いている訳では無いが、それでも3割近い数が花を咲かせていた。
「やっぱり、そう見えるよな。当然そっちも問題だが・・・あの霧は何なんだ?」
「分かんね。『呪力』が感じられるから、何らかの『術式』が使われているんだろうがな。アルさんは何か感じる?」
「分かんねッス。見た感じ、魔物達は霧の中に入れないっぽいスケド。」
そして、もう1つの問題が、『呪力』の込められた霧が発生していた事だ。魔物達が密集している川の下流側より先を覆い尽くす様に漂う霧は、広範囲に広がっており全貌が窺えない。何より不思議なのが、魔物達は霧の周りを
「いや、呑気に話してる場合じゃなくないか!?これだけの数の魔物、俺達じゃどうしようも無いだろ!」
「でも、だからって、このままにするのは・・・。どうしよう、愛ちゃん先生。」
「・・・・・・今この場で、私達だけで相手をするのは余りにも危険過ぎます。一度、町に戻って応援を呼びましょう。」
目の前に広がる魔物の軍勢を見てあたふたする生徒達に対して、愛子は顔色を悪くしながらも冷静な判断を下す。幾ら生徒達がチート染みたステータスを持っているとは言え、これだけの数を相手にするのは無謀だ。しかし、だからと言ってこの事態を見過ごす訳にもいかない。生徒達の安全を第一に考えた上で、それ以外でも出来得る限りの最善を尽くす。色々な意味で愛子らしい決断だったが、そこにハジメが待ったをかける。
「悪いが先生、それは却下だ。」
「・・・理由を聞いても?」
「あぁ。説明する時間も無いから簡潔に言うが、こいつらは特殊な魔物に操られている可能性がある。問題は、その特殊な魔物が人間すら操れる事だ。応援なんて呼んだら、最悪同士討ちで全滅もあり得るだろうよ。」
「そんな・・・。」
ハジメの説明に顔を真っ青にする愛子と〝愛ちゃん護衛隊〟の面々。ハジメの言う特殊な魔物ーーーオルクス大迷宮に居たアルラウネモドキは、花粉を吸い込んだ対象に花を寄生させて操る能力を有していた。もし、それと同種か近い能力を持った魔物が居た場合、操れる数や範囲にも寄るだろうが、単に数を揃えただけでは被害は大きくなる一方だろう。ハジメが語ったのは可能性の1つ、仮定に仮定を重ねた物でしか無いが、それにしては類似点が多いし、何より推測が当たった場合の被害が大きくなり過ぎる。決して無視出来る予想では無かった。
「と言っても、今話したのは唯の推測だ。当たってる保証も無い。だが、最悪を想定しないのは論外だ。」
「では、どうするのですか?」
「簡単だ。今、此処で出来る限りぶっ潰す。
屈んでいたハジメが号令と共に立ち上がると、それに続く様に社、ユエ、シア、アルが即座に臨戦態勢をとる。いきなりの事に目を白黒させる愛子達を尻目に、ハジメ達は手早く奇襲の段取りを決めていく。
「手筈はどうするよ?」
「〝毒耐性〟持ちの俺と社が前衛だ。派手に動いて出来る限り魔物を惹き付けろ。ハウリア姉妹は中衛だ。無理に攻めなくて良い、後ろに魔物を通さない事を意識しろ。アルラウネモドキっぽい姿が見えたら即下がれ。ユエは後衛兼、先生達の護衛を頼む。結界を貼りつつ、露払いに専念してくれ。基本は火属性以外で頼むが、アルラウネモドキは見つけ次第燃やして良い。最悪、山火事になっても構わない。」
「「「「了解。」」」」
「全員、逃げる魔物は捨て置けよ。兎に角、数を減らさない事には始まらない。ーーー初手はユエだ。派手にかましてくれ。」
「・・・ん。〝嵐龍〟」
右手を真っ直ぐ伸ばしたユエの呟きと共に、上空に緑色の豪風が集まり球体を作る。と、次の瞬間、球体から孵化する様に一匹の龍が顕現する。文字通り嵐で創られた龍は眼下の魔物達を睥睨すると、顎門を開いて哀れな獲物達を喰らい尽くさんと飛びかかった。
ビュォォオオオ!!
