新任Pとシンデレラガール達   作:むつさん

4 / 13
前任Pとの関わり。
あとオリ主Pのお話。


逆恨みの終わりと疲労感

 

なるほど。誘拐か

 

雪樹「何か御用ですか。」

 

男「あんただな。新任のプロデューサーは」

 

雪樹「散々ストーカー使い回してるならわかってることだと思いますけどね。」

 

男「なかなか強気だな」

 

雪樹「この状態で怯えるような人間が、プロデューサーなんて出来ませんよ。」

 

男「なるほど、気持ちだけはしっかりしてるんだな。まぁ、それももう終わりにさせてやる。」

 

雪樹「ただでは済まないのは承知ですが。何かされるんですかね、見た感じ物騒なものは見当たりませんけど」

 

男「まぁ、刃物は何本かあるな。生憎拳銃はねえんだよ。」

 

雪樹「刃物一本でもあれば勝ち目はないですかね。」

 

一つ…掛けに出てみるか。

 

雪樹「少し失礼、電話が。切りますね。」

 

早苗さん。読み取ってくれるとありがたいけど、

 

 

片桐「プロデューサーから電話?こんな夕方から何かしらね…夜のお誘いはお断りなんだけど。」

 

電話に出ても反応がない…

 

片桐「まさかイタ電?でもあの感じでイタ電するような人とも思えないし。」

 

何か聞こえる…この声もしかして…

少し。様子見しましょうか

 

 

男「電話か。切っとけそんなの、緊張感の無い男だな。」

 

雪樹「緊張感というより。冷静だって言ったほうが、聞こえはいいと思いますけどね。それよりお名前聞かせてもらってもいいですか。」

 

男「そうだなせっかくだから言うよ、俺は赤原児玉、あんたの前任のプロデューサーだよ。」

 

雪樹「それで、前任のプロデューサーが僕になんの恨みがあるんですか」

 

赤原「あんたが潰れれば今度こそあのプロダクションは終わりだ。」

 

雪樹「逆恨み。ん、ちょっと違うか。とにかく僕はあなたに恨まれる筋合いは無いし、潰したいなら直接的にやればいいじゃないですかね。遠回しすぎると思いますよ。」

 

赤原「あんたが潰すほうが話が早い、俺にあのプロダクションは今はあんたが希望の星だ、その希望が潰れたとなれば…そりゃ苦しいだろうな。」

 

こいつ…馬鹿か…

 

雪樹「入って3日の新人を希望の星とか言ってるのは少し筋違いだと思いますけどね。ましてや、過去に何の経験もない一般人ですよ。」

 

赤原「何でもいいんだよ、とにかくあのプロダクションにプロデューサーは着けさせねえ。」

 

雪樹「それで、どうするんですか。早く行動の結論を言ってください、時間勿体無いですよ」

 

赤原「おい、車まで連れて行け。」

 

ワゴン車に連れ込まれ。どこかに向かっているようだ。

 

雪樹「どこ向かうんですか。」

 

赤原「そうだな。港で沈めてやるよ」

 

雪樹「東京港ですか。」

 

赤原「なんだ、なんか文句でもあるのか」

 

雪樹「いいえ何も。鞄少し車においておきますね」

 

しばらくしたら港に着いた

 

赤原「降りろ。」

 

雪樹「夜景、なかなかキレイですね」

 

赤原「お前ほんと緊張感ないな…お前今から海に沈められるんだぞ?死ぬんだぞ?怖くねぇのかよ」

 

雪樹「別に怖くないですよ。そりゃ色々とやりたいこととか後悔はあると思いますけど、死んだら関係ないですからね。怖いと思うくらいなら楽しいこと考えておけばいいんですよ。」

 

赤原「こいつ…なんか調子狂うな…おい早く縄繋げろ。めんどくせぇ。」

 

雪樹「一番面倒被ってるのは僕なんですけど。」

 

赤原「うるせぇな…」

 

港の石橋の一番深いところの端に立たされ

両手を縛られ、両足に縄で重いコンクリートを繋げられた。

 

うまく歩けず恐らくかなり重量があるだろう

 

