新任Pとシンデレラガール達   作:むつさん

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一人のアイドルをきっかけに、残されたプロデュースノートを見つけアイドルプロデュースについて学ぶ



残された資料、一つの傷跡

 

 

帰宅途中の出来事だ。

身に覚えのないが。

誰かに後をつけられていた。

 

雪樹「ストーカー…か」

 

かなり距離はあるが、確実に後ろの方からついてきている。

適度に後ろを振り向いて歩いていたせいか

正面からの歩行者に肩がぶつかってしまった、

 

雪樹「あっ、すいません。」

 

男の人だった。

僕のことを眺めると何かを察したのか

顔を反らし始めた

 

男「…夜道には気を付けろよ…」

 

男はそう言うと早歩きで去っていった。

 

その後からストーカーも居なくなっていた。

 

雪樹「夜道には気を付けろ。か」

 

何か少し引っかかるが

気にせず帰った。

 

……

 

翌朝。特に出勤予定時間等はないが

9時頃、事務所に着いた、

 

雪樹「あっ、開いてる」

 

オフィスにノックだけして入る。

 

千川「おはようございます、プロデューサー」

 

雪樹「おはようございます。早いんですね」

 

千川「そうですね。今日は8時過ぎくらいに来ました」

 

雪樹「8時過ぎ…早いですね」

 

千川「久々にこの事務所で仕事ができるので色々と準備もありますから」

 

雪樹「助かります。」

 

千川「さっきレッスンルームの鍵を持って行く子達がいたので良かったら挨拶に行ってみてください。多分もういるはずなので」

 

雪樹「そうしたいのはあるんですが、まだまだお互い話もしたこと無いのにいきなりレッスンの話をするのも気が引けますね。いくつか資料で調べてからのほうがいいかと思ってます。」

 

千川「確かにそうですね。」

 

雪樹「さてと…ん…?」

 

机の下になにか…

なにか…いや誰かいる…?

 

???「あ…お…おはよう…ございます…」

 

雪樹「も、森久保さん…?なんでそこに?」

 

森久保「ここ、落ち着くんです、ちょっと暗くて、もりくぼには丁度いいスペースで。」

 

森久保さんの隣にはいくつもの本が置いてある。

いつから居たのだろうか…

 

雪樹「えっと…そうなんだ…椅子、座ってもいいかな。」

 

もりくぼ「どうぞ、わたしにお構い無く。あ、ぶつからないようにお願いします。」

 

お構い無くと言いつつもぶつからないように注意喚起だけはする。

とりあえず少し引き気味に椅子に座る。

特に違和感はなく、問題はなく作業できそうだ

 

雪樹「えっと…昨日貰った書類…」

 

鞄から入社用の書類を一式

多分、大丈夫

 

千川「書き終わったら専務のところまで届けてくださいね。」

 

雪樹「あれ、専務でいいんですか?」

 

千川「事務の人でもいいとは思うんですけど。専務が自分で持っていくって言ってたので」

 

雪樹「そうですか。わかりました」

 

一頻り書き終えて持っていく事にした

部屋を出て専務の部屋まで着くと扉の前で専務と丁度会った

 

美城「君か、書類が書けたようだな」

 

雪樹「ええ、丁度、提出に来たところです」

 

美城「預かろう。こちらから話をして事務に提出しておく。」

 

雪樹「よろしくお願いします」

 

書類を渡してオフィスに戻ると見覚えのない少女が二人居た。

 

ひとまずソファーに座って挨拶をする

 

雪樹「えっと、ここの所属のアイドルだよね。」

 

美嘉「そう、アタシは城ヶ崎美嘉、それでこっちが妹の」

 

莉嘉「莉嘉だよー」

 

雪樹「姉妹アイドルか、小耳に挟んだことはあるよ。」

 

美嘉「新しいプロデューサーが就いたって聞いたから、挨拶に来たの」

 

雪樹「松谷雪樹、346プロダクションの新しいプロデューサー。よろしく」

 

莉嘉「よろしくー!」

 

美嘉「うん、真面目そうでいい人っぽいじゃん、ちょっと安心した」

 

莉嘉「お姉ちゃんやっぱり気にしてたんでしょ?」

 

美嘉「少しね。またみんなが嫌な思いするのは嫌でしょ?」

 

雪樹「僕の前の人の事かな。」

 

莉嘉「そう。あの人ほんとに酷い人だったね。」

 