吹き荒ぶ竜巻と獣の咆哮が入り混じった様な独特の音を鳴らし、〝嵐龍〟は魔物の群れを片っ端から飲み込む様に蹂躙していく。〝嵐龍〟は風の最上級魔法と〝重力魔法〟を組み合わせた、ユエオリジナルの魔法だ。全身が鋭い風の刃で覆われた龍が、引力で周囲を引き寄せ飲み込みながら、片っ端から裁断していくのだ。ユエの意思一つで自由自在に動く、指向性を持った嵐と評しても良いだろう。
そんな災害が突如現れた事に対して、魔物達の対応は様々だった。呆気に取られ反応すら出来ない魔物、いち早く危機を察知して我先にと逃げ出した魔物、全く怯む様子を見せずに〝嵐龍〟に立ち向かおうとする魔物ーーーその一切を分け隔て無く蹴散らし細切れにする姿は、正しく嵐の龍の名を冠するに相応しい魔法だろう。数十秒掛けて魔物達を切り刻んだ〝嵐龍〟は、最後に群れのど真ん中で雄叫びを上げると、先程までの暴れっぷりが嘘の様に掻き消える。下手に密集していたのが良く無かったのだろう、500近く居た魔物も半分以上が擦り潰されていた。
「流石ユエさん!強靭!無敵!!最強!!!」
「私達、要らなくないですぅ?もう全部ユエさん1人で良いんじゃないですか?」
「・・・駄目。制御も甘いし、まだまだ練度不足・・・本当なら、最後は風刃を全方向に撒き散らして、爆散する予定だった・・・。」
「やっぱり、腕っぷしで女王様に成り上がった人は一味違うっスね。」
「騒ぐのも良いが、まだ数が残ってる。全員気合い入れろよ!」
目の前の惨状を見て感想を語る社達に喝を入れながら、ハジメは魔物の残党を狩るべく突貫する。魔物は残り200強、ユエの制御が甘かった*1ために運良く〝嵐龍〟から逃れた魔物もいるが、生き残った多くは元から強靭な肉体や凶悪な〝固有魔法〟を持った強力な個体ばかりだ。通常なら苦戦は免れないどころか、死すら覚悟すべき群勢を相手にしたハジメ達は、しかし誰1人躊躇う事無く真正面から立ち向かっていく。
ドパパパパァン!!
ジャララララ!!
限り無く人災に近い天変地異に見舞われた魔物達に、次なる災禍が降り注ぐ。破裂音が撃ち鳴らされる度に、ハジメの両手に握られた
「とぉりゃぁぁあ!!」
「シィッ!」
「・・・邪魔。」
ヒュパパパッ!
ユエが小さく呟きながら腕をタクトの様に振るうと、目に見えぬ風の刃が音も無く魔物達を両断する。最後方、ユエと愛子達の居る場所は他2ヶ所と異なり、殆ど魔物の襲撃を受けていなかった。ハジメと社が大立ち回りを演じた事で魔物がそちらに集中し、愛子達を狙おうとした魔物達もハウリア姉妹が蹴散らしたおかげで、ほぼ辿り着かないのだ。
「うわ、すっげぇ。あんな強そうなのが、真っ二つかよ。」
「しかも無詠唱で連発とか、本当にとんでも無いね・・・。」
偶に運良くハジメ達から逃れられた魔物が居るとしても、ユエが貼った結界はそう簡単に破れる物では無いので簡単に処理されてしまう。最初はハジメ達の突撃に動揺していた愛子達も余りの無双っぷりを見て絶句し、今ではハジメ達の戦いを眺めながら雑談出来る程度には落ち着いていた。
「・・・・・・・・・。」
「・・・南雲が心配?愛ちゃん先生。」
「ふわぁ!?べ、別に南雲君だけでは無いですよ、園部さん。私は生徒達皆の事を気にかけていますとも。」
「いや、それは分かってるつもりだけど。でも、やっぱり、南雲の変わりっぷりは気になってるんでしょ?」
「・・・・・・そう、ですね。」
何も出来ないもどかしさを感じながら、最前線の戦いを見つめる愛子と生徒達。彼等の目の前で魔物達と相対しているハジメ達は、〝神の使徒〟と呼ばれた愛子達でさえ比べ物にならない程に強い。それこそ、今手助けしようと飛び出しても、間違い無く足手纏いになると分かってしまう程度には実力が離れていた。
