ありふれない怨霊こそ世界最愛 作:白紙
★月□日 ウルの町・〝水妖精の宿〟より 滞在初日
数万にも及ぶ魔物の軍勢と、その他諸々を片付けてから早くも1日が経過した。本来なら俺達はとっくにウルの町を出立して、商業都市フューレンに向かっていた筈なのだが・・・色々な理由が重なり、数日程はウルの町に滞在する予定である。
魔人族の男の自爆ーーー道連れ目的と言うより、遺体を検分されない為の証拠隠滅に近いのだろうーーーを見届けた俺は、『呪力反転』で怪我を治癒しながらハジメ達の下へと帰還した。幸いな事に傷跡1つ残らなかったものの、少なくない量の出血により服が血でベットリだったので、合流直後は割と本気めに心配させてしまった。特に血を見慣れていない愛子先生とクラスメイトの皆は、顔面を蒼白にして取り乱していたので悪い事をしたかも知れない。正直スマンかった。
肝心のウルの町の住民はと言うと、俺達が魔人族率いる軍勢を退けた後も半信半疑のまま暫く呆けていた。まぁ、こんな絶望的な状況で住民どころか町すらも壊されず助かったのだ。気持ちが追いつかないのも分かる。だが、ハジメが〝外壁〟の一部を元に戻し魔物達が消え去ったのを直接目にした事、何より愛子先生が民衆に向けて勝利宣言をした事で、現実感が戻ったのか少しずつどよめきが広がり最終的には莫大な歓声が上がった。
その後、日が登っている内に復興作業(町中に侵入された時の為のバリケードやらの片付け)が行われた。後で聞いた話によると、愛子先生と共に園部さん達〝愛ちゃん護衛隊〟も復興のお手伝いをしていたらしい。戦場に直接立たなかったとは言え、迫り来る数万もの魔物を目にしたのは耐え難いストレスが掛かっただろうに、それでも甘えず出来る事をしようとする精神性は本当に高潔だと思う。・・・そんな美点があるからこそ、偽りとは言え〝神の使徒〟として呼ばれたと考えると凄まじく皮肉が効いているが。
意気揚々とウルの町の住民が復興作業を進めていた一方で、俺達は残党である〝寄生花〟付きの魔物、改め〝花付き〟狩りをする事に。粗方殺し尽くしたとは言えまだ生き残りが居ないとは限らないし、何より野生化&繁殖なんてされようものなら悪夢でしか無い。後々の禍根とならない様に、文字通り芽を摘んでおこうと言う訳である。〝花付き〟は特殊な悪意を持っているから、俺なら簡単に見分けがつくしな。
で、結論から言えば〝花付き〟の生き残りは居なかった。居なかったのだが・・・それは逃げ出した奴が皆無だとか、俺達で全ての〝花付き〟を狩り尽くせたからでは無い。〝寄生花〟が取り付いた魔物の全てが、
変死と言っても今の所分かっている事は少ない。精々が〝寄生花〟と一緒に枯れたミイラの様な死骸になってたのと、他に目立つ傷が見当たらなかったから変死と判断しただけだしな。だが、何故そうなったかは分からなくとも、
仮に〝寄生花〟を子機とした場合、中野達が持っていた杖は親機に当たる物なのだろう。あれだけの数の魔物を強化・支配するのだから専用のデバイスがあっても不思議では無いし、親機を壊されれば子機も使えなくなる位のデメリットがあるのも当然だとは思う。シンプルに考えれば「親機を壊しさえすれば〝花付き〟達は一掃出来る」事は俺達にとっては朗報でしか無いが・・・問題は、この仕様が『縛り』に近いものである可能性がある事だった。
大前提として〝花付き〟の魔物達含めた中野や魔人族、そして〝神の眷属〟からは一切『呪力』を感知していない。『呪力』の感知が苦手な俺だけで無く、アルさんやフマリスさんも感じなかったと言ってたから、そこは間違い無いだろう。よって、もし『縛り』かそれに近い技術が〝寄生花〟に使われていた場合、魔人族は
我ながら発想の飛躍が過ぎるんじゃないかと思わないでもないが、筋が通らない訳でも無いのだ。何せ魔人族側から見て、親機を壊されるデメリットが余りにも大きいからだ。どれだけ大量の魔物を強化・支配出来るからと言って、親機を壊されたらそこで終わりなんてのはリスキーが過ぎる。こんな分かりやすい欠点を直さないとは流石に考え難いので、恐らくは『縛り』に近い型でデメリットとして組み込み、強化や支配の幅を底上げしているのだろう。〝寄生花〟の仕様上避けられない欠点である可能性もあるが、そんな半端な物を実践投入するとは考え難いしな。
