ありふれない怨霊こそ世界最愛 作:白紙
長くなってもエタるつもりは無いので、どうぞ長い目でお付き合い下さい
「倒壊した建物22棟、半壊した建物44棟、消滅した建物5棟、死亡が確認されたフリートホーフの構成員157名、再起不能66名、行方不明者209名・・・で?何か言い訳はあるかい、君達?」
「カッとなったので計画的にやった。反省も後悔も無い」
「はぁ~~~~~」
冒険者ギルドの応接室で、報告書片手にハジメを睨むイルワ。だが、槍玉に挙げられた筈のハジメは全く気にする様子も無く、出された茶菓子を呑気に摘んでいる。そんなハジメの膝の上には、海人族の幼女ーーーミュウが乗っており、これまた美味しそうに茶菓子を食べていた。こんな状況で無ければほっこりする絵面ではあるが、今後の対応を考えるとイルワとしては溜息しか出てこない。
「おいハジメ、そこは嘘でも反省するフリしとこうぜ。そっちの方が多少なりともウケが良い。ですよね、イルワさん?」
「本人を前にそんな遣り取りするなんて、相変わらず良い性格しているね、君達は。・・・まぁ、その子が無事だったのは良かったけれど」
結論から言えば、ミュウの救出は驚くほど速やかに行われた。シアからの情報を元に裏のオークション会場を突き止めたハジメとユエは、売り出される直前だったミュウを瞬く間に救出。即座に脱出すると、オークション会場を含めた裏組織(後で聞いた話によると、フリートホーフと言う名前らしい)の主要設備を〝雷龍〟により爆破解体したのだとか。一応、無関係の人達*1は一切巻き込んではいない為、イルワも絶妙に文句が言い難いらしい。
「・・・まさかと思うけど、
「・・・ミュウ、これも美味いぞ?食ってみろ」
「あ~ん」
(メアシュタットって、シアさんとのデートで行く予定だった水族館じゃなかったか?一体何したんだ?)
ハジメは平然とミュウにお菓子を食べさせていたが、隣に座るシアの目が一瞬泳いだのをイルワと社は見逃さなかった。理由は分からないが、ほぼ間違い無くハジメ達が原因だろう。*2深い、それはもうとても深い溜息を吐いたイルワの片手が自然と胃の辺りを撫でさすり、傍らの秘書長ドットがさり気なく胃薬を手渡していた。
「まぁ、やりすぎ感は否めないけど、私達も裏組織に関しては手を焼いていたからね。今回の件は正直助かったと言えば助かったとも言える。彼等は明確な証拠を残さず、表向きは真っ当な商売をしているし、仮に違法な現場を検挙してもトカゲの尻尾切りでね。はっきり言って彼等の根絶なんて夢物語と言うのが現状だった。唯、これで裏世界の均衡が大きく崩れたからね・・・はぁ、保安局と連携して冒険者も色々大変になりそうだよ」
「元々その辺はフューレンの行政が何とかする所だろ。今回は偶々身内にまで手を出されそうだったから、反撃したまでだし・・・」
「唯の反撃で、フューレンに於ける裏世界三大組織の1つを半日で殲滅かい?ホント、洒落にならないね」
フリートホーフの構成員は首領と幹部達は勿論の事、末端の構成員に至るまでが軒並み始末されていた。生き残りによる報復の防止と見せしめを兼ねて、社とフィルルがある種執拗なまでに狩り尽くした結果である。が、イルワとしては今後の事も考えると、純粋に喜んでもいられないのだろう。苦笑いしながらも一気に老け込んだ様に見えるイルワを見て、流石に可哀想だと思わない訳でも無いハジメは、社とアイコンタクトを取ると1つ提案をする。
「一応、そういう犯罪者集団が二度と俺達に手を出さない様に、見せしめを兼ねて盛大にやったんだ。支部長も俺らの名前使ってくれて良いんだぞ?何なら支部長お抱えの〝金〟だってことにすれば・・・相当抑止力になるんじゃないか?」
「おや、良いのかい?それは凄く助かるのだけど・・・そういう利用される様なのは嫌うタイプに見てたけれど?」
ハジメの言葉に、若干ながら意外そうな表情を見せるイルワ。だが、その瞳は「えっ?マジで?是非!」と雄弁に物語っている。イルワにしては分かり易い反応に、苦笑いしながら肩を竦めるハジメ。