「一体、どんな目に合えば、あの南雲君があそこまで変わってしまうのか・・・。きっと、私達では想像すら出来ない、変わらざるを得ない程の何かがあったのでしょうね。」
「絵に描いた様なお人好しだったのに、今じゃ二丁拳銃振り回してガンカタやってるんだもんなぁ。しかも、さっきは流れる様に作戦立てて、指揮までとってたし。」
「あの銃も車も南雲君が作ったって事は、天職は〝錬成師〟のままだよね?それであれだけ強くなったんだから、きっと必死で努力したんじゃ無いかな。」
誰もが一騎当千の実力者であるのは間違い無かったが、それでも最も愛子達を驚かせたのは、やはりハジメだろう。社は最初から〝勇者〟に迫るステータスを持っていたので、今でも変わらず強いのはまだ理解できる。
「どれだけ変わろうとも、南雲君達は私の生徒に違いありません。先生として、私は彼等に接し続けるだけです。」
そう呟いた愛子に引かれる様に、生徒達の視線も再びハジメ達に向けられる。変貌した同級生の姿を見る彼等の目が、逸らされる事は無かった。
「これでーーー。」
「ラストォ!!」
前線に残っていた最後の魔物が、ハジメと社により討伐される。ユエの〝嵐龍〟により開戦の狼煙が上がってから約十数分後、周辺の魔物は綺麗さっぱり駆逐され尽くしていた。逃げていった魔物達も戻って来る様子は無い為、一先ず安全は確保されたと見て良いだろう。
「そっちはどうだ、シア!」
「問題ありませ〜ん!ぜぇんぶぶっ潰してやりましたぁ!」
手の代わりに
「シアさんには悪意は無いんだろうけど、血塗れの凶器振り回してんのはスゲー
「本人の
「いや、理解あるカレピッピムーブを、まさかシアさんにするとは思わなかった。」
「目ん玉くり抜いてやろうか?」
軽口を叩き合いながら、ハジメと社は改めて周囲を見渡す。当然と言えば当然だが、辺り一体は戦闘の余波で酷く荒れ果てていた。深く抉られた地面や切り刻まれた木々、そこかしこに転がっている魔物の死骸が、先程までの戦いの激しさを物語っている。
「予想よりも魔物の死体の数が多いな。てっきり、操られてるのは群れのリーダー格だと思ったんだが。」
魔物の死骸を観察しながら、眉間に皺を寄せるハジメ。身体に花を咲かせていた魔物の数は確認出来ただけで約3割程だが、残っている死骸の数は優に6割を超えていた。ハジメ達との圧倒的な力の差を、弱肉強食の世界で生きている魔物達が分からない筈が無い。それでも尚戦う事を選んだのは群れを統率するリーダー格が操られているからで、そのリーダーさえ倒せば他の魔物も逃走するとハジメは推測していた。
「いいや、そうでも無いらしい。こっちの死骸を見てみろ。」
「ん?何かあったーーー・・・コイツは。」
「あぁ。見ての通り、
社の目の前にあった犬型の魔物の死骸は、〝天祓〟によって腹を大きく切り開かれており臓器が露出していた。件の極彩色の花は血に濡れながら腹の中に紛れる様に咲いており、良く観察してみると臓器の周りには
「・・・厄介だな。身体の外に咲くタイプならまだしも、身体の中に咲くなら一目で見分けがつかねぇ。もし人間にも寄生出来るなら、尋問にスパイ、暗殺だの自爆テロだのやりたい放題じゃねぇか。」
「それもあるが、頭に咲くタイプも厄介そうだ。ハジメは魔物達の個体差が大きかったのには気付いたか?」
「あぁ。
「ま、そう考えるのが妥当だよなぁ。強化幅は俺達にとっちゃ誤差だが、その辺の冒険者には脅威的だろうし。これ作った奴、絶対性格悪いぞ?」