美嘉「みんな困ってたからね。」

 

雪樹「やっぱりそうなんだな…専務の美城さんからある程度話を聞いたんだ。前任が酷かった影響もあるって。」

 

美嘉「アタシ達は特に何かされたことはなかったけど。あの人に気に入られた子達は特にボディタッチが多かったし。」

 

莉嘉「ボディタッチって軽い感じでもないよ。嫌な触り方してたし無理やり変なこともして来てたし」

 

美嘉「嫌がると圧力かけてたりしたからね。やり方が酷いのもそうだけど何よりも気持ち悪いっていうのが強いかな。」

 

雪樹「そうか…二人の友人で特に嫌な事された子は居るのかな」

 

美嘉「うん…居るよ…」

 

雪樹「出来たらでいい、無理にとは言わない、もしよかったら教えて」

 

美嘉「先に一つ約束して」

 

莉嘉「お姉ちゃんいいの?」

 

美嘉「良いか悪いかじゃないよ。アタシはこの人なら大丈夫だって思う。あんな人とは違うって。」

 

莉嘉「わかってるけど…でも…」

 

雪樹「どんな約束。」

 

美嘉「もし、あなたが悪い人だって私達がそう思ったら、すぐプロデューサーを辞めてね。」

 

千川「美嘉さん、流石にそれは言い過ぎ…」

 

雪樹「いいですよ。それは覚悟の上です、というか美城専務とも約束してますから」

 

千川「雪樹さんも…」

 

美嘉「…なら…教えるよ」

 

雪樹「ありがとう」

 

美嘉「大槻唯って子がいるの。」

 

莉嘉「お姉ちゃん、ほんとにいいの?」

 

美嘉「莉嘉、これはアタシとプロデューサーの話、確かに莉嘉も唯と仲良いし友達かもしれないけど、今回だけは譲れないの」

 

莉嘉「わかった…」

 

雪樹「大槻唯さん、だね」

 

美嘉「そう。元気で明るいのが特徴でさ、よく一緒にカラオケ行ってたりした。みんな唯のこと信頼してたしすっごく仲良かった、みんなね。」

 

元気で明るいのが特徴…

周りから信頼されるほど

 

美嘉「でもあいつは違って、唯はあいつのこと嫌がってたんだ。みんなに嫌な事する人は嫌いだって、唯はみんなを護ろうとした、必死になって抗議したんだ。」

 

雪樹「勇気ある行動だな。それだけ大槻さんも周りの事を大切にしてる証だね」

 

美嘉「そう…私達にとっても、唯にとってもお互い凄く大切だったんだよ。でもあいつは唯を虐め始めたんだ…」

 

雪樹「大人なのに虐めか、情けない」

 

美嘉「持ち歩いてる飴を没収したり。少し話ししてただけで怒鳴ったり…次第に話を無視されたり、舞台にも立たせてもらえなくなったり、営業すら行かせてもらえなくて。」

 

雪樹「最低だな…」

 

美嘉「それ以来、元気の無さそうな日も見かけたし、話しかけてもたまにぼーっとしてるときもあったんだよね。らしくないって感じ」

 

雪樹「励ましてあげないと…」

 

美嘉「もちろんアタシ達は唯の味方だし、唯が傷つくのが嫌だからみんなで励ましたね」

 

…励ましたとしても、根源がなくならないと意味ないか。

 

美嘉「実際にはどうかわからないけど、出入り禁止だって言われたって聞いたこともある…それでそんな日が続いて。唯が事務所に来なくなった。電話しても元気のない返事ばっかりだし、最近あいつが居なくなったって話をしてあげたけどまだ元気ないんだよね」

 

雪樹「確かに、みんなの嫌がっていた人は消えたかもしれないが、大槻さんがどう感じているかだね。」

 

美嘉「立ち直るのも難しいくらい落ち込んでるんだと思う。だけど、アタシはもう一度、元気な唯が見たいよ」

 

雪樹「大槻さんがこの事務所に気軽に来れるように、できる限り協力をする。教えてくれてありがとう。」

 

美嘉「さっきの約束、忘れないでね」

 

雪樹「当然、忘れないよ」

 

美嘉「また今度、唯を事務所に誘って見るから、その時は…」

 

雪樹「その時は僕も話をするよ」

 

美嘉「うん。よろしく。」

 