問題は一部だけとは言え魔法で『呪術』の再現が出来るかと言う点だが。まぁ、これは出来ても不思議では無いだろう。何せ■■ちゃんが『呪術』で魔法の再現を行なったのだ。その逆が出来ない道理は無いし、何より魔法は『呪術』とは比較にならない程に汎用性・応用性に優れている。それを考えれば、『縛り』の再現も不可能では無いのだろう。
常々思っていた事ではあるが、魔法と言う技術は汎用性の一点に於いて圧倒的に優れている。それこそ『呪術』では足下にも及ばぬ程にだ。『呪術』の場合『術式』は勿論の事、『呪力』の量や操作精度に出力等、個々人の才覚で結果にムラが出るので、兎に角安定しないと言うか平均化が難しい。ところが魔法の場合、魔法陣と魔力さえあれば誰でも魔法が使えるのだ。多くの人が使えると言う事は、それだけ技術が進歩し易い・磨かれ易いと言う事でもある。分母の多さがそのまま強みになっている典型だろう。
とは言え、『呪術』が魔法に劣っているかと問われれば、それも違うと言えるだろう。色々と違いはあるが、分かり易いのは『呪力』そのものが持つ攻撃能力。そして『術式』の種類にもよるだろうが、時として魔法以上に理不尽な能力を発揮する事だろうか。
魔力はこの世界の凡ゆるエネルギー源として使える性質上、明確な指向性を持っていない為にそれ単体だとほぼ無害である。いや、燃料やらに使うエネルギーが簡単に燃えたり爆発したり毒化したりするのは危険だから、それは良い事ではあるんだけど。ハジメがドンナーで魔力を撃ち出しても、痛いだけで身体に傷一つ付かないのはそれが原因だろう。痛み自体も撃ち出された魔力と体内の魔力が干渉しあった結果であり、純粋な魔力そのものは害になり難い様だ。
一方、『呪力』は負の感情から生み出されるだけあって、力の方向性が破壊や殺傷など敵を害する方向に振り切れていたりする。その代わり魔力よりも安定性は無いが、それを補って余りある程の威力が『呪力』そのものにあるのだ。『呪力』を纏って殴るだけで並の魔法と同等以上の破壊を生み出せるのだから、その力は推して知るべしだろう。
で、『呪術師』の要となる『術式』についてであるが。先も述べた様に、『術式』は時として魔法以上に理不尽な結果を齎す事が多いと個人的には感じている。アルさんの『
この2つの違いについてもある程度推測は出来ている。オスカーの隠れ家に残っていた記録とミレディの話を統合するに、〝神代魔法〟は世界の
翻って『呪術』は、あくまでも俺個人の解釈だが〝『
恐らく〝寄生花〟は魔人族側の切り札だ。これからも俺達の前に立ちはだかるであろう事を考えれば、その情報には値千金の価値がある。解析時に何が起きるか分からないので俺やハジメに立ち会う事を求められたが、その程度ならお安い御用である。
片付けやら明日以降の予定の打ち合わせが終わり日も暮れた後は、ウルの町の広場で祝勝会が開かれた。あんまり派手なのは愛子先生を筆頭に遠慮したらしく、キチンとした宴(正式に町の祝日にするらしい)は退避した住民が帰って来てから改めて行うのだとか。
愛子先生が始まりの音頭を取ると、喜びの声と共にあちこちで乾杯したり料理を味わうウルの町の人々。先に避難した住民は本当に最低限の荷物しか持っていかなかったので、食料なんかも結構な量が余っていた。このままでは悪くなりそうな物がチラホラあったと言う事情もあり、大盤振る舞いされた訳である。
あんまり目立つのもガラじゃ無いと思い、愛子先生を生贄矢面に立たせた後、俺はアルさんやフマリスさんと共に壁の花に徹していた。が、10分もしない内に普通に他の住民達に捕まって、そのまま揉みくちゃにされる事態に。やんわりと「愛子先生の方に行ってくれません?」的な対応はしたのだが全く聞き入れては貰えず、寧ろ遠慮してると思われたのか片っ端から料理を勧められる始末である。いや、美味しかったけども。アルさんとかは目を輝かせて次々と平らげていたけども。フマリスさんもマイペースに色々飲み食いしていたけども。俺自身、他人の為に戦う人間では無いので、こうも悪意無く純粋に多くの人にお礼を言われるのはどうにも慣れないものがある。