「まぁ、持ちつ持たれつってな。世話になるんだし、それ位は構わねぇよ。支部長ならその辺の匙加減も分かるだろうし。俺らのせいでフューレンで裏組織の戦争が起きました、一般人が巻き込まれましたってのは気分悪いしな」
「・・・ふむ。ハジメ君、少し変わったかい?初めて会った時の君は、仲間の事以外どうでも良いーーーとまでは言わないけれど、それに近い考え方を持っている様に見えたのだけど。ウルで良い事でもあったのかな?」
「・・・俺としても、悪い事ばかりじゃ無かったよ」
流石は大都市のギルド支部長。相手の事を良く見ているらしく、ハジメの微妙な変化にも気が付いたらしい。イルワからしても好ましい変化だったので、ハジメからの提案を有り難く受け取ってくれた様だ。
因みに、その後フリートホーフの崩壊に乗じて勢力を伸ばそうと画策した他2つの組織は、イルワの牽制の甲斐あって大きな混乱を起こす事も無かった。唯、イルワが余りにも効果的にハジメ達の名を使ったせいか、〝フューレン支部長の懐刀〟とか〝白髪眼帯の爆炎使い〟とか〝幼女キラー〟とか色々二つ名が付くことになったが・・・ハジメの知った事では無いだろう。後々、その二つ名を聞いて爆笑した社はハジメにシバかれる事になるが、それも今はまだ関係の無い話である。
「話は変わりますが、理由があるとは言え俺達を無罪放免で済ませるとは思ってませんでした。それこそ、今回の騒動を不問にする代わりに、名前を使わせてくれ位は言われるものかと」
「それも考えたけれど、今回の1件は元を辿ればフューレンの問題だからね。多少強引だったとは言え、解決の立役者となった君達にこれ以上要求するのは実務的にも心情的にも良く無いと思ったのさ。それに、日頃から裏組織のやり方に腹を据えかねてる人達も多かったからね」
「あぁー、さっきの男臭いおっちゃんとかか」
「そうだね。因みに彼は保安局の局長だよ」
「成る程。だから、あんなご機嫌で入って来てサムズアップしてった訳ですか」
大暴れしたハジメ達の処遇については、イルワが関係各所を奔走してくれたのと、他でも無い保安局が正当防衛として不問としてくれたので特に問題にはならなかった。イルワの言う通り、保安局としても一度預かった子供を、保安署を爆破されてまで奪われたのが相当頭に来ていたらしい。そんな不倶戴天の相手を壊滅させてくれたハジメ達への対処が甘くなるのも、当然と言えば当然なのかも知れない。
「それで、そのミュウ君についてだけど・・・」
イルワの視線の先には、両手でお菓子を食べるミュウが居た。エメラルドグリーンの長い髪を揺らしながら頬をクッキーで膨らませる姿は、整った顔立ちも合わさって可愛らしさに溢れている。乳白色のフェミニンなワンピースも良く似合っており、着替えを選んだシアのチョイスが光る一品だろう。耳の部分には扇状のヒレが、小さな指の間には薄い膜が付いており、どんなに小さくともミュウが海人族である事を示していた。自然と周囲から視線が集まり、それに気付いてビクッと反応するミュウ。
「こちらで預かって、正規の手続きでエリセンに送還するか。それとも君達に預けて依頼という形で送還してもらうか・・・2つの方法がある。君達はどっちが良いかな?」
「俺達が送っても問題無いのか?」
「勿論。今回の君達の暴れっぷりも、ミュウ君の保護が目的だったろう?それに、今後の事で私達も忙しくなる。それなら、いっその事、任せても良いんじゃないかと言う話になってね」
「ハジメさん・・・私、絶対、この子を守ってみせます。だから、一緒に・・・お願いします」
イルワの話を聞いて、いの一番にシアがハジメに頭を下げる。どうしても、ミュウが家に帰るまで一緒にいたい様だ。他の面々はハジメの判断に任せる様で、沈黙したままハジメを見つめている。
「お兄ちゃん・・・一緒・・・め?」
自分の膝の上から上目遣いで「め?」とか反則である。と言うより、ミュウを取り返すと決めた時点で「本人が望むなら連れて行っても良いか」とハジメは考えていた。結論は既に出ている。
「まぁ、最初からそうするつもりで助けたからな。ここまで情を抱かせておいて、はいさよならなんて真似は流石にしねぇよ」
「ハジメさん!」/「お兄ちゃん!」