ソファーから立ち上がって資料を探す

この事務所について、アイドル達についてもそう。プロデューサーとして何をすればいいのか調べないといけない

 

雪樹「えっと。」

 

プロデューサーマニュアルや、

レッスンマニュアル…

 

雪樹「最初はこの辺だな。」

 

美嘉「何してるの」

 

雪樹「昨日来たばかりだから、知らないことだらけなんだ。美城さんからプロデューサーについてはある程度聞いたけど。その細かいところまではまだわからないんだ。だからそれすら知っていかないといけない」

 

莉嘉「プロデューサーとしてってこと?」

 

雪樹「そういうことだね。」

 

美嘉「何もわからないのにプロデューサーになったの?」

 

雪樹「そうだね…僕はプロデューサーになりたくてプロデューサーになったのとは少し違う、確かに自分からこの場所来たのは間違いないけど。スカウトの形として来た感じかな。」

 

美嘉「スカウト?もしかして専務からの?」

 

雪樹「名刺を渡されてね。断る理由も無かったどころか。少しありがたいのもそう」

 

莉嘉「アイドルをスカウトするのはわかるけど。プロデューサーをスカウトするって、どうなのかな?」

 

雪樹「さぁ…プロデューサーの事とかも初めてだから、その辺は…」

 

千川「スカウトされるプロデューサーは少ないと思います。前任の方も志願による就任でしたね。その前の方は別プロダクションから移転という形でしたし。」

 

美嘉「あの人は急にやめちゃったんだっけ。」

 

千川「前々任は、実家のご両親の介護で、県外に出られてしまいましたから。確か東北の方だったはずです。」

 

莉嘉「遠いね…流石に通うのは難しいと思う。」

 

千川「この前連絡頂いたんですが。向こうでも介護の合間をみてアイドルプロダクションのアシスタントをやってるそうですよ」

 

美嘉「ちひろさんと同じ感じ?」

 

千川「副プロデューサーって言ってましたけど。やることは私の仕事に近そうだったので多分そうですね」

 

美嘉「元気そうで良かった。」

 

莉嘉「みんな仲良しだったからねー」

 

仲良し…心配をされるほど。

信頼をされているプロデューサー

 

僕はまだ何もしていない。

当たり前だけど、アイドル達との信頼関係も全くと言っていいほど皆無だ。

 

僕は彼女達と上手くやっていけるだろうか。

 

雪樹「あれ…これって」

 

棚に視線を戻すと幾つものノートを見つけた

一つずつ表紙に名前が書いてある

アイドル達の名前だ。

 

雪樹「前々任の人のノートか」

 

冊数だけ見ても100は超えている…

まさか全員分のノートを…?

 

雪樹「プロデュースノート…」

 

試しに一冊開くと

びっしりと並んだ文字とたまに写真が貼られている。

 

そのアイドルの特徴、得意なレッスン苦手なレッスン、相性のいい他アイドル、結成済みユニット、ソロ曲やユニット曲。

 

雪樹「アイドルプロデュースってこんなにも事細かくするのか。」

 

これだけの内容がしっかりと残されているなら、使わない手はない。

できる限り、利用させてもらおう。

 

美嘉「莉嘉。そろそろ、レッスンルーム行こう」

 

莉嘉「あ、もうそんな時間なんだ。」

 

雪樹「今日はありがとう。また今度。」

 

美嘉「それじゃあね」

 

莉嘉「じゃぁねー」

 

二人がオフィスを出たあと。

別の一冊のプロデュースノートを手に取った。

 

近道かもしれないとはいえ、ここに書いてある通りにはいかない、本当に受け入れて貰えるかどうかだ。

 

千川「お昼ですが。どうしますか?」

 

雪樹「あれ。そんな時間か…」

 

手に取ったプロデュースノートを元に戻した。先に昼食だ。

 

千川「社員食堂。行かれますか?」

 

雪樹「いや、コンビニで買ってくるので僕はいいです。」

 

千川「そうですか。では、私も少し席を外しますね。」

 

雪樹「はい。お疲れ様です」

 

事務所を出て近くのコンビニまで出向く。

 

その途中。少し見覚えのある姿を見た。

 

雪樹「あの格好、昨晩のストーカーか?」

 

声を掛けるべきか、

いや人違いだったら失礼だな。

 

コンビニで買い物だけ済ませて事務所に戻る。

 

オフィスに鍵が掛かってたので開ける。

そういえば森久保さんのことを忘れていた

机の下を覗くと。森久保さんがいた

 

(あれ…鍵掛かってたよな…?)

