あとお仕事のお話。
……
雪樹「森久保さんはどうする?」
森久保「もりくぼは…特に用事は無いですけど…」
雪樹「レッスンは?」
森久保「今日は皆さん別の用事があるみたいで、集まり少なくて無しになりました。」
雪樹「そっか。」
森久保「あの…もし良ければでいいんですが…プロデューサーさんのお話。少し聞いてもいいですか?」
雪樹「えっ?僕の話?」
森久保「あの…はい…嫌だったらいいんです…」
雪樹「何が聞きたい?」
森久保「えっと…プロデューサーさんお幾つですか?」
雪樹「歳?24だよ」
森久保「案外お若いんですね…」
雪樹「幾つだと思った?」
森久保「あの…それは…」
雪樹「怒らないよ、何度も間違えられたことあるし、」
森久保「も、もう30くらいかと…」
雪樹「30か〜姉と同じくらいになるな…」
森久保「お姉さんがいるんですね…」
雪樹「姉だけじゃないよ。弟妹兄姉、全部いる」
森久保「え…えっと…五人兄弟ですか…」
雪樹「いや、8人だよ?」
森久保「8人?!」
雪樹「まぁ。驚くと思うよ。でもまぁ今はみんなバラバラだから。」
森久保「兄弟多いって…大変でしたか…?」
雪樹「そうだね、大変だったかな。」
森久保「ケンカとか…したんですよね…」
雪樹「ケンカしてもすぐ親に仲裁食らうからね。」
森久保「御両親も大変そう…」
雪樹「今となってはもう感謝の言葉すらも伝えれないか。まぁ…」
森久保「え…?えっと…もしかして…」
雪樹「両親はもう居ないんだ。気にしないで」
森久保「は、はい…」
雪樹「あと何か聞きたいことある?」
森久保「えっと…今までのこととか…」
雪樹「今までのこと?うーん。ざっくりした質問だね。」
森久保「お仕事とか…趣味とか…」
雪樹「前の仕事は好きじゃなかったかな。別に仲が悪かった訳じゃないけど。自分らしくないというか。楽しくなかった。」
森久保「それで…お仕事辞めてプロデューサーに?」
雪樹「そうだね。色々と区切りが着いたから、前職を辞めて色々と当たってる時に、専務からの誘いに乗った、そんな感じ。」
森久保「あの時はありがとうございました…おかげさまで…変な事に絡まれなくて…」
雪樹「まぁ、専務が来てくれて助かったかな。僕もあれは見過せなかったけど。あのまま押し切るのは僕は難しかっただろうし。逆にアドリブ振られて正解だったかもしれない」
森久保「凛さんのアドリブ振り…自然な感じでしたよね…びっくりしなかったんですか?」
雪樹「いや、もうびっくりしたよ。でもあの子も相当勇気必要だったと思うよ。知らない男性にいきなり振るんだから。」
森久保「ですよね…でも今ではもうプロデューサーになって…」
雪樹「それが、この様だけどね。」
森久保「でもプロデューサーさんがいなかったらほたるちゃんは…」
雪樹「そういうことは考えない。」
森久保「そ、そうですね。」
雪樹「そうだなぁ不幸…か。」
森久保「どうかされましたか…?」
雪樹「僕の人生は不幸だらけなんだろうなって」
森久保「不幸だらけだったんですか…?」
雪樹「僕の話を誰かに話すのは久々な気がしてね、今思うとそうかなって思ったんだよ」
森久保「そうだったんですね…」
雪樹「でも、今は落ち着いてるよ。」
森久保「落ち着いてる…?」
雪樹「本当は休んでいられる場合じゃないんだろうけど。こんな状況だから、少しでも気持ちの整理が出来るかな。」
森久保「プロデューサーさんも、大変なんですね…」
雪樹「今だけは気が楽だよ。今までが大変だったんだろうと思う。」
森久保「ご家族のこととか…?」
雪樹「それもあるけど。もう色々。」
森久保「もりくぼは…嫌な事ばかりだと…逃げたくなってしまいます…」
雪樹「逃げるのも、ありだったかもしれないね。でもそれもできなかったというか。しなかった。逃げても。結局は自分に降り掛かってくるってなんとなくわかってしまったから。」
森久保「以前のプロデューサーさんは…もりくぼが隠れてると…すぐ見つけて…お仕事に…」