赤原「さてと。最後に言い残す言葉はあるかよ」

 

雪樹「そろそろ後ろ振り向いたらどうです?」

 

赤原「は?」

 

警察車両がいくつがあり

警官と片桐さんがいる

 

赤原「嵌めやがったな…」

 

雪樹「簡単なトリックです。」

 

赤原「まさか…あの電話…!?」

 

雪樹「正解。詰めが甘いですね」

 

赤原「ちくしょう!てめぇだけでも!」

 

雪樹「あっ。」

 

ヤケになったのか押されて海に落ちる。

 

(うん。確実に沈んでる。助けが来なかったら溺れ死んでたかな)

 

片桐「あんたなにして!?」

 

男共を警官に任せて海に飛び込んできた

 

片桐さんは手と足の縄をナイフで切った。

 

(これで楽だな)

 

息はまだ続いている。

水面まで結構あるけど大丈夫。

 

(片桐さんが逆に心配だ…)

 

結構苦しそうな顔をしている…

 

手を引いて水面まで引っ張る、

片桐さんがギリギリのところで水面まで出た

 

片桐「ぷはぁ…結構深いじゃない…勘弁してよ…」

 

雪樹「助かりました。ありがとうございます」

 

片桐「涼しそうな顔してるわね…息大丈夫だったわけ?」

 

雪樹「ひとまず陸に上がりません?」

 

片桐「そうね。」

 

警官達に手を借り陸に上がる。

先程の連れられた車から鞄を回収して

捕まった赤原達のもとに行く

 

赤原「お前、生きてたのか」

 

雪樹「もう少し遅かったら三途の川泳いでましたね」

 

赤原「ちっ…」

 

雪樹「ひとつだけ聞いてもいいですか?」

 

赤原「なんだよ。」

 

雪樹「あなたがプロダクションを恨む理由はなんですか?」

 

赤原「…ファンだったアイドルがあのプロダクションのオーディションに落ちた。他のアイドルは新人だらけで。まだアイドルを目指すかもわからない子もいた、それなのにその新人を取って、慣れたアイドルを取らない…」

 

雪樹「それだけか?別に自分でスカウトだって出来ただろう?」

 

赤原「断られたんだよ、一回落ちたなら別にいいと。他の事務所に行くとな。」

 

雪樹「それならそれで仕方ないだろう」

 

赤原「どうしてもそのアイドルが輝く場所を自分で作りたかった…一緒に仕事をして。ファンを増やして。そうしたかったんだよ、でもそれも叶わなかった。だからヤケになったんだよ」

 

雪樹「そうか。それだけなんだな」

 

赤原「ああ、それだけだよ。」

 

雪樹「まぁ、残念だったな、としか言えないな。まぁ、しっかり処罰受けて反省しな。うまく行かないことだってあるよ」

 

赤原「…わかったよ…」

 

片桐「連れて行って。」

 

赤原達は警察に連行されていった。

 

雪樹「片桐さんこれ。寒いでしょう」

 

置いてあったコートを渡した

 

片桐「あなたも寒いでしょう。」

 

雪樹「わざわざ助けに来てくれたお礼ですよ。コートは濡れてないので」

 

片桐「わかったわありがとう」

 

雪樹「今度事務所に来たときにオフィスに返してくれればいいです。」

 

片桐「帰りは宛ある?」

 

雪樹「この付近なら交通は問題ないですけどね」

 

片桐「せっかくだから送っていくわ」

 

雪樹「お世話かけてすいません。」

 

片桐さんの車で家まで帰った。

 

雪樹「この辺で大丈夫です、ほんとお世話になりました。」

 

片桐「一件落着ね。前任って例のストーカーと繋がってたんでしょ?」

 

雪樹「ええ。帰り際に誘拐されましたよ。」

 

片桐「あなたも冷静ね。普通ならあの状況は怖いはずよ。」

 

雪樹「僕はあの程度なら別に怖くないですね」

 

片桐「そう、メンタルがよく育ってるわ。それじゃ帰るから。明日コート返しに行くわ。」

 

雪樹「はい、お疲れ様です。」

 