 

森久保「プロデューサーさんは、コンビニのお弁当ですか?」

 

雪樹「まぁね、森久保さんはやっぱりそこでお昼ご飯食べるんだね。」

 

森久保「はい、ここが落ち着くので。」

 

机の下でクロワッサンを食べる…

小動物みたいな…

僕も昼メシを済ませよう。

 

雪樹「森久保さんはさっきの話聞いてた?」

 

森久保「唯さんの話でしょうか…?」

 

雪樹「そう。」

 

森久保「聞こえていました。唯さんは、もりくぼでも話しやすいと思うくらいで…でも、そんな唯さんが悲しそうにしてるのはやっぱりちょっと心配で。」

 

雪樹「そうか…やっぱり皆心配なんだな」

 

森久保「赤原さんは唯さんがキライだったみたいでした。唯さんが皆を護ろうとする前から唯さんの悪口を言ってたり…」

 

雪樹「赤原?前任のことかな」

 

森久保「赤原児玉、だったはずですけど。もりくぼは会ったことが無いので。噂しか聞いたことないです…」

 

雪樹「会ったことない?」

 

森久保「その前の人がいなくなって、ほぼずっと家にいましたし、お仕事のときはレッスンルームに行くこともなかったですし、ロッカーしか寄らなかったので。」

 

雪樹「そうか、よかったというか。」

 

森久保「お力になれず…」

 

雪樹「いやいや、大丈夫。」

 

森久保「プロデューサーさんは、赤原さんとなにか?」

 

雪樹「何もないよ、できる限り赤原さんが何をしたのか知りたいんだけど。」

 

森久保「ちひろさんとか、他のアイドルに聞いたほうが、早いかもしれないです…」

 

雪樹「うん。そうするよ。ありがとう」

 

森久保「もりくぼは何もしてないんですけど…感謝だなんて。」

 

雪樹「さてと。さっきの続きだ。」

 

一冊のプロデュースノートを手に取る。

 

……

 

パッションアイドル 大槻唯

養成所でレッスン中にスカウト

(何故か食べかけの飴を貰った)

346プロダクションに所属

 

レッスンに対して少し面倒くさがりだが

手を抜くことはあまり無い

プロダクション所属後、程無くして他アイドルとのユニット結成、ユニット間だけでなく他アイドルともすぐに打ち解ける程話しやすい。

 

営業においてもバラエティ、旅物、ドラマ等広く活躍しいくつか出演してほしいとの要望が耐えない

 

ソロ曲の舞台でも大槻唯独自の元気さとポジティブさで会場は大盛り上がりした

 

数カ月も経たずして多くのファンを得る。

 

 

雪樹「やっぱり元気な子ってのは間違いなさそうだな。さっきの話でも出てきたけど、飴が好きなのか?」

 

森久保「唯さんはいつも飴を持ち歩いてますね…」

 

???「おお!やっぱり空いてるね!」

 

雪樹「あっ、どうも」

 

???「新しいプロデューサー……若い…」

 

雪樹「若い…?」

 

片桐「い、いえ!何でもないわ!初めまして。私は片桐早苗。元婦警のピチピチアイドルよ♪」

 

雪樹「新人プロデューサーの松谷雪樹です。今後共よろしくお願いします。」

 

片桐「お、言葉遣いはしっかりしてるね。前のおっさんとは大違い。よろしく。若人よ~」

 

雪樹「え、えっと、はい…」

 

やたらと馴れ馴れしい…

近い…近い近い…

 

雪樹「ちょ…近い…」

 

片桐「おお、これは失礼。ところでいくつ?」

 

雪樹「いくつって…歳?…歳は24ですが。」

 

片桐「やっぱり若い!!あ、連絡先交換していい?」

 

雪樹「連絡先ですか?電話番号でいいですか」

 

片桐「構わないわよ~」

 

雪樹「えっと…これで。」

 

片桐「ありがとうー、これでいつでも大丈夫ね。」

 

雪樹「何が大丈夫なんですか?」

 

片桐「連絡先、他の子達から何かあればすぐ連絡出来るでしょ。」

 

雪樹「そういうことですか。まぁプロデューサーである以上アイドル達の事であれば話はすぐお伺いした方がいいのは確かです」

 

