ありふれない怨霊こそ世界最愛   作:白紙

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1章.異世界召喚
9.異世界より①


▲月〇日

 

 異世界転移である。いや正確には異世界召喚か。

 

 ・・・自分の中で状況を整理するために、こうして日記を書いてはいるが、正直な所俺も事情の全てを把握しきれている訳じゃあない。分かるのは、このままであれば俺達が勇者だの神の使いだのと耳障りの良い言葉に乗せられて、戦争の道具にされると言う事だけだ。

 

 

 

 だが、()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 恐らくこの世界は、俺達の住んでいた世界とは全く別の文化・文明が発展している。■■ちゃんの持つ『呪力』が強力すぎるせいで、自分自身と■■ちゃん以外の『呪力』を感知する能力がザルに等しい俺ではあるが、その欠点を埋められる位には鋭い五感を備えている。転移寸前まで異常に全く気付かなかったとしても、怪しい人間や『術式』を見たら流石に違和感は覚えただろう。それが無かったと言う事は、俺達の転移に使われた技術は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()調()()()()()()()()、世界の壁を超えるだけの奇跡を起こせるモノなのだろう。

 

 もし、この力をこの世界で学ぶことが出来たのなら。もし、この力の一端でもモノにできたのならば。

 

 ーーー或いは■■ちゃんを、■■ちゃんの呪いを解く手立てとなりうるかもしれない。

 

 こんなチャンスはもう二度と現れないだろう。この機会を逃すわけにはいかない。多少の無理無茶無謀は許容して、あらゆる可能性を探すべきだろう。ーーーたとえどんな手段を使ってでも。

 

 

 

 

 

追記.一夜過ごして日記を見返したら、ゲームとかでよくある【悪落ち&敵対からの破滅というトリプルコンボ決める、元味方現敵が残した日記】みたいになってることに気づいた。流石に爺さんや義妹達、両親に顔向けできない様な事するのは不味いので、ほどほどに手段を選んで、じっくりと腰を据えて取り組みたいと思う。

 

 

 

▲月◎日

 

 ヤバい。この世界ヤバい。というか控えめに言ってもこの世界詰んでるかもしれない。

 

 ・・・焦ったところで事態が好転する訳でもない。冷静に、今書き出せる部分から書いていこう。

 

 今日の日付は、前回の日記を書いた日ーーーつまり転移初日の夜ーーーから約半月後。結構な間が開いてしまったが、正直日記どころでは無かった。今も、一時的に自分の周囲にのみ『(とばり)』(『呪力』を使った結界)を下ろし、その中を『(くゆ)(きつね)』の煙で満たす事で、二重のカモフラージュをしながら日記を書いている。が、これもどこまで通じるやら。

 

 取り敢えず、この半月足らずである程度この世界の事情を把握した訳だが。悲しい事に、この時点で既にここがロクでもない世界であるという確信がある。

 

 理由はいくつか有るが、まず第一にこの国、と言うよりこの世界では、教皇が王より上の立場である事。

 

 書いている最中でさえ思うことだが、コレヤバいだろ。要するに神>教皇>王ってな感じで権力を持つ事になっている訳だ。俺たちの世界ですら、神の存在するしないに関わらず、神の名の下であれば異端審問と言う形で人殺しすら許容された歴史があると言うのに、この世界では本当に神が実在している。神の名を出せば何しても良いとか言う狂信者が生まれる土壌は十二分だ。神のお告げにしたって、告げられた側の解釈一つで簡単に曲解できる不安定極まりないものだというのに、そんなもののせいで文字通り国家の行く末が変わるのだから狂ってるとしか言いようが無い。

 

 挙句、この教皇(イシュタルと言うらしい)とやらも中身が腐っている。あのハゲ教皇曰く、俺達を呼んだのはエヒト神とやらの仕業らしい。しかも、戦闘経験すら無い、この世界の事情には全く関係の無いはずの素人約30人を無許可で呼び出した上、悪びれもせずに「神のために戦え(意訳)」とか抜かしていた。頭の痛い事に、このハゲ本気で俺達が神のために戦えるのは本望であると思い込んでやがる。教皇も狂信者共も、あいつら皆、出来る限り苦しんで死ねばいいのに、クソが。

 

 次に第二の理由。それはステータスプレートなる物の存在である。

 

 これは12cm×7cm位の銀色のプレートであるのだが、表面に刻まれた魔法陣に血を垂らす事で所有者の情報が登録、表示される。登録される情報は、名前、年齢、性別の他、登録者の客観的なステータスを可視化したもの(具体的には、レベル、天職、6つの基礎ステータス、技能)の合計7種。これらがこの世界における最も信頼のある身分証明書になる。因みにすぐ下に書いたのが登録時の俺のステータスである。記録として念のため記しておいた。

 