料理を食べつつ他のメンバーの方に目を向けると、皆それぞれ住民達と交流をしていた。料理に舌鼓を打ちつつ、周囲の人々を面倒くさがりながらも邪険にしきれないハジメ。その隣で同じ様に料理を味わいながら、偶にハジメと食べさせ合いっこをするユエさん。反対側でハジメにちょっかいを出しつつ、時折料理のレシピを住民に聞いているシアさん。そんなハジメ達のあれこれを、その更に隣で微笑ましそうに見ているクラルスさん。何とも平和な一幕であった。宴が始まる前はシアさんやアルさん達が亜人族である事を理由に何か言われるかとも思ったが、杞憂だったらしい。
ハジメが住民の人達を無視しきれないのは、善意10割で代わる代わる感謝を伝えられ困惑しているからだろう。この世界に来てからと言うもの、俺達は数え切れない程の敵意や悪意に晒されてきた。ハウリア族なんかの例外もあるが、善意や好意を向けられた回数は圧倒的に少なかったのだ。自分達の行いが必ずしも他者の感謝に繋がる訳では無いが、それでも誰かの為に成した事は感謝として返って来るのだと、今のハジメには身に染みて伝わっている筈。少しずつで良い、ハジメの心に余裕が出来る事を祈っておこう。
★月δ日 ウルの町・同じく〝水妖精の宿〟より 滞在2日目
本日〝寄生花〟の解析を行なった結果、「〝寄生花〟は未知数の魔法によって創造、無いし改良された魔物である」と言う結論が出た。1日でそこまで分かるのかと言う疑問はごもっともだが、そこは生産チートの〝作農士〟だけあって
何でも先生曰く「〝作農士〟が持つ技能では不可能且つ有り得ない程に、複雑な改良が幾度も行われた形跡があった」らしく、「〝作農士〟の技能では再現や復元は不可能である」のだとか。〝作農士〟の技能による過度な干渉も難しく、基となった植物は何なのか、或いは一から生み出された全く新しい植物なのかも未知数らしい。
恐らく、と言うか十中八九、〝寄生花〟の創造に使われたのは〝神代魔法〟だ。ミレディから七大迷宮の在処を聞いた際、魔人族領にも迷宮が存在すると言われていたので、魔人族の誰かが攻略に成功したのだろう。流石にどんな魔法が手に入るかまでは分からないが、察するに生物に干渉出来る魔法だろうか。魔物を操れる魔人族が魔物を強化する術すら手に入れたのだから、中々に厄介である。
幸運だったのは〝寄生花〟の寄生方法も判明した事だ。どうやら〝寄生花〟は種子を直接植え付けた上で、宿主の魔力をある程度吸わせる必要があるらしく、個人差はあれど支配されるまで結構な時間が掛かるらしい。その間に種子を取り除くなり何なり出来れば支配はされないので、その点は間違い無く朗報である。愛子先生マジでGJ。
そんな感じで〝寄生花〟についてある程度の事が判明した訳であるが、今後の事を話し合う段階で少し意見が割れた。具体的には「〝寄生花〟の情報を
今回こそ被害らしき被害を出さずに撃退する事が出来たが、〝寄生花〟は今後間違い無く人間族側にとって脅威となるだろう。或いは、俺達の知らない水面下で既に被害が出ている可能性すらある。それ故、今回の一件で手に入った情報は一刻も早く王国やギルドを経由して伝達すべきではあるのだが・・・問題は、〝寄生花〟を解析したのが愛子先生である事だった。
解析を行なったのが愛子先生である事自体は何の問題も無い。寧ろ、〝豊穣の女神〟として社会的な知名度と実績と信用を持ち合わせている先生だからこそ、王国やギルドも〝寄生花〟の情報を真剣に扱ってくれるだろうからそこは別に良い。問題は愛子先生の戦争に於ける重要度が上がってしまうーーー身も蓋も無い言い方をすれば、愛子先生が危険視される可能性が格段に上がってしまう事だった。
もし〝寄生花〟を解析したのが愛子先生だとバレた場合、魔人族側は間違い無く愛子先生を最優先して殺そうとするだろう。唯でさえ希少価値の高い〝作農士〟でありながら、虎の子である〝寄生花〟の解析さえこなしたと言うのだ。先の魔人族の男の様に、執拗且つ手段を選ばずに愛子先生を殺そうとするのは、火を見るより明らかだろう。