片桐「それもそうだけど、前任の一件もあるし?」

 

雪樹「僕は前任の様な真似はするつもりありませんよ。」

 

片桐「もし。彼女達が貴方に無実の罪を着せようとしたら?」

 

雪樹「僕は非力ですから結果次第です。でもできる限り無実を証明できるものを探しますね。理不尽に流されるのだけは勘弁なので。それでもだめなら、そこまで」

 

片桐「冗談よ。そこまで言うのなら、貴方を疑う必要は無さそうね」

 

雪樹「冗談は苦手です。」

 

片桐「お堅いのは、嫌われちゃうわよ?」

 

雪樹「そうなり過ぎないよう、努力しますよ。」

 

片桐「あと、連絡先交換した理由は、もう一つあるのよね」

 

雪樹「もう一つ?」

 

片桐「最近、付近の街並みでストーカーされているという話が多いって、知り合いの警察から聞いたの、貴方もあった?」

 

雪樹「ええ、丁度昨日の帰りにストーカーされましたね」

 

片桐「やっぱりそうよね。気をつけなさいよ。何か巻き込まれそうだったらすぐ電話してよ?」

 

雪樹「わかりました。元婦警となればかなり心強いですね。」

 

片桐「これでも黒帯持ちなのよ」

 

雪樹「尚更ですね。」

 

千川「戻りました。あら、早苗さん」

 

片桐「ちひろさん。どうですか?新しいプロデューサー君は。」

 

千川「どうですか、と言われましても。まだ話も少ししかしてませんし。」

 

片桐「昨日来たばかりって聞いたけどほんと?私しばらく警察のお手伝いしてたからあんまりこっちの事情知らないんだよね~、前任の人全く声掛けてくれないし。」

 

雪樹「そうですね、昨日来たばかりです。」

 

片桐「そうなんだ、頑張ってよ?」

 

雪樹「もちろんです。」

 

片桐「それじゃ、私は挨拶に来ただけだから。また今度お仕事頂戴ね~」

 

雪樹「はい、お疲れ様です。」

 

早苗さんはオフィスを出て行った

元婦警か、少し圧があった気がする。

最初の視線は鋭かったし後から親しげな感じだったけど手を出せば確実に仕返しされていたと思う。

 

黒帯って言っていたし…

 

雪樹「いろんなアイドルが居るんですね。婦警からアイドルに転職するなんて。びっくりです」

 

千川「職務質問中に試しに声掛けたらスカウト出来たって…冬斗さんが言ってましたね。」

 

雪樹「冬斗さんって。前々人ですか?」

 

千川「そうです。」

 

雪樹「職務質問中にスカウトする方もどうかと思いますけど。それでアイドルになろうと決めた方もどうかと…」

 

千川「それは…私も思いました…」

 

雪樹「ですよね…」

 

いやまあ普通おかしいとは思うけど…

良かったのか…公務員からアイドルへ転職して…

 

雪樹「ほんとに…いろんなアイドルがいますね。」

 

千川「そうですね。乃々さんもアイドルになるつもりは無かったそうですが、結局アイドルになってますよね。」

 

森久保「もりくぼは…何故かアイドルになってました。」

 

雪樹「何故かって…アイドルになりたかったわけじゃないんだね」

 

森久保「そもそも…アイドルなんてもりくぼには似合わないと思ってたんですけど…何故か順調に…」

 

雪樹「まぁ。楽しいんだったらいいと思うよ」

 

千川「さっきの話ですが、唯さんのことどう思いますか?」

 

雪樹「大槻さんのことだよね。大丈夫ですよ、多分少し話をすればいいだけです。」

 

千川「そ、そうですか」

 

雪樹「確信はありますから。」

 

千川「確信?」

 

雪樹「まぁ、すぐ良くなりますよ。」

 

森久保「プロデューサーさん…自信有りげですね…」

 

プロデュースノートを改めて手にとって最初のページを読み返す。

 

そう、特別やることは無い。

むしろ。話をするくらいしか僕にできることはない。

 

雪樹「あっ、そうだ。千川さん。」

 

千川「どうしました?」

 

雪樹「キャビネットのところ、コンセント余っているので使ってもいいですか?」

 

千川「あのコンセントは元々冷蔵庫に使ってたので、今は使ってないのでいいと思いますよ」

 