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宮守 社 17歳 男 レベル1

天職:呪術師

筋力:300

体力:300

耐性:400

敏捷:350

魔力:10

魔耐:200

技能:宿聖樹[+被憑依適性][+■■■■憑依]・呪力生成[+呪力操作][+呪力反転]・呪術適性[+式神調]・全属性耐性・物理耐性・呪術耐性・剣術・剛力・縮地・先読・悪意感知・言語理解

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 ステータスが魔力を除き勇者である天之河の2~4倍である事とか、技能:宿聖樹とか[+■■■■憑依]とか、我ながらツッコミ所しかないステではあるけどそこはひとまず置いておくとして。このプレート、肝心の原理がわからんらしい。現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具をアーティファクトと呼ぶらしく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだとか。

 

 

 マジざけんな。こんな明らかに、金にも権力にもなる様な物、貴族だの商売人連中が放っておく訳ねーだろ!どう考えてもタダで広く普及させる訳がねー!まず単純にプレート自身を高額で売り飛ばしても良いだろう。自らの天職を知りたい人間にとっちゃ喉から手が出るほど欲しい代物だろうし、自らの強さが知りたい、或いは誇示したい人間も同様に欲しがるだろう。数を絞れば、持っている事自体がステータスという事で自己顕示欲の強い貴族なんかにも飛ぶ様に売れるだろう。実際に機能は便利ではあるしな。

 

 或いはプレート自体を独占する事で、天職判別の専門機関を作っても良い。高額で天職判別を請け負うことで、金と信用を集めつつ、裏では自分達に都合の良い人間に、本人の望む天職持ちであると嘘の証言・証明をしても良い。その逆に都合の悪い人間に本当の天職を隠したり、嘘の天職を教える事で、最悪破滅させる事も出来る。

 

 そしてこれらが簡単に出来るのであれば、凡ゆる分野を影ながら牛耳る事も可能だろう。なんせ天職=才能であり、1番初めに行う事でありながら肝心要の部分である適性の審査という分野を完全に独占しているのだから。極端な話、嘘でもなんでも良いから、1つの分野に於いて適した天職を持つ人間の数を減らして、或いは0として申告していけば、その分野自体が衰退する可能性も有るのだ。

 

 戦闘系の天職ならまだしも、非戦闘系の天職は珍しくない場合で10人に1人位はいるらしいが、プレート自体を独占して仕舞えばそれが本当かどうかも証明できやしない。人材の確保と言うある種の生命線を握られているに等しいのだから、こんな相手には誰も表立って逆らえないだろう。俺でさえこんな事をすぐに思い付くのだから、もっと悪どい事にも間違い無く使える。しかし現実にはそうなっていない。と言う事は、また別の理由でこのセットは広まったという事になる。

 

 ・・・恐らくこのセットを広めたのは神だろう。無論まともな理由じゃないだろうがな。3つ目の理由にも絡んでくる事だが、何の関係も無いガキ共を呼び出した挙句「皆さんにはこれから殺し合いをして貰います。(意訳)」とかヤラせる神がまともであるはずがない。「バトル・ロワイアル」じゃねーんだぞこの糞神が。

 

 ではどんな理由なのか。妄想に近い推測でしかないが、恐らくはこの世界に住む人々の、個人情報の掌握の為、というのが俺の考えだ。これをこの世界全ての人間に配布し、登録を行うことが出来たのならば。このプレートに登録されている情報を()()()()盗み見ることが出来たのならば。神が持つ情報という名のアドバンテージは計り知れないものになるだろう。現実的に考えても、神のお告げとか適当に言って人間側に配った事とかにすれば丸く収まるだろうしな。というかこんな理由じゃなきゃ神にとってメリットになんぞなりゃしないだろう

 

 唯、この推測が当たっていたとして。神がそんな事をした目的までは分からない。これも妄想でしかないが、ありえそうなのは2つ。この世界を効率的に管理・支配する為か、若しくは自らの益となりうる人材の発掘か、はたまたその両方か。前者の場合は単純に監視と反逆防止が目的だろう。仮想敵、又は潜在的な敵の質と量が分かれば、管理者気取りとしては凄まじく楽だろう。完全に発想が絶望郷(ディストピア)のソレである。「シビュラシステム」でも目指してんのか。TRPGの「パラノイア」でもいいが。

 

 ただなー、なーんか本命は後者っぽいんだよなー。しかも俺が目をつけられてるっぽいし。多分、技能欄の【宿聖樹】のせいかなー。正式名称は知らなかったけど。この技能、多分俺の「()()()()()()宿()()()()()()()()()()()()」としての資質の事だろうしなぁ。(うち)の家系には時たま俺のような、何がしかの依り代に特化した子が生まれるらしい。俺の五感を含めた身体能力が優れているのも、呪力反転がべらぼうに上手いのもこの体質が原因だって爺さん言ってたし。

 

 ・・・因みに何故俺が狙われている事を自覚しているかと言うと、それが3つ目の理由に繋がる。それは、この世界に悪意を向けている何者かの存在だ。

 