雪樹「断る方法もあったと思う、でも森久保さんもそれをしなかったんだよね。」
森久保「せっかくのお仕事なので…断ったら、申し訳ない気がして。」
雪樹「でも、隠れるんだね。」
森久保「え、えぇ…まぁ…」
雪樹「目の前の事にはしっかり向き合うよ、僕はね」
森久保「そう…ですよね…」
雪樹「つまらないんだ。逃げて隠れて。それじゃ何もうまくいかないんじゃないかって。」
森久保「プロデューサーさんは…お強いんですね…」
雪樹「強くないよ。僕はただ我慢してただけだから」
森久保「もりくぼも…逃げなければ、強くなれたんでしょうか…」
雪樹「それは、僕にもわからないよ。君がどう思うかだから。」
森久保「もりくぼは…もりくぼでいいです…」
雪樹「そうだね。それでいいと思うよ」
……
森久保「プロデューサーさん…あの…」
雪樹「どうした?」
森久保「さっきからずっと。悲しい顔してます…やっぱり話さなかったほうがよかったですよね…」
雪樹「ああ…悲しい顔してたかな。」
森久保「すいません…もりくぼが無理を言ったばかりに…」
雪樹「いや、謝らなくていいよ。」
森久保「でも。悲しい顔してます…」
雪樹「ちょっと、考え事してただけだよ。」
森久保「そうですか…」
雪樹「でも。そうだね。少しそう思ってたかもしれない」
…会話が途切れる。
森久保さんは帰らなくて大丈夫だろうか。
雪樹「森久保さんは時間大丈夫?」
森久保「まだお昼ですし…」
雪樹「自主トレとか、学校の勉強とかも大丈夫?」
森久保「課題は終わらせてあります…自主トレは…」
雪樹「早坂さんも言ってたけど。劇の主役は大変だからしっかり取り組まないと大変だよ?」
森久保「わ、わかってますけど…でも…」
森久保さんの表情がかなり曇った。
劇の事で何かあったのだろうか。
雪樹「劇の事で悩んでるのかな。」
森久保「…はい…」
雪樹「話してみて。」
森久保「輝子ちゃんが失敗しちゃったので…美玲ちゃんともりくぼが慰めて居たんですが…同じ劇のある人が輝子ちゃんの失敗に対して怒ってしまって…」
ミスは誰でもあることだが…
森久保「輝子ちゃんもその失敗は一度目じゃないんです…でも劇の演技家の人も難しいところだからって失敗は許してくれてて…なのに…」
雪樹「なら怒られる理由はないね」
森久保「美玲ちゃんは輝子ちゃんと一生懸命練習してましたし…もりくぼも…苦手ながら練習してて…それで、美玲ちゃんがいがみ合ってしまって…」
雪樹「できるなら、衝突は避けたかったな…」
森久保「怒った人…アイドルなんかにやらせるからって…私達以外にも他の事務所のアイドルの方も…いましたし…そこでまた…言い争いになって…」
雪樹「あぁ…崩壊寸前だな…」
どうすればいいだろうか…
森久保「もりくぼは…何も言えなくて…どうすればよかったかなんてずっと考えてて…」
怖くて何もできなかった
多分そうだったんだろう。
でも実際には何ができたとしても
止めにかかるのは難しいだろう
そこまでヒートアップしてしまうと
最悪飛び火する可能性もある。
そうもなれば森久保さんは余計辛い思いをしただろうし。他の人も更に嫌な思いをするだろう。
…突然、扉をノックする音が聞こえる。
雪樹「どうぞ。」
入ってきたのは女性二人
専務とちひろさんだった。
美城「その調子だと、意識はしっかりしてるようだな。」
雪樹「この有様ですけどね。」
ちひろ「お怪我はどの程度…」
雪樹「怪我という怪我は右腕と左足の骨折。かな」
ちひろ「二箇所も…?」
雪樹「車に轢かれた訳だから仕方ないです」
美城「しばらくは休養になるだろうな」
雪樹「まだまともに仕事した感じでもないんですが…はぁ…」
美城「何にせよ、今回は本当に迷惑をかけた。すまない。」
雪樹「謝らないでください、ただの不運なんですから。専務は悪くないですよ。」
美城「そう言われると。余計申し訳ないが、まぁきりがない。」
雪樹「事務所空けてていいんですか?」
ちひろ「大人組の方が居てくれてるはずなので、大丈夫だと思います」
