美少女戦士セーラームーン☆太陽の戦士   作:Doc Kinoko

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【act.035】絶望の淵

『セーラームーン!カオスよっ!カオスシード!』

 

ネオ・クィーン・セレニティは気付いていた。奪われたプルートたちのスターシード以外に、ガイアの中に眠る、もうひとつのスターシードに。

突然地球へ舞い降りたプリンセス・火球の先の言葉が、事実だと言うのか。ネオ・クィーン・セレニティはプリンセス・火球の言葉に顔を曇らせ、独り言のように呟いた。

 

「プリンセス・火球…。そう言う意味なの?『カオスの子=ガイア』とは…そう言う意味だったの…?」

 

「出るわっ!セーラームーンッ!」

 

ガイアの異変に先に気付いたプリンセス・火球が叫ぶ。

 

未だ銀色の光に照らされ、悲鳴を上げるガイアの胸元から、恐ろしいほどの闇の輝きが吹き上がると、ネオ・クィーン・セレニティが放つ銀色の輝きは、一瞬にして掻き消され、その刹那、ガイアの悲鳴が ぴたりと止んだ。

 

ガイアの身体は、力なく、ただ だらんと闇の中に浮いている。絶命したとでも言うかのように。

そして、空へ立ち上がる真っ黒な煙のような闇の輝きが、ゆっくりとガイアの身体から解き放たれ、その胸元から、くるくると立ち上がる漆黒のスターシードがひとつ。

 

そのスターシードは、今や完全に沈黙したガイアから、すべての力を吸い取るように、闇の軌跡と共に空を上り、ガイアの身体を離れた。

 

「セーラームーン!見て!カオスシードよっ!ガイアの身体から離れたわっ!」

 

プリンセス・火球が叫んだ瞬間、つい先ほどまでクリスタルトーキョーの空に浮かんでいたガイアの身体が、眼下に広がる大地へ向かって、真っ逆さまに落下する。

 

「ガイアッ!!」

 

落下するガイアを受け止めようと、思わず駆け出したネオ・クィーン・セレニティの横を、力強い輝きが追い抜いた。

 

「エンディミオンッ!」

 

ネオ・クィーン・セレニティが叫ぶが早いか、キング・エンディミオンの両手には、全身傷だらけのガイアが、しっかりと受け止められていた。

その場にいた誰もが、ガイアを抱えるキング・エンディミオンのそばへ急いで駆け寄る。 エンディミオンに抱えられる、傷だらけのガイアの姿…その身体に力はなく、苦痛に歪んだままの表情は、ぴくりとも動かない。 彼女の命はもはや、絶望的と言える。誰もがそう感じた。

 

その時、声が響いた。

 

 

『…人間のカラダ…ココロ…なんとたやすく壊れる…なあ…ガイアよ…。』

 

突然クリスタルトーキョーの夜空に響く声。地鳴りのように低く、恐ろしいその声に、誰もが空を見つめた。

 

『…我がカオスシードを抱え、我が意のままに地球へやってきたこと…憎き銀色の月の一族に、再び巡り合わせてくれたこと…誠にご苦労であった。感謝してやろう…』

 

しかし、その声を以前にも聞いたことがあるのは、この場にいる戦士たちの中でも、たった一人。ネオ・クィーン・セレニティが叫ぶ。

 

「…カオスッ…。再び…目覚めたと言うのっ!?ガイアを誑かし、その身を隠しながら地球へやって来たと言うのっ!?」

 

1000年の時間を超えて、再びネオ・クィーン・セレニティの目の前に現れたカオスの闇の輝きが、クリスタルトーキョーの夜空を、ゆっくりと闇で覆う。夜空に輝く星すら映さない。

闇で覆われる空を見た者ならわかるだろう。いつも見上げる夜空は、決して闇などではないことを。

 

「エンディミオンッ!プリンセス・火球ッ!みんなを連れて、すぐにシールドの中へ避難してっ!カオスは…私が倒すわっ!」

 

 

シルバー・ムーン・クリスタル・エターナル・パワーッ!!

 

 

メクアップッ!!

 

 

ネオ・クィーン・セレニティが高らかに叫んだ呪文。女王である彼女が、戦士の姿へと変身する究極のスペルアウトが、クリスタルガーデンに響き渡る。

 

… … …

 

「っ…?! 変身できないっ?!」

 

その場にいる誰もが驚愕した。ネオ・クィーン・セレニティが、宇宙最強の戦士『セーラームーン』へと変身できないのだ。

 

「…どうして…っ?!」

 

シルバー・ムーン・クリスタル・エターナル・パワーッ!!

 

再び響くネオ・クィーン・セレニティのスペルアウト。

 

… … …

 

再び訪れる、残酷な沈黙…。変身はおろか、彼女の纏うドレスの裾すら、全く動く気配がないのだ。

 

『…ククク…1000年の平和に甘んじ…そのチカラを失ったか…愚かよ…

…戦士でないお前の幻の銀水晶の輝きなど、もはや幻の銀水晶にあらず…。そなたの輝き…我が世界の糧としてやろう…。』

 

地鳴りのようなカオスの声が、クリスタルトーキョーの空に再び響く。

その手をどんなに天高く掲げても、変身できないネオ・クィーン・セレニティ。焦りと絶望の淵に立たされた彼女の両膝が、力なく大地に落ち、言葉すら出ない。

 

「セーラームーンッ!下がってっ!」

 

地に伏せるネオ・クィーン・セレニティの前に立ちはだかり、遥か上空のカオスに向かって、2つの流星が駆け上がる。

 

 

スター・シリアス・レイザーッ!!

 

 

スター・センシティブ・インフェルノッ!!

 

 

カオスの力で闇に染まるクリスタルトーキョーの空に、セーラー・スター・ファイターとヒーラーから放たれる凄まじい閃光が広がる。

 

「ファイターッ!ヒーラーッ!ダメッ…!」

 

プリンセス・火球が、空を駆ける2人に叫んだと同時に、カオスから放たれたふたすじのまっすぐに伸びる影が、彼女たちの閃光をあっさり貫いたかと思うと、一瞬にして2人の胸までをも貫いた。

 

「ファイターッ!ヒーラーッ!いやぁぁぁぁっ!!」

 

プリンセス・火球の悲鳴が、2人が大地に落ちる どさり と言う鈍い音すら掻き消す。

 

カオスの放つ闇に胸を貫かれ、大地に伏したセーラー・スター・ファイターとヒーラーの身体が、みるみるうちに黒く染まり、彼女たちのスターシードを残し、その身体が闇の中に溶けた。

 

「セーラーカルテットたちよっ!セレニティとプリンセス・火球、散らばったファイターたちのスターシードを連れて、急いでシールドの中へ避難するんだっ!」

 

叫んだキング・エンディミオンの指示に、セーラーカルテットたちが飛び出し、ネオ・クィーン・セレニティとプリンセス・火球、そして辺りに散らばるファイターたちのスターシードを抱えると、その腕にガイアを抱えたキング・エンディミオンと共に、大急ぎでクリスタルパレスへと避難した。

 

 

『…女神どものシールドか…。だが、そう長くも持つまい…。そなたらの輝き、すべて奪い尽くしてやろう…ククク…。』

 

カオスの禍々しい声が、銀色の月の一族を見送る。

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