家に帰ると

全身が濡れ気味なのが兄貴夫婦に心配された

一連の話をして尚更相当心配された…

 

まぁ、誘拐されたから当たり前だけど

 

…………

 

翌日、出勤してオフィスに行くと…

 

ちひろ「プロデューサーさんおはようございます」

 

雪樹「あの…集まりすぎじゃないですか…?」

 

何人かのアイドル達が居る

見覚えのない子もいる

 

ちひろ「プロデューサーさんが誘拐されたって聞いて。無事だったって話から皆さん確認するために集まったんですよ」

 

杏「一日で解決するとか話が早すぎない」

 

雪樹「いやあの…無事だったからいいと思うんだけど…?」

 

卯月「皆さん心配だったみたいですよ」

 

雪樹「初めて会う子もいるね」

 

ちひろ「それだけ皆さん新しいプロデューサーに期待してるんですよ。」

 

雪樹「それはありがたいけど…視線が多い…って待った。ちひろさん一つ聞いていい?」

 

ちひろ「何でしょう」

 

雪樹「大体の予想はつくけど。僕が誘拐されたって話はどこから?」

 

ちひろ「早苗さんですよ?」

 

片桐「あ、プロデューサーおはよう!コート返すね~、おーみんな集まってるねぇ~!」

 

雪樹「片桐さん…昨日の話どうやって広めたんですか…」

 

片桐「グループチャットだけど?」

 

雪樹「やっぱりそうですか…前任のこともありますが。話す必要なかったと思いますよ…?」

 

片桐「新しいプロデューサーの事だから。お知らせとしてもね。」

 

雪樹「軽い話ではないですけど…まぁ大事には至ってないですし。いいか。」

 

渋谷「久しぶり、でいいのかな。」

 

雪樹「ああ、あのときの。」

 

渋谷「アドリブびっくりしたと思うから。申し訳ないかなって。」

 

雪樹「いいよ。放っておけない性格だし。この前も言ったけど。結果的には止めに入っただろうから。」

 

渋谷「改めて、ありがとう。」

 

雪樹「これから、よろしくお願いしますね。」

 

???「この人が新しいプロデューサー?」

 

渋谷「この前助けてくれたって言ってたのはこの人だよ」

 

本田「おおー!噂のヒーローだね!私は本田未央。よろしくね!プロデューサー!」

 

雪樹「僕は松谷雪樹、こちらこそよろしくお願いしますね。まぁ、ヒーローって程でもないけど。」

 

渋谷「でもまさか、本当にプロデューサーになるなんて思わなかったよ。」

 

ちひろ「そういえば、プロデューサーさん宛に専務から書類が届いてますね。」

 

雪樹「専務から?」

 

渡されたのは明日の打ち合わせの資料だった

丁度確認しようと思ってたところだったから探す手間が無くて済んだかな

 

雪樹「このビル…あれ、あいつの所と同じか」

 

ちひろ「打ち合わせ先、何かあるんですか?」

 

雪樹「友人が確かこのビルにある事務所で働いてた気がするんです、まぁ多分ですけど。」

 

ちひろ「会えるといいですね。」

 

雪樹「まぁ、会えたらね」

 

白菊「あの、プロデューサーさん、今いいですか?」

 

雪樹「白菊さんどうかしました?」

 

白菊「あの、明日のことで相談があって。」

 

雪樹「相談?舞台演技のこと?」

 

白菊「えっと、その舞台演技をするイベントが延期になってしまったので明日は予定が無くなってしまったんです。なので明日の打ち合わせに参加しても大丈夫なのかなと思って。いいでしょうか?」

 

雪樹「イベントが延期になった理由も気になるけどまぁ、そういうことなら大丈夫だよ。場所もわかってるし。午後からだからある程度時間に余裕もある。」

白菊「ありがとうございます。」

 

雪樹「これ、時間と場所だけメモしておいて。まぁ事務所の近くだし一度集合してから向かうでもいいけど。」

 

白菊「むしろそのほうがありがたいです。」

 

雪樹「それなら、そうしようか12時にプロダクション前に集合かな。」

 

白菊「わかりました。12時ですね。」

 

雪樹「遅刻しないようにね。」

 

白菊「はい、早起きして来るので、多分大丈夫です!」

 

雪樹「さてと。」

 

プロデューサーデスクに座ろうとしたとき

机の下から視線を感じた。

 

森久保「あ、おはようございます…プロデューサーさん」

 

??「お、おはよう…初めまして。」

 

雪樹「初めまして、えっと、机の下は集会する場所じゃないんだけどな。」

 

輝子「私は、星輝子、ここで、キノコを育ててるんだ。」

 

え…キノコ…?なんで?