美城「とは言っても長居するつもりはない、私はまだこの後予定がある。」
ちひろ「私も留守番任せきりにするわけにも行かないので挨拶だけ…」
雪樹「はい、二人ともわざわざありがとうございます。」
二人は病室を出ていった。
森久保「と…突然すぎるんですけど…」
雪樹「凄い速さで隠れてたね。」
森久保「だ、だって…びっくりしましたし… 」
雪樹「隠れる必要なかったでしょ?」
森久保「あぅ…えっと…反射的にと言うか…もりくぼは小動物なので…」
雪樹「机の下によく隠れてるからね」
森久保「え、えぇ…はい…」
雪樹「劇のお話、どうしようか」
森久保「そ、そうでした…」
雪樹「一度起きた亀裂を治すのは大変だからね。」
森久保「でも…どうしたらよかったんでしょう…」
雪樹「そうだね。演劇家の人に相談してみないことには結果は出せないと思う。」
森久保「演劇家の人…そうですね…プロデューサーさんは今回あまり関わりがあるわけでは、ないですし…」
雪樹「こんな状態だから、力になれなくてごめんね。」
森久保「いえ…こちらこそ…無理なお話ばかりで…ごめんなさい。」
雪樹「治るのにも時間がかかるし。どうしたらいいかなぁ…」
森久保「怪我…大丈夫なんでしょうか…」
雪樹「心配してくれてありがとう、数カ月かかるだろうけど。できるだけ早く事務所に復帰できるように頑張るよ。」
森久保「はい…そろそろ…帰ります…」
雪樹「うん、帰り道、気を付けてね。」
森久保「ありがとうございます…えっと…また来ます…」
森久保さんは病室を出ていった
カーテンの隙間から夕陽が差し込んできている。
雪樹「そうか、もうそんな時間なんだな。」
残った最中を食べながら、スマートフォンでニュースを見ていたら
先日の事故の記事が流れてきた。
名前は伏せてあるみたいだ。
雪樹「逆走した車は大破、運転手は飲酒運転…意識不明…巻き込まれた僕と僕を轢いた車の運転手は命に別状は無いが骨折等の怪我。」
十中八九、逆走車が悪いが
僕を轢いた車の運転手も気の毒だ…
巻き込まれた挙句人を轢く羽目にあった訳だから…
雪樹「トラウマだろうな…これは…」
巻き込まれた車の運転手も僕を轢いたことを認めてる。
雪樹「本当に気の毒だな。」
事故の話はそこで止まった。
しばらくしてまた
病室の扉をノックされた。
雪樹「どうぞ」
入ってきたのは兄。
ただ、先日電話した兄ではなく。
県外まで引っ越したはずの兄。
雪樹「これは珍しい人が。」
次男「事故ったって聞いて見舞いに来たぞ」
雪樹「もう会わないかなと思ってたけど、思いもよらない所で。」
次男「見舞いくらい来させろ」
雪樹「両親の葬式には来ないのに俺の見舞いは来るのかい。それはそれでどうなんだか」
次男「あの二人、亡くなったのか、初耳だけど」
雪樹「あれ、連絡来てなかった?」
次男「いつ頃?」
雪樹「今年の夏だよ。」
次男「その時は海外出張かもな…」
雪樹「そうか、まぁやっと重荷が降りた、って感じ。」
次男「お互い振り回され続けたからな。」
雪樹「色々とね」
次男「元気そうだし、俺は帰るわ。」
雪樹「うん、お疲れ様。」
次男「また気が向いたらな」
そう言って病室を出ていった
そのあとすぐ、また病室が開いた
看護師「夕飯、どうしますか?」
雪樹「ああ、ありがとうございます。」
看護師「また呼んでくださいね」
先程まで甘いお菓子を食べていたばかりなのに、食事は何事もなく食べきった。
夕飯、割と多めに見えたはずだけど
大食いと言うわけでもないんだが…
看護師「片付けますね。また何かあれば呼んでください」
…その後は特に何もなく寝た。
………
「お前は考え過ぎなんだよ。」
好きでそういうふうにしてるわけじゃないけど
「考え過ぎて細かい、その割にはずっと張り詰めてるだろ。」
緊張の糸か…どうして切れないんだろうな
「ほんと、丈夫な癖に他の人間よりも繊細だよな」
繊細か、
「取り扱い注意にも程があるだろ。まぁ俺は気にしないけど。」
……
雷の鳴る音で目が覚めた
雪樹「また昔の事だ。」
何故昔の夢?
