美少女戦士セーラームーン☆太陽の戦士   作:Doc Kinoko

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【act.014】光の果てにあるもの

「あの星を…あなたが消した…?許せないわっ!!」

 

拳を高らかにあげ、威勢よくセーラー・スターファイターが飛び出した。

 

「待ちなさいファイター!!」

 

長い両手をいっぱいに広げて制止したのは、メイカー。いきり立ったファイターをなだめるように、メイカーは彼女の耳元に囁いた。

 

「迂闊に攻撃するのは危険よ。ここは私が…」

 

そう言って、ファイターを後ろへそっと押し返し、自身もガイアから距離をとったメイカーが訪ねる。

 

「あなたはカオスの子。そして、さきほどあの星を消した張本人。間違いないわね?なぜ?あなたは何を望むの?」

 

ゆっくりと、大きな声でガイアに語りかけるメイカーの額にも汗が滲み、その脚は少し震えている。

 

「私は、銀河に溢れる、悲しみと痛みを消し去りにきたのよ。あの星、泣いてた、痛い、って言ってた…。あなたたちには、聞こえなかったの?」

 

セーラー・スター・ライツたちは、ガイアの言葉を息を呑んで静かに聞いていた。しかしその言葉に込められた彼女の真意はわからないままであった。

 

「はぁ?じゃぁなに?アンタには、あの星の声が聞こえたって言うの?痛い、って言ってたから、消したって言うの?言ってる意味が全然わかんないわ!」

 

三人の気持ちを代弁したのは、ヒーラー。

 

「消してなんかいないわ。あの子はここにいるもの。ほら。」

 

ガイアは血の滲んだ自身の指先を見せた。あの星を消した時に負った、指先の傷。

 

「この子はこれから、私と、母さんと、一緒に暮らすの。私の中で。この指の傷は、あの子の痛み。」

 

ガイアの声は、穏やかだった。

 

「飲み込んだというの?…あの星を…?それで?…あなたはこの後どうするの?」

 

ガイアの話に合わせようと、冷静を装っているメイカーであったが、動揺は隠せず、声が震えていた。

 

「あそこ。あの星へ行くのよ。あの光が、この子を、そして周りの星たちを苦しめてるの。…そう。…キンモクスターと言うのね?」

 

「そんなことっ!!絶対にさせるもんですかっ!!」

 

ガイアの最後の言葉を聞くが早いか、拳に輝きを宿したファイターが、メイカーの必死の制止を振り切り、大声を上げて飛び出した。

 

セーラー・スター・ファイターは、宇宙へ掲げた拳に無数の輝きを宿し、ガイア目掛けて一気に振り下ろす。

 

スター・シリアス・レイザーッ!!

 

絶叫にも似たファイターのスペルアウトと共に、漆黒の宇宙を無数の光線が貫く。怒りの顔をあらわにし、何度も何度も激しく拳を振り下ろすセーラー・スター・ファイター。

 

「…ちょっとメイカー… コレ…ヤバいんじゃないの?」

 

ファイターが放つ無数の光線の先にある恐怖に気づいたヒーラーが、メイカーにぼそりと呟いた。

その口元が、笑みのように緩んでいるのは、足の先から全身に沸き上がる、とてつもない恐怖を必死に掻き消そうとするためか。

 

「ええ、ヒーラー。光の向こうの、奴の闇の力が、どんどん大きくなってる。ヒーラー!悪いけど急いで城へ戻って、プリンセスを安全な場所へ!ファイターを連れて私もすぐに追いつくから!」

 

メイカーの言葉に、黙って強く頷いたセーラー・スター・ヒーラーは、キンモクスターを目指し、全速力で飛んで行った。

 

なおも攻撃を続けるファイターに、メイカーが飛び掛かり叫んだ。

 

「一旦離れるのよファイターッ!わからないのっ?!奴のチカラがどんどん膨らんでる!!」

 

スターシリアスレイザーが描く激しい光の向こうに、漆黒の影がゆらりと映る。

 

「…そんな…?…無傷だと言うの…?」

 

光の向こうに霞む影、一糸乱れぬガイアを瞳に映したファイターは、目を大きく見開き、ただ呆然と息を荒げる。だらんと下げた彼女の拳は、さきほどの輝きを失い、声すらも失ってしまったようにも見える。

 

「…なぜ…?なぜ光の者は、戦いを望むの?闇を恐れているから…?」

 

ガイアが問い掛けた。さきほどまでの圧倒的な闇のチカラとは対照的に、その声には不思議と戦意は感じられない。

 

先の攻撃にチカラを使い果たしたのか、それとも、圧倒的な闇のチカラを前に戦意を喪失したのか、ガイアの言葉を呆然と聞いていたファイターに代わって、メイカーが口を開いた。

 

「いいえ!闇など恐れない!私たちが戦うのは、愛する者を守るため、幸せな未来を守るためよ!」

 

ふふっ…。

 

ガイアが くすりと笑った。

 

「愛…?愛する者が死んだら悲しいでしょう?心が痛いでしょう?きっと辛いわ。悲しみを感じるのは、幸せを知っているから。痛みを感じるのは、喜びを知っているから。『幸せ』も『喜び』も、光の果てに、いつか『悲しみ』と『痛み』に変わるのよ? 戦いの果てにあるのは、『悲しみ』と『痛み』だけ…。それでもあなたたちは、光の果てにある幻を守ろうと言うの?」

 

そう言ってガイアは、漆黒の瞳で、メイカーを見つめる。

 

「…っ!あなたにだって、愛する人がいるはずよっ?!愛する人を守りたい気持ち。わからないのっ!?」

 

メイカーは、ただ思いつくそれらしい言葉を必死に叫んだ。話など通じる相手ではないかもしれない、しかし、城に戻ったヒーラーが、プリンセス・火球を連れて逃げるための、せめてもの時間稼ぎである。

 

そんなメイカーの心の内を未だ知るはずもないガイアは、さらに続ける。

 

「…愛する人…?…母さん…。あなたたちが守ろうとした光の幻に殺されたわ。でも、母さんは、これからはずっと一緒。今、私の中にいるもの。」

 

そう言ってガイアは、胸のクリスタルを握り締め、遠い眼差しでそれを見つめた。

 

「ファイター!今のうちにっ!」

 

ガイアの一瞬の隙を見逃さない冷静なメイカーは、ファイターの腕を掴むと、彼女を連れて光の速さで駆け出した。

 

「そう…。逃げるのね?悲しみと、痛みから…。辛いでしょう?わかるわ。あなたたちの心の痛み。大丈夫。あなたたちも、その痛みから、救ってあげるから。」

 

向こうへ飛び立った二つの流星に呟くと、指先にひとすじの影を宿したガイア。彼女がその指先を揺らすと、おぞましいほどの無数の影が、長い髪の毛のように二人に目掛けて飛んでいく。

 

その影は、光の速さで宇宙を駆けるメイカーたちにあっという間に追いつくと、亡者の腕のようにメイカーの足首に絡みつき、瞬く間に彼女の全身を闇で包む。

 

「メイカーッ!いやぁぁっ!」

 

目の前でセーラー・スター・メイカーの身体が闇に包まれた。突然起こったおぞましい光景に、セーラー・スター・ファイターはただ叫ぶことしかできなかった。

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