雪樹「1ドア冷蔵庫の小さいサイズですかね?丁度それを考えていたんです。」

 

千川「はい、一度備品管理室にしまいこんで、それから使ってません。まだ動くかわからないですが。」

 

雪樹「買い換えるより、そっちのほうがいいかな、備品室か。」

 

千川「専務の部屋の2つ隣です。扉に小さい看板付けてあるのですぐわかると思いますよ。」

 

雪樹「鍵はかけてあります?」

 

千川「鍵は、これですね。」

 

雪樹「ああ、持ってるんですね…」

 

千川「このフロアはほとんど私達しか使わないので一部以外はこの部屋に全部あるはずです。」

 

雪樹「なるほど、」

 

オフィスを出て備品室に行く。

 

雪樹「ここか」

 

備品室。確かに少看板が付いてる。

鍵を開けて電気をつけるとダンボールだらけの場所だった。

 

レッスン道具等もあるみたいだ。

 

雪樹「冷蔵庫…これか。」

 

台車に積んである物をそのままオフィスに運ぶ。

 

雪樹「さて…と、これでいいかな」

 

千川「しっかり通電してますか?」

 

雪樹「そうですね。冷えてきても本格的に使えるのは明日からかな。」

 

千川「そうですね。」

 

丁度置き終えソファーに腰を掛けたところでオフィスの扉が開いた。

 

???「あっ、ほんとに変わってるんだー。」

 

見覚えのある顔だけど…実際には初めて会うかな

 

雪樹「初めまして、新しいプロデューサーの松谷雪樹です。よろしくね。」

 

大槻「大槻唯だよ。よろしく。」

 

思ったより暗いというか。落ち着いているのほうが合ってるかな。

 

千川「お久しぶりです、大槻さん。」

 

大槻「ちひろさん久しぶり~!ちひろさんは大丈夫?あの人に何もされてなかった?」

 

千川「私は大丈夫ですよ。関わること少なかったですから。」

 

大槻「そうなんだ、良かった~」

 

千川「彼が新しいプロデューサーですので、今後ともよろしくお願いしますね?」

 

大槻「う、うん、わかってるよ。」

 

…目を背ける辺り、前のことを気にしてる様子かな。

 

雪樹「無理はしなくていいよ。さっき、とは言っても昼前か、城ヶ崎姉妹がレッスンルームに行ったけど、まだいるかもしれない、鍵は戻ってきてないから、良かったら顔を出して来るといいかな。」

 

大槻「二人も来てるんだね!行ってこよっかな!」

 

大槻さんはオフィスを出て走っていった。

 

雪樹「思ったより元気そうだね」

 

千川「赤原さんが居た頃よりか、元気ですね。」

 

雪樹「僕が話をしなくとも。自然と良くなるんじゃないかな」

 

千川「そうだといいですね」

 

雪樹「そうだ、森久保さん。飴、食べる?コンビニ行ったときに買ってきたんだ。」

 

森久保「え、そんな唐突な、あ、でもいただきます。」

 

雪樹「それじゃ、サイダー飴のりんご味で。」

 

森久保「いただきます、んむっ…粒が大き過ぎて…」

 

雪樹「ほっぺが膨らんでる、リスみたいだね。」

 

森久保「あぅぅ…りす…りすくぼ…」

 

自分も飴を食べる。

粒が大きい。確かにこれは頬が大きくなるな。

 

雪樹「この飴久々に食べた気がするなぁ」

 

森久保「飴…おおきい…」

 

大槻さんは残念そうに戻ってきた

 

大槻「うーん、二人ともいなかったよー。あれ!サイダー飴じゃん!」

 

雪樹「大槻さんもどうぞ、何味がいい?」

 

大槻「サイダー飴ね~!それコーラ味が好きなんだよね~!貰っていいかな?」

 

雪樹「コーラ味だね。もちろん」

 

飴を渡すと嬉しそうに口に放り込んだ。

 

大槻「うーん!このシュワシュワするのやっぱりいいね~!」

 

雪樹「確かにこういう一風変わった飴は美味しいね。」

 

大槻「事務所で飴食べるの久しぶり~!」

 

雪樹「飴はテーブルに幾つか置いておくからいつでもおいで」

 

大槻「もしかして~、新しいPちゃんってめちゃくちゃ良い人?」

 

雪樹「少なくとも悪い人ではないよ。」

 