何か理由があるのか?
雪樹「まだ3時か…」
もうひと眠り…
………
「大変だな。俺ももうそういうの考えないといけないのかな」
別にいいんじゃない。
やりたいことやればいいと思う。
「俺はまだ親のすねをかじってるんだなって思ってしまうよ、お前の話聞いてるとさ」
気がついたらそうなっていたってだけだし。別に偉いことでもない。
「でも家のことも親のことも兄弟のことだって考えてるんだろ?しっかりしすぎだろ。」
任せきりにするわけにもいかないと思った結末だから。別に…
………
雷の落ちる音で目が覚めた
また、昔の事だ。
やめてくれ。
ほんと。いい気分じゃない。
昔を否定するつもりはない。
ただそれを改めて眺めてなんの意味がある?
雪樹「なんの理由でどうして昔の事なんだ。」
全く意味わからない。
何か本能的な部分があるのだろうか。
病室の扉が開いた。
真壁「気分はどうかな、浮かれない顔をしてるようだが」
雪樹「一つ聞きたいことが…昔の事を夢で見るのは何か意味があるんですかね」
真壁「私は精神科の方はあまり詳しくないんだがね、人間の見る夢はその人の心理状態によって変わる。昔の夢を頻繁に見るということは昔の事を懐かしんでいる、または昔のように生きたいと思っているのだろう。」
雪樹「そんなことは微塵も考えたことないが…」
真壁「これはストレスからなる物が大多数だな、君が思って居なくても無自覚に本能は現実から目を背けたいと思っているのだろう。」
雪樹「そういうことなんですかね。」
真壁「あくまで一例だ、君が本当にそう思っているかどうかとは関係のない可能性もゼロではないだろうな。」
雪樹「そうですか」
真壁「夢の話はまた考えるといい。さて、一つ話をいいかな。これも君に直接的に支障はないが。」
雪樹「なんの話ですか?」
真壁「医療費の事だ。」
雪樹「ああ、そうですね、いくらほど掛かるんですか?」
真壁「それが驚いたことに君への請求はゼロ。会社の保険が効くのと、あの二人からの協力だろう。」
雪樹「あの二人…」
ちひろさんと美城専務…?