仮に〝身体の外に咲いて能力を上げる花〟をAタイプ、〝身体の中に咲いて存在を隠匿する花〟をBタイプとしよう。どちらも寄生した宿主を操る機能は同じだろうが用途は真逆だ。分かり易く強力な代わりに対処法も明確なAタイプ。目に見えた強化はされない代わりに寄生された事そのものが見抜けないBタイプ。方向性は異なれど、厄介極まりない事に変わりはない。
何よりタチが悪いのは、Aタイプに限って〝咲いている花さえ散らせば、ある程度弱体化する〟と言う分かりやすい解答が用意されている事だろう。明確に弱点が見える事が、目に見えないBタイプを更に分かり難く隠蔽している。或いは、その為に態とAタイプを派手にしたのかも知れない。
「救いがあるとすれば、寄生手段が限られてるだろうって事かね。」
「全ての魔物に寄生させていない以上、アルラウネモドキみたいに胞子をばら撒いて一気に寄生させる、なんて真似は出来ないんだろう。〝悪意感知〟に反応は?」
「微弱だがあった。アルラウネモドキと同じ、悪意が2重になってる感じだ。距離が離れてたら流石に分からんが、目の前にいるなら間違えないだろうよ。」
「それなら、まだ何となるか。一旦、ユエ達と合流しよう。」
「悪いが先に行っててくれ。ちょっと霧が気になる。」
「分かった。直ぐに戻って来るから先走るなよ?」
「あいよー。」
(本当に分かってんだろうな、コイツ。)
疑わしげにジト目を向けるハジメにひらひらと手を振りながら、社は霧に近づいて行く。薄らと『呪力』を帯びている霧は、直撃していないとは言え〝嵐龍〟に吹き消される様子も無かった。まず間違い無く、何らかの『術式』により生み出されたものだろう。
「来てくれ、〝
得体の知れない霧にいきなり入るのも無謀だと考えた社は、『式神調』を発動して式神を呼び出した。〝
(・・・?なんか普通に見通せるし、〝
すんなり霧の内部を確認出来た事に肩透かしを喰らう社だったが、それも直ぐに警戒へと変わる。社が見つけたのは、葉や枝が枯れて今にも朽ち果てそうな木ーーーそれも1本や2本では無く、霧の中にある全ての植物が、まるで酸性雨に晒された様にボロボロになっていたのだ。
(視界と〝
警戒しながらも思考を回し続ける社。魔物達が霧の内部に入らなかったのを見るに、恐らく『術式』の発動条件は〝霧の中に入るか、それに近い行動をとる〟で間違い無いだろう。術式効果も、恐らくは『対象を腐食・溶解させる』と考えれば、寄生された魔物達が入らなかったのにも頷ける。
(目的不明且つ、かなり
思い立ったが吉日と言わんばかりに、社は周囲の物を拾い集めると片っ端から霧の中に投げ入れる。魔物の体外と体内に咲いていた2種の花を始め、折れた木の枝、魔物の死骸や、魔物に食われたらしき動物の死体等、目に付くものを次々と霧の中に放り込む。粗方の物を投げ入れてから数秒後には、分かり易い変化が現れた。
(思った通り、霧が反応してるのは植物だけか。見た感じ、酸とか毒に近いか?)
ジュワジュワと白煙を上げながら溶けていく植物を観察する社。他の物には一切反応しない為、植物限定なのか、それとも『術式』対象を植物のみにする『縛り』により効果を高めているかは謎だ。どちらにせよ、ここまで大規模に『術式』を広げられるのだから、並大抵の『呪術師』ではあるまい。
(取り敢えず、試しに指先だけでも霧の中に突っ込んでみるか。ヤバそうなら最悪、〝
首の後ろに手を当てながら、割と物騒な事を考える社。色々と試してはみたが、眼前の霧が生きている動物ーーーもっと言えば、人間を対象としているかは未だ分からない。1番重要とも言える点が分からないのは少々不味いので、出来るならば試しておくべきだろう。その場合、最も適任なのは頑丈で治癒能力持ちである社だ。万一に備え、何時でも手首を斬り落とせる様に〝天祓〟を呼び出した社は、ゆっくりと指先を霧の中に差し込んでいく。
ガツンッ!!