大槻「ちょっと安心したかな~。」

 

雪樹「僕も少し安心したよ。」

 

大槻「んー?なんで?」

 

雪樹「城ヶ崎の二人がね、大槻さんの事心配してたから。もし来たら良くしてあげてって言われてたんだよ。」

 

大槻「そうだよね、わかってたけど…でも事務所の事思い出したりすると、あの人の嫌なことも思い出したりして。ちょっと落ち込んじゃってさ。」

 

雪樹「それでも、戻ってきてくれたんだよね。」

 

大槻「うん、もう居ないなら悩む必要もないでしょ?またみんなと一緒に遊びたいし、美嘉達にも悪いかなって。」

 

雪樹「ありがとう。これから宜しく」

 

大槻「よろしくね!Pちゃん!ちひろさんも!」

 

千川「改めてよろしくお願いしますね。」

 

大槻「それじゃ、美嘉達探してくるから唯は行くね!また遊びに来るね~!」

 

大槻さんは元気そうにオフィスを出て行った

 

雪樹「うん、大丈夫だね。」

 

千川「でしたね。さっきの話ですが、ほんとに大したお話もしてないのに唯さんが戻ってきてくれるなんて。どうしてわかったんですか?」

 

雪樹「そもそも、あの子は落ち込むのを引き摺るような子じゃないと思ったんだ、元気っ娘は自分が落ち込むことより他人が落ち込むことのほうが気にしてることが多い。自分のことにある程度楽観的になれると思うんだ。だからじゃないかな」

 

千川「確かに大槻さんが落ち込むところはあんまり見たことないですので、そうかもしれないですね。」

 

雪樹「あくまで僕の憶測だけどね。でも実際戻ってきてくれたんだ。それでいい。」

 

森久保「もしかして雪樹さんも、魔法使いなんですか…」

 

雪樹「ま、魔法使い?それに僕もっていうのは、どういうこと?」

 

森久保「冬斗さんにスカウトされたアイドルは、お仕事貰えたり、ユニットを組めたり、ソロのレコーディング貰えたり、必ず皆さん耀いているんです。もりくぼもそうでした。」

 

雪樹「僕にそこまでの力があるかわからないよ、まだ大きな目標は見つからないし、みんながまた楽しくアイドル出来るようになるのが、今の僕の目標かな。」

 

森久保「楽しくアイドル出来るように…なら…いや…」

 

雪樹「どうしたの?」

 

森久保「いっ、いえ、なんでもないです。」

 

雪樹「そう、気になる事があるならまた今度教えてくれると嬉しいかな。」

 

森久保「ま、また今度で…」

 

ふと窓に目を向けると夕暮れのオレンジ色の空が見えた。

 

雪樹「あれ、もう夕方なのか。」

 

千川「六時過ぎてますね、そろそろ私は帰りますね。」

 

雪樹「はい。お疲れ様です」

 

千川「お疲れ様です。」

 

千川さんは荷支度をして帰った。

けど、森久保さんは…

 

雪樹「森久保さんは。まだ帰らないのかな」

 

森久保「もりくぼも、森に…女子寮に帰ります。」

 

雪樹「うん、お疲れ様。」

 

森久保「お疲れ様です…」

 

森久保さんも小走りでオフィスを出ていく

 

皆が居なくなり一人だけになる。

 

雪樹「僕も帰ろうかな。明日は専務に話をしてみるか」

 

オフィスを出て鍵をかけ事務所を出た。

 

そして、帰宅途中、またストーカーにつけられていた

 

雪樹「昨日と同じ人じゃないな。」

 

複数犯か。交代制なのか。

とにかくストーカー犯は一人だけじゃない

ということだろうか。

 

気にしていないふりをして普段通り帰路を進むと、先日と同じ場所で前から人が歩いてくる。服装も似ているし仕草も似た感じだ。

 

道を開けるように横にずれて歩くと

何事もなくその場を歩き去って行った。

 

雪樹「昨日とは別の人か?それとも思い違いか。」

 

昨日とは違うのは。

ストーカーがまだついてきている事

 

気にする素振りをせず家の付近まで着くとストーカーは去って行った。

 

雪樹「特定されたか…?まだ距離はあるけど。明日の帰りは道を変えるか…」

 

……

 

翌日、郵便受けに差出人のない封筒。

中には異様な手紙が入っていた…

 




一通の手紙、前任 の話が続きます
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