真壁「私は別に構わないんだがね。他人の医療費に散々払い込むなんて大した期待されているな、君も」
雪樹「自分でもびっくりですよ」
真壁「一応、請求書の写しは用意するから今度渡しておくよ。支払いは要らないからね。」
雪樹「わかりました。お願いします」
真壁「それじゃ、私はこれで。」
真壁さんは病室から出ていった。
時間は7時頃
真壁さんが出たあとすぐ朝食を摂った。
雪樹「少しずつ。リハビリがいるだろうな。」
自分でできる範囲で体を動かしたいが、
ギプスで固まっているせいか上手く動かせない。
松葉杖は用意してもらっているが
軽い移動くらいしかできない
「大人しくしてるのも退屈だな」
…朝食、昼食と食べて暇な時間を過ごす。
昼過ぎ、外が晴れてきたのか日が刺してきている。通り雨だったのだろうか。
考え事に更けていると病室の扉をノックされる。
雪樹「どうぞ」
入って来たのは三人組
森久保「プロデューサーさん、今日も来ました…」
雪樹「こんにちは。学校終わり?」
早坂「今日はお昼までだからお見舞いに来た」
輝子「私は、元々休みだったから」
雪樹「三人共ありがとう。」
森久保「朝、雨強かったですよね… 」
早坂「雷の音で目が覚めたぞ…」
輝子「イイ感じの雷だったな…フヒ…もっと続いても良かったのに…」
早坂「それじゃあお見舞いに行けないぞ。」
輝子「そ、そっか、それもそうだね」
雪樹「無理して来なくてもいいよ?」
森久保「むりではないんですが…やっぱり事務所にプロデューサーさんが居ないと…物足りないと言いますか…」
早坂「そうだぞッ!早く治して事務所に戻ってこいよな」
雪樹「ん?僕悪くないよね?」
森久保「でも…皆さん待っていますし…」
雪樹「それはそうだけど。そんなすぐ治る怪我じゃないから…」
輝子「クリスマスが劇の日なんだ…間に合うかな…」
雪樹「うーん…なんとか歩けるようになれば行けると思う。それまでにリハビリ頑張るよ」
森久保「無理は良くないと思うんですけど…」
雪樹「大丈夫だよ。なんとかするよ」
輝子「ビデオ撮るから…それ見てもらうだけでもいいんだ…」
早坂「無理して来てまた怪我されるのも困るからな。しっかり治ったらでいいぞ?」
雪樹「うん、ありがとう。」
早坂「それじゃあウチはこのあと買い物に行ってくるから。またなッ!」
輝子「小梅ちゃんと幸子ちゃんに呼ばれてるから、私も。」
雪樹「二人とも、お疲れ様」
二人が帰るが、
森久保さんはまだ隣の椅子に座っている。
森久保「あの…もう少し居てもいい…いや…だめですよね…」
雪樹「いいよ。時間があるならね。」
森久保「ありがとうございます…それで…またお聞きしたいことがあって…」
雪樹「どんなこと?」
森久保「えっと…プロデューサーさんは…松谷さんは…お友達とかは居るんですよね…」
雪樹「そうだね。居ることには居るけど実際会って話する人は片手で数えれる程度かな。」
森久保「そう…なんですね…」
雪樹「普段から引き篭もりがちだったからそんなに出会いも無いし。」
森久保「も、もりくぼも普段から…机の下に…」
雪樹「森久保さんは僕よりも多いでしょ、友達を大切にね」
森久保「えっと…はい、輝子ちゃんや美玲ちゃん、裕美さんやほたるちゃん…色んな方と…」
会話を遮るように携帯が鳴った。
誰からだろうか
雪樹「ごめんちょっと出ていいかな」
森久保「は、はい。お構い無く…」
タイミングを図ったかのように友人からの電話だった
…
友人「おう、久しぶり」
雪樹「ああ、そうだな、なんだかんだ連絡してなかったかもな。」
友人「仕事見つかったか?辞めたって話は聞いた覚えあるけど」
雪樹「おう、なんとかな、かなり大変だろうけどやっていけそうだよ。」
友人「そりゃ良かったよ、今度、休み教えてもらえたら休み被らせるけど。」
雪樹「残念だが今は病院。しばらく遊べそうにないんだよな」
友人「はぁ?!病院!?入院してるってことか?」
