バーチャル世界に夢を見て 作:雨歌
「あなたには、フリーゲームのキャラクターをイメージしたVtuberになってもらいます」
「うはぁ、マニアックですねぇ」
◇ ◇ ◇
私は
VtuberとコラボしたいからVtuberになりたい、なんてちょっと不純な理由かな? でも、この度発足するVtuberプロジェクトに参加できることになった! やったぁ、私の勝ち。
プロジェクト名は『ゲームガーデン』と言って、その名前の通りにゲーム好きを対象としているものだ。親会社がフリーゲームの製作ツールを開発販売しているので、その宣伝のために作られたプロジェクトらしい。フリーゲームの宣伝をして会社に利益があるのかどういう仕組みなのかは分からないけど、界隈が盛り上がるのはいいことだよね。
そんな中で私が演じるのは、【エミリーの館】というフリーホラーゲームをモチーフにしたキャラクター、エミリー・サーベラス。誰だよ、ってなった。
このゲームは確かに【エミリーの館】という名前なのだが、このエミリーは名前しか作中に登場しないのだ。いっそのこと主人公のフリメアちゃんの方が良かったのでは……。そちらも作中で喋る機会がないから演じるも何もないのだけど。
実はこのエミリー、【エミリーの館】の前作にして内容もシステムも全く関係ないブロック崩し【
そうそう、このエミリーちゃんの立ち絵はとてもかわいくて原作のゲームに近い絵柄で、それもそのはずゲームの作者であるraccoon先生が手ずから描いてくれたのだ。好き。でもコレもうただのイメージキャラクターですよね、先生。設定がかなり追加されているし、キャラクターをよーく読みこんでおこう。
◇ ◇ ◇
時間が経つのは
自己紹介することが目的なので一人ひとりに充てられた時間は30分と短く、スムーズな進行が重要だろう。台本は頭の中にしかないが、何度か事前練習をしたので大丈夫なはず。そもそも前世を隠すようにとは言われていないので気楽なものである。
年長者だからか、私はプロジェクトの配信においてトップバッターを任されていた。
そう、Vtuberをやるのは元々配信者や声優だと思っていたのだが、意外にも学生や成人したての若い子ばかりだったのだ。何度かディスコードをつないで雑談もしたのだけれど、メンバーの皆が私に対して畏まった態度でいて、私に甘えてくれる様子もまだまだない。もっと母性を感じてくれてもいいんだけどな。子供居ないけど。
そんなこんなで配信の時間が迫ってくる。”頑張ってください”と同期の皆から応援LINEが送られてきたので思わず笑顔になる、私頑張るよ。
開始数分前になると、ちらほらと”待機”コメントが現れ始める。私の方が先に待機していたからこれは私の勝ち。しかし”待機”の増殖は
うんうんうん、配信前からこんなに待機してもらえてるなんて……大手はやっぱ違うなー! そもそも私はゲリラ配信ばっかりしてたけど。やる気が出たときだけやりたい。でも今はプロ意識を持っていかないとな。集中するんだ、私は誰? エミリー・サーベラス! 誰だよ。やっば、緊張して情緒不安定になってる。
ん? もう時間になった? GO。こほん。今の音声入ったかな。
「こんばんは! ゲームガーデン所属、【エミリーの館】公式イメージキャラクター、エミリー・サーベラスです!」
エミリーは元気印の女の子で、それでいてちょっと年上のお姉さんみたいに演じてくださいっていう注文。演技指導も受けたんだけど、結局どの程度素を出していくかとか重要なところは配信者に一任されている。すぐにぼろを出すのはどうかと思うけどね。
”こんばんはー!”
”はいかわいい”
”なつかC”
”俺の青春時代”
なつかCってお前の発言の方が懐かしいわ。青春時代にフリーゲームやってんのか、やべえなと思いつつも私も似たようなものだった。やべえな。
「おや? エミリーのことを知ってくれている人がいるみたいですね。嬉しい!」
そう言うと”お前は知らん””誰?”といったようなコメントが書き込まれていく。いやそうだろうけども。初配信で”誰?”ってコメント書かれるのそうそうないよ。
「誰じゃないよ! エミリーは【エミリーの館】の主なので、【エミリーの館】を遊んでくれた人は私の友達です! ありがとう!」
”懐かしすぎる”
”いつの作品だよ”
”初配信は2001年だから19年前”
”昭和の香りを感じる”
「いや普通に平成ですよ! 平成
そもそも配信直後から人気出てたわけじゃないし。2009年の実況者の動画くらいから? 私は初期配信バージョンからやってた……かどうかは分からないけどね。
”アッハイ”
”16+19=?”