というか、机の下が…

 

雪樹「なんていうか…もう…いや、いいや、松谷雪樹だよ、よろしくね。」

 

輝子「うん、よろしく。」

 

雪樹「机の下には本を読む少女とキノコを育てる少女か…」

 

森久保「今日はたくさんの方がいるので…」

 

輝子「キノコは暗くてジメジメしたところが好きなんだ…フヒ…」

 

雪樹「わ、わかったよ。」

 

??「レッスンルームにいないからこっちを探しに来たけど…」

 

また一人、オフィスに少女が来た。

独特なファッション…眼帯?

怪我でもしてるのかな

 

??「乃々と輝子はまた机の下なのか?」

 

雪樹「うん、二人ならここにいるよ」

 

??「やっぱりそうなんだなー、って待った、お前誰だ!?」

 

雪樹「新しいプロデューサーの松谷雪樹だよ、今後、よろしくお願いしますね。」

 

早坂「ウチは早坂美玲だ、新しいプロデューサーってことは前の人はやっぱりやめたんだな。嫌いだったから良かったけど。」

 

雪樹「眼帯、目を怪我してるの?」

 

早坂「ファッションだ!怪我をしてるわけじゃないぞ?」

 

雪樹「そう、ファッションね」

 

うん、それなら大丈夫だな。

ファッションに眼帯もまた独特な…

 

早坂「おいー、乃々ー輝子ー、いつになったら練習開始するんだよー」

森久保「演劇なんて…恥ずかしいです…」

 

輝子「ぼののちゃん。私も行くから。ほら。」

 

森久保「も、もりくぼに王子様役なんて…に、似合わないですから…」

 

早坂「それじゃあ、お姫様役がいいか?」

 

森久保「うぅ…それはもっとむりぃー…」

 

輝子「ぼののちゃんが王子様。ちょっと、見てみたいかな」

 

森久保「弱腰の王子様なんですけど…」

 

早坂「ほーら。早く行くぞ!」

 

早坂さんが二人を机の下から引っ張り出そうとする

 

森久保「あう…美玲ちゃん、引っ張らないで…」

 

雪樹「森久保さん、頑張っておいで。」

 

森久保「はいぃ…」

 

三人はオフィスを出ていった。

 

雪樹「さて。今日はどうしようか…」

 

初めての仕事も明日から。

次の仕事をもらうのも自分にはまだ負担が大きいかもしれない

 

ふと視線を窓に向けると

事務所の庭先が見えた。

 

晴れてるし散歩でもするか

 

雪樹「ちひろさん。少し席を外しますね。何かあれば電話してください」

 

ちひろ「はい、いつ頃戻りますか?」

 

雪樹「昼前には戻りますよ」

 

ちひろ「わかりました。」

 

オフィスを出て。庭先で軽く散歩する

ベンチに一人の少女が居た。

絵を描いているみたいだ

 

雪樹「こんにちは」

少女「あっ、えっと…」

 

雪樹「ああ、ごめん邪魔したかな」

 

少女「すぐ片付けますから…」

 

雪樹「いやいや、そのまま描いてていいよ、邪魔してごめんね」

 

少女「でも…事務所の中では絵は駄目って…」

 

雪樹「それは、誰から?」

 

少女「誰って…プロデューサーさんが…あれ…あなたは?」

 

雪樹「僕は松谷雪樹、新しいプロデューサー、多分前任から言われたんだよね」

 

少女「えっと…そうです…」

 

雪樹「もう前任はいないから。好きに描いていいから。」

 

少女「そうなんですね…ありがとうございます」

 