魔人族側が〝作農士〟と〝寄生花〟の関連性に気付いているかは分からない。が、王国や各ギルドに情報を伝えた場合、愛子先生の仕業だと100%バレるだろう。人の口に戸は立てられないと言うし、何より人間族側に裏切り者が居ないとは口が裂けても言えない。特に王国のカス共は〝神の眷属〟辺りに聞かれればホイホイと有る事無い事喋り出すだろう。マジで塵屑ばっかだな。人間じゃなくて神の家畜を名乗れば良いと思う。
先程も述べたようにメリットもあるのだが、それ以上に愛子先生の身が危険に晒されるリスクが高い。その辺りの事情もしっかり伝えたのだが、「生徒が命を懸けているのに、どうして私だけが危険を冒さずいられるのでしょう」「私が命を懸ける事で、皆さんから狙いが逸れるのなら寧ろ好都合でしょう」と先生は頑なに意思を曲げようとしなかった。うーん、マジで覚悟決まってる。
その後も先生や〝愛ちゃん護衛隊〟の面々と色々話し合ったのだが、結局〝寄生花〟の情報は〝豊穣の女神〟名義で王国や各ギルドに伝達される事となった。正直、人間族側でどれだけ対策が出来るかは未知数だが、事前知識の有無だけでも大分違ってくるだろう。しっかり自衛して〝寄生花〟に支配されるなんて無い事を願おう。
★月Φ日 ウルの町・同じく〝水妖精の宿〟より 滞在3日目
諸々の予定が予想以上に手早く片付いた事もあり、俺達は明日の朝にはウルの町を出る予定である。問題の半分位は未解決だったり謎が増えただけだったが、今の所どうしようも無いので切り替えていくべきだろう。下手な考え休むに似たりだ。開き直りとも言う。
本日、日記に記そうと思うのは2点。まず、1つ目が〝
と言っても、別に襲われたりちょっかい掛けられた訳では無い。文字通り俺が寝ている時に夢を見て、その夢に〝
夢だとは分かったのは、自分の居る場所に見覚えが無かったからだ。周囲の風景や雰囲気は俺の実家の神社のそれに良く似ていたのだが、
で、そのまま「夢を見るのも久しぶりだなー」と呑気に構えていると、俺の目の前にいきなり〝
とは言うものの、〝
何でそんな事が出来るのかと聞けば、何でも〝
説明もそこそこに〝
斜め上に予想外な展開に俺がポカンとしていると、『呪具』達は地団駄を踏む様に自身で地面を叩きながら更に思念を飛ばして来た。俺も慣れないながら頑張って意思疎通を取り続けた結果、要約すれば「私達をもっと使えよ!」との事らしい。
思わず「いや、十分使ってるじゃん」と俺が口を滑らせると、「〝
〝
投げやりになる気持ちを何とか抑えつつ、「頼りにしてるのは事実」「これからはもっと頼らせてもらう」的な感じで言いくるめた宥めた結果、〝
そんなこんなで朝一から非常に濃ゆい体験をした訳であるが、残念ながら『呪具』達との対話は前座に過ぎなかった。結論から言えば、俺はその後ハジメ達に尋問される事になったからだ。
いやもう普通に油断してた。皆で朝飯を食べた後にハジメから「話がある」と言われて席に着いた瞬間、何処からともなく鎖が巻き付いて椅子ごと雁字搦めにされたのだ。
ユエさん達が何だ何だと様子を見に来たのも束の間、俺の向かい側に座ったハジメは「良い加減、お前が知る
とは言え、ハジメには俺と■■ちゃんのアレコレは包み隠さず伝えてある。不思議に思いつつもその旨を伝えると、ハジメは酷く真剣な顔で「お前の知る真実だとか、分かっている事実じゃねぇ。不確定な推測も含めた、
よりにもよってこのタイミングでか、と思わないでも無いがハジメとしては今ここを逃すと誤魔化されると踏んだのだろう。実際その通りではあるので、全くもって反論出来ないが。
騙し討ちに近い形でここまでされたなら普通は頑なになるかも知れないが、ハジメ達が俺への心配10割でやってるのは流石に分かる。なので、誤魔化さず洗いざらい正直に全てを話した。「俺の体質と怨霊である■■ちゃんの相性は最悪であり、詳細を思い出せない事も含め、かなり無茶な『縛り』をしているであろう」事。「刀に幾ら『呪い』を移しても底が見えず、正攻法ではどれだけ時間がかかるか分からない」事。そして、恐らくはと前置きをした上で「