雪樹「そう。事故ってさ。骨折だけで済んでるし後遺症とかはないから大丈夫だぞ」
友人「お前の大丈夫は言うほど大丈夫じゃないから。ちょっと今から行くわ。」
雪樹「今日は休みなのか」
友人「おう、暇だったんだよ。ちょっと切るぞ。それじゃ後で。」
雪樹「焦るなよ。それじゃ」
…電話を終える…
森久保「えっと…お友達さん…ですか…」
雪樹「うん、前の仕事の同僚というか、同期。」
雪樹「数少ない友人のうちの一人ってとこかな」
森久保「ご家族が多くて…でもお友達は少ない…」
雪樹「ん?うん、まぁそうだね。」
何か意図があるのかな
雪樹「森久保さん。僕からも質問をしていいかな」
森久保「もりくぼに答えられるなら…」
雪樹「どうして、僕のことをそんなに聞くのかな、何か理由がある?」
森久保「あの…ぁ…えっと…」
雪樹「結構積極的だったから気になって。」
森久保「深い意味は無くて…以前のプロデューサーさんに…少し似てるかなって…」
空似か
雪樹「照らし合わせてるってことだね。それだけ親しみやすいってことなのかな」
森久保「あまり抵抗を感じなかったので…でも…そうですよね…ちょっと欲張りで…すみません…」
雪樹「謝らなくてもいいよ…でもね」
森久保「でも…?」
雪樹「これを言うのは少し心苦しいけど、僕と森久保さんはまだ会って5日ほどだよ。一緒に仕事をしたことがあるわけでもない。親しい関係と言うには程遠い。違うかな。」
森久保「あぅ…はぃ…」
雪樹「ごめん。少し言い方を変えるよ、僕は大丈夫なんだ、そうやって親しんでくれるのはありがたいよ。でもね、親しく接するのはしっかり相手との関係を築いてからの方がいい。これはアイドルとしても当然だと思うし。今後生きていくうちでもそうだからね」
森久保「わかりました…えっと…気をつけます…」
雪樹「辛いこと言ったかもしれないけど。僕に気軽に接してくれるのは大丈夫だよ。ただあまり質問ばかりでちょっと怖かっただけ。それだけはわかってほしいかな」
森久保「あの…」
森久保さんが言いかけたところで
病室の扉をノックされる。
おそらく…
雪樹「どうぞ」
友人「案外早く着いたな」
やはりさっき電話が掛かってきた友人だ
友人「怪我はどうなんだよ」
雪樹「片足片腕の骨折だけ。それ以外はなんともないかな」
友人「いやそれでも不自由過ぎるだろ」
雪樹「大丈夫でしょ。そのうち治るって」
友人「お前の大丈夫は信用ならないからな。大丈夫って言い張る時はいつも爆弾抱えてるだろ。何か心当たりあるか?」
雪樹「いや、特に…無いんだよな」
友人「まぁ、それならいいか…ん…このカバン…?」
あ、森久保さんのカバン
友人「これお前の…なわけないよな隣にそれっぽいのあるし。」
雪樹「そうだな隣の破れたのが俺のやつだよ」
友人「もしかして彼女…」
雪樹「ではないぞ。」
友人「だよな。お前に彼女とか夏に雪が降るんじゃないかと思ったわ」
雪樹「どういう例えだよ、」
友人「え、じゃあ、このカバン何?」
森久保「そのカバンは…もりくぼの…」
直前に隠れてた森久保さんが小鳥のさえずるような声で話す。
友人「え、今の誰…まさか出るの?」
雪樹「あー…こっち」
一言いうと友人はベットの反対側を覗き込む
友人「え…あれ?」
森久保「あ、あの…こ、こんにちは…」
雪樹「鞄の持ち主。」
友人「えっと…待てよ…見覚えあるぞ…」
雪樹「知ってると思うぞ」
森久保「あ、あの…私が何か…?」
友人「うん、思い出したぞ、森久保乃々さんだな?」
森久保「もりくぼは…もりくぼですけど…」
雪樹「そうだな、もりくぼさんだよ」
友人「確かに、彼女では無さそうだな、っていやいや。」
雪樹「何か問題でも?」
友人「本人?コスプレとか空似とかなりきりとかじゃない?」
森久保「もりくぼのニセモノ…にせくぼ…」
雪樹「本人だよ。」
友人「お前…森久保さんだぞ?アイドルだぞ?どういうことだ?ファンが黙ってないぞ…」