「イッテェ!?」
「何してんだよ、この馬鹿が。」
その直前。社の頭に衝撃が走る。何時の間にか背後にいたハジメが、社の後頭部を義手で引っ叩いたのだ。痛みに頭を摩りながら社が振り返ると、既に他の面々も集結しつつある。
「先走んなっつったよな?言い訳があるなら聞くぞ。」
「(指の)さ、先っちょだけ、先っちょだけだから!(霧の)中まで入ろうとはしてなかったから!」
「そうか、遺言はそれで良いな?」
「すみませんでした。」
ハジメにドンナーを向けられ、即座に謝罪する社。〝天祓〟を睨んでため息を吐いていた辺り、いざとなったら自分の手首ごと切り捨てるつもりだった事もハジメは見抜いていたのだろう。つくづく良く見ている友人だ、と反省しつつも内心で舌を巻く社。
「と、取り敢えず色々と試したが、霧が反応するのは植物だけみたいだ。魔物が花に寄生されてる事を見抜いて、対策する為にばら撒いたんだろう。」
「となると、『術師』はこの霧の中に居る可能性が高い訳か。・・・無視するのも手ではあるが。」
「本命はウィルさん達の捜索だからなぁ。冒険者の中に『術師』が居る可能性もなくは無いが、イルワさんからは特殊な技能持ちが居るとは聞いてないーーー全員、構えろ!空から悪意を持った奴が来るぞ!」
謎の霧について話していたのも束の間、何者かからの悪意を感知した社が声を張り上げた。突然の事に惚ける愛子達とは対象的に、ハジメ達は即座に構えをとった。社の焦り方から、生半可な相手では無いと感じ取ったのだ。
「ーーー見つけた。あそこだ!」
「俺の方でも補足した。・・・随分とデカくねぇか。」
最初にそれを捉えたのは〝悪意感知〟に加えて〝悟り梟〟を呼んでいた社だった。次いで〝魔眼鏡〟越しにハジメが空から近づいて来る存在を捕捉する。最初は小さな黒い点にしか見えなかったそれは、段々と肉眼でも見える程に大きくなっていく。元からサイズが大きいのもあるが、それ以上に物凄いスピードでハジメ達に近づいて来ているのだ。そして。
「グゥオオオオァアアア!!!」
全身を漆黒の鱗と蔦、そして極彩色の花で彩った金眼の〝竜〟が、天空から翼をはためかせながら咆哮した。
色々解説
・司令塔役(をやらざるを得ない)ハジメ
原作よりも人数に余裕あるのと、ハジメ以上に前衛に適性がある社が居るので、本作ではハジメが遊撃兼司令塔をやってる。と言うか、社はフィジカルに任せて雑に敵に突っ込んで蹴散らしていくし、それ以外の面子も司令塔の適性無いのでハジメがやらざるを得ない。
・愛子とクラスメイトがハジメに比べてあんまり社を心配してない理由
ハジメに比べてステータスが高いと言うのもあるが、何より性格がほぼほぼ変わって無かった事や、優等生なのが猫被りで図太い精神してるのがバレているので、ハジメ程には心配されてない。むしろ社と比較すると、よりハジメの変化が如実に見えるので、余計にハジメが心配されている。
・ハジメ達が目を離した隙にリストカット(真)しようとする社。
効率的だとか『呪術師』としてイカれてるだとか自己治療出来るとか仲間にやらせるよりはとか色々理由がある為、社は割と身体を張る事に関して躊躇が無い。ハジメ達も薄々気付いてはいるが、■■が目の前で死んだ事も理由の1つにあるので、長い目で見て矯正させるつもりではある。それはそれとして無茶をしたらキレもするし殴りもする。