雪樹「名前、聞いてもいいかな」

 

成宮「私は成宮由愛です。」

 

雪樹「成宮さんもアイドルなんだよね。」

 

成宮「はい、えっと…絵も好きで」

 

雪樹「絵を描くのが好きなんだね。見てもいい?」

 

成宮「えっと…笑わないでくださいね…」

 

見せてもらったものはどれも風景画だった。

色の明暗や彩度が上手く塗られていて

その場の風景をしっかりと描き写している

 

雪樹「とても上手だと思うよ、風景画が好きなんだね」

 

成宮「人や動物は動いたりするのでちょっと難しいですから…」

 

雪樹「確かに人を絵に描くのは難しいね、僕は絵心がないから全く無理だけど、写真くらいなら」

 

成宮「綺麗な写真を取るのも難しいと思います…」

 

雪樹「そうだね。慣れるまで時間かかったよ。でも楽しかったかな。」

 

成宮「今はもう辞めたんですか?」

 

雪樹「学生の頃だけ。今はカメラに触れる事も無くなっちゃって。妹にあげたから。」

 

成宮「そうなんですね。なんかもったいないような。」

 

雪樹「仕事してると、そんな暇が無くなっちゃうから。」

 

成宮「でも妹さんが持ってるんですよね」

 

雪樹「そうだね。まだ壊れてなければ」

 

成宮「私は一人っ子だから…兄妹と共有とかしたことない…」

 

雪樹「それが悪いことでもないけどね。使いたいときに使えなかったりするし。」

 

成宮「でも兄妹はほしいかな…」

 

雪樹「今は、兄妹みたいな仲間が居るよね。」

 

成宮「はい。だから寂しくありません。いつか皆さんの集合絵を描いてみたいです。」

 

雪樹「良い夢だと思うよ。それじゃ、そろそろ行くかな。またオフィスに来たときはよろしくね。」

 

成宮「はい、ありがとうございました。今後共よろしくお願いします。」

 

会釈をして少し散歩をしてオフィスまで戻る

 

さっきとは人が変わってる気がする。

何人か見覚えのない子もいる。

 

雪樹「戻りました。」

 

ちひろ「おかえりなさい。プロデューサー」

 

雪樹「何人かまた、初めましての子が居るね、でも…このピンク髪……」

 

このピンク髪…それに髪先に少し水色…

あれ…何処かで見たような…

 

ちひろ「夢見さんですか?」

 

夢見「え?なにぼくがなんかあった?」

 

あ、わかった。CDショップの時の

 

雪樹「あぁ…あの時の…」

 

夢見「えっとー…ぼくは見覚え無いよ?」

 

雪樹「CDショップ、卯月さんのアルバムの限定版の時、覚えてますか?」

 

夢見「んー…あ!思い出したー!あの時の優男みたいな人!え、まさか新しいプロデューサーだったの!?」

 

雪樹「だった、というより、最近プロデューサーになった。だね」

 

夢見「なるほど…?えっと、ぼくは夢見りあむだよ、えーと、アイドル好きのオタクって言えば、なんとなくわかってもらえると思う。」

 

わかりたくないけど

わかる。元オタクだったから

 

雪樹「オタクっていうのを自分で言うのか…」

 

夢見「オタクはオタクだから。そこは否定しない!」

 

雪樹「あ…そう…」

 

個性的な子、ほんと多いな…

 

ちひろ「お昼どうされますか?」

 

雪樹「お腹減ってないし、まだいいかな。」

 

ちひろ「私は社会食堂行ってくるので。少し席を外しますね。」

 

雪樹「わかりました」

 

特にお腹は空いていない、

戸棚からプロデューサーマニュアルを取り出して眺めていた。

 

??「初めまして、でいいかな」

 

雪樹「ん?、ああ初めまして。松谷雪樹、新しいプロデューサーだよ、今後よろしくお願いしますね。」

 

関「私は関裕美。えっと。よろしくお願いします。」

 

一言挨拶を交わすとまたマニュアルを眺めていた。

 

関「えっと、ちょっといいかな。」

 

一旦手を止める

 