満面の笑みで喜びを露わにするシアとミュウ。【海上の都市エリセン】に行く前に【大火山】の大迷宮を攻略しなければならないが、「まぁ、何とかするさ」とハジメは内心覚悟を決める。
「ただな、ミュウ。そのお兄ちゃんってのは止めてくれないか?普通にハジメで良い。何と言うか。むず痒いんだよ、その呼び方」
喜びをそのままに抱きついてくるミュウに、照れ隠し半分にそんな事を要求するハジメ。元(と言うより今も)オタクなだけに〝お兄ちゃん〟という呼び方は色々とクルものがあるらしい。
ハジメの要求にミュウはしばらく首を傾げると、やがて何かに納得した様に頷きーーーハジメどころかその場の全員の予想を斜め上に行く答えを出した。
「・・・パパ」
「・・・・・・・・・な、何だって?悪い、ミュウ。よく聞こえなかったんだ。もう一度頼む」
「パパ」
「・・・・・・そ、それはあれか?海人族の言葉で〝お兄ちゃん〟とか〝ハジメ〟という意味か?」
「ううん。パパはパパなの」
「うん、ちょっと待とうか」
希望的観測が潰え、思考が止まったハジメが目元を手で押さえ揉みほぐしている内に、いち早く復帰したシアがおずおずとミュウに理由を聞いてみる。
「え、えーと、どうしてハジメさんが〝パパ〟なんです、ミュウちゃん?」
「ミュウね、パパいないの・・・ミュウが生まれる前に神様のところにいっちゃったの・・・キーちゃんにもルーちゃんにもミーちゃんにもいるのに、ミュウにはいないの・・・だからお兄ちゃんがパパなの」
「何となく分かったが、何が〝だから〟何だとツッコミたい。ミュウ。頼むからパパは勘弁してくれ。俺は、まだ17歳なんだぞ?」
「やっ、パパなの!」
「オイオイ、こんな小さな子のお願いを断るのか?良いじゃあ無いか、こんな可愛い子供が出来たら、きっと
「確かにあの2人なら大はしゃぎーーー違う、今はそう言う話じゃない!分かった、もうお兄ちゃんで良い!贅沢は言わないからパパは止めてくれ!」
「やっーー!!パパはミュウのパパなのーーー!!!」
その後、あの手この手でミュウの〝パパ〟を撤回させようと試みるハジメだったが、ミュウ的にはお兄ちゃんよりしっくり来たらしく意外な程の強情さを見せて拒否していた。結局、撤回には至らず「エリセンに送り届けた時に母親に説得してもらうしかない」と、渋々ハジメは引き下がった。「奈落を出てから1番ダメージ受けた顔してた」とは社の弁である。
「それで?こんな時間に態々俺だけ呼び出して、一体何の用だい?フィルルさん」
時刻は深夜。日本で言えば草木も眠る丑三つ時に、テーブルを挟んで向かい合う1組の男女。一見すれば恋人同士の密会にも思える光景ではあるが、生憎とそんな甘い雰囲気が漂っている訳では無い。少なくとも呼び出される心当たりの無い社は、怪訝そうな表情を隠していなかった。
「そう警戒なさらないで下さい。別に取って食べよう等と考えている訳では御座いませんよ?」
「別にそこまでは思って無いけど・・・」
「であれば、少々お付き合い下さいませ。今、寝付きの良くなるお茶をお淹れしていますので」
ニコニコと笑みを浮かべながらお茶の準備をしているフィルルを見て、より困惑を深める社。2人が居るのは、先日より宿泊している2つのVIPルームの内の1つである。他の面々はミュウたっての希望で全員同じ部屋で川の字になって眠っており、図らずも空いた部屋に社は呼び出されていた。
(・・・緊急の相談では無さそうだし、気を張る必要も無いか)
「お待たせしました。どうぞ、お召し上がり下さいませ」
「どうも。・・・おぉ、凄い不思議な香りと味。初めて飲んだけど、美味しいわ」
勧められるままに口にしたお茶の味に目を見開く社。元の世界で言う所のハーブティーの様な物だろうか。透き通る様な紅色をしたお茶は、柑橘類に似た香りとは裏腹に酸味が無く、アッサリした甘味と僅かな渋みが調和した飲み易い味わいだった。社も詳しい訳では無いが、恐らくは
「お口に合った様で何よりですわ。こう見えて
「色々手広く育ててる訳だ。この茶葉もフィルルさんの手作り?」
「・・・・・・えぇ。我ながら良く出来た一品であると自負しております」
(今一瞬、変な間があったか?)