肝心のハジメ達の反応だが、意外にも反応は真っ二つに分かれた。と言うか、見るからに動揺していたのはハウリア姉妹だけで、ハジメやユエさん、クラルスさんとフマリスさんの4人は割と冷静だった。特にハジメなんかは「あーコイツまぁたやらかしてやがる」と言わんばかりに呆れた目で俺を見ていたし。
ハジメ曰く「あれだけ無法な力を振るえるのだから、何かしらの代償があるのは察していた」との事。ぐうの音も出ない程の正論だったので思わず「デスヨネー」と軽口を叩いたら、割とマジで肩パンされたが。何時の間か尋問は拷問に変わっていたらしい。
ユエさんからは「・・・私達で解決方法を見つけるだけ」と無表情ながら力強いお言葉を頂いた。俺1人であっても諦めるつもりは毛頭無いが、それでもこうして惜しみなく力を貸そうとしてくれる人が居るのは望外の幸運だろう。本当に、ハジメは良い人を見つけたと思う。
意外と言うのは失礼だが、1番動揺していたのはアルさんだった。シアさんが最初こそ動揺していたものの、ハジメやユエさんの宣言を聞いて「私も当然協力しますよ〜!」と持ち直したのとは対照的に、アルさんは上の空と言うか心ここに在らずと言った感じだった。まぁ、それも少しの間で、すぐに気を取り直すと「アタシも、諦めないッスから」と静かに協力を約束してくれた。・・・端的な物言いとは裏腹に、沸々とした覚悟を感じたのは少しだけ気になったが。「覚悟とは!!暗闇の荒野に!!進むべき道を切り開く事だっ!」と言い出しても不思議では無い凄味があった様な・・・?まぁ、気のせいだろう。
今更言うのも何だが、本当に俺には勿体無い仲間達だと思う。彼女達と知り合えたのは、この世界に拉致られた事を差し引いてもお釣りが来る程に価値がある事だと改めて感じる1件だった。それはそれとして神は絶許だが。
で、その流れのまま俺はフマリスさんに〝魔法と『呪術』の融合〟について聞いてみた。シリアスな雰囲気が良い感じに纏まった矢先にこれなので、一同から「コイツマジか・・・?」みたいな視線を向けられたが全て無視した。俺は俺の事で真剣になられるのが苦手だからね、仕方ないね。
それで結論から言えば、フマリスさんから核心に至る様な話は聞けなかった。と言っても、話すのを拒否されたとかでは無く、フマリスさん自身も感覚的にしか把握できていないのだとか。曰く「実っkーーーもとい、鍛錬を続けていたら、何時の間にか出来る様になっていた」らしい。肝心な部分が聞けなかったのは残念だが、鍛錬で発現したのであれば十中八九〝派生技能〟だろう。本来なら増える事の無い〝技能〟では無い為、俺でも手に入る可能性があるのだ。ありがたい話である。
・・・こう書くのも失礼な話ではあるが、フマリスさんは本当に良く分からないタイプの人だ。俺がハジメ達のみならずクラルスさん達にも■■ちゃんの話をしたのは、2人が俺達の旅に着いて来る事がほぼ確定したからだ。そこに二心がある訳では無いし、お涙頂戴なんて欠片も思っていなかったが・・・クラルスさんがじんわりと憐憫や同情を俺に向けていたのに対して、フマリスさんは一切俺に悪意を向けていなかったのだ。
俺や■■ちゃんが全く眼中に無い・・・訳では無いだろう。互いに深く踏み込んではいないが、『呪術』に関する話はアルさんも含めて3人で結構盛り上がったし。フィクション特有の上位種に有りがちな「人間風情が」的な見下す感じもしない。かと言って俺や■■ちゃんに対して哀れみや悲しみを感じるでも無い。本当に謎である。まぁ、誰かに悪意を向けてる訳でも無いし、〝悪意感知〟自体がズルみたいなものなので気にするべきでは無いだろう。これから旅の道連れになろうとする人達に失礼を働くわけにもいくまい。
色々と予想外が重なったウルの町の滞在だったが、収穫も多かった。不安要素もないでは無いが・・・変わらず前に進むしか無いだろう。悠長に立ち止まっている時間など、俺達には無いのだから。