雪樹「なにかな?」

 

関「ほたるちゃん明日舞台演技のはずだったんだけど。さっき中止になったって聞いたんだよね。何か理由知ってるかなって」

 

雪樹「その件に関しては僕は知らないんだ。多分専務が担当してると思うんだけど。本人に聞くか専務に聞いてみて。」

 

関「そっか、プロデューサーさんなら何か知ってるかと思ったけど。」

 

夢見「つい最近来たばかりでしょ、まだ仕事の事とかわからないと思うけど。どうなの?」

 

雪樹「まぁ実際、昨日始めて仕事振られたばかりだし。わからない事だらけだね。」

 

関「あっ、そうだったね…なんか失礼だったかな。」

 

雪樹「ううん、気にしなくていいよ。」

 

関「ちょっとほたるちゃんに聞いてみるね。それじゃ、また今度。」

 

雪樹「うん、お疲れ様」

 

裕美さんがオフィスから出て行ってから

またマニュアルを眺めていたが。

ちょっと眠たくなってきた…

 

雪樹「そうか…そういえば、まだ休んでないな」

 

マニュアルを閉じて少しぼーっとしていると。眠気に負けてしまって。

椅子に座った姿勢のまま寝てしまった。

 

夢見「あれ、Pサマ居眠りしてる。毛布あったかな。」

 

少し暖かさを感じたのは多分毛布のおかげだと思う。

 

………

 

ふと気がつくと。

暗い森の中にいた。

 

(ここは?)

 

見覚えのない森

少し歩くと。

開けた場所に出た。

 

そこには。赤い花…曼珠沙華が沢山咲いて。

その中に一人の少女が居た。

 

(この風景…あの時の…)

 

いつか見た雑誌の風景。

あの少女の名を思い出せない。

 

確か…花の名前の少女だったはず。

 

 

少女は振り向くことはせず。

一輪の曼珠沙華を摘み取り。

木々から漏れる僅かな陽の光だけを眺めている…

 

(…彼女は…)

 

そうだ。思い出した。

 

(白菊ほたる…)

 

名前を思い出すと。

目の前が暗くなり

不意に体の力が抜けて

倒れた感覚を味わった瞬間に気を失った

 

………

 

雪樹「あっ…寝てたのか…」

 

不思議な夢を見てた気がする…

 

あと、お腹空いた。

 

ちひろ「まだ休み取ってなかったですよね?明日は…打ち合わせでしたね。」

 

雪樹「まぁ打ち合わせの翌日にでも、」

 

ちひろ「はい。無理しないでくださいね。」

 

雪樹「お気遣いありがとうございます」

 

夢見「あ、Pサマ起きた?」

 

雪樹「あぁ、毛布かけてくれたんだよね。ありがとう。」

 

夢見「まぁ、この時期に居眠りは風邪ひくし。今風邪引かれても困るし?」

 

雪樹「まぁ、そうだね。」

 

ふと時計に目を向けると。

夕方になっていた。

 

雪樹「4時間位寝てたのか…」

 

ちひろ「よく座ったまま寝れますよね」

 

夢見「首痛くなるでしょ。」

 

言われてみれば少し首が痛い

 

雪樹「座った姿勢で寝るのは昔よくあったからね。」

 

夢見「もしかして、学校の授業とか居眠りしてた?」

 

雪樹「割と居眠りしてたかな。」

 

ちひろ「私も居眠りくらいはしてましたけど。」

 

雪樹「まだ眠たいし。明日は初営業だから先に帰ります。お疲れ様でした。」

 

夢見「お疲れ様~」

 

ちひろ「お疲れ様です。」

 

事務所を出て帰路を歩く。

 

そう思えば。連日ストーカーを気にしていたから。何もない帰宅というのは割と気が楽だった。

 

帰って食事を済ますと。

眠たかったのですぐ寝た。

 

………

 

ふと目が覚めて窓に目を向けると。

青い月が見えた。

 

(懐かしい…けど思い出したくはなかったな)

 

ある知り合いが亡くなった日の夜

あの日も青い月だった気がする。




初営業。
どうなりますかね。
お楽しみに

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。