”それ以上いけない”
「まあ実際ね、エミリーは【エミリーの館】が初登場でもないんですよ。【エミリーの館】の2年前に【
だからといってゲームの中のキャラクターは年を重ねないから。
”1999年か”
”知らんかった”
”前世紀ww”
”エミリーエミリー言い過ぎや。名前覚えたぞ”
”キーボードクラッシャー?”
エミリー言い過ぎ? ごめんね。エミリーとしてエミリーを紹介しないといけないから仕方なし。名前覚えたならありがとう。
KBC、それも懐かしい。それより倍くらい古いんだけど。
視聴者層がその辺りならもうちょっと昔の話をしてもいいかな。
あっ、OPあったんだった。ここから自然に移行するには……。
「フリーゲーム。それは、人々の思いによって生み出された小さな世界である。あるものは独創的なシステムで、あるものは他にはない音楽で、あるものは美麗なグラフィックで、またあるものはその全てで――人々を熱狂させてきた」
”いきなりどうした?”
”なんかはじまた”
自分でも何を言っているのか分からないけど、このまま押し切る。
「ここにあるのはホラーと錬金術の競演。登場以来、人を魅了し続けてきた”エミリーの館”20年の時を経て、今ここに蘇る!」
~
セーフかな? あぶねぇ、仮面ライダー2号になるところだった。変身!
この間に開始ツイートしておこう。これも含めて最初にやれっていうね。
「というわけで改めましてこんにちは。エミリー・サーベラスです。ゲームガーデンと言う、フリーゲームの中で生まれたキャラクターたちの世界に住んでいます!」
”世界観説明助かる”
”お前は違う”
”帰ってきたエミリー(帰ってきてない)”
おうおう帰マンさんの悪口はやめるんだ。
「私がどういう者なのか知らない方も多いと思うので、公式サイトの紹介文を読んでいきましょう。掲示しましょ」
”もう草”
”草”
まだ笑うところじゃないぞ。
「森の奥の館に一人で住む錬金術師の女の子。勝手に入ってきた者に対しては様々な仕掛けを使って追い返すようにしている。……そんな理由だったの!? そんな理由で何度も殺されたの主人公? 可哀想。いや不法侵入も駄目ですけどね!」
”ホームア○ーンだったのか”
”仕掛けが物騒すぎる”
”殺したのはお前や”
”今明かされるそれほど衝撃でもない真実”
「おかわりもありますよ。こっちは作者サイトの特設ページですね!」
AI2回行動。事前に見てきたけど酷い。
「ゲームガーデンの隠された秘密を握る、この世界の管理人。闇の錬金術の力を手に、真実を知ろうとした主人公達の前へと立ちはだかる……!」
”草草の草”
”次回作ではエミリーと戦えるんですか?”
”本編にも登場させて”
”いつから生きてるんだろうこの錬金術師”
「いや何者なんですか私。ゲームブックでもやるんですか!? それと16歳です!」
これ読んだときはすっごい笑った。ゲーム世界の説明と現実のキャラクターの世界が逆転してるもの。これじゃあもうどっちがどっちだか分からないね。
”16歳(迫真)”
”圧がすごい”
”ところどころ歳が滲み出てる”
「滲み出てるって何だい」
おっと思わず素で反応してしまった。まあ口調に関しては、終始敬語だと後輩たちが絡みづらいのでもっと砕けた喋り方でいいです、ってマネージャーさんからも言われてるし。そもそもこのエミリー・サーベラスというキャラクターを私が掴み切れてないんだよな。原作を久々に落としてやってみたけど、仕掛けが殺しにきてることしか分からなかった。人柄は何も見えてこないのだが。
「女の子に年齢
”後輩? 同期では?”
”人生の先輩なんでしょ”
”やっぱり一人だけ年上なのでは……?”
おっと後輩って思ってるのがそのまま口から出てしまった。だって同期って言っても若い子なんて■■■*3くらい下なんだもの。
「違います! 私の魂はエミリーの館とともにあるから! 16歳ですよ!」
”必死すぎる”
”えみりーさんじゅうろくさい”
実際気にするほどでもないと思うけどね。時間経過はみんなに訪れるものだし。しかしこれはちょっと修正不可能だな。ごめんなさいraccoon先生。でも先生が次回作を出してくれないのもいけないんですよ? 別名義でエロゲ作ってる合間に続きを……。エロゲの方もファンですが!
「……いいや、時間がないので巻いていきましょう。配信タグの発表から――」
予め決めたモノを説明していく。タグもどんどん埋まっていくから大変だよ。
10000作以上のフリーゲームをダウンロードしてプレイし、その大半に長文レビューまで書いている究極の趣味人。ある界隈では有名。配信者としてはどんなゲームにも手を出す姿勢が正しく評価され度々管理者削除の目にあうが、なぜか今までチャンネルは停止されることなく活動を続けている。