恋姫頑張っててコッチ筆が止まってました
「あえいうえおあ、おー!!」
さて、アイドルに戻るため自己流レッスンを開始した私だが、最大の問題にぶつかっていた。アイドルはいるけれど他には機材もトレーナーも無いってのも問題ではある。ただ直近の問題は種族的な問題だった。
「…下手に大きな声を出すのは危険って事ね」
町外れの人が来なさそうな場所をチョイスして声出しをしてみたけれど、結果として無意識にドラゴンブレスが発動することが分かった。ただの発声練習が
「おー!…おー!…おー」
少しずつ声量を落として物理破壊が起きないギリギリを見極めてみよう。こんなのが街中で起きてみろ、アイドルデビューどころか指名手配されるのがオチだ。
「あいうえおー」
会話してる程度の声量でもフワリと砂埃が舞い、芝はザワザワ揺らいでいる。これは…発声に付随したパッシブスキルということ?それとも止めようと強く意識してるのが逆効果だったりするのだろうか?
とにもかくにも今分かったことは声or息を出すと漏れ無くドラゴンブレスが発動するということ。
「これ、どうすれば良いのよ…」
「エリザー!」
「あ、はーい!」
…ん?母さんの声に返した返事にはブレスがのっていなかった。というか、学校で話をしているときは笑っても何をしてもブレスが発動していない。
『エリちゃんの歌、スゴい良かったよ』
『なんだ、やれば出来るではないか雑種』
『な、なんと美しき歌か!やはりエリザは余のライバルなのだな!』
子犬や金ぴか、ネロに誉められた光景を思い出す。確か子犬にサプライズで歌った時だっけ。あのときだけは誰も耳を塞いだりしてなかったような…。
「こんなところにいたのね。夕方になっても帰って来ないから心配してたのよ」
息を切らせながらやって来たのは心配そうに眉をしかめる母さんだった。性格は科学者の割には良いと思うし、人並みどころか実の娘のように私を育ててくれたし私の話もしっかりと聞いてくれる。根っからの悪人ではないと思う。ちゃんと育ててくれたことには取り敢えず感謝はしようと思う。
カーミラの顔じゃなければ、だ。
母よ、なんでアンタはそんな呪われた顔面をしているのだ…。感謝の気持ちはある。けど、感謝の言葉を贈ったら負けな気がしてなら無い。彼女はカーミラじゃない別人だと理解はしているけれど、体が全身の細胞が拒絶しているのだ。
『カーミラに頭を下げるだなんて死んでも嫌だ』
と。
「ほら早く帰るわよ。あの人も帰りを待ってるわ」
うげぇ…。カーミラ(人違い)に手を引かれ家路に着いたけれど、その言葉で余計に家へ帰りたくなくなった。
「お帰り。母さんを困らせちゃダメだぞ」
玄関を開けるとソコには問題の人物が人並みに優しい言葉をダンディな声で掛けてくれた。父さんも母さん同様に良い人ではある。良い人では。
顔を上げればソコには白髪のV系バンドみたいな見た目のイケメン偉丈夫がニッコリとした威圧感タップリな笑みを浮かべて立っていた。
…やっぱりヴラドおじ様(バーサーカー)なのよねぇ。いや、槍のおじ様より苦手ではないけれど率先して近寄りたいとは思わない。
今世の父であるヴラドおじ様も元の世界同様に裁縫がとても上手だ。私が生まれた時から今まで着てる服は全部おじ様の手作りだし、母さんの着てる白衣や平服も手作りだとか。いつ使うのか不明なカーミラのドレスにメイデン杖や仮面も手作りらしい。
噂だと其処らの店より丁寧で質も良いし、おじ様が凝り性だからか服のバリエーションも多いこともあって1日中服を作っている事もある。研究者なのか呉服屋なのか分からなくなってきたなんて愚痴を言いながらもちゃんと注文されてたスカートを作り上げていたっけ。
「明日は朝から能力確認の試験があるわ。余り夜更かししたらダメよ?疲れもだけど女の子なんだもの」
「明日の能力テストは私も見に行こう。漸く溜まっていた注文を吐き出せたからね」
文字通り血の滴るステーキをモグモグしていたら明日の予定について話された。能力確認のため体を動かす試験ならダンスの練習に当てることが出来るけど、3ヶ月くらい前は電極を体に刺されて結構な電圧を流されたこともある。
なんでもアタシの体細胞は電気に反応して突然変異を起こしたりするらしい。その結果がアタシなんだけど。要はその突然変異で更なる能力の拡張とか新能力が開花しないかを実験するらしい。
「今回ので何も発現しなければ次回からは身体能力だけで良いと思うのだけど」
「そうだな。それに今でも間違いなくエリザはサイヤ人で最強の存在だ。外見も優れ、秘めている戦闘力も桁外れだ故に…」
「外では暴れるなでしょ?」
「そうだ。パラガス殿の息子が王によって辺境の星へと飛ばされると言うからな。息子の脅威は排しておきたいらしい」
話だと戦闘力1万とか聞いたけれど…。
「戦闘力1万を越えた者は恐らく排される。それがどういう意味か分かるであろう?私や母さん、エリザもバレてしまえばすぐにでも王がやってくるだろう」
だよねぇ。以前の2人は下級戦士レベルでしかなかったらしいけど、実験中に生まれた私の細胞を自身の体に投与したらしい。その結果、見た目が今の姿になり戦闘力も爆発的に上昇したんだとか。前にコッソリ聞いた話だと3万?4万?とか言っていた。そして元凶であるアタシは戦闘力を測定したら手持ちのスカウターが爆発したんだとか。
「それにフリーザ様も来るでしょうね。良ければスカウトかもしれないけれど…」
「いや、あの方はサイヤ人を忌み嫌っているようだからスカウトはないだろう。良くて飼い殺し、悪くて滅亡だ」
フリーザ様と言われても直接見たのは数回しかない。ベジータ王の態度の悪さに青筋立ててたり、引き攣った笑みを浮かべていたのが印象的だった。それとこの星で唯一、『あれには勝てない』と見た時に恐怖を感じた存在でもある。
「さぁ、ご飯を食べて少ししたら身を清めて寝なさい。明日に疲れを残してはいけないからね」
「はーい」
話はお仕舞いになったようで3人とも食事へと集中する。暴れたらNGなのは理解してるけどさ、ず~っと抑えてるとタマには何もかも忘れて思いっきり発散したいワケで。でも発散すると星から追放or現世から追放待った無しなワケで。
『なに、全力で放つのさ。文字通り命懸けでな』
私より強力な宝具を持つアーラシュに、どんな風に放てば良い?と聞いたときを思い出した。
「全力で…。命懸けで、か」
そんな機会があればこんな苦労してないわよねぇ