フィルルの反応に違和感を覚えつつも、
「竜人族の里を旅立った際は、一体どうなる事やらと不安もありましたが・・・フフフ、まさかこんな愉快な旅路になるとは思ってもいませんでした」
「愉快の一言で済ませるには中々に問題が無いだろうか。主に貴女のご主人様とか」
「お嬢様のアレは、まぁ、放置でよろしいかと。隠れ里と言う性質上、余り目立つ訳にもいかず刺激に飢えていた事も原因でしょうし。南雲様には申し訳ありませんが、暫くはお付き合いいただくしかありませんわ」
「あのドマゾっぷりをそんな適当に流すの???」
余りの素っ気無さに唖然とする社だが、一片の曇りも無い笑みを浮かべて首肯するフィルルを見るに、ティオのドM化に関しては本当に何とも思っていないらしい。以前より何度か話題に上げてはいるものの、こうまで放任気味なのは社としても驚く他は無かった。
「さて、このまま談笑するのも魅力的では御座いますが、貴重な睡眠時間を削って頂いている手前、そろそろ本題に入りたいと思います。と言っても、今から幾つか質問をするので、それにお答えして欲しいだけなのですが。宜しいですか?」
「・・・構わないよ」
フィルルの放任主義っぷりに停止していた思考を無理矢理起こした社は、背筋を正して向き直る。切羽詰まった雰囲気では無いものの、それでもフィルルが真剣な態度と表情をしているのが良く分かったからだ。この場でそれを茶化そうとする程、社も空気が読めない子供では無い。
「ありがとうございます。では、1つ目の質問です。
「正直に言えば、どうとも考えていない。俺は身内・友人に害が無ければ、他人がどうなろうと気にしないタチだし。無関係の善人ならまだしも、殺されて当然の悪人なら尚更ね」
「・・・・・・即答なさるのですね。
「そこまででは無いけど、まぁまぁ分かり易かったかな」
自嘲する様に微苦笑するフィルルに対して、ヒラヒラと手を振りながら事も無げに答える社。夜遅くに別の部屋へ呼ばれた時点で、人に聞かれたく無い話をするつもりなのは何となく分かっていた事だった。加えて呼ばれたのが社のみであった事も加味すれば、話題の中身も想像がつき易いと言うものだろう。最も、何故そんな質問をしたのかまでは分からないが。
「確かに露骨ではありましたか。・・・それならば、
「・・・強いて言えば、言う必要が無いからかな。フィルルさんの遣り方が効率的だったのは本当だし、自分の楽しみを優先している様にも見えなかった。仕事をキッチリ
2つ目の質問にも淀み無く返答する社に対して、真剣な表情で顎に指を添えて考え込むフィルル。返答に若干の間が空いたのは、どう答えるべきかに悩んでいただけで社が答えそのものに迷う様子は無かった。この質問もまた、社にとっては想定内であったのだろう。
「・・・では、次の質問です。もし、宮守様が今飲んでいるお茶に、毒が盛ってあると言ったらどうなさいますか?」
「おぉっと、その質問は予想外。んー・・・多分、ナイスジョークって言って笑うかな」
「疑いもせず、と。何故でしょう?」
「何故、と言うと?」
「
何時に無く饒舌なフィルルに、多少なりとも面食らう社。常に慌てず騒がず、余裕を持って優雅に
「んな事言われてもなぁ。そもそもの話、俺としてはフィルルさんを疑えって方が難しいし。・・・もしかして、自覚無い?」
「・・・何の、でしょう?」
「いや、フィルルさんはこれまで1度も、
さも当然の様に社の口から出た言葉に、目をパチクリさせながら呆気に取られるフィルル。どうやら彼女にとっては心底予想外な答えだったらしく、そのまま目を泳がせたりティーカップを無意味に掴んだり戻したりする姿からは、何時もの余裕ある
「・・・・・・
「少なくともこのタイミングで嘘を吐く程、俺の性根は腐ってないつもりだけど。と言うか、本当に自覚が無かったのか」
「・・・えぇ、恥ずかしながら。宮守様の事も疑ってはおりませんが・・・」
「正確には一定量以上の悪意を向けていない、と言うべきかな。何方にせよ、何かやらかすんじゃ無いかって程の悪意は感じてないから、俺から何か言う事は無いよ」
社の経験上、極端に悪意を抱きにくい人間は居ても、悪意を全く抱かない人間は居ない。それ故、社が重要視しているのは悪意の有無では無く、〝一定量以上の悪意の有無〟と、それに付随する〝一定量以上の実害の有無〟、そして〝それら2点が自分の身内に向くか否か〟だった。それら全てをフィルルは今まで1度足りとも満たしておらず、そんな相手を疑う理由は社には無かった。*5
社の答えを聞き、目を瞑り再び考え込むフィルル。形の良い眉を曲げて真剣に悩む姿は、正しく〝絵になる〟と言う表現に相応しい魅力的な姿であった。惜しむらくは、それを見ていたのが「美人だと悩んでる姿も様になるんだなぁ」程度の感想しか抱けない社だった事だろうか。そのまま静寂が部屋を包む事数分、目を開けたフィルルが口を開く。
「・・・・・・長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。質問は以上となります」
「そっか。ご馳走になった分くらいは力になれたかな?」
「えぇ、とても。
「構わないよ。ここまで来たんだ、満足するまで付き合うよ」
更なる相談事を持ちかけるフィルルに、最後まで向き合う事を快諾する社。表情から険しさが取れたのを見るに、彼女の中の疑念は無くなったーーーとまではいかずとも、一応の決着がついたのだろう。終ぞフィルルが何に悩んでいたのかまでは分からなかったが・・・問題が解決したのであれば、それに越した事は無い。「最低限の役目は果たせた」と少しの安堵と共に肩を回す社だったが。
「では、お言葉に甘えましてーーー是非、
「成る程、フィルルさんのご主人様にーーーなんて???」
予想だにしない爆弾発言に、思わず間抜けな顔を晒してしまう社。然もありなん、社からしてみれば完全なる予想外、晴天の霹靂も良いところである。会話の流れをブッタ斬る斜め上の発言に思わずフィルルの顔を凝視する社だが、当のフィルルは至って真剣な様子。間違っても伊達や酔狂で言っている様には見えない。
「・・・・・・ごめん、よく聞こえなかった。もう一度言ってもらっても?」
「申し訳ありません、混乱を招く言い方をしてしまいました。より正確にお伝えするならば、宮守様に
「?????????」
フィルルの説明を聞き、宇宙猫宜しく脳内が疑問符で埋め尽くされる社。より詳細な説明を聞いたは良いものの、フィルルが何を言ってるのかサッパリである。恐らく先程の問答が原因ではあるのだろうが、それにしたって出力の仕方が意味不明過ぎた。頭を抱えたくなる気持ちを無理矢理抑え込んだ社は、フィルルの真意を問うべく恐る恐る質問する。
「OK分かった。取り敢えず1つずつ聞いていこう。まず初めに、その見定めるってのは?」
「言葉通りで御座います。
「フィルルさんの事を?どうやって?」
「
どうにも要領を得ない答えに口を噤んでしまう社。フィルルの言葉は抽象的且つ曖昧であり、ともすれば口八丁で煙に巻くのが目的だと思われかねないものだ。だが、そんなものは邪推でしか無いと確信できる程に、フィルルの言葉には切実な思いが込められている様にも感じられる。
「・・・念の為聞くけど、見定めて欲しい理由ってのは?」
「申し訳ありません。今は未だ、
「・・・・・・・・・」
深々と頭を下げるフィルルに対し、社は押し黙る事しか出来ない。曰く「見定めて欲しい」との事だが、それがフィルルにとってどれほどの意味を持ち、どんな目的で何を求めているのかを一切推し量る事が出来ていないからだ。フィルルに悪意が無いのは確かだが、自己申告の通り愉悦の為に何かを企む可能性も0とは言えない。
そもそもの話、対価としてフィルル自身を差し出されても、
(・・・祖父さんや八重樫の人達には、■■ちゃんに憑かれた俺がこんな風に映っていたのかね)
社が思い出すのは■■に取り憑かれて暫くした後の自分自身。「■■ちゃんをどうにかして助けたい」と我が身を顧みず
「・・・・・・・・・分かった、『縛り』を結ぼう。但し、内容は変えてもらう」
先程とは立場が逆になった様に、長い長い沈黙を貫いた後で漸く口を開いた社。フィルルの望みが一体何処にあるのか欠片も見当は付いていないが、それでも自分だけが手を差し伸べて貰ったままと言うのは余りにも筋が通らない。それに、フィルルが自身の願いに懸ける思いと覚悟は社にも否定出来ない。我が身を躊躇無く差し出す程の願いは、社にも十二分に覚えがあったから。
「畏まりました。とは言え、
「いや、別にそんな無茶言わないから。俺がフィルルさんに対価として望むのは唯1つ。貴女が持つ
社の要求を聞き、呆気に取られた様に目をパチパチと瞬かせるフィルル。どんな要求でも呑むつもりだったのが、予想以上に軽い内容で肩透かしを食らったらしい。
「・・・・・・それなら、先程言った様に
「いや、別にそこまで望んで無いし・・・そんな『縛り』結ぶ程、鬼畜な男になりたく無いし・・・って、何でそこで笑う?」
「クフフッ、いえ、つい可笑しくなってしまって。やはり
「???」
先程までの真剣な表情が嘘の様に、心底愉快そうに笑うフィルル。一体、今の会話の何処が彼女の琴線に触れたのだろうか。相も変わらず掴めない
「さて、
「そうだね。近い内にハジメからユエさんには伝えるだろうから、まだ何とも言えないけど・・・恐らく、フィルルさんの知識が必要になると思う」
「そして宮守様が求めているのが、コレですか」
「正解。まぁ、ウルの街でアレだけ分かりやすい反応してればバレバレだよなぁ」
フィルルから机の上を滑らせる様に渡された薄い板を、社は受け取ると興味深く見つめる。手のひらサイズの銀色をした板ーーーイルワからの報酬であるステータスプレートには、社が求めて止まない可能性が映っていた。
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フィルル・フマリス 540歳 女 レベル:82
天職:呪術師
筋力:1080[+竜化状態6840]
体力:730[+竜化状態4380]
耐性:840[+竜化状態5040]
敏捷:1000[+竜化状態6000]
魔力:2860
魔耐:3500
技能:竜化[+魔力効率上昇][+身体能力上昇][+咆哮]・呪力生成[+呪力操作][+魔呪渾一]・呪術適性[+呪毒操術][+呪毒生成]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮]・水属性適性[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇]・土属性適性[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇]・複合魔法
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「〝
「謹んでお受け致します。代わりにどうか、
「分かった。俺なりのやり方にはなるけど、出来る限り真剣に見定めると約束しよう」
「えぇ。こちらこそ是非、宜しくお願い致しますわ」
お互いの答えを聞き、
「因みにですが、今後の呼び方はどうされますか?ご主人様、我が
「確実に厄介事になるんでやめて下さい」
色々解説
・実は原作より酷い目にあってるフリートホーフ
社とフィルルが見せしめ兼報復を封じる為に、構成員の被害人数が原作よりも増えている。が、その上でハジメ程派手にやった訳では無いので、厨二病な渾名が付いたのはハジメだけだったりする。ハジメは泣いていい。
・フィルルが構成員を苦しめ愉しんでいた事実をハジメ達に話さない訳
フィルルに話した事も本心ではあるが、それ以外にもユエに気を遣って言わなかった面もある。憧れの竜人族が方向性の違いはあれど、2名とも変態疑惑があるのを知ればユエがショックを受けるのは目に見えているので。
・フィルルの〝見定め〟について
具体的には今後語られる予定。この辺は割とフィルルの根幹に関わる部分なので、いずれしっかり描写します。