森久保「あの…この人はプロデューサーさんで…」
友人「プロデューサー……?」
雪樹「新人だけどね。」
友人「えっ、てことはお前、アイドルプロデューサー…?あのプロダクションの?」
雪樹「うん、新しい仕事がこれ。」
友人「あ、そう。あ……そうなのかー…」
雪樹「うん、んで事故に巻き込まれてこの有り様」
友人「事故って、どう事故ったの」
雪樹「ニュース見てない?」
友人「あ、見たかも、逆走車の?」
雪樹「そう、それ。」
友人「なるほど。そりゃ災難だったな、仕事就いたの最近か?」
雪樹「まだ一週間も経ってないよ。」
友人「身に付く前にそれは大変だな」
雪樹「事故遭う前も、ストーカーにつけられたり、海に沈められかけたりしたし、もうなんか驚かなくなった」
友人「数日で色々ありすぎだろ」
雪樹「うん、色々とありすぎて疲れたよ」
友人「そういえば自己紹介まだだった。荒浜友人(ゆうと)、よろしく、森久保さん」
森久保「あっ…はいよろしくお願いします…」
友人「こいつ、無理と無茶ばっかりするから定期的に怒ってやってほしい」
森久保「そんな…プロデューサーさんに怒るなんて…もりくぼには無理です…」
雪樹「そうだな、就任していきなり五連勤してるな」
友人「ほらすぐそういうことする。」
雪樹「いいんだよ、俺は気にしてないから」
友人「お前は気にしてなくても周りは気にするんだよ。汲み取れそれくらい」
雪樹「今後はのんびり仕事するよ。それができるならだけど」
友人「一言余分、もう言っても無駄だな。」
森久保「お二人とも、仲良しなんですね。」
雪樹「まぁ、一番長続きしてる友人だから」
友人「へぇ、それは初耳。まぁお前友達少ないしな」
雪樹「少なくても困りはしないからいいんだけどな」
友人「だろうな。これ以上居ても特に何かあるわけじゃないし、帰る、今度見舞いに何か持ってくるよ。」
雪樹「おう、わざわざすまないな。」
友人は病室を出ていくと森久保さんが椅子に戻る。
雪樹「時間、大丈夫?」
森久保「あ…あの…」
雪樹「何かな」
森久保「劇のことなんですけど…」
雪樹「さっき話しかけてきたこと?」
森久保「はい…」
雪樹「どうなった?」
森久保「演劇家の方が話していて、先日怒った人の役は別の人がやることになったんです…」
雪樹「怒ってた人は?」
森久保「辞めてしまいました…」
雪樹「他の人は?」
森久保「変わりないです…」
雪樹「そっか。新しい人とは上手くできそう?」
森久保「はい。優しい方で、でも失敗には厳しくて、無理やり怒ったりはしませんが…熱心というか。練習にお手伝いしてくれるので…とても良い人だと聞きました…」
雪樹「良かったね。少し楽しみかな。」
森久保「もりくぼも頑張り…ます…」
雪樹「うん、頑張って」
森久保「そろそろ…帰ります…お疲れ様です…」
少し笑顔を見せたあと、鞄を背負って小走りに帰っていく。
雪樹「一人は寂しいからな。」
夕食を取ると眠気に負けてすぐに寝入った。
………
「ねぇ、楽しい?」
楽しいというか忙しい?
「ならやめちゃえば?」
やめる理由もないからなぁ…
「でも、私達と遊ぶ時間少ないじゃん」
確かに遊ぶ時間は少ないけど。やめたら他に代わりが居ないし
「やめたら関係ないじゃん」
そこでやめたら他にも支障があるから
他のこともやめてしまうから
「他に何かあるの?」
資格勉強、これはこの学校での目標だし
「資格試験、やって何かあるの」
自己満足だろうけど。自分がどこまでできるか試したい。
「ふーん、そっか。自分の事優先なんだ。」
………
雪樹「気分悪い…」
また昔の夢だった。
朝食を食べ、適当にニュースを眺めていると
病院のドアをノックされた。
雪樹「どうぞ」
???「久しぶり、松谷君」
入ってきたのは……懐かしい顔だった。
次はちょっと重たい話になるかも
誤字脱字あれば報告頂けると幸いです