 先程のステータスプレートの画面にもあった技能、悪意感知。これと『式神調』の2つの技能は俺が生来持っていた物では無く、どちらも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()である。

 

 『式神調』の方は俺の依代としての性質と、恐らくではあるが■■ちゃんの持つ【他者の術式を模倣する術式】が混じり合った結果、俺に刻まれた『生得術式』(他人には真似できないと言う意味では合っているが、生まれながら得たものでは無いので厳密には異なる)ではないか、と言うのが師匠である俺の爺さんの見解である為、其方は今は置いておこう。問題は悪意感知の方である。

 

 ーーー悪意感知。呼んで字の如く、向けられた悪意を感知する能力である。悪意と一口に言っても様々であるが、俺の場合は害意や敵意、嫉妬に殺意など、凡そ悪感情と言えるもの全てを感知出来る。また、そういった意志の元行われた動作や物事に対しても反応ができる為、不意打ちとかに滅法強かったりする。

 

 特に、人であれ『呪霊』であれ妖であれ、誰が使おうとも『呪術』とは『呪力』を使用するものである。そして基本的には『呪力』=負の感情のエネルギーの為、それらを使う相手に対しても、ほぼ先読みできる非常に便利な感知能力である。

 

 唯、幾つか欠点も有る。まず、明確に分かるのは自分に向けられた悪意のみで、第三者に向けられた悪意は非常に感知しにくい事。感知出来たとしてもその時には既に手遅れだったりする為、俺以外の人間の危機を救う事に関しては期待できないのだ。

 

 2つ目が、分かるのはあくまで「特定の誰かから悪意が向けられている」事だけなので、悪意を向けた人物が誰か分かっても、如何なる理由でどんな種類の悪意を向けているのかの判別が出来ない事。分かるには分かるが、フワッとした感じでしか分からん。まぁ、それが分かったところでストレスにしかならないだろうし、一概にデメリットとは言えないか。

 

 で、この悪意感知。俺達がこの世界に来てから()()発動しっぱなしである。しかも何というかこの悪意、どこから向けられているか不鮮明にも関わらず、この世界に存在するあらゆる生命に対して向けられている感じなのだ。少なくとも、俺が確認した人間全てには確実に向けられている。年齢、性別、職業等も全くお構いなし、老若男女関係無くだ。勿論、教皇を筆頭に狂信者共にも向けられていた。ザマァ。

 

 で、先程も書いた様に俺は第三者に向けられた悪意は非常に感知し難く、出来たとして既に手遅れだったりする場合が多いので、ここまで悪意が感知できてるこの世界は正直終わってるんじゃないかなー、と思わざるを得ない。

 

 更に最悪な事にこの半月の間、これと同種の悪意がじわじわと俺に向けられ始めているのが分かる。具体的に増え始めたのが大体2週間前。もっと言えば、俺がステータスプレートに登録を行なった辺りからである。これもう完全に俺の事ロックオンしてますねフザケンナ死ね。

 

 しかも最初の頃は、何処に居るか分からない、それでいてなんか無機質っぽい存在からの悪意だけだったのが、最近になって教皇や教会のお偉方、一部の貴族からも似たような悪意が向けられて来ている。もう完全に神が全ての元凶じゃん。お前ら仲良しかよ。此処までくると一周回って清々しくなってくる。

 

 このまま放置し続ければ、十中八九、神若しくは狂信者共から適当な理由で拉致られて生贄にされる、なんて馬鹿げた事態に発展しかねない。神のお告げを使えば、喜んで命を捧げるゴミは履いて捨てるほどいるだろう。そうなる前に、さっさとこの国を離れることも視野に入れるべきだ。

 

 問題は何処に逃げるかだが。丁度良い事に明日【オルクス大迷宮】と呼ばれるダンジョンに訓練をしに行くらしい。所謂実践訓練を行うという話だが、この訓練の最中、どさくさに紛れて逃げてしまうのが一番良いだろう。タイミングを見計らい、ワザと迷宮内で逸れた風を装うことで、俺が死んだと思ってくれるなら万々歳だ。そしてそのまま、()()()()()()()()()()()()。恐らくこれが現状で俺が打てる最善手だろう。

 

 ・・・この計画が上手くいくと仮定して。ハジメ達にこの事を何て説明するべきだろうか。いや、いっその事何一つ話さないという選択肢もあるか。友人に対して、凄まじい不義理になってしまうが、下手に俺と一緒に居る方が危険だろうしな。話すにしたって、他の人間には聞かれないように細心の注意を払う必要もあるし。

 

 正直いくら考えても答えは出ないと思う。出たとこ勝負で行くしかないか。明日、状況を見ながら臨機応変に話す話さないは決めよう。




生得術式・・・読んで字のごとく、生まれながらにして肉体に刻まれた『術式』の事。これに『呪力』を流すことで固有の『呪術』を発動できる。他人がこれを模倣することはほぼ不可能。逆に『帳』等、『呪力』(とある程度の才能)さえあれば誰にでも使える『術